
火がある程度沈静化した。大きな木はうまいこと燃え続けてくれるのは難しく、すぐに火力が落ちた。こちらが期待しているのはガンガン燃えさかる炎だけど、そうなるのは一瞬で、あとはじわじわととろ火で燃える状態だった。「恋愛もこうあるべきかもしれん」。誰だ、知った口をきくのは。
さて、その落ち着いた火を放置するわけにもいくまい。それ、ジャンプだ。アワレみ隊の恒例行事である「たき火を飛び越しちゃおうぜ」チキンレースの開始。今回、太い木が長く伸びているので、結構危険。うっかりすると足をつまづかせ、そのままたき火に顔からダイブ、なんてことになりかねない。
木があまり出っ張っていない角度を狙って・・・ジャンプ。
「いかん。うまく撮れなかった。もう一度」
なんども飛ばされるひびさん。撮影は一瞬のタイミングなので、結構難しかった。
さんざん飛びまくり、誰が一番遠くから飛んだだとか、あいつはチキンだとかで盛り上がったのち、就寝。
2000年07月22日(土) 3日目

3日目朝。朝5時過ぎの起床にもかかわらず、誰一人朝寝坊する人がいない。なにせまぶしいやら明るいやらで、それどころじゃない。
全員神妙な顔で朝食準備にかかる。
今日はもう十分に薪があるので、流木集めはなし。必要以上に集めてしまうと、浜辺清掃どころか浜にゴミを集めてきた状態になるのであまり良くない。使い切る量の流木を集めてくるのが肝心。

起床時は太陽がでていたのだが、だんだん雲行きが怪しくなってきた。不穏な風も吹く。雨が降るかもしれないので、手が空いている人全員で薪を簡易タープの下に待避。こんなことやっても、雨がじゃーっと降ったらあまり意味はないのだが、やらないよりマシということだ。

普段、炊飯はかまどで炊いているのだが、今朝はガスストーブで炊いている。my持参のプリムスストーブを前にニヤニヤしているしうめえ。じっと米が炊けるのを眺めていた。

「おお」
しうめえが素っ頓狂な声を出すので、様子を見に行ったら「ほれ」と飯ごうを掴んで持ち上げた。すると、一緒にプリムスまでくっついてきたのだった。
「なんでこうなった?」
「吹きこぼれているのが固まったからだと思う、多分」
そうか、吹きこぼれた汁って、いわば「糊」だもんな。でも、数百グラムあるガスストーブを持ち上げるほどがっちり固まるとは意外だった。粟島の奇跡、という称号を与えて進ぜよう。

かまどにはこの鍋が陣取っていたので、ご飯がガスストーブになったのだった。作っていたのはお味噌汁。人参や茄子、椎茸、大根が入っていて、上には青葱がどっさり。具だくさんだ。

神島では毎朝の食事だった、「ジャガイモのアルミホイル焼き」。昨日のカレーライスで使ったジャガイモがまだ残っているので(というか、今朝の分も想定されていたので)、ホイル焼きになった。
神島のときは、朝ご飯がこれ1個だったわけであり、それを考えると今日の朝食がなんと進歩したことよ。ご飯とお味噌汁がある!ジャガイモはおかずだ!
丁寧にホイルでくるんだジャガイモは、昨日のたき火跡にセットされ、燃え残った木に火をつけて遠火で熱を送った。

放置すること数十分、時々串を刺して中の塩梅を確認。その結果、焦げることもなくいい感じにホイル焼きが完成した。ここまでうまくいったのは初めてかもしれん。

朝ご飯開始。
こうやって写真を並べてみてよく分かるが、ご飯を作る作業の大半は火との格闘。直火調理をやっているとどうしてもこうなる。いったん火がつけば味噌汁なんてのはすぐにできる。ジャガイモだって、火を調整するところで時間が相当かかっている。
さらに、後片付けの時は、鍋についたすすをこそげ落とさないといけない。ガスストーブやガソリンストーブを使った方がどんなに楽なことか。でも、そうしようとは誰も言わなかった。なんとなくかっこよくないと思ったから。

朝食の後片付けが終わったところで、一同日焼け止めを塗ったり着替えたりと万全の構え。何を始めるのかというと、役場でレンタサイクルをやっているので、それを借りて島一周しちゃろうぜ、というわけだ。

一周約23キロ。ママチャリなので、平地なら2時間くらいの所要時間。しかし、ここは島なのでアップダウンがある。さて、どれだけ時間がかかることやら。

反時計回りに内浦集落から進んでいく。途中われわれの天幕基地を素通りし、「行ってくるよー」と声をかけたりしてのんびり。しかし、そこからしばらく進み、島北部にさしかかるとうねうね道とアップダウンの繰り返しになっていった。いや、アップダウン、じゃないな。アップアップだ。道がアップアップなだけでなく、われわれもアップアップだ。
道だけはやたら立派。非常に走りやすい。蛇行走行しても平気。島ってこういうところがやたら豪勢なんだよなあ。
途中、展望台があったのでいったん休憩。全員の足並みがそろうのを待つ。

