一方こちらは本番用のたき火。着火を待つだけになっている。
今日はけじんをはじめとする「対岸遠征組」が大捕り物をしてきたので、非常に盛大なたき火が期待できる。
飯能河原が広いので、少々火の粉が飛んでも火災発生!ということにはならない。
「せっかくだから」と、おかでんがかまぼこの板をぺたりと薪の上に張り付けておいた。燻製に使ったかまぼこのものだ。これも貴重な燃料。
木をさんざん引きずったり削ったり切ったりしたので、木屑が大量に出た。それらを大きなたき木の隙間に差し込んである。これで着火が失敗したら一生の恥だ。
ばばろあはまだ「バノック」とやらと格闘中。しばらく寝かせておいた生地を取り出し、のし棒で伸ばし始めた。彼はわざわざこのために神戸の家からのし棒を持参していた。
そこまで徹底していたばばろあだったが、途中で「わからん!どうだったっけ」と言い出した。なんとなく製法は覚えていたが、いざ作ってみたら詳しいことがわからないありさま。彼もまた、バノックというものを見たことも食べたこともない一介の人だった。
せっかく借りてきた大きな鉄板があるんだから、豪快に肉焼こうぜ、という話になっていた。そこで、買い出し部隊は肉の塊を肉屋から調達。ステーキは自宅で焼くことはあっても、既に切られた肉を焼くだけだ。「ステーキサイズに肉を切る。」という行為は誰一人体験したことがない。代表してしぶちょおがカットしたが、一同固唾をのんで見守った。
でも、それが「固唾」だったのか、「腹減った」というよだれなのかは不明。
燻製第二弾も完成。全体的に赤っぽい色にしあがった。
第二弾は桜のチップにお茶のはっぱを加えたものにしてみた。お茶の葉っぱで燻製したら、緑色になりそうなイメージだが、そうではないのだな。
結局ばばろあ肝いりのバノックは完全放棄され、単なる小麦粉の塊となってしまった。捨てるのはもったいないので、それをカタツムリのように丸めて、そのまま鉄板で焼いた。
「何て名前の料理だい?」と聞いてみたら、「そんなもん、あるか!思いつきじゃ」と一蹴された。
夕食の準備は二面作戦で進行していた。
鉄板でステーキを焼くため、かまどには鉄板が据え付けられている。しかしそうなるとその他の調理ができなくなるので、今日切り倒してきた大きな木を組んで「第二かまど」を設営。そちらには網を敷き、鍋の調理およびご飯炊きを行っていた。
夕食開始を待たずにたき火に着火。
原理主義者であるおかでんは、「食事が開始してからでないとたき火はいかん」と主張したのだが、「これだけの木があると燃え尽きるまで相当時間がかかる。今のうちに着火しておいた方がよい」という意見に押され、しぶしぶ了承。
これで、第一・第二かまどおよびたき火に火がつけられたことになり、アワレみ隊史上もっとも盛大なファイヤーとなった。
日が沈んで急速に冷え込んできたので、みんな厚着をしてたき火やかまどの周りに集まる。
たき火に火がついてしまったし、なんだかだれた空気の中で三々五々ビールを飲み始めた。肴は燻製したもの。
おかでんはアジの干物を炙らずにそのまま食べていたが、あんまりおいしいとは思わなかった。やっぱり燻製とはいえ、火を通した方が良かったか?香りだけは相当いいんだけど、なんだかやっぱり生っぽい食感が、ちょっと萎えた。
みなさんにはチーズや玉子など、外れようがない燻製品をお勧めしておく。
【後注】燻製すれば「火が通った」と思っているのは大間違い。ちゃんと加熱しないとダメなので、このときのおかでんは勘違いをしている。おなかを壊さなかったのは幸いだ。
燻製焼き鳥を焼く。スモークチップの香りがしみこんだ肉だが、それ以上にたき火からでてくる煙にいぶされてしまった。煙臭い肉、という仕上がりに。恐るべし、薪。2時間くらいかけた燻香を吹っ飛ばしてくれたぜ。もっとも、この焼き鳥をスモークした時、お茶っ葉を入れていたので、ちょっと変な薫りになっていたのだけど。
でも味はおいしかった。
鍋の様子を確認しているばばろあ。
この二日間の調理で鍋の周囲は真っ黒だ。
この鍋、ちゃんとすすを落としてから片付けないと、収納の際に周囲のキャンプ用品にえらく迷惑をかける。伝染病のように次々とすすの黒さが伝播していくので大弱りだ。しかも、ヤニがついているので油のようにべたつく。手につくと、その後持った食器やらなんやら、すべてにべったりと指紋がついた。これがまた拭いてもなかなか落ちないんだわ。
アワレみ隊合宿を繰り返すことで慣れてはきたが、でもやっぱりスス落としというのはすべての業務の中で一番イヤな作業である。
先ほどぶ厚く切った肉は鉄板の上へ。
チンチンに熱く熱せられた鉄板の上へ肉を置くと、なんとも盛大な音が立ち上った。
これを聞いて食欲がわかない奴は人間として、生物としてイカンと思う。その点われわれは一様に健康優良児。「腹減ったなあ」とお互いぼやきあった。
でも大丈夫、すぐに食事時だ。なにせ、ご家庭のキッチンではあり得んほどの高火力によって鉄板が熱くなっている。あっという間に火が通る。それどころか、あっという間に焦げそうになる。いかんいかん、裏返してものの30秒もあれば食べる準備ヨーイ。
