おかでん 「16時28分。現在302号を北上中のわれわれですが、またもや363号線との分岐が近づいてきました。次、まっすぐ行ってしまうと毎度おなじみ・大ピストンさんにごあいさつとなります」
ひび 「うわー」
おかでん 「大ピストンさんのあいさつには30分かかりますから・・・現在302号線渋滞中。もう、ピストンはイヤだ。というか、302号そのものがイヤだ。絶対、右に曲がって新天地に向かいましょう。今度も、しぶちょおがサイコロを振ります。では!」
おかでん 「偶数でまっすぐ、奇数で右折。絶対右折だぞ、頼むぞ」
♪何がでるかな、何がでるかな・・・
そりゃっ
しぶちょお 「6!まっすぐ!」
一同 「うぎゃああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
三度目の大ピストン突入けってい。
大ピストンさんは、どうしても「近くに寄ったんならあいさつくらいしていけや」という事を主張してやまなかったということか。
精神的に疲労困憊したわれわれ、もう愚痴すら出てこなくなってきた。ただ、無感情に現状を受け入れ、淡々と先を急ぐようになってきた。写真撮影すら、面倒臭がって疎かになっている始末。写真を撮らなけりゃ、アワレみ隊のネタにもならないわけで即ち「キモい趣味をした奴らがガソリン無駄遣いしまくりのお間抜けドライブをエンジョイ、ハッスル」というだけのどうしようもない企画に成り下がってしまう。しかし、現状に打ちのめされて社会のキビシさをぐいぐいとわき腹にねじ込まれている現状において、写真なんて撮影する余裕がなかったのも事実。
ただいま大ピストンを移動中・・・。
おかでん 「いやー、車中ががぜんまったりとして参りました。今までは愚痴を垂れて時間つぶしをしていたのですが、ついに無口になってきましたねぇ。いい加減みんな眠たくなってきたみたいです。まったりというより、むしろぐったりとしてきています。さて、大ピストンさんとのごあいさつ役務も無事終了の見通しが立ってきましたので、そろそろ363号線の分岐をどうするか、のサイコロを振りたいと思います」
一同 「・・・」
おかでん 「反応、メチャ薄いです。ええと、無視して話を続けますが、先ほどしぶちょおが大ピストンの目を出してしまうというチョンボをやってしまったので、サイコロは現在ひびさんの手元に届けられています。ひびさん、よろしくなのです」
ひび、何も言わず左手がガッツポーズらしき格好をする。
おかでん 「では、時刻は17時ちょうど・・・うわ、ホントに大ピストン往復に30分かかってら・・・、でサイコロを振ります。いくぞー、ひびさん、それっ」
♪何がでるかな、何がでるかな・・・
それーっ
あんまりやる気の無い声で歌を歌う一同だったが・・・
5。
それを見たばばろあが、即座に「はい、まっすぐね」と一言。
運転に集中していたしぶちょおが「ん?まっすぐなの?」と声をかける。気落ちしたおかでん、1オクターブほど低い声で「まっすぐですねぇ」とぼそり。一同、もう派手な喜怒哀楽はできなくなりつつあった。
しぶちょお 「まっすぐなの?まっすぐだしちゃったの?」
おかでん 「まっすぐですねぇ、まっすぐ」
しぶちょお 「ああ、そうなの」
また運転に戻るしぶちょお。
おかでん 「いやぁ・・・さっき、サイコロ振る前に、『まっすぐ行っちゃったら、地獄』なんて言ったけど、さ」
一同ひきつった笑い。
おかでん 「ホントにまっすぐ行っちゃうんだもんなあ、このサイコロの場合は」
この後、「赤のサイコロの方が1が出やすいんじゃないのか?」とか「次のサイコロは、行きたい方向に1の目を当てて、赤のサイコロを振ろう」などとせこい密談が始まった。
おかでん 「いやぁ・・・われわれが通過しすぎたので、路面が若干えぐれてしまったんではないかと思われるほど302号を満喫しておりますが、ようやく次の分岐点が見えてきました。小ピストンとサーキットの分岐点で」
一同、またひきつった笑い。最近、そんな笑いばっか。
おかでん 「もう今更名古屋の中心地に戻る気もないんで、153号、豊田方面に向かいましょう。それでいいね?」
一同 「いいよ」
おかでん 「ということで、今回はサイコロを特殊ルールにしてみました。豊田に向かえるように、差別ルール。即ち、1が出やすいと噂される赤サイコロを用意して、しかも1と6を左、豊田方面に設定。それから、2,5で直進小ピストン、3,4で右折サーキット方面」
しぶちょお 「うわぁ」
おかでん 「まあ、この選択肢は・・・豊田方面に行きたいのは事実だけど、どれを出しても最悪って事はないから、気楽に行きましょうや」
ばばろあ 「待て、小ピストンを出すと、そのまま折り返してきてまた302号大ピストンだぞ」
おかでん 「それを言うなぁ。では、17時17分、そろそろサイコロを振りましょうか」
では・・・
♪何がでるかな、何がでるかな・・・
そりゃっ
おかでん 「来た!1だ!」
一同 「やったぁー」
おかでん 「さらば、302号!そして、初日夕方にしてようやく新しい展開が見えてきた!行けるぞ、これは行けるぞ!」
しぶちょお 「しかし、豊田か。これから30分かかるなあ」
ばばろあ 「で、そのまま井げたを使って元に戻ったりして」
おかでん 「余計な事を言わんでヨロシイ」
助手席に乗っているばばろあを、席越しにチョップを放って黙らせる。
おかでん 「このまま突き進むぞ、今までが第一章だったとすれば、これからが第二章だ!よし、今晩はやっぱり浜松でウナギ食べよう。まだ、間に合う。まだ、大丈夫だ。行くぞ!」
- 国道走破サイコロの旅 第一部 完 -
おかでん 「さあ、また豊田市に戻って参りました。見慣れた場所が少しずつ増えていくのはやや恐怖感があるのですが、ここは交通の要衝。一気に次の目で高飛びしてやりたいところです。外を見れば、既に日没も迫ってきていることだし。」
ばばろあ 「一体今日わしら何をやっとったんじゃ・・・」
