
朝。
ふん、ふん!とばばろあが腕立て伏せをしていた。
車に一日中乗っていると、体がなまる。それ以前に、エコノミー症候群になってしまいそうだ。今日どこに行くかは誰も分かっちゃいないが、どこに行くことになったとしても、体をまともに動かせるのは今しかない。一度車に乗ってしまうと、休憩と食事以外は身動きができないんだから。
ということで、おかでんも横で腕立て伏せを始めた。
ああ、いかんいかん。朝から何やら悲壮感が漂ってきた。

お世話になった宿を、7時30分に出発。
宿の人が、「今日はこれからどちらに行かれるんですか?」と聞いてきたが、「いやー、それがわからんのですよ」と笑って答えるしかなかった。
絶対にあやしまれたに違いない。

またもや車上の人となる三人。やはりひびは体調復活できず、1名リタイアのまま企画続行となる。過酷だ。意味もなく、無駄に過酷だ。
車中、朝早いということもあってあまり口数がない。
おかでん 「なんだかね、昨晩車から降りても、まだ体がゴトゴト揺すられている気がしてならなかったよ」
ばばろあ 「あ、それあったでわしも。で、昨晩変な夢を見たんじゃけど」
イマイチ各自、疲れを回復しきっていないようだ。今日もサイコロの仕打ちにどこまで耐えることができるんだろうか、僕ら。
さて、二日目の第一投目は、熱田神宮前からとなる。国道1号を、東に向かって走行するところからスタートだ。

国道1号線の脇にアワレみカーを停めて、記念撮影をする。
おかでん 「サイコロの旅、二日目。頑張るぞ!」
一同 「おーぅ」
・・・朝からイマイチテンションがあがらないんである。
おかでん 「でもよ、ここでテンションが上がらないってことは、要するに僕らマゾじゃなかった、ってことだよね。ココロから僕らマゾじゃねぇぞ、って胸を張って言えるよな」
ばばろあ 「こんな企画やろう言っとる段階でマゾじゃ」

せっかくの朝だ、車中のテンションを上げなくてはいけない。少なくとも、朝のうちは「今日はどこに行こうか」と希望に満ちあふれていないと。どうせ、午後になるに従って、テンションがつるべ落としで下がるのは目に見えているわけだし。
おかでん 「いえーい」
一同 「・・・」
おかでん 「はい、というわけで。ICレコーダーのRECボタンを押すとテンションがあがるDJおかでんです、おはようございます。今日もいい天気、名古屋地方では今日の最高気温はあまりの企画の寒さに氷点下まで下がる事が予想されております。そんな感じで本日もドライバーのみなさんと夜9時・・・いや、10時かな・・・までおつきあい頂きたいと思います」
ばばろあ 「そんなに遅くまでだったら、帰るでわし。明日病院に入院せんといかんのに」
この次の日、ばばろあは蓄膿症の手術のため入院が予定されていた。だから、ばばろあは「時と場合によっては」と、既に逃走体制に入りつつあった。
おかでん 「時刻は7時50分。われわれアワレみカーは、熱田神宮の前から国道1号線を一路、東に向かって快調に走っております。ああまて、快調なのはイマノウチとか余計な事を言うなよばばろあ。さて、本日の目標はとりあえず・・・」
ばばろあ 「朝飯!」
おかでん 「だね。朝飯早く食べなくちゃいけない。でも、せっかくだから朝飯は名古屋ならではの何かを食べたいねぇ、という気が」
ばばろあ 「そんなことしおったら、いつまで経っても朝飯食えんようになるで、やめとけ」