ひっくり返っている人一名。

ここの展望台は風が強かった。
「おい、風に吹き飛ばされそうなちぇるのぶ、ってのをやろうぜ」
としょーもないアイディアが浮かんだので実行に移してみる。
ちぇるのぶを柵に捕まらせ、われわれで両足を持ち上げる。すると、風に吹き飛ばされそうになって必死に柵に捕まっているちぇるのぶが完成、というわけだ。
いざやってみたら、「痛い!いたたたたた!」とちぇるのぶが悲鳴を上げた。「腹筋が痛い」んだそうだ。知らなかった、この格好になると腹筋を使うのか。
「教訓だな。風に吹き飛ばされたくなかったら、腹筋を鍛えないと」
なんか違う気がするけど、まあ、そういうことだ。
でも、ドロシーちゃんみたいに家ごと吹き飛ばされたらどうにもならないけどな。

ちぇるのぶがこれ以上のプレイを拒絶したので、かわりにしうめえにやろうとしたら、しうめえはへこたれていて軟体動物と化していた。これでは無理だ。

展望台から島西南部を望む。海に突き出した奇岩城のようなものがあるが、あの付け根部分に釜谷のキャンプ場がある。そして、正面の山を越えたところが釜谷集落。当面の目的地はあそこだ、さあ頑張れ。
・・・でも、結構アップダウンありそうだな、ここから先。

ママチャリなので、変速機なんてついていない。坂道はひたすらケツの穴に力を入れて漕いでいかないといかない。ただ、曲がりくねった道で先がよく見えない。だから力の配分には余力を持たせておかないといけない。うっかり「あのカーブのところまで頑張ろう」と力を出し切って、カーブを曲がってみたらさらに上り坂、だったら悲しくて海に転落しそうだ。このあたりは100m~200mくらいの崖になっているので、転がったらミンチになって海にジャボンだ。

先行していたしうめえが力尽きて道路の真ん中に座り込んでいた。
「頑張れよー」
帽子を振って、必死にペダルを漕いでいるメンバーを応援。

釜谷集落にある唯一の食堂、「かもめ食堂」にピットイン。
前月、下見で訪れた時はここの「磯ラーメン」が妙に美味かったから、今回みんなで食べようぜ、という話になっていたのだった。磯ラーメンは900円と若干高いが、島物価なので仕方が無いのだろう。でもびっくりなのが、予約制の「粟島ラーメン」。これは2,000円だ。伊勢海老一匹まるごと入れる気か?ためしに予約を入れてみても良かったな。惜しい事をした。

おつまみ三品(500円)を食べつつビールを飲む。ここから先、島の南側のアップダウンが待ち構えているので、あんまり飲み過ぎるとへろへろになる。そこそこでやめておかないと。
浜カレー(800円)というのも気になったが、やっぱりここは体が塩分、特に汁気を欲している。今回も磯ラーメンをお願いした。全員もれなく磯ラーメン。

かもめ食堂で塩分と水分とカロリーと英気を養った一同は、島南部の周回に入る。
島の南側は、あまりしつこいアップダウンはなく、大きくわーんと登って大きくすとーんと下る、といった感じ。
島最南端の八幡鼻で記念撮影をしたのち、北上を開始。

快適な下り坂を下りきったところが内浦のキャンプ場。
「おおー、人がいっぱいいるなあ」
隙間がないくらいテントが海沿いに張られている。やあ、これは大変だ。われわれの天幕基地とは大違いだ。立ちションなんてできないじゃないかここは。われわれの天幕基地だったら、夜はトイレに行くのが面倒なので立ちションし放題だ。

いったん自転車を役場から素通りさせ、天幕基地に帰着。そこでクーラーボックスを抱え、マリンストアーへ。おっと、ここで役場によって自転車とはおさらばだ。20キロの道のり、お疲れさまでした。途中でパンクとかしなくて良かった。何せ周りになんもないところだ、パンクなんてしたら、役場に戻るまで何時間かかることやら。
マリンストアーで今晩のお酒を買ったが、何せ汗をダラダラかいた直後だ、クーラーボックスがいっぱいになるまでアルコールを詰めまくってしまった。買いすぎじゃないの、と見えるが、いやいや、6人(うち酒を飲むのは5人)だとあっという間でしたよ、これ。

粟島には「漁火温泉 おと姫の湯」という温泉施設がある。全員ここで汗を流す。いやー、快適。
コメント