おかでん 「とまあ、この車内にいる誰もが自問自答している只今でございますが。次の豊田市は『ビッグチャレンジ』ということでサイコロの振り方を特殊なルールに設定しました」
おかでん 「豊田市といえば、井げたの国道で一歩間違えるとUターンしてしまう悲惨な場所でもうすっかりおなじみの場所なんだよねトム」
ひび 「フレンドリーだなー」
おかでん 「HAHAHA、ということで今回はそんなキミのためにとっておきのスペシャル選択肢さ!地図をよく見てみると、この豊田市は実は6つの国道が交わっている場所なんだな、実は。ということで、井げたの一つ一つでチマチマとサイコロを振るんじゃなくて、その360度に散らばっていく国道一つ一つに目を割り当てよう、というわけだ」
・・・ということで、割り振ったのが図のとおり。
おかでん 「高飛びする格好のチャンス。そろそろ今晩の宿も考えなくちゃいけない時間だし、この迷走の方向付けだけでもしておきたいところだよな。この中じゃ・・・1と6、国道155号ルートは行きたくないな。1出して知立に行ったって、知多半島あたりのぐちゃぐちゃな国道で迷走するのは目に見えてるし、6で尾張瀬戸だったら、まず間違いなくオレら大ピストンさんに呼び戻される」
ばばろあ 「2から5の間ね?」
おかでん 「さあ、時刻は17時45分。外もネオンサインがきらめいて来たところだし、何とかしたい!今度の一投は案外重要だぞ、ということでサイコロをふるのはばばろあ、よろしく」
ばばろあ 「それ」
おかでん 「待てぃっ、だから、すぐにサイコロを振るのはやめろってあれほどいっとろうが。落ち着け。では、いくぞ。運命の一投、ミュージックスタート!」
♪何がでるかな、何が出るかな・・・
そりゃっ1!・・・
車中、思い空気が流れる。
おかでん 「まぁ・・・初めて通る道だから、ねぇ・・・でも、知立かぁ・・・そそらないなあ」
ひび 「あうー」
しぶちょお 「え?何?1ってどこ?・・・ああ?155号南下?・・・うーん」
おかでん 「・・・どうでもいいよ、もう。わはは」
ぐいんと進路を南にとり、知立市に向かう。この時点で、恐れていた「302号さん」とは完全にお別れだ。もう、引きずり戻されてピストンを強要されることはないだろう。さらばだ、302号。
しかし、イマイチ気分が優れないのは、知立あたりの国道が非常に細かく、分岐と合流を繰り返しているからだ。その気になれば、いくらでもサーキットを作る事ができる。まだ日が高いうちなら「新しい土地だ!」と喜んでいられるが、宿泊場所を考えなくてはいけない時間になってきて、この辺りをウロウロするというのは全くもってうれしくない話だ。特に、名古屋在住のしぶちょおとひびにとってみると、地元からほんの少し離れたところで無駄に宿泊料金を使うというのは我慢ができないことだ。せっかくだから、遠くに行っておきたいところだが・・・どうなることか。
朝、行動開始時点での「あそこに行きたい、ここに行きたい」という希望はこの時点ですでに吹っ飛んでいた。三重に行くだの長野に行くだの、「行きたい場所」のスケールが大きすぎた。現実には、名古屋市内でほぼ一日を潰していたわけで、「もがいていた」という表現が正しい。
おかでん 「えー、乗り気ではないとはいえ、この155号線南下作戦はわれわれを新境地に誘う重要な道路であると認識しておったのですが。何とこの先、盲腸国道が発見されました。まだ作りかけの、155号線豊田南バイパスです。現在、この国道の工事が完了し貫通しているのかどうか、カーナビにて確認中ですが・・・」
しぶちょお 「いや、貫通しとらんよ。だって、このバイパス開通すれば153号に合流することになるんだけど、僕らが通った153号でそんな道、無かっただろ?」
おかでん 「うわ、あっけない。ということは、盲腸国道はこの先確実に存在するわけか。盲腸ということは・・・」
ばばろあ 「ピストンした挙げ句、今来た道を逆流する可能性がある、って事だ」
ひび 「ううー豊田市にまた?」
おかでん 「知立市にも行きたくないので、豊田市のビッグチャレンジをやり直したいという気持ちもあるんだけど・・・でも、もうピストンはイヤだ、あれほどまでに体力と気力を奪うものはない」
しぶちょお 「ちょっと待って、この道ってどこで分岐してるんだ?途中でバイパスと本道がクロスしてるんだけど」
カーナビで確認する。どうも、立体交差をしていて、上を本道が、下をバイパスが走っているように見える。しかし、ひょっとしたら合流できるようになっているのかもしれない。
おかでん 「だとしたら?」
しぶちょお 「だとしたら、三分岐って事になるな」
おかでん 「うわ、それはまずいな」
・・・とか言っているうちに、あれよあれよと立体交差を通過してしまった。
ばばろあ 「おい、今下走ってる道、あれがバイパスだろ?」
しぶちょお 「あれ、ホントだ。ってことは、分岐無しってことか」
一同、安どする。こんなところでモタモタする気はさらさらない。
おかでん 「さて、先ほど闘いが先送りとなっていた、盲腸国道豊田南バイパスとの分岐が近づいてきました。ピストン大好きアワレみ隊としては、ヒシヒシと強いピストンからのお誘いを感じているワケなんですが、もうこんな時間なんですからごあいさつは遠慮させて頂きたいと願ってやまないところでございまして」
ばばろあ 「いや、そういってもピストンせんかったらそれはそれで悔しいんじゃ?」
おかでん 「それない!それは絶対にない!ネタ的においしいとかそういう腐れ芸人な事は毛頭考えていない!もう、ただひたすらこの苦しさから脱したい、どうにかしたいと」
おかでん 「では、1,3,5で何事も無かったかのように知立に突撃。2,4,6で・・・まぁ、そういうことだうふふ」
ひび 「諦めちゃ駄目だー」
おかでん 「もちろん。サイコロに悪い癖を付けさせちゃ、いけないのでここでしっかりとしつけますよ。さあ、行け!」
♪何がでるかな、何がでるかな・・・
そりゃっ
3!