おかでん 「まあ、そうだろうな。ということで、朝飯はもう、えり好みなんかしないで1号線沿いのファミレスかどっかで済ませましょう。ただし!ただし、昼飯はせっかくなんで、旅情を感じさせてもらおうじゃないですか。今日の昼飯は浜松でうなぎ。これで決まり。みんないいね?浜松でうなぎって事で」
二人とも返事がない。「どうせいけるわけないだろう」と考えていたのだろうか。
おかでん 「・・・はい、賛成多数ということで可決されました。浜松目指して頑張りましょう。いや、でもよ、今日は302号さんには引き寄せられない場所にいるんで、大丈夫だと思うんだよな。あの凶悪な吸引力はもう無いはず。幸いにしてわれわれが走っている1号線、このまま知立まで分岐無しで行けるんだよな。そこで豊田市に引き込まれないように注意しつつ、知多半島渥美半島も微妙によけつつ・・・って進んでいけば、ほらお昼にはうなぎがテーブルの上に。完璧な計画じゃんか」
ばばろあ 「まだ昨日の教訓を学習しとらんのか。そうは簡単には・・・」
おかでん 「まあ、理想は高く!だ。最初から、『今日も名古屋界隈をウロチョロしてます』って目標立てる奴ぁいないでしょ?じゃ、今日は浜松ってことで」

結局、朝食はガストとなった。
「うむ、こういう朝ご飯を食べていると、ぜひお昼にはその旅先独特の美味美食を満喫したいものですなぁ、って気持ちにさせられる。臥薪嘗胆」
「まるでガストの飯がまずいみたいじゃないか。怒られるぞ、店員に」
食事の後、給油をして09:00桶狭間を出発。さらに東を目指す。
「いやぁ、通り慣れない道を走るのって、気持ちがいいね」
「見慣れた道を走るのはもうイヤだよな」
という、非常に涙ぐましい、ささやかなヨロコビの会話をしているうちに道路は国道23号分岐にやってきた。昨日は、知立から国道1号線を西に進んでいて、ここで23号に曲がっていった場所だ。
しかし、国道1号線を西から東に進んでいく上り線は、23号線に合流するルートは存在していなかった。なぜこんな不公平が成り立っているのか、不思議だが今回に関してはありがたいの一言だ。
ここでまた、名古屋方面に強制送還されたら目も当てられない。
余裕でスルー。さあ、問題は次の宮腰交差点だ。
知立の宮腰交差点。ここで国道155号線と交差する。左に行けば、もちろん豊田市に向かってしまい、絶対に避けなければいけない選択肢となる。今日の一投目、通算45投目は結構重要な分岐点となった。
時刻は9時10分。朝早く出発したつもりが、朝食やら何やらで結構時間が過ぎている。うなぎを食べるためには、余計なところでウロウロしているわけにはいかない。
1,4で155号左折。2,5で真っ直ぐ1号線。3,6で155号右折豊田方面。
2,5を出してくれないと、非常に苦しい。 ましてや、3,6で豊田なんかに向かった日にゃ・・・確実に、もう一度名古屋市に引きずり戻され、302号さんに朝のあいさつを強要されるに決まっている。
ばばろあが、ここで口を挟んできた。「あれ?1を真ん中にした方がいいんじゃないんか?」
どうもこのサイコロキャラメル、過去の出目を振り返ると1が出やすい傾向があるようだ。だから、行きたいと思っている方向に1の目を割り振った方がいいんじゃないのか、という提案だった。なるほど、それは考慮していなかった。
おかでん、しばらく考えた後に「・・・やめよう。今更変更したら、後で『しまった、変更するんじゃなかった』って後悔するかもしれないから」と、予定通りの設定で行くことを宣告。
おかでん 「朝一発目!いよぉぅ!」
さすがに朝一発目ということもあって、三人元気に歌をうたう。
