[46番札所 浄瑠璃寺(じょうるりじ) 愛媛県松山市]
岩屋寺から26km、到着したのは46番札所、浄瑠璃寺。
カーナビ上では尾根を伝いながら標高を下げ、低地に下りてからぐるりと回り込んで谷間にあるお寺を目指せ、と指示していたが、我々はそれを無視して地図を確認しながら強引に谷筋を降りる細い道に入る。ただ、この入り道が分からなくて、いったん素通りしてしまったくらいだ。「おかしい」と気付いて折り返し、ようやく谷に降りる道を発見。
その甲斐あって、回り込む「大きな道経由の安全安心ルート」と比べて大幅にショートカットができたのだった。
「作戦成功ってことでいいね?」
「いいよ」
住所の上では愛媛県の県庁所在地である松山市となる。おお、瀬戸内海ステージに突入だなと実感するひとときだ。
境内には仏足石、仏手石、仏手指紋なんてものがあった。仏足石は、石に仏の足跡が刻まれたものだ。「恐竜の足跡の化石」みたいなもの、と思って間違いない。もちろん、仏様が実際に踏んだものではなく、彫刻として作られたものだが。
将棋の駒の形をした案内表示には「ハダシで踏みなさい」となぜか上から目線。「健脚・交通安全」に御利益があるということなので、アワレみ隊を代表しておかでんがハダシで踏ませていただきました。今後の道中で事故が起きたりしませんように。
ここでタイムアップ。17時を迎えたので本日は打ち止めだ。
実は次の札所である八坂寺までは1km、その次の西林寺までは6kmと至近距離にお寺がある。ただ、打ち止めと決めた時間が来た以上おしまいだ。というより、西林寺の次の浄土寺は・・・と、芋づる式にここから先の札所は連なっている。きりがないので、明日まとめて札打ちしていくことにするほうが賢明だ。
一同は八坂寺をはじめとする数寺を横目に素通りし、道後温泉に向かった。
夏目漱石著「坊ちゃん」で名高い道後温泉本館で湯浴みだ。「道後温泉」は温泉地としての名称であり、当然複数の宿が林立している一帯を指す。しかし、「道後温泉本館」といえば、共同浴場の事を指す。「本館」があるなら「別館」や「新館」があるのか?と思うが、それはない。
今日は一日よく頑張ったので、二階席で休憩(入浴とは別料金)。
夕ご飯をどうしようか、と思案していたときに発見したお店が「キッチンパパ」だった。
バイキングのお店で、夜は食べ放題880円。安い。安さに惹かれて店に入った。
ちなみにランチの場合は580円だから強烈だ。格安、と言って良いだろう。松山は物価が安いのか?
お総菜持ち帰りにも対応しており、1g=1円~となっている。なるほど、持ち帰り総菜の店+バイキングの店というのはちょっと賢いと思った。
ビールを飲みながら食べ続けるおかでんと、ビール1杯で顔を赤くして酔っ払うばばろあ。
ばばろあから「安宿に泊まってもええんじゃないか」提案があったが、議論の上却下となった。
食後、あてもなく今晩の天幕場所を探す。
あちこちうろうろして、目星がつかなかったので結局「道の行き止まり」にテントを張ることにした。行き止まりだったら交通の邪魔にならないだろう。
こういうのは決断が重要。水場が無いけど、明朝の食料は全員皿や調理器具を使わないシンプルなものだ。水が無くても問題はなかろう。
そうとなれば、さっさとテント張りだ。
街灯もなく真っ暗な中、テント設営に取りかかる一同。
ばばろあがなにやら暗闇でゴソゴソやっていると思ったら、テント場すぐ脇の木にひもをくくりつけている真っ最中だった。何事かと思ったら、二本の木にひもを渡し、簡易物干しを作りあげた。
その物干しに、ばばろあは生乾きの衣類を干していった。これまでの日程で、雨に降られた日が複数あった。その時の衣類は当然干せていない。湿ったままザックの中にしまい込まれている。もしくは、着用したままだ。毎日豪勢にお召し替えができるほど衣類は持ち込んでいない。ちゃんと乾かしてまた後日使えるようにしておかないと、気持ち悪いというわけだ。
2001年05月02日(水曜日) 5日目
夜半から雨が降り始めた。テントに居ると、風、雨などが手に取るようにわかる。「ああ、朝までに止んでくれないかな」と願いつつ再度眠りについたが、夜が明けても止む気配なし。
朝起きて外に出てみる。毎朝恒例の「こんなところにテント張ってました」。昨晩から今朝にかけてはこんなところでした。
そして注目すべきはばばろあの物干し。ロープいっぱいに衣類やタオルを干してあったのだが、それら全てが水浸しだ。生乾きのものを乾燥させるつもりが、逆にびしょ濡れ。ばばろあが頭をかかえて「あーあー」とうめいた。
写真でも、まさに濡れている真っ最中の衣類を確認することができる。哀れ。
とりあえずこの雨じゃどうにもならん。近くにトンネルがあったので、そこまで車とテントを丸ごと移動。おっと、物干しロープも撤収しないと。
ひとまず雨が降り込まないトンネルに潜り込み、一安心する。撤収や荷造りはここで行うことにした。あと、朝食も。