何せ、火力調整という概念がほとんどないたき火による調理のため、調理時の高火力は食べる際に邪魔になるのだった。たとえここで薪を火箸で蹴散らして火力を落としたとしても、時既におそしだと思う。そんな面倒な事やってる暇があったら、有無を言わさず目の前の肉を胃袋にたたき込め。
にんじんやかぼちゃなど、付け合わせの野菜も一緒に焼く。
それにしてもアウトドアでステーキとは何とも豪勢な感じがする。焼肉とか串焼きというのは過去にもやってきたけど、ステーキは初めてだ。どすん、という重厚感がたまらない。とはいえ、「食べる分だけ焼く」事ができないので、あまり野外合宿向けではない。
五人で鉄板の周りを取り囲むので、狭いところでぎゅうぎゅうだ。オッサンばかりでむさ苦しい・・・と自虐的に形容したいところだが、どっこい今回はひびさんという女性がいるので、決してむさ苦しくはない、と、思う。
テーブルなんて小じゃれたものは存在しないので、料理の取り皿、ご飯の皿、飲み物のカップまたはビール缶を身の回りにおいておかなければならない。右手は常に割り箸が陣取っているので、数限りある人間様の左手一本だとすべての皿は持てない。そんなわけで、うかつに立ったり座ったりするとうっかりその皿をひっくり返す事になるので、案外繊細さが要求されるひととき。
ビールを飲んでいるのと、気温がぐぐぐっと下がるのとでトイレが何かと近くなる。そんなとき、河原の外れの方で用を足す。男性の特権。
ひびさんはこれができない。でもビールをぐいぐい飲むので、トイレが多くて難儀していた。トイレ往復のため宴席を離れている時間が結構な割合を占めていて、女性の大変さがよく分かる。その点男は気楽な生き物だ。
たき火を囲む隊員たち。
ひびさんがビール缶を高らかに掲げて飲み干しているのが見える。缶の中に残っている量があと少しだったとはいえ、豪快に飲んでいるのがよく分かる。それでもひびさんは随分と酒量が減ってしまった。あの「高知の夜」の一件があったためだ。
「いいじゃん、あれは事故だと思って、また飲めば」
と酒飲み友達が欲しいおかでんはひびさんの豹変ぶりに不満だったが、ひびさんは
「いやー、なかなかそういうわけにも」
とかなんとか言って、「そこそこ飲む」スタイルを堅守した。もちろんこの「そこそも飲む」のも、一般的に見れば結構飲んでいるわけだけど。でも、おかでんをして「うわばみ女」と恐れさせた一時の面影はもう残っていなかった。惜しい人材を失ったものだ。
・・・としみじみしながら、おかでんは容赦なくぐいぐい。ビール飲んだ後はワインと清酒でGO。
たき火を囲みながら歌謡ショー。いつも通り、替え歌をあれこれ歌う。
たき火を見るとなんで歌いたくなるのだろう。
たき火がMAXになった頃、おかでんも「じゃあいつもの奴を」とチャッカマンを持って前へ出る。第一回天幕合宿の頃からやっているおかでんの芸「ジャングルファイヤー」だ。
ファイヤー!ファイヤー!ジャングルファイヤー!
と全員が叫び、その後「チンチンドドンチチンチドンドン」とサンバのリズム(アゴゴベルの音をイメージ)を口ずさみながらダンス。そこでぴたっと動きを止め、静かに歌うのだった。
燃えろよ 燃えろよ
ちん毛よ燃えろ
火の粉をまきあげ
チンまで焦がせ
そして、ズボンをずらしたおかでんは、厳かに己の毛に火を放つのだった。うまくいけば5~6秒は熱くない状態で燃えてくれる。
それを全員で見て、ゲラゲラ笑うのだった。男女問わず。
「また今回もチンまで焦げなかった!」なんて言いながらこの芸は終わり、ToBeContinued。
迷走したばばろあ製バノックだが、鉄板の上で焼くのもどうも塩梅が悪かったらしい。結局アルミホイルにくるまれ、たき火の中に放りこまれていた。一体何回ジョブチェンジしているんだこの料理は。
できあがったのは、加熱時間が長かったせいで水分が抜け、クッキー状態になったものだった。これはこれでおいしかったから、結果オーライ。でも、作ったばばろあとしては不本意だっただろう。ドンマイ。
たき火の火力が弱まってきたところで、「たき火ジャンプ」をやり始める一同。今日はやたらアクティブだ。
たき火越えはアワレみ隊隊員になるための技量試験にも用いられている由緒正しいものだ。清く正しく楽しく飛ぼう。大人なんだから事故のないレベルで。
みんなが飛んでいくにつれ、どんどんジャンプする位置をたき火から遠ざけていくチキンレースが楽しい。たき火墜落ギリギリのところで飛び越えると、酒を飲んでいるせいもあってアドレナリンが大層よく出た。
また、しぶちょおは「立ち幅跳びで行く」といい、直立不動の状態からたき火越え。ちょっと難易度が高いプレイだった。
酔っ払って、椅子に座りそびれて倒れるおかでん。
随分良い感じにできあがっている様子。
でも、倒れてもコップだけは水平をキープして手放さない。面倒だからこの後椅子には復帰せず、座ったままで過ごした。平衡感覚が求められるこの椅子だと危ない。
火が消えてきたので、だんだん人間の輪が小さくなってきた。最初は火力が強かったので遠巻きに眺めていたのだが、今やこの距離感。
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