♪何がでるかな、何が出るかな・・・ そりゃっばばろあ「だからそっちは駄目だって!」
サイコロは、座席の隙間に挟まって斜めに固定されてしまった。1が出かかっている。危ない、もしこのまま1が確定だったら、またもや知多半島に引き寄せられるところだった。
おかでん「やり直し!もう一度!」
そりゃっ しぶちょお「だからー!おい!」
また同じところに挟まってしまった。どうも狭い車中、投げ方がムツカシい。今度も、1が出かかっているような気がする。
ばばろあが、二回連続の失投に「こりゃ目が悪いで・・・」と喘ぐ。
三投目。
♪それはサイコロまかせよ、よいしょぉーっ。 1。
おかでん「嗚呼、やっぱり1だ。どうしてもサイコロは右に曲がって欲しかったらしい」
しぶちょお「やっぱり1号線を直進というのは無理だったか・・・」
ということで、国道155号線知立バイパスを右に曲がる事になった。早くもウナギちゃん大ピンチ。
おかでん「只今、口頭及び無言のプレッシャーにて『なぜ国道1号線をはずれる目を出してしまったのか』と折檻されているありさまなのですが、155号線に入ってすぐの所・・・西町交差点で、どうも国道?・・・ええと、国道419号線なる新設国道が分岐しているみたいですね。ナビには載っているのですが、僕の手元の地図には載っていません。町中をアミダクジみたいにくねくね曲がりながら進んでいるようです、国も余計な事をせんでもいいのに何をやってるんで」

ばばろあ「はよせぇ、交差点くるぞ」
おかでん「うわ、そうだった。ええと。奇数で左419号、偶数で真っ直ぐ!これでいくぞ、何が出るかな、何が出るかな」
そりゃっ
おかでん「1!奇数!国道419号線突入!」
しぶちょお「やっぱり1しかでとらんじゃないか、そのサイコロは」
おかでん「おかしなあ、昨日は夕方くらいからずいぶんとサイコロの出目がバラけるようになってきたんだけどなあ。一晩経ってまた癖がぶり返したんだろうか?」
おかでん「えー。予想外の事態でした。国道23号線との交差点がもうすぐ迫ってきているんですが、ここは立体交差になってました。新幹線の高架橋よろしく、国道23号が天高く走っておりました。ということでわれわれはそのままスルーします。うわぁ、アテがはずれた。このまま行けば、次の選択肢は『知多半島か、それとも蒲郡方面か』という事になりそうな予感」

おかでん「いや、まさかこんな田園風景の中を走ることになろうとは、ついさっきまで考えておりませんでした。只今、419号線を爆走中。どうやら、こっちは旧道のようですね。左に新道の419号線が併走してます。もうすぐ、新道の方に合流するので、そこでサイコロ振ることになりますね。右に行ったら、その次の選択肢が蒲郡直行か知多半島一周という究極の選択。左に行ったら、また知立に引き戻されるという事になる。うーん、どっちが良いかと言われれば、やっぱり蒲郡にさっさと向かいたいので右折かなあ?」
しぶちょお「いや待て、なんかイヤな予感がするんだよな。知多半島さんがわれわれの存在に気が付いたら、あいさつくらいはしていけ、とお呼びをかけそうな予感」
おかでん 「うーん・・・」
ばばろあ「とりあえず車降りてサイコロ振れ、次は。地味に重要で?知多半島一周したらもう、今日の午前中それで終わりになるんで?気合いいれんと」
おかでん「へーい」
今日初めての屋外サイコロ。よりによって、すぐそばにグラウンドがあってスポーツイベントが開催されていた。「いや、一晩タイムラグができるとがぜん恥ずかしいもんだな」とボヤきながら、交差点でサイコロを振る。