なぜかしぶちょおを除く3名がヨーグルトを朝食に選択していた。ヨーグルトを容器まるごと朝食とした。
みんな、しゃがみ込んで侘びしく食べる。朝からずぶ濡れだ、テンションが上がるわけがない。
おかでんは、菅笠による雨よけでは不足と判断。白衣の上にレインウェアを着込んでいる。
晴れてくれるとありがたいんだがなあ・・・
出発準備をしながら、外の様子が気になる。朝なので、時間とともにどんどん明るくなってくる。それが「夜が明けただけ」なのか、「雨が上がりそうな気配」なのかは判断が難しい。
ただ、雨が止むまで待機、という選択肢はわれわれには存在しない。朝7時を回った時点で、次の札所へお参りという行動あるのみだ。
[47番札所 八坂寺(やさかじ) 愛媛県松山市]
全行程残すところあと3日となったわれわれが最初の札所として到着したのが、47番八坂寺。
このお寺を建立するために、八つの坂を切り開いたという謂われがあり、そこから命名されている。なんとも大げさな話だが、創建は701年というからもの凄く古いお寺だ。
駐車場から伽藍に向かう途中に、「今日も笑顔で」という看板が掲げられていた。「笑顔でいかなくちゃ」と一同、雨の中でも笑顔で記念撮影に収まる。
雨の方は若干弱くなったようだ。笑顔、笑顔。
「それにしても寺は朝だなあ」
人がいない八坂寺を歩きながらつぶやく。
「ありがたいなあ」
「ありがたいねえ」
適当な事を言いあう。
[48番札所 西林寺(さいりんじ) 愛媛県松山市]
八坂寺から進むこと5kmで西林寺。
ちぇるのぶは不信心なヤツなので、金剛杖は大切に扱えと言ってあるのに写真では高々と振り上げている。こういう事をやってはいけません。何度注意しても、彼は金剛杖を雑に扱い続けた。
ちなみに金剛杖でやってはいけないこととして一風変わっているのは、「橋の上で金剛杖を突いてはいけない」というものがある。お大師様は今でも四国を回っていらっしゃって、橋の下でお休みなさっているかもしれない。起こしてはいけないので、橋の上で杖をこつんと突くことは禁止」というものだ。
[49番札所 浄土寺(じょうどじ) 愛媛県松山市]
西林寺から3km、伊予鉄道の線路を越えて49番札所浄土寺。
「あれ?」
仁王門には「西林山」と掲げられている。しかし、確かにここは浄土寺。さっき来た西林寺とどういう関係だ?
気になってお手製ガイドブックを確認してみたら、西林寺は「清瀧山」だった。清瀧寺というのが高知県にあったよな、と思って清瀧寺を調べてみたら、「医王山」だった。医王寺というのは存在しないので、バケツリレーはこれにて終了。
本堂は非常に簡素な造り。・・・と思ったら、1482年創建の重要文化財だった。審美眼がないなぁ、我ながら。
猫がいたので、しぶちょおが構う。というか、猫の方が「構ってくれ」とやってきた。なぜかしぶちょおは猫が好むフェロモンを出しているようだ。いつもそうだ。
で、猫はおかでんが「にゃーぉ」と鳴いてみせたり、おいでおいでをしてみせても完全に無視するのだった。なぜだ。
[50番札所 繁多寺(はんたじ) 愛媛県松山市]
50番というキリの良い数字は、浄土寺から僅か1kmの繁多寺。
松山市街はもとより瀬戸内海までもが一望できるということだが、あいにくこの天気ではどうしようもない。雨がこれ以上強くならないことを祈るだけだ。そういえばさっきよりも雨脚が強くなってきた。うーん、参った。
[51番札所 石手寺(いしてじ) 愛媛県松山市]
3km進んで石手寺。駐車場代500円を支払う。
急に賑わいが出てきて少々驚いた。たくさんのお堂や宝物があり、見どころが多い寺だという。あと、道後温泉の温泉街から1kmちょっとということもあって、参拝客が多いようだ。
今までの札所は白衣を着た巡礼者ばかりだったが、ここは白衣を着ている人の方が少ない。一般観光客が数多く訪れる場所のようだ。
まだ朝だし、雨だというのに、相当な繁盛っぷりだ。
また猫がいた。愛媛県は猫の国か。
しぶちょおがあごの下をさすってやったら、いかにも気持ちよさそうな顔をしていた。
[52番札所 太山寺(たいさんじ) 愛媛県松山市]
11km進んで松山市の外れの太山寺。雨が打ち付けるように強くなってきた。さすがにおかでんも「こりゃ菅笠だけでは無理」と、巡礼中ではあるが白衣の上にレインウェアを着込んだ。
しぶちょおは傘をさしていたが、袖に雨が染みんでそれが肌に張り付くため、袖まくりをしていた。体も濡れるしお線香も濡れる。お経も濡れる。水と闘いながら巡礼は続く。
雨でしっちゃかめっちゃかになってしまい、浮き足だっている一同。
今更になって気付いたのだが、この本堂は国宝。驚いた。遂に出たぞ、国宝。重要文化財くらいじゃ驚かないぜ、と言ってたら、本当に国宝が出てきた。
お参りしているときは全然気付かなかったが・・・。
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