香港遠征

旺角の裏道

食後、腹ごなしもかねて旺角の街をぶらりと散歩。

裏道を発見すると、敢えてその道に突入してみたりした。表通りの喧噪とはうってかわって、人気の少ない通り。

ちょっとした探検で、わくわくする。

裏通り

表通りのお店にとってはバックヤード的な位置づけになる裏通りだが、こんな通りにもお店があったりするから不思議だ。

花園街

表通りに戻り、花園街を歩く。この辺りは衣類、雑貨、アクセサリー類の屋台がずらっと並んでいる。そして、例のごとくたくさんの香港人。香港の人口は700万人しかいないと聞いているが、われわれが滞在しているどこにでも「掃いて捨てるほど」居たのには、驚きを越えて呆れた。ただでさえ狭い香港で、さらに狭い地域に集中して住んでいるからこんな「街全体が通勤ラッシュ」状態になってしまっているのだろう。

花園街で売られているシャツを眺めていたが、どれもデザインはイマイチ。安くてもあまり欲しいとは思わなかった。

ヤシの実が売られている

しばらく花園街を歩いていると、何やら丸いモノを手にしている人が向こうから何人もやってくる。丸いモノにはストローが刺さっているところから、どうやら飲み物らしいが・・・ああ、なるほど、ヤシの実だ。ヤシの実に穴を開けて、そこにストローを突っ込んだものをこの先で売っているらしい。

「ほう。香港でヤシの実というのはちょっと違う気がするが、ちょっと喉を潤すにはいいかもしれん。買うか?」

なんだか、「これぞ異国情緒!」という気になって、うれしくなってしまった。香港でヤシっていったら異国情緒がチャンポンになってしまっているが、まあこの際どうでもいいや。

しばらく先に進むと、人だかりができている果物屋があった。その軒先で、探していたヤシの実が山積みになっていた。

「おお、これか。で、あのオバチャンがキリでひと突きして、ストローを・・・なるほど」

「値段が二つあるぞ。3元と5元。どう違うんだ?・・・ああ、5元の方は『凍』って書いてある。こっちの方が冷えてるのか」

「もちろん冷えてる方を注文だよな。でも、ヤシの実って皮が厚いから、ちゃんと中まで冷えてるのかどうか激しく疑問なのだが」

「おい、それ以前の問題だぞ。凍の方が足りなくなったもんだから、さっきから3元の方からヤシを補充してるぞ。おい!それ冷えてないだろ」

「ひょっとして僕らのヤシの実も?」

「そういうことだろ?あっ、とっつぁん、しまいには段ボールから直接『凍』のところに補充はじめたぞ。やめなさい、それは3元のヤシの実でしょうが、どう見ても」

「あのー。ヤシの実、受け取っちゃったんですけど」

「ああー。おかでん、それ、冷えてないだろ」

「ああ、全然。氷水に浸ってもないから、表面カサカサだぜ」

「それで?お代は?」

「きっちり、5元」

「オバチャン、さも当然のように5元受け取ってたぞ。結局なんだったんだ、5元と3元の違いは。別に2元(30円)程度惜しくはないが、もうちょっと密やかにやって欲しいよなぁ」

「冷やそうって気がさらさらないよな、あれ」

椰子の実の扱いに唖然

そういう会話をしているそばから、オッチャンがドドドっと「凍」にヤシの実を補充。

→写真撮影をしよう、ということでカメラ目線で身構えていたにもかかわらず、その光景をあっけにとられて見つめているおかでん。

「ひでぇ話だよな。「5元」というところに3元の食材を入れるだけで、2元儲かるという魔法の商売だぜ」

ジーニアスが毒づく。

「それにしてもジーニアスよ、お前相手が日本語分からないもんだから、言いたい放題だったな。ババアとかコラとか」

「いや、もうね、こんな不条理がまかり通っていいのかと。目の前で堂々とサギをやられたって感じで」

「馬鹿負けしちゃうよなあ。笑ったよ、一体じゃあ、この2元の差はなんだったんだと」

記念撮影

気を取り直して、記念撮影をする。

何の記念なんだかわからんが、まあ、とりあえず。

ジーニアスも撮影

ジーニアスも撮影。

納得していない顔をしている。

でも、中のヤシの実ジュースはおそれていたほどぬるくなく、おいしく飲むことができた。肉厚なので、外気温にそれほど影響を受けないのだろう。

・・・だったら、やっぱりあの果物屋の「凍」の2元増しって何の意味があたのか、謎だ。

人だらけで歩くのも困難

さらに道を先に進む。

屋台がせり出してきて、道幅が狭くなってきたせいもあり道は人だらけ。

日本でこれだけの人が歩いているのは、正月の初詣か、東京ドームで野球が終わった時の水道橋駅に向かう橋の上、くらいしかないんじゃないかと思われる。

それくらい、人が多い。

屋台でモノを買おうと立ち止まっている人も、人波に巻き込まれてずるずるとポジションがずれてくる。前に進むにしろ、その場にとどまるにしろ、強い意志と体力を持っていないと流れに負ける。

つくづく、香港というのは体力がいる街だ。蒸し暑いし、人は多いし。だから、香港人は活力があるんだろう。

通葉街

屋台が並ぶ通りを抜け出し、別の通りに入る。

通りを一本隔てただけで、雰囲気が全然違うのが面白い。

ここは通葉街というらしい。金魚屋が多いということだが・・・き、金魚?