今回は、偶数が右・奇数が左の設定にしてあった。
♪何がでるかな、何がでるかな・・・ 2。
おかでん「うーん、左折。知立方面に逆戻り決定。知多半島ぐるり一周の旅が無くなった分、リスクは減ったものの・・・なんだかイマイチ面白みに欠ける結果になったかも」
おかでん「はい、えーと。只今国道419号線で東海道本線をくぐったところです。北上しています、意に反して北上中なのであります。次は、国道23号線との分岐、ということになります。右に曲がれば蒲郡方面、われわれのド本命ですね。左に曲がれば名古屋方面に引き寄せられ、真っ直ぐ行くと・・・ええと、ここはまだ作りかけ、なのかな。ということで、おはようございます、本日一発目のピストンルートでございます、と」
しぶちょお「うひょう」
おかでん「ということでぜひここは右折で・・・おっと、もう時間がない。左が1,4。真っ直ぐが2,5。右が3,6で。よし、ばばろあ行け!」
ばばろあ「ととと、ワシかい」
♪何がでるかな、何が・・・
しぶちょお「ちょっと待った。青看板、23号左としか書かれてない」
おかでん「あ!」
一同、固まる。
この道は、右折ができなかった。
ばばろあ「はよせんと、もう分岐が来るで、急げ!」
しぶちょお 「真っ直ぐと左折しかないぞ、これだと」
おかでん「うわあ、よく状況が把握できてないけど、左135。真っ直ぐ246で」
言ってるそばから、ばばろあがサイコロを投げた。
1。おかでん「わ。左折でした」
しぶちょお「なにーーっ!!」
おかでん「うーん、思いっきり投げると1が出にくく、そっと車中で投げると1が出やすくなるのかなあ・・・」
サイコロに翻弄されっぱなしで、頭を抱えてしまった。
車は、ぐいんと左折レーンを曲がっていく。
おかでん「名古屋方面に逆戻り、ってことで。うはぁ」
ばばろあ「そうこう言っとるうちにすぐ次の分岐がくるで?」
おかでん「うわ、そうだった。もう、感傷に浸る暇さえ与えてくれませんサイコロの旅。次は・・・国道155号線との分岐ですね。上重原交差点。これは立体交差ではないはずなので、三分岐でしょう。1,4で左折知多半島方面、2,5で真っ直ぐ、3,6で右折豊田方面ってことにします。よし!」
♪何がでるかな、何がでるかな・・・
2。おかでん「2!真っ直ぐ!」
しぶちょお「ぬおおおおお」
ばばろあ「ぎゃはははは、よりによって真っ直ぐ!」
おかでん「あぁぁぁぁぁぁぁぁ。名古屋に引き戻されていくぅぅぅぅぅ。・・・きっっっついな、これはぁぁぁ!」

おかでん「さあ・・・車は先ほどまでと180度逆の、名古屋方面に向かっているありさまだよこん畜生。ま、発想の転換で、名古屋を素通りして三重県の方に向かうのもいいねぇ、なんて前向きな発言も出てきています。前向き、良し。ただし、あの名古屋さんがそう簡単に素通りさせてくれるとはとても思えないので、もう一波乱、ふた波乱ありそうな予感もします」
しぶちょお「うーん」
おかでん「さて、そろそろ366号線の分岐がやってきました。昨日はここを左折して、知多半島に入るか入らないか、というところでぐちゃぐちゃしたんでしたっけね。もう、正直真っ直ぐ行けばいいのか曲がればいいのかわかりません!余計な先の心配はしないで、ここは純粋な気持ちでサイコロを振りたいと思います。1,3,5で左。2,4,6で真っ直ぐ。ばばろあ、よろしくお願いします」
♪何がでるかな、何がでるかな・・・
うぉう!
2!
