[22番札所 平等寺(びょうどうじ) 徳島県阿南市新野町]
ロープウェイという車とは違った文明の利器を使った後は、また車上の人となる。車遍路はテンポが重要。ぽんぽんぽーん、と巡礼していく。ありがたみが薄いではないか、そんなのは遍路ではない、と歩きで区切り打ちをやっている会社先輩(年輩の人)に言われた事がある。いや、遍路に貴賤はありませんから。あと、車遍路ならではなのだが、一日に何十回も般若心経を唱えることになるので、これはこれでお経漬けでありがたい気持ちになれる。これホント。
車遍路の人はほぼ同じ行動パターンをとっており、行く先々で同じ車を発見した。ペースがほぼ同じということだ。しかも1台だけではなく、複数台。ツーリング集会を開いているかのようだ。これも何かのご縁、と思ったが、さすがに次の日になると同じペースの車は一台も無くなった。われわれは野宿、その他の車はどこかの宿なのだろう。一度ズレると二度と会うことはない。なぜならわれわれは相当ハイペースで巡礼しているから。一期一会、だな。
明け方から天気は一進一退だったのだが、いよいよ雨雲がやる気になってきたらしい。大粒の雨が降ってきはじめた。
こういうとき、菅笠を装着していると便利。両手が空くので、ろうそくや線香を取り出すのも楽。傘をさしているひとは片手がふさがってしまっているので、何かと苦労していた。片手で傘、もう片手で金剛杖を持ってしまうと両手がふさがってしまう。
降りしきる雨の中、「困ったもんだなあ」と空を見上げるばばろあ。
ばばろあも菅笠は購入していたので、比較的行動に制約はない。
転じて、しぶちょおは菅笠を購入していなかったので、傘で対応。
22番を打った事により、八十八カ所の1/4を巡礼したことになる。二日目昼前に1/4というのが早いのか、遅いのか、今のところさっぱりわからない。愛媛県に入ったあたりにならないと、「やばい、間に合わない」なのか「余裕だな、どうしよう」なのか判断がつかないだろう。
[23番札所 薬王寺(やくおうじ) 徳島県日和佐町]
止まない雨の中、車は21km進む。今までで最長距離となる移動だ。そして到着した先は23番札所の薬王寺。
ここで「発心の徳島」最後の札所となる!
感慨もひとしおだ。
このお寺、石段のところにびっしりと5円玉や1円玉が落ちていた。いや、「落ちていた」んじゃないな、これだけの量だと意図的なものだ。
なんでも、この石段のことを「厄坂」と呼ぶらしく、厄年の人は石段一段ごとにお賽銭を置くと厄が祓えるらしい。
厄年という概念はてっきり神道のものだと思ったが、仏教でもあったのか。神仏習合の影響かな?
それにしても信心深い人がいるんだなぁ。一段一段、丹誠込めて浄財を置いていったのだろう。ところでこのお金、定期的にお寺の人が回収しているんだろうか?さすがに放置されっぱなしということは無いと思うが。
お寺の本尊は「薬王寺」の名前の通り、薬師如来。では真言をとなえましょう、おんころころせんだりまとうぎそわか。うん、薬師如来の真言は語呂が良いので覚えやすい。
昼時なので、食事ができる場所があったらいいね・・・という状況だった。幸い、薬王寺からほど近いところに食事処を発見。「和食定食バイキングです」とデカい看板があり、目立つ。
バイキング、という言葉に少し心躍らせながらこのお店の暖簾をくぐった。まだまだ食べたい盛りのお年頃。
この次は「修行の高知」ステージ。栄養をつけておかないと。
むうー。
お品書きを見たのだが、料理がすこぶる高い。
単なる「バイキング」というメニューは存在せず、定食にプラスαで「おかずをお好きなだけどうぞ」という仕組みになっているようだ。説明がないので、まずこれを理解するまで3人でしばらく相談してしまったくらいだ。
お品書きの先頭を飾るのが「特上さしみ定食」で、お値段なんと3,000円。ひぇー。その他、トンカツ定食1,700円、ステーキ定食3,600円などなど。いくらバイキング付きといってもこれは相当な物価ですぞ。
かといって、既に心の中ではバイキング!という気分でウキウキだったので、バイキング無しの一品メニューを選ぶ気にもなれなかった。カレー850円、なんて単品メニューも高いし。
「こういうときは一番安いのにするのが賢い選択だな」
しぶちょおが言う。一番安いのは「うどん定食」「お茶漬け定食」の850円。どちらもあんまり食指が動かないが、この際仕方がないだろう。三人ともうどん定食を注文。
うどん定食850円到着。
ご飯は麦飯。
何も乗っていない四角いお皿で、バイキングコーナーから料理を取ってきなさいということらしい。
まあ・・・この小皿で何往復もして食べまくるというちょっと恥ずかしい行為をすれば大満腹にはなれる。850円でうどん定食は高いと思うが、バイキング込みであることを考えればこの値段でも納得といえば納得だ。
でもトンカツ定食に1,700円を払う気は絶対にしないが。
バイキングコーナー。
おでん鍋がメインに据えられている。その他、揚げ物、煮物などが数品。それほど大したものは置いていない。まあ、定食のおまけ的な位置づけなので、メインディッシュクラスの料理を置く必要がないからだろう。
支給されている取り皿が小さいので、ほとんど盛りつけられない。おでんを3品乗っけたらもう溢れそうだ。このあたり、お店とお客の駆け引きだよな。お得感を出しつつもあまり盛られたくないお店側と、お皿にできるだけ盛りつけたいお客と。