金魚屋、という存在自体がイマイチ理解できないし、ましてや「金魚屋街」を形成しているって信じられない。

金魚屋

あ!金魚屋だ。

水族館のように金魚が陳列されている。入り口のところには、まるでフィギアでも飾られているかのごとく、小さな小さな水槽に金魚が入れられて陳列されていた。

ほとんど身動きできんやん、この金魚。

金魚からすれば、ストレスで悶絶してしまいそうだ。しかし、ここで精いっぱい色気を見せて、お客さんにお買いあげ頂ければもう少し広い水槽に移してもらえるだろう。尾ひれをヒラヒラさせて、一所懸命お客を勧誘していた。そう、まさに文字通り「一所懸命」だ。

ビニール袋に金魚

こちらのお店では、ビニール袋に金魚が一匹ずつ詰められた状態で、たくさんぶら下げられていた。

しばらくの間は窒息しないようにするためか、ビニール袋はぱんぱんにふくれあがっていた。しかし、1日おきくらいには袋を詰め直さないといけないわけで、結構面倒な商売をやっている事になる。

それにしても、お客さんが多い。結構真剣な顔をして金魚とにらめっこしていた事からも、冷やかしのお客さんではなさそうだ。

香港では金魚は縁起物だという。だからといって、こんなにたくさんみんな買い求めていくって事は・・・まあ、要するにバンバン死んじゃってるんでしょうな、金魚さん。で、性懲りもなくまた買い求める、のローテーションなんじゃないかと。金魚大量消費時代ってワケだ。

元気寿司

旺角の街角で見かけた、行列のできるお店。

・・・元気寿司だった。日本のチェーン店じゃん。

ここ、お店は地階にあって、入り口から階段を下りていくスタイル。ま、香港でよくある店舗形態なのだが、その階段も行列がびっしり、そして外にまで行列というのだから相当な繁盛店だ。

香港では寿司が人気なのか。意外だった。あんまり中国人ってナマモノは食べないという印象があったのだが。

日本に帰ってからwebで調べてみたら、香港では学校給食に寿司が出てくる事もあるという。驚いた。寿司、浸透してるんだな。ただし、その情報を取得したサイトによると、給食の寿司で集団食中毒をおこしてしまったらしいが。ダメじゃん。

押井守の世界

くすんだ建物の向こうに見える、新しい、斬新なデザインのビル。

このギャップが面白い。

押井守が「攻殻機動隊」などの作品で描きたかった街の風景、というのが何となく分かる。

新旧の建物ギャップがすごい

同じく。

廃墟じゃないか、というくらいオンボロなビルの隙間から、にょきりと高層ビルが。

その高層ビル作る前に、なぜ手前のオンボロビルを潰そうと思わなかったのだろうか。

・・・人がまだ住めるから。

きっと、そういう理由だろう。物持ちが非常にいい国だ。この国には、「都市再開発」という概念は無いのだろうか。

どうやらこのビルはマンションらしい。この地でのマンションの特徴は、上から見たとき十字型をしているものが多いと言うことだ。日本のように、マッチ箱型をしていない。ひょろ長いビルを建てるので、安定感を高めるために十字型にしたのだろうか。

あと、これも大きな特徴なのだが、香港のマンションにはベランダがない。この後もあちこちでマンションを見かけたが、ただの一つもベランダが存在していなかった。建坪率とかそういう概念が全く無い香港だが、ベランダに関しては何らかの行政的な規制があるのかもしれない。自殺防止のため・・・とか。

彼ら、洗濯物はどこに干しているのだろう。部屋干しか。服がかび臭くなりそうだが大丈夫か?

看板の洪水

先ほどのビルを近くで見上げる。

看板の洪水の先に、輝くビル。このギャップがたまらない。

玩具交易所

旺角を歩いていたら、「玩具交易所」という場所を発見した。香港のオタク事情を見学させてもらおうかね、ということで中に入ってみることにする。

ジーニアスが「記念撮影しちゃるから看板の前に立て」というので、お言葉に甘えて一枚。

「おい、お前ホントにうれしそうな顔してるな。メチャ楽しみか」

「いや、そういうワケじゃないんだけど・・・」

玩具の森

お店の数は10軒も無く、それぞれが小さな規模で大したことはない。そのうちの一軒は、「玩具の森」と日本語?で書かれた看板をぶら下げていた。やはり、この手のキャラクターものは香港でも日本産が人気、ということか。