おかでん「真っ直ぐ!名古屋方面!よし!・・・よし、なのか?本当に?」
ばばろあ「まあ、変な国道をうろうろするよりはマシじゃろ」
しぶちょお「このまま真っ直ぐ行ったら、次は・・・302号!ぎゃはははは」
おかでん「なぬ!また302号線か!」
うっかりしていた。ここにも302号さんの一派がなわばりを持っていたのだった。ぶつ切れ未貫通国道・302号は、有料道路である伊勢湾道路の側道として、この地域だけ部分開通していた。23号線から分岐するかたちで、そのまま知多半島西岸の247号線まで走っている。これも、手元の地図には載っていない比較的新しい道路だ。
302号さんは、今日もわれわれを許してはくれないのだろうか。

おかでん「さあ、次は302号分岐が左に見えてきましたので、さいころを振りたいと思います。この場合は・・・まっすぐ行った方がいいのかな?ここで302号に入っちゃうと、また昨晩同様、知多半島一周ツアーにおびえながら走行しなくちゃいけなくなるからな。ええと、2,4,6偶数でまっすぐ23号、名古屋方面。1,3,5で今日もよろしくお願いします302号さん、てことで」
♪何がでるかな、何がでるかな・・・
おりゃっ 3!奇数!しぶちょお「奇数?奇数って、左曲がるんじゃなかったっけ」
おかでん「うわ、302号だ」
しぶちょお「また今日もか!」
ばばろあ「やっぱねぇ、302号さんから逃げられっこないんよわしら。横をこっそり通り抜けようなんて姑息なこと考えちゃいかんかったんよ」
おかでん「おい!そこのお前、俺にあいさつしないでどこへ行こうってんだ?ってえり首捕まえられた状態だよな、これって」
そうこうしているうちに、分岐が近づいてきたので右レーンを走っていたアワレみカーは左レーンに移る。
しぶちょお「おおぅ」
そして、ウィンカーを出して左折。302号線へ。
しぶちょお「おおおおおおぅぅぅぅぅぅ」
悶絶するしぶちょお。
おかでん「初めて通る302号線だけど、あの恐怖のピストンロードの末端だと思うとねぇ、しみじみ・・・するかぁ!もういやだ、何でまた今日も302号なんよ」
ばばろあ「302号完全制覇、狙えるんじゃないか?環状線、全部通りましたって」
おかでん「あり得るから怖いよな、きっと、302号さんはこれでわれわれの動きをキャッチしちゃったぞ。これから先、行く先々で302号さんにお呼びがかかることは間違いない」
しぶちょお「あーあー、今日もか・・・」
おかでん「さあ、302号さんの手の上でもてあそばれながら、車はなぜか朝とは正反対、西の方向に向かっております。そろそろ、302号さんの東の最果てに到着の見込みです。時刻は9時57分、今日の何投目になるのか、早速わからなくなってしまっていますが・・・国道247号線の分岐があります。ここで左に行くと知多半島ぐるり一周しちゃいます。右行ってしばらく進むと、昨日通った247号旧道と合流する交差点があるので、そこでサイコロ失敗しちゃうと、やっぱり知多半島へGO、となります。すなわち、相当な確率で本日午前は知多半島満喫の可能性が」
しぶちょお「うわっちゃー、ホントに午前つぶれるな、それだと」
おかでん「という状況なので、サイコロはばばろあ、任せた」
ばばろあ「え?わし?」
おかでん「1,3,5で知多半島方面。2,4,6で名古屋方面でよろしく」
♪何がでるかな、何がでるかな・・・
えいっ2!おかでん「2でしたー。とりあえず、とりあえずは名古屋に向かいます。よかったぁ、知多半島だけはゴメンだ」
おかでん「247号の旧道分岐にやってきました。ここで右に曲がってしまうと、またもや知多半島に引っ張られます。なんとか阻止しないと・・・次は僕の番、ちょっと責任感じてます。1,3,5で左折、名古屋方面。2,4,6でやっぱり知多半島で」
♪何がでるかな、何がでるかな・・・・
とりゃっ4!