おかでん 「うほっ、3だ!」
しぶちょお 「よしっ」
おかでん 「初めてじゃないか?ピストンの誘惑を断ち切ったのって。これは良い傾向だ!よし、次は1号線分岐、いっきにここで東に向かいたいところだ。今晩は・・・そうだなぁ、蒲郡あたりで競艇のナイターレースでも見ながら、ビールかな?」
ばばろあ 「まだ早いで、そう簡単にいかんもんじゃって」
途中、サークルKがあったのでいったん休憩とする。
なんだか、今日はあちこちのサークルKにお金を投下しているような気がする。ひたすら車で移動するサイコロの旅は、コンビニが唯一の憩いの場だ。
憩いの場であり、かつ重要なトイレタイムでもある。
まだコンビニがここまで店舗数を拡大していなかった頃、この企画を実現するのは相当難しかったのではないだろうか。ありがたいことです。
景色は、今日一日見慣れてきたものと全然変わってきた。広大な平野に、田んぼが広がる。そして、真っ直ぐな道。街道筋には、ぽつぽつとお店やガソリンスタンドがあるだけだ。いよいよ、サイコロの旅は新しい土地に突入したことを伺わせた。先ほどコンビニで一息いれたこともあって、全員元気を取り戻しつつあった。
「よし、よし、よし。次は1号線だ。やっぱり、国道の旅をするからには、1号線という栄光の路線は走っておかないとなあ。さあて、サイコロをふるぞぉ」 沈みゆく太陽とは逆に、テンションは上がる。ようやく気分が持ち直してきた。
おかでん 「さあ、国道1号分岐が近づいてきました。ここで何とか、今までの流れを持続させたいところだなあ」
おかでん 「今までは、どうもサイコロで1が出やすい感じだったので・・・じゃ、こうしよう、1、4で東の国道1号、岡崎方面。2、5で直進。3、6で右折国道1号」
しぶちょお 「名古屋に戻るのだけはイヤだ・・・」
ばばろあ 「でも、真っ直ぐ行って知多半島に迷いこむのもイヤで?ぐるりと半島一周回ることになる」
しぶちょお 「確か、半島の先のほうに温泉があったと思うんだけど、そこで今晩は一泊かなあ」
おかでん 「待て待て、おまえらちょっと待て。知多半島行きが決まったわけじゃないんだ、だからこそ、出やすい目である1を岡崎方面に割り振っているんだから。じゃ、引き続きサイコロ、いくぞ?」
ひび 「はいー」
何がでるかな、何がでるかな・・・♪
それっ4!
