撤収開始。
まずは荷物の運搬のために、片道10分以上かけてロッヂまでリアカーを取りに行く。で、リアカーをテントサイトまで15分かけて運び、荷物を積んで、またロッヂ近くの駐車場まで。やれ、一苦労だ。
食材と薪が消費されて無くなったので、少しは楽になったものの、これは面倒。
でも、この面倒さがあるからこそ、静かなキャンプが楽しめたわけだ。不自由様々だ。あらためて振り返ってみると、今回のキャンプは雨に祟られたとはいえ、ものすごく非日常的で良かったなあ、と思う。天上世界の愉楽だ、と本当に思った。
「その割には、スパイシーナイツだとか、そういう俗っぽいことをやっていたわけだけどな」
まあ、その通りだ。でも、じゃあこのキャンプで霞食って生きてろ、というわけにも行くまい。とても良いキャンプでございました。合掌。
退却がてら、近くにある尻焼温泉に行ってみることにした。ここは、川そのものが温泉になっているという、珍しい場所だ。
「河原をスコップで掘ると温泉が沸く」というのは、川湯温泉や切明温泉などで見受けられるが、「川そのものが温泉」というのはそれほど多くない。(鬼首温泉にそういうのがあったと思うが)
雨が多い時だと、増水してしまうためぬるくて入れたモンじゃないらしいが、駄目もとで行ってみることにした。
「尻焼温泉 河原野天風呂 この先200メートル」という看板が見えた。この先らしい。
おお!
本当だ、堰堤の向こうに、裸な人たちがいっぱいいるぞ。しかも、川から湯気が出ている。
ここが尻焼温泉。
二段になっている堰堤の間が温泉場になっているようだ。この上流にも、下流にも人はいなかった。
混浴露天風呂になっており、女性は全員水着を着用していた。さすがにここで全裸にタオルっていうのは厳しい。
男性は、丸裸の人の割合の方が多い。
河原で服を脱ぐ。こういう広々としたところで裸になるのは、さすがの男であってもちょっと躊躇してしまう。なんだかヌーディストビーチ、って感じ。股間がスースーした感じ。
お風呂は、ぬるめ。やはりここ数日の雨で増水したからだろう。ただ、所々底からお湯が湧出しているので、そこを絶妙に発見することが重要。床下湧出、ならぬ川底湧出というのがなんともダイナミックだ。できたての新鮮な温泉だ!と思うが、それ以上に川水がどんどん流れ込んでくるので、温泉そのものの泉質はまああまり期待できない。雰囲気を楽しむ場だ。
あっ、河原では、キャンプ用のテーブルや椅子を広げて、ビール飲んでる人がいるぞ。そうか、ここでバーベキューやって、ビール飲んで、風呂入って、って繰り返すとさぞや極楽だろう。ただ、ゴミはちゃんと持って帰ってくださいお願いですから。
お湯が川底からわき出ているところにジャストにケツの穴をあてがうと、思わず「おおおう」という声をあげてしまう。尻焼、とはこういうことなんですな。痔に効くということは聞いていたが、なるほど、温泉の泉質でどうこうしようというのではなく、もうダイレクトに患部を刺激しちゃえというわけか。
川の温泉のわきには、ほったて小屋があった。こちらは、内湯・・・とは言わないか、ええと、こちらも露天といえば露天。
こちらは、川の温泉がぬるくて使えない時などに最適。ちょうど適温のお湯。ただし、水着着用は駄目なので、女性はハードル高し。
水着着用不可の露天風呂がこちら。
中に入ると、真っ裸のおばちゃんがわはははーと笑いながら入っていたので、やや動揺。
お風呂から上がったら、そのまま着替える。脱衣場なんて小じゃれたものは無いので、スースーする空気の中、おパンツをはかなくてはならない。いくら羞恥心を10光年ほど先に置いてきた人間とはいえ、これは少し恥ずかしい。
湯上がり後、立ち寄った蕎麦屋。
ぎゃー。
天上の愉楽を全て破壊し、現実世界に引き戻す痛烈な一撃をお見舞いされてしまった。
「やっぱり下界は駄目だ!僕らに住む場所は残されていないんだ!」
なんだか激しくトホホな気持ちになりながら、帰宅の徒についたわれわれだった。
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