おかでん「うわっ!きゅーどー!旧道!きゅーーーーーどーーーーー!」
ばばろあ「なに?右?えええ?」
おかでん「ゴメンねえ、なんだか今日、ロクな目を出していないような気がする。ごめんなさい、完全に僕が悪かったです今の目は。昨日通った道を逆走して、何とか大府に逃げなくちゃ・・・」
ばばろあ「ほんまにロクな目だしとらんな、サイコロの神から見放されてるぞ」
おかでん「いや、ホントそれ今日は実感してる。全然だめだめ。今日の悪い目、ほぼ全部僕が引き当てているんじゃないか?」
サイコロの目のとおり、右折して旧道に入った。しかし、ちょっと進んでみてあることに気が付いた。
しぶちょお「・・・右折できんぞ、これ」
国道247号は、反対側レーンのみと接続されていていたため、こちらのレーンからは知多方面に向かうことができなかったのだった。
ばばろあ「ここをUターンしてもう一度さっきの交差点でサイコロか?」
おかでん「いや、国道が行き止まりになったから折り返す、って訳じゃないからなぁ・・・これはもう、サイコロを振る対象じゃなかったということだろう」
しぶちょお「そう、サイコロを振る対象じゃないもん」
ばばろあ「ははは」
おかでん「えー。国道247号の旧道に突入してしまい、がぜん私の社会的地位が危なくなってきていたところだったんですが、事態は急変です。247号、旧道から新道には入れるんですが、新道から旧道には入れませんでした。ということで、先ほどのサイコロは無効、ということで無事名古屋方面に・・・無事、って表現があってるのかどうか怪しいけど・・・名古屋方面に向かうことになりました。いや、助かりましたなぁ」
ばばろあ「なんか強引な気もするけど、まあいいか」
おかでん「いや、連続性ないもの、ここで旧道を走ろうと思ったら。どこの馬の骨かわからない普通の道に一度入って、そこから247号に合流しないといけないもの」
しぶちょお「ほら、今Uターンのために国道以外の道にはいっちゃった。そもそも、こんな道は走っちゃいかんのよ」
何となく自己正当化で必死なんである。何しろ、247号分岐でもう一度サイコロを振る羽目になると、また知多半島に戻されかねない。それだけは避けないと。
おかでん「ふぅ、危ない危ない。間一髪ってところでした。さて、次の分岐は・・・うわ、熱田神宮か!」
しぶちょお「きょ、今日のこれまでは一体なんだったんだ・・・今日のサイコロの旅はまだ始まっていなかったかのごとく」
おかでん「これまでの2時間、無駄になっちゃいました。ガストで朝飯食べたついでに、ちょっと下見がてらドライブしてきましたー、って感じかな」
ばばろあ「くそう、こんなでかいサーキットがあるとは思わんかったで」
しぶちょお「うぉ。そうか、サーキットか。やっぱり今までのルートはサーキットの途中だったのか。これは予想外・・・って、おいちょっと待て」
おかでん「サーキットということは、二周目も・・・?」
ばばろあ「次の熱田神宮分岐、たぶん右がでるで。そしてまた大府へレッツゴー」
おかでん「うはぁ。それはヨクナイですよ。また何事もなかったかのように仕切り直しか。『今日のお昼ご飯は浜松でウナギだねっ』とか言いながら」
しぶちょお「くくくくく」
おかでん「もういやだ、東は。気分は赤福。伊勢うどん、松阪牛!今更浜松でウナギってあんまりだぜ」
しぶちょお「松阪牛!?」
ばばろあ「熱田神宮で右に曲がるだけまだマシで?われわれのことだ、一歩間違えるとそのまま北上するで?」
おかでん「え?北上?いいじゃん、下呂温泉」
しぶちょお「こだわるね、下呂温泉」
ばばろあ「いや、ずっと北に行けるわけないじゃろうが。右に曲がって、そのまま153号に行くんよ」
しぶちょお「きゃあ」
おかでん「おい、そうなると」
ばばろあ「もちろんサーキットぐるぐる回るで、昨日と同じように。そして、極めつけは302号さんのピストンをずどーん、ずどーんと」
おかでん「うわあああ、それだけはいやだ」
しぶちょお「激鬱なシナリオだな、それ」
おかでん「えー、それでは。ただいまの時刻10時17分。出発から2時間20分もほっつき歩いた結果、元の熱田神宮に戻ってきました。まるでフルマラソンを走ってきたかのような時間ですな。しかもスタートとゴールが一緒ときたもんだ。さて、しきり直しとなったわけなんですが、またもう一度東に向かってウナギを目指すのはもういやだ、絶対途中で脇道に逸れてまたぐちゃぐちゃするに決まってる、というのが全員の統一した見解。とりあえず北の目を出すか、西の目を出すかってことで。北に向かってしまうと、今度は昨日同様153号経由で302号ピストンに引きずり込まれる可能性もあるんですが、下呂温泉方面であることや、山の方向でもあるってことでややわくわく感があるルートなんじゃないかと。西行くよりも、何となく北かなあという気がしています」
ばばろあ「302号に向かわなかったら、の話だけどな」
おかでん「ということで、いつも通り1,4で左折、1号線を西。2,5でまっすぐ302号方面・・・」
しぶちょお「おい!間違えてるぞ!」
おかでん「ああ、いけない。2,5でまっすぐ名古屋城方面、3,6で右折サーキット二周目。さあ、次はばばろあ、頼むぞ」
♪何がでるかな、何がでるかな・・・1!