一同 「うわっ」
しぶちょお 「行っちゃったよ!」
おかでん 「あいったぁ。国道1号、名古屋方面に逆戻りです・・・」
おかでん 「はい、国道1号線・・・そう、国道といえば国道1号線ってモンで、古くは東海道として日本の大動脈だったワケでしてね」
しぶちょお 「今でも大動脈だぞ」
おかでん 「ええと。まあ、そうなんですが、いやぁ、やっぱり国道1号はいいねぇ」
(車中、賛同者なし)
おかでん 「賛同者なし、っと。ええと、やあ参ったな、それもこれも、何の因果かおなじみの名古屋方面に逆戻りしていることに起因しているのかなと。でも大丈夫、名古屋には戻りませんよ。これ以上『週末ドライブ』を満喫するわけにはいかないんでね」
おかでん 「次の国道23号分岐は、ちょっとややこしいですよ。われわれのいる国道1号線と平行して走っているのが23号線で、それを橋渡ししている道があるわけです。それが、次の分岐点となります。じゃ、ここもスペシャルチャレンジ選択肢ということにしましょうか。1,4を国道1号真っ直ぐ。2,5を国道23号に分岐して西。3,6を23号に分岐して東、ということで。サイコロは、僕がさっき失敗したので、次はばばろあが」
ばばろあ 「ちょっと待って・・・?」
おかでん 「え?」
ばばろあ 「この道、国道23号は東に行けんで」
カーナビの表示を拡大して、道路のつながりを確認してみる。なるほど、確かに国道1号からは23号線の東方面にはいけないようだ。
おかでん 「だー、紛らわしい!ということは、次の分岐は1号で名古屋方面に向かうか、23号で名古屋方面に向かうかのどっちか、という事かいな」
ばばろあ 「だからー、国道って大きな都市に吸い寄せられるって言ってるだろ?これなんかまさしくそうで、蟻地獄みたいにどんどん取り込まれていくんよ。戻るルートが無いんだから」
ひび 「1号線そのまま行くと、熱田神宮まで戻っちゃうよ」
おかでん 「うわ、ホントだ。23号に分岐すれば、まだいろいろな可能性があるけど・・・1号はイヤだな、まんまと名古屋市街地に戻ってしまうじゃないか」
しぶちょお 「それ以前に、いっぺんウチに寄っていい?すごく家が近いんですけど。荷物取りに帰りたい」
おかでん 「うわ、なんともイヤなシチュエーションになりつつある。一日、放浪した挙げ句しぶちょおの家に立ち寄り。何をやっとるんじゃ。それはいかんので断固として23号に分岐しなくちゃ」
おかでん 「うーん、奇数だと国道23号、偶数だと国道1号直進ね」
ひび 「はーい」
おかでん 「絶対に1号はイヤだぞ。って、待った待った待った、ばばろあ!早まるな。じゃあ!」
♪何がでるかな、何が出るかな・・・歌い終わる前に、ばばろあがさっさとサイコロを投げた。
おかでん 「5!奇数!23号だ。うぃーっす、23号に向かいますー。良かったんか、良くなかったんか、よくわからんな全く」
青看板は作成しないので、ロードマップと照らしあわせながら進路を確認するようにしてください。
国道23号に入ったからと言って、状況が好転するわけではない。相変わらずの事実は、名古屋に引き戻されている事であり、もしそれに逆らって脇道の国道にそれたらそれたで、知多半島ぐるり一周の旅が待っていたり、知立界隈の複雑怪奇な国道をぐるぐると風任せで旅しなければならない。もう、どのルートを進めば正解なのか、誰もわからなくなってきた。
とにかく、愛知県を出たい。いや、名古屋市の呪縛から解放されたい。
そんな気持ちを、一同強く抱くようになっていた。
国道23号、有松IC。ここで真っ直ぐ23号を進めば、名古屋市街地突入決定となる。ICを降りて、国道366号に入れば、南下開始。混沌としてくる。知立に戻る。
サイコロはひびの手に渡った。
偶数は直進、奇数は366号に進む。
投げた目は、3で止まった。
「3!奇数!366号に進みます!」
・・・一同、「うーん」と思わず声を出す。いい目なのだか、悪い目なのだか判断がつかない。
しばらく進むと、155号分岐が見えてきた。
155号?
155号といえば、先ほど先ほど豊田市から知立に向かった時に通った道だ。即ち、ここでの二択で直進を選ぶと、またもや知立で1号線と合流することになる。これで、サーキット完成。
「うーん」
やっぱり、いいのか悪いのかわからない。しかし、右折してしまうと知多半島観光旅行の可能性が高く、やっぱりそっちには向かわない方がいいのだろう。
おかでん 「ところで・・・もう19時なのだが、宿はどうするんだ」
素朴な疑問だったが、一同大笑いをしてしまった。一体どうするんだ、今晩は。もういい加減泊まるところを探さないと、まずい。しかし、あまりに中途半端な場所に今現在居るため、宿泊場所のふんぎりがつかなかった。
ばばろあ 「おなかの塩梅はどう?」
おかでん 「んー、大分こなれてきたって感じだな。でも、まだ胃袋がブロンコビリーしちゃってるから、あんまり夕飯は食べなくてもいいやって感じ。360日熟成の肉が、今まさにおなかのなかで361日目の熟成をされている状態」
泊まる場所もさることながら、夕食についてもどうするのか、全く見当がつかない。なぜなら、今日はどういうオチをつけて終了させればいいのか、落としどころが見えないからだ。どこか、観光地であるとか商業都市にたどり着けばいいのだが・・・。
おかでんがサイコロを振る。・・・155号、右折。見事、知多半島方面の目を出してしまった。これにて、東進という可能性が、消えた。
しぶちょお 「この時間から知多半島一周はきっついぞ・・・」
ため息が漏れる。
おかでん 「はい、大府近辺まで来ているんですが、いよいよ知多半島との分岐がやってきました。155号線を真っ直ぐ進めば、知多半島の根っこを横断して東海市。左折して366号線に進めば、オメデトウ知多半島をお楽しみくださいルートって事で。・・・どっちがいいのかな?やっぱ、東海市?」
一同 「おーう」
おかでん 「何でしょうね、この車中のまったりムードは。時刻は既に18時56分なんですが、なんともはや生気が感じられない感じになってきています。午前中は、右折だ、左折だと激論してましたが、なんだかもう運命に身を任す悟りの境地って感じっすよね」
ばばろあ 「もう、どうにでもしてくれ、って感じ」
ここでは、奇数を直進・東海市方面、奇数を南下・知多半島方面に設定した。サイコロを振るのはばばろあ。
ばばろあ 「よし、偶数を出すぞ」
おかでん 「おい!今なんて言った?」
ばばろあがサイコロをふったら、1が出た。奇数、真っ直ぐ東海市へ。
おかでん 「奇数!名古屋市方面!・・・いやぁ、相変わらず引き寄せられるねぇ名古屋市には」
155号線で、道が分岐しまた合流しているルートがあった(上のカーナビの写真参照)。どうやら、真っ直ぐに延びている方が新道で、わん曲している方が旧道らしい。サーキットの恐怖、再び。
おかでん 「えー、今ですねぇ、366号とわかれて155号に入ったところなんですが。この先155号、小さな分岐があってですね、そこがサーキットになっているんじゃないかという説が出ています。注意して青看板を見ながら、ゆっくりと走行しているところなんですが・・・・・・・どうやら、青看板、無いねぇ。ああ、あれ!あれ旧道だろ。旧道。行けるか?あっちに」
しぶちょお 「行けない。こっちの道に合流ができるだけ。こっちからあっちは、無理」
おかでん 「オッケーオッケーオッケー。真っ直ぐ行くぞぉ。こんなところでグルグル回ってられんのだよ」
ひび 「いやでも、この先で今度はこの旧道に入ることができるかもしれないし」
おかでん 「うわ、嫌なことをいうな。そうするとUターンとなるわけか。サーキットにはならないけど」
ばばろあ 「もう無理!今日はギブアップしようや」
おかでん 「宿、探す?いい加減」
しぶちょお 「とりあえず愛知健康の森に行ってみるか・・・」
愛知健康の森。日帰り温泉施設と宿泊施設がセットになっているという。国道155号線からやや離れているが、「1日1回、国道から5km以内で離脱することが可能」というルールを適用し、とりあえず現地に向かってみることにした。
宿泊場所を探す際も、国道から5kmまでの離脱を認めているのだが、万が一この健康の森で宿泊ができなかった場合は悲劇だ。以降、国道沿いの宿でない限り宿泊ができなくなってしまう。だから、とりあえず「汎用性のある『1日1回5km離脱可能』ルール」を適用しようというわけだ。
本来、このルールは「国道からちょっと離れた場所に観光名所がある」というシチュエーションを想定していた。要するに、「遠くにまで車で行ける」上に、「物見遊山気分」で楽しめると、企画開始前は思いこんでいたワケだ。現実はどうか?・・・見ての通りだ。悲惨この上ない。
フロントにて空き部屋を確認してみる。ひびは、体力と精神力の限界が来てしまい、今晩はわれわれと行動を共にせず、企画そのものにリタイアをしてしまう事態になってしまっていた。だから、3人が泊まれれば良かった。
確保できる部屋は、シングル3部屋。しかし、みんなで和気藹々と夜を過ごす広い部屋ならともかく、まるでビジネスマンの出張みたいに3人別々の部屋というのはなんとも味気がない。特に、家がここから近いしぶちょおからしてみると、そのような宿にわざわざカネを払って宿泊するのは無駄以外の何物でもなかった。
ここでの宿泊は諦めて、先に進むことにする。われわれに休息の時は、訪れるのだろうか。嗚呼。
おかでん 「ま、そんな事で、最悪ここに泊まるということも考慮に入れつつ・・・事実上、放棄したに等しいんですけども」
しぶちょお 「ここに宿泊しようと思ったら、このもう一度155号線を走らないと駄目だよ。5kmルールがあるんだから」
おかでん 「あっ、そうだった。ってことは、もうあの宿は泊まらない、泊まれないって事だな。・・・それでいいね?まあ、われわれは基本的に名古屋で宿をとろう、という事になりつつあるわけだけど、もちろんサイコロの目は名古屋にわれわれを運んでくれるかどうか保証なんてどこにもない。知多半島の先で、にっちもさっちもいかなくなったら・・・車中泊かなあ。地獄だな、それ。まあ、そういう場合は、名古屋に一度戻って、寝る場所は名古屋って事も考慮する、と。・・・ああイヤだな、『考慮する』なんて社会人が使う問題先送りのキタナイ言葉をつかってしまっている自分自身が」
155号線に復帰。この先、先ほどの一方通行サーキットが控えている。うかつにぐるりと回ってしまうと、またもや知立方面に引きずり戻されてしまう。
おかでん 「そろそろサイコロを振らなければならないんですが・・・一方通行サーキット・・・あ?あれ?青看板、あるか?あれは、違うよな。国道表示無いぞ」
ひび 「ないですね」
おかでん 「ほら、あの右側の道、あれ155号のサーキットだろ。国道表示、あるかい?」
ひび 「ないです」