24番最御崎寺までの距離はなんと75km。室戸岬の先端にあるお寺なので、さすがに遠い。四国の形を四角として考えると、その一角にこれから向かおうとしている。
車でも2時間半程度かかる距離だ。歩き遍路だとこの間を1日で踏破することは無理なので、途中どこかで宿を確保しなければならない。1番移動するだけで丸2日を要する距離。信じられん。
われわれは、移動途中にスーパー銭湯を発見。立ち寄り湯をいただくことにした。昨晩は当然お風呂に入っていないし、先ほどからの雨で体が濡れてしまっている。ここはお風呂に入ってさっぱりしたいところだ。
[24番札所 最御崎寺(ほつみさきじ) 高知県室戸市室戸岬町]
アワレみ隊、高知県侵入。
「修行の高知」は真っ先に強い雨で出迎えてくれた。結構な勢いだ。室戸岬の先端に位置するだけあって、風も吹く。風と雨とでわれわれはぐちゃぐちゃ。さっきお風呂に入ってさっぱりしたのに、ずぶ濡れだ。
このお寺は弘法大師が修行したというゆかりの地なのだが、われわれも非常に低いレベルで修行中。ずぶ濡れ、という。
お寺のすぐ近くに灯台があるということだったので、行ってみた。
あたり一面真っ白。霧がすごくて海は全く見えなかった。ただ、すぐそばに灯台があるのが見えるだけ。
こんな高さで、こんな間近に灯台を見たのは後にも先にも初めてだ。ここの明かり、夜になったら360度回転してあたりを照らすのだろうか?もしそうだとしたら、われわれのいるところはものすごくまぶしいことになる。まぶしい、というより目くらましになってしまう。恐らく海側だけを照らすようになっているんだとは思うが。
デジカメセルフタイマーの10秒間さえも長く感じる雨。
「こういう天気のときに雨ざらしでデジカメ使うから、毎回1年で壊れるんだよなあ」
と、ぼやくおかでん。
[25番札所 津照寺(しんしょうじ) 高知県室戸市]
最御崎寺だけが非常に離れているのかと思ったら、次の札所である津照寺は7km先だった。近い。
「あれ・・・」
お寺に入ってみると、既に本堂の扉は閉ざされていた。
時計を見ると17時を過ぎている。
仕方がないので、風情のないアルミサッシの前で読経となった。
「もう今日は潮時だな、こんな状態で巡礼しても意味がない」
おかでんはここを今日の最後とする旨宣告。しかし、ばばろあは「まだ日没まで時間がある、行けるうちに先に進むべきだ」という強行論を唱え、議論になった。
結局、しばらく丁々発止やりあった挙げ句、今日はここで終わりということにした。そして、今後の巡礼ルールとして「朝7時から夕方5時までに巡る」という事も決められた。時間外巡礼はしない、ということだ。
さあ、そうとなれば食料調達して、寝場所を探さないと。
食料調達は簡単にできてラッキーだったのだが、寝場所探しに難航した。
次の札所、金剛頂寺の近くに青少年自然の家みたいなものがある、とカーナビが示していた。そこに押しかけて、事務所の人に「一泊できないか?」と交渉し玉砕。
さあどうしたもんかな、と真っ暗な中車を走らせ、もうどうでもいいやと到着したのが金剛頂寺の駐車場。広い駐車スペースには車が一台も停まっていなかった。ただし、昨晩同様真っ暗。
「ま、ここでもいいか・・・」
と駐車場の片隅に車を寄せ、そこにテントを張った。
ちゃんとした自炊を志しているので、どうしても荷物が増えてしまう。だから、雨が降っているとはいえテントの中で調理するわけにはいかなかった。
三人ともヘッドライトを灯しつつ、ランタンの明かりに助けられながらもそもそと作業を進める。ばばろあ料理長の指示に従って残りの2名は動く。
幸い、テント場に設定したすぐ脇に売店(?)らしきものがあり、そこがひさしを張り出していた。そのひさしの下で雨を避けつつ調理を行う。
雨が激しくなる中、菅笠をかぶって煮込み料理の仕上げをするばばろあ。これもまた修行なり。
できあがった2日目夕食。
大鍋のほうは「いろいろな肉を煮込んだもの」というばばろあの創作料理。すじ肉を中心にいろいろ入っていた。これがとてもおいしく、大変な好評を博した。雨の中よくぞここまで頑張ったな、と。
あとはできあいのお総菜を2品と、白米。
テントの中で夕食。
テントの中はランタンの強力な熱によって暖かい。もう5月になろうかという季節だが、これくらいがちょうど心地よかった。外は雨と強い風のせいで気温がぐっと下がっていたからだ。
ただ、そのせいでデジカメのレンズが結露してしまい、この日の夜に撮影した写真は全てポエムな感じのボケた写真になってしまった。
明日から「朝7時に巡拝開始」のスケジュールになる。
というわけで、朝6時には起きて、撤収と朝食をこなさないといけない。
食事終了後は速やかに就寝。2日目、これにて終了。
おやすみなさい。
2001年04月30日(月曜日) 3日目
3日目の朝を迎えた。
昨日もそうだったが、夜が明けてみてはじめて「ああ、こうなっていたのか」ということに気付く。
幸い、雨は夜のうちに止んでいた。まだ空模様は予断を許さないが、午前中はなんとか持ちこたえてくれそうだ。
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