おかでん「1!」
ばばろあ「えっと、左だ!」
おかでん「わ。わわ。左折!1号線を西に向かいます。今回、初めて名古屋の西方面に向かいます。おおお?新境地に突入だぞ。こらぁ本当に松阪牛かも。財布の中身確認しておかなくちゃ」

おかでん「はい、ええと、まだ1号線を分岐していないんですが、1号線を曲がってすぐに国道154号線の分岐がありますんで、あらかじめ今のうちにサイコロを振っておきたいと思います。154号線に入ると・・・ええと、ああ、23号線と合流という目もありつつ、直進を続けると名古屋港で盲腸になってるんですね(ポップアップ地図には未記載)。そこでまた折り返しというのもいやなので、できれば1号線をまっすぐ行きたいところです。1号線まっすぐなら、次は名古屋環状、302号線との対決が待ってます。左折154号線は奇数、まっすぐ1号線は偶数。では、今度は僕が振ります。それ」
♪何がでるかな、何がでるかな・・・・ うおりゃっ
おかでん「偶数!偶数!・・・うわぁ、奇数だ!」
しぶちょお「おかでんが振ると・・・おかでんが振るとこれだぁ・・・くわぁぁぁ」
おかでん「あああ。5が出てしまいました。ということで、左折。154号線に向かいます。まあ、潮風にあたろうじゃないかということで。あっははははは。・・・はぁ。しっかし、今日は出目が散らばるねぇ。サイコロがこなれてきた、って感じ」
おかでん「はい、どうもすいません。まずは謝罪から録音開始なのです。今日のおかでん、完璧にサイコロ運から見放されているありさまでして、ごらんの通り154号線をフェリーふ頭に向かって走っております。いや、今日はさっぱりわからん展開だ。さて、次は国道23号線との分岐となります。23号を無視して真っ直ぐ行くと、フェリーふ頭。23号を右に曲がれば、いよいよ三重県が見えてきたぞ、桑名方面。左に曲がれば・・・ああ、また東に逆戻り。サイコロの目は、左から1,4。2,5。3,6と割り振ります。ですから、3,6で右に曲がりましょう。ばばろあ、よろしくなのです。最悪、2,5で直進して、盲腸ピストンで折り返してきて再起を図ろう」
♪何がでるかな、何がでるかな・・・そりゃっ 3!
ばばろあ「ほらー。わしが振っとりゃ、ずっといい目がでるんよ!」
おかでん「うわぁ、すごいぞこれは。いよいよ三重県の目が見えてきた!サイコロの旅、新境地に本格的に突入だぞ!」
しぶちょお「盛り上がってるところに水を差すようだけど」
おかでん「ん?」
しぶちょお「ここねぇ、ほんっとは厳密に言うと、この道、一度直進するか23号に入るかを選択した後、23号を右に行くか左に行くかの選択があるんよ。すなわち、二分岐-二分岐で、三叉路ではない。厳密に言うと」
おかでん「細かいなー」
しぶちょお「厳密に言うと、ね。でもそんなことどうだっていいんだよ」

そのまま車はぐいんと右折。桑名方面に鼻先を向けた。
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