おかでん 「書いてない。よし。カーナビでは国道表示になっているし、僕らの地図にも国道があると記載されているんですが、どうやら国道の地位を剥奪されてしまった模様。よかったぁ、こんなところでサーキットをしている場合じゃないんだよ、まったく!よし、それでは国道155号線を西にひた走ります」
またもや、新道と旧道の分岐が出てきた。愛知県、国道の付け替え作業をやりすぎだ。
真っ直ぐ進む道が新道で、いったん左折して、くねくねと進んでいく道が旧道だ。面倒臭いったらありゃしない。手元に持っている地図が古いし、カーナビの地図も最新ではないのでこんがらがる。実際に現地まで赴いてみないと、その道は進めるのか・まだ工事中なのかが判別ができない。
おかでん 「とっぷり日が暮れてきました・・・19時19分、すっかり後部座席にいると地図が見づらくなってきた。ええと、次の道はどっちでもいいんだな。それほどマイナスは無いけど、真っ直ぐ新道を行った方が名古屋に少しだけ近いな」
ばばろあが引き続きサイコロを振る。助手席から後部座席にサイコロを投げ入れた。
おかでん 「うわ!サイコロの目、読みとりにくぅ。もう真っ暗で何がなんだかわからんようになってきたぞ!」
旧道の目が出た。「うむ!」一同、唸る。
通過する際に気が付いたのだが、この155号の旧道は既に県道に格下げになっていた。新道ができてしばらくして、扱いが変わったのだろう。ぐちゃぐちゃして、非常にわかりにくい。
おかでん 「・・・でも、国道か県道か、で気にするのって僕らだけなんだよな。普通の人って、そんなもんどうでも良くって、目的地に向かうための手段に過ぎないんだから」
結局、先ほどのサイコロは無駄になってしまった。
しぶちょお 「次の分岐、サイコロ振るの?」
おかでん 「え?ということは、先ほどのサイコロの目を次に繰り越ししろ、と?うふふふ」
悪巧みが始まったが、さすがにそれはインチキくさいのでやめにした。おとなしくサイコロを振ることにした。
東海市近辺では、国道247号線が2本、並行して走っている。新道と旧道なのだろうか(またか!)。右折すれば、名古屋市方面。真っ直ぐ進むと、もう一本海側の国道247号線にぶつかり、左折すると知多半島満喫ルートとなる。もういい加減寝床と今晩の食事を気にしまくっているわれわれとしては、今日の大団円を名古屋で迎えたいと思っていた。だから、右折がベストで、直進がまぁまぁ、左折は却下という位置づけだった。
このころから、「サイコロの目は連帯責任」ということでサイコロを振るのは一人1投ずつ、という事にした。次は、ひびの番。赤と白のサイコロを慎重に吟味し、赤のサイコロを選んで投げた。
1。名古屋市方面。
おかでん 「よしっ。名古屋方面。よしっ」
名古屋方面に向かうということは、スタート地点に戻りつつあることに他ならないワケだが、ついつい喜んでしまった。企画の主旨と違っとるやんか。
おかでん 「さあ、今回はどっちでも良かった目なんだけど、次は重要だぞ。二分の一の確率で知多半島にどっぷり突入だ。久々に『うわこっちはヤバイ』という目が出てきたかな。がぜん緊迫してまいりました。もし、次の目で知多半島方面に向かってしまったら、『もう無理!今日はタンマ、今日はここまで!』って・・・。今日はここまでルールなんて存在しないんだけどな」
しぶちょお 「いや、さすがに今日はここまで、ってのはまずいだろう。明らかにルール改正だからなあ」
おかでん 「もうそろそろ、名古屋場出発から11時間が経過しようとしております・・・一体どこに向かうんだぁ?」
ばばろあ 「ブロンコビリーが呼んでるよ?」
車が通過しようとしていた道ばたに、ブロンコビリーが建っていた。
おかでん 「うほっ、どこにいってもブロンコビリー。夕食もブロンコでステーキってのはちょっと、もういい加減胸焼け起こしそうだぞ」
おかでん 「わわわ。今、たった今なんですが、急きょ国道が右と左に分岐していたのを発見しました。慌ててサイコロを振って右に曲がったんですが、状況が全くつかめていません。時刻は19時27分。ええと、どこですか?ここは。あー、今踏切を越えていきます。えーと、よく分かっていませんが、とりあえず国道を一個クリアしたってことでいいのかな?まあ、例のごとく、この赤いサイコロは1がでやすいので、奇数を右折・・大きな国道の方に割り振っておいたんですが、まんまと作戦大成功ってことで」
地図上ではもちろん、カーナビ上でもそのような分岐国道は発見できなかっただけに、車内は慌てた。後になって、別のカーナビで確認したら写真のように、確かに国道が延びていた。300m程度しかない、短い盲腸国道だ。危なかった、こんなところにはまってしまったら、またもや逆戻りをさせられるところだった・・・。
油断も隙もない。
伊勢湾岸道路の橋脚にそって、国道が走っているという報告がなされた。おかでんの手元の地図には、そのような表記がない。
また、やられた。
もう、どれを信じていいのかわからない。このまま名古屋に戻れるものだとばかり思っていたのだが、予想外なところで三叉路の登場となったわけだ。
おかでん 「ワタシの地図では確認できなかったんですが、どうやら伊勢湾岸道路に沿って302号!・・・またお前か!・・・が走っているらしいです。予想外な三叉路にもうおっちゃんメロメロやで。ということで、ここで右に曲がってしまうと、またもや知立とかそっち方面の可能性がでてくるわけで。真っ直ぐいけば予定どおり、左に曲がっちゃうと・・・長島スパーランドの方にいっちゃうのか?」
ばばろあ 「あ、それはない。お隣の247号と合流するので、まだリカバリは可能」
いずれにせよ、降ってわいた災難、という感じだ。もう闘う気力が無くなってきていたので、「じゃあ順当に、1,4は右折、2,5は真っ直ぐ、3,6は左折ね」と割り振って、ばばろあにサイコロを振って貰う。
4。おかでん 「4。・・・よん?・・・・・・ああぁ。右だぁ。右、右だぁ。知立だぁ。」
しぶちょお 「23号復帰、だな」
おかでん 「予想外でした。時刻は19時33分。まだまだ熱い夜は終わらない、ということで。・・・あっれぇ?・・・・・・・あっっれえぇぇぇぇ?」
ばばろあ 「でも曲がれるのか?この道」
しぶちょお 「大丈夫、ここ平面交差だから」
おかでん 「ああそうだよな、この国道って高速道路の側道って位置づけだもんな。・・・余計な事を!・・・おい、でもこのカーナビの地図、右側の国道23号方面って地図に書かれていないぞ?」
しぶちょお 「いや、表示から消えているだけだと思う」
おかでん 「国道そのものも消えていてくれぇ」
油断も隙もない。
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おかでん 「ええと、今急きょ問題が発生。今、伊勢湾岸道路の高架橋すぐそばまで来ているんですが、国道分岐を示す看板が見あたりません。ええと・・・あれ?ああ、国道、高架橋で上を通過してるんか。よし、ということで分岐ルートは無し、そのまま直進ということで。やったー」
油断も隙もない。・・・いい加減しつこいか。
それにしても、本当に道がわかりにくい。国道そのものが存在したりしなかったりしている上に、今度は立体交差ときたもんだ。二次元の地図では追っかけきれない。
おかでん 「はい、どんどん分岐が迫ってきてます。只今の時刻は19時・・・」
しぶちょお 「あっ、しまった間違えた!」
国道が左折する箇所で、そのまま車は直進していってしまった。ルートミスだ。
おかでん 「あ、ルート逸れました。初めて国道からこの車が逸れました。そう、そうして・・・律儀に、かつ慌てて元の国道に復帰しようとしております。まるでトロリーバスみたいに、決められたルートを走っているわれわれであります。ああ、涙、涙」
次は、名古屋方面に直進するルートと、知多半島に逆戻りするルートの二者択一となった。もちろん、今日のエンディングを誰もが希望している今現在において、知多半島の旅をしたがっている奴なんて誰もいない。断固として、名古屋方面に行きたい。1,3,5の目を名古屋方面、2,4,6を知多半島方面に割り振った。
おかでん 「じゃあ、次はひびさんで行きますかね」
ひび 「ほーい」
おかでん 「白サイコロで行く?それも赤に変える?」
ひび 「白で行きます」
おかでん 「白は1が出にくいサイコロだぞ?」
ばばろあ 「おう」
おかでん 「まあいいや、一度選んだやつをひっこめたら、後で後悔するに決まってる。白で行っちゃえ」
♪何がでるかな、何がでるかな・・・
そうれっ1!おかでん 「うわっ、OK!名古屋方面!今のはサイコロの癖とかそんなんじゃなくて、ストンとサイコロが着地してどんぴしゃ、だったな。言うことなし、文句つけようのない1だ!・・・しっかし、名古屋方面に向かうときは気持ちよくすいすいと進むなあ。名古屋の引力、強すぎ」
おかでん 「はい、えー。どったんばったん、やっているわけなんですが、時間の都合もありまして・・・ひびさん、ついに体力の限界が来てしまいました」
ひび 「うー」
おかでん 「そんなこともありまして。只今の時刻、19時46分。現在われわれアワレみカーは名古屋市街を北上中、名古屋駅に向かっているところです・・・・って、おい誰もこの現実に対して素直に受け入れるのか?一体この12時間近く何やってたんだとかそういう苦悩ってヤツ?そんなのを」
ばばろあ 「スタートする時点で後悔しとったけえ、何を今更」
おかでん 「あ、やっぱり?・・・とまあ、こんな感じで車中はもう精神状態がメロメロ、だれだれになっている始末ですー。生ゴミ運搬車と大差なくなりつつあります」
しぶちょお 「おい!人の車を勝手にゴミ運搬車と一緒にするな!」
おかでん 「まあ、そんなこんなで、只今23号線をくぐりました。結局、23号線は完全に立体交差していて、合流・分岐する余地がありませんでした。こんな変な制約がいっぱいあるのが、名古屋の国道の特徴ですね。ま、そんな国道とも今日はそろそろ休戦協定かな、と思ってまして。次、熱田神宮の交差点のところで国道1号と交差します。この3分岐のサイコロが今日のラスト。真っ直ぐの目が出た場合は、そのまま真っ直ぐ行って東急インのところでストップ、本日分は終了、と。右もしくは左がでたら、その交差点のところで本日は打ち止めとします。翌日は熱田神宮交差点からスタート、というわけです」
おかでん 「最後の一投は、小細工無し!で。1,4で右折、知立方面。2,5で真っ直ぐ、名古屋市街北上で完璧な『振り出しに戻る』状態、3,6で新境地開拓ということで岐阜方面へ。最後なんで、僕が振ります。異存はないね?」
一同 「・・・。」
おかでん 「何となく、1を出してまた知立方面に引きずり戻されそうな気がするんだけど・・・大丈夫かな。最後くらいは、明日に望みをつなげたい。三河方面はもうイヤだ!白のサイコロでいくぞ」
♪なにがでるかな、何がでるかな、これが最後のサイコロ♪そりゃっ
おかでん 「いちっ!うわぁっちゃー」
ひび 「あいやー・・・て、あれ?」
おかでん 「あ、待った待った、微妙にサイコロが傾いてる」
運転席と助手席の間に挟まったサイコロは、確かに1を上に向けているっぽいのだが、曖昧であると言い張れば言い張れない事がないレベルで、傾いていた。
おかでん 「やりなおし!只今の一投、取り消し!」
都合の悪い目が出たので、無かったことにする。明日朝も、また三河をウロウロするのは勘弁願いたい。今晩の寝付きが悪い。
おかでん 「じゃ、もう一度!」
♪何がでるかな、何がでるかな・・・
次出た目も、やっぱり曖昧な目だった。
ばばろあ 「もう少し落ち着け!強く投げすぎるからいかんのよ、もっとゆっくり」
窘められながら、三回目のサイコロを。
ひび 「1!」
おかでん 「うわぁあ。やっぱり1かぁ。1しか、無かったのかぁ・・・あーあ、ゲームオーバー。ごめんなさいねぇ、1出しちゃいました。やっぱり僕、東に住んでいる人だから」
ばばろあ 「はい、じゃあ明日は熱田神宮前から1号線東行きでいくぞぉ」
おかでん 「かー。やっとれん。今日はもう、飲まずにはおれんぞ。誰が何といおうと、飲む。女房を質に入れてでも、飲む」
ばばろあ 「その前に宿探しが先じゃ」
おかでん 「ああ、がっくり。この時間にして、泊まるところがまだ確保できていないんだった」
それからあと、1時間以上かけて金山界隈の宿探しが始まった。カプセルホテルやインターネットカフェでの泊は絶対に避けたい、何とか安宿を探す!とばばろあが夜の町を奔走。ホテルかと思って突撃してみたら、どうもラブホテルらしくて宿の前で立ちつくしてしまった、とかいろいろありながら、ようやく素泊まりの宿を発見。荷物を降ろすことができた。
名古屋駅前に集合してから、既に12時間が経過していた。
食事と休憩以外は、ひたすら車に乗り続けていた今日一日。たどり着いたのは、誰もが想像していなかった、名古屋市街だった。情けないったらありゃしない。まさか出発地点から数キロしか離れていないところに不時着するとは。誰だ、下呂温泉に入りたいだの赤福食いたいだの、言ってたヤツは。戦前、長野だけは行きたく無いなあ、なんてのほほんと語っていたが、他県に行けるだけまだマシってもんだ。全然その気配すら無かったのが、今日一日の行程。
無駄足。
まさに、無駄足であった。肉体的にも、精神的にも、相当参ってしまった。
宿帳を書くとき、しぶちょおの住所を記載したら宿のオバチャンがものすごく不思議そうにしていた。なぜ近所の人がわざわざ宿泊するのか?と。しぶちょお、「いやー」なんて言ってごまかす。
食事に出かける。
宿から繁華街に向かう途中、ビルの裏手に張ってあった張り紙。
「今度は防犯カメラでバッチリ」
一体何があったんだろう。前回、防犯カメラが無かったためにどんな大失態をやらかしたのだろう。非常に気になる。
夕ごはんは、中華料理にした。こちとら、飲まずにはおれなかったので「パンダビール」を注文する。しかし、こういう見慣れないビールはえてして高いワケで、結局コスト効率が悪く、ぐいぐい飲むのは断念した。それ以前に、いざお品書きを前にしても、あまりに精神的にぐったりしてしまっていたため、食欲が沸かなかったというのが事実。
宿の部屋に戻り、家から持参した清酒を引っ張り出して軽くお酒を飲み直すことにした。
おかでん 「じゃーん。実は東京からお酒持ってきてました」
ばばろあ 「よう持ってくるなあ。寝袋持ってきたり、食器持ってきたり荷物すごいのに」
おかでん 「お酒だけは別腹ならぬ、別ポケットなんよ。・・・で、今日持ち込んだお酒の名前は・・・箱根街道」
ばばろあ 「ははは。何やそれは。よりによって箱根街道かい」
おかでん 「おっかしいなあ。本来だったら、このお酒を、箱根あたりで今晩飲んでいるはずだったのに。ぜんっぜんアテがはずれてしまったじゃないか」
ばばろあ 「アテがはずれるも何も、かすりもしてないじゃないか、箱根なんて」
おかでん 「なんだか、悪い冗談だな、このシチュエーションで『箱根街道』だなんて。狙ってるとしか思えない」
やけ酒として、箱根街道を飲む。
見渡してみると、この部屋にはコップの類が存在していなかった。この手の旅館だと、もう完全に寝るだけの部屋として位置づけられているんだろう。
ばばろあが食べていた、デザートの空き容器がぐいのみになる。
こっちはこっちで、ラッパ飲みだ。ええい畜生。
でも、このお酒は妙に甘くておかでんの好みではなかった。やっぱ箱根とは相性が悪かったんだろうか。
なお、このお酒、この文章を書いている2004年2月現在でもまだ残っていて、現役の料理酒として使われております。しぶとく長生き。
ノックアウトでリタイアしたひびを自宅に護送したしぶちょおが戻ってきた。あらためて、明日の行程を地図で確認する。
明日はまず、国道1号線を東に突っ走る事になる。そのままするすると進んでいって、豊田市からの155号線と合流する知立交差点まで、サイコロの出番はない。
だから、知立でサイコロを失敗せず、さらに直進することができれば・・・岡崎までは何とかなりそうだ。さあ、そこから先、いかに東に距離を伸ばしていけるか、だ。
地図を眺めていると、明日は何とかなるんじゃないか、という気になってきた。よし、明日こそ、明日こそは・・・ええと、とりあえず愛知県脱出っていうささやかな希望くらいはうち立ててもいいんじゃないかな。
明日は、朝8時に熱田神宮を出発することで3人合意をとり、就寝となった。おやすみなさい。
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