フィギア

取り扱い商品の多くは、フィギアだった。

エヴァ、ガンダム、マリオといった日本産キャラに加え、トイストーリーのフィギアが並んでいる。あと、出自がわからないペンギンも。

あまり濃くはない。というか、この国においてはまだ「萌え」という文化は理解されていないようだ。

うれしいような、残念なような。

信和中心

さて、旺角最大の目的だったのが、香港一のオタクビルと呼称されている「信和中心」に行くことだった。

ここは、オタク文化の集積地だという。その割には、銀行かのような重々しい入り口で、ギャップを感じる。

この辺りは、旺角の中でも特に人通りが多く、まっすぐ歩くことすらままならない状態だ。しかし、信和中心の中にはいるとさらにそれが酷くなった。人だらけ。

信和中心の中

入ってすぐのフロアは、靴や小物が陳列されたお店ばかりで、いまいち面白くない。はっきり言って、物足りない。どうなってるんだこれは、とエスカレーターをあがると、ようやくそれっぽくなってきた。

このフロアは、アイドルの生写真、ポスターを扱っているお店が多かった。香港アイドルかぁ・・・と思って眺めてみると、田中麗奈だったりして驚かされる。アイドルも、日本物が人気らしい。

旅行代理店もなぜか目に付く。何でも、離島のコテージに泊まるのが流行りなんだとか。

信和中心のお店

エスカレーターで上層階にあがっていくと、フロアの結構な敷地がアダルト系になってきた。やはり、若者文化とエロは切っても切れない縁、という事なのか。

狭いお店いっぱいにエロVCDを扱っていて、ひっきりなしに客引きをやっている。真剣に今晩のおかずを吟味しているお客さんの姿は、万国共通だ。

しかし・・・ほとんどが日本のアダルトビデオなのは参ってしまう。こんなもの正規輸入してるとは思えないので、恐らく全部違法コピーだろう。

最上階に行くと、若干マトモでアニメ映画やマンガを扱っているお店が増えた。アニメ映画も、ほとんどが日本のものだ。この建物だけで、一体どれだけの規模で権利侵害をやっていりうのだろう。日本の血と汗が、全て蒸発していっている。ああもったいない。

アニメビデオ屋の軒先で店の写真を撮ったら、店員にものすごい睨まれた。捕まりそうになったので、あわてて逃げ出した。

「やっばぁ、捕まるかと思った。メチャこっち睨んで迫ってきたぞ」

「売り物のほとんど全てが違法コピーだからな、写真なんて撮られたらそりゃ店員黙ってられんだろう」

「店番の店員が一人で良かったよ。店から離れられなかったから、僕ら逃げられたけど」

「おい、巻き添えになるのはごめんだぞ」

実際、この地には時々警察がガサ入れに入る事があるらしく、店員は警察を警戒しているらしい。そんな事も知らずに、呑気に写真を撮っていた自分。店員からすれば、警察のスパイに見えても仕方がない。

ちなみに、隣のマンガ屋では、ちゃんと権利を日本から買ったマンガが売られていた。ドラえもんが人気の模様。

バスに乗るが大渋滞

旺角散歩を終え、尖沙咀のホテルに戻ることにした。

地下鉄だとすぐなのだが、せっかくなのでバスに乗って帰る。

ネイザンロードは、バスだらけ。10台車が走っていたら、そのうち3台はバスじゃないか、というくらいバスが多い。で、そいつらが交通渋滞を引きおこす。バスによって渋滞が起きるというのも、何げに不思議な光景だ。

主要路線は全て二階建ての車体にて運行されている。なので、われわれも乗り込んだらそのまま二階へGO。

ちなみに、香港のバスはおつりがもらえない。だから、数十セント分くらいは「チップ」になってしまう。一体どういう乗客数管理をしているのだろう、ここは。恐らく、「何人お客さんが乗ったから収益はいくら」という算出の仕方はしていないんだろう。一路線で均一料金であるにもかかわらず、みんなバラバラな金を払っていくわけで、客単価なんてわかりっこない。

悪い考えをおこせば、売上をちょろまかすとか、会計報告に虚偽の記載をするとか、楽勝って事だ。ううむ、いいビジネスモデルだ。

また、よりによって料金が「3ドル50セント」とか中途半端ななんだな、これが。50セント無駄にしたぁ、と悔しくなってしまう。たかだか8円程度なんだけど、「おつりが出てこない」という事態に対して免疫がないから、非常に損をした気分になる。

ひどい渋滞

いやー。

渋滞でちっとも進まないわぁ。

われわれ、思いつきで行動する気楽なツーリスト。急ぎの用事はないので「おー、すげぇ渋滞だなあ」と他人事のようにしていられる。しかし、決められた時間の中で行動している人にとっては、絶対にバスに乗っちゃいけないって事だ。何しろ、歩くよりも遅い。

クーラー利いている車内にいられるから涼しくてええわぁ、ってくらいの覚悟でないと。

結局、旺角から尖沙咀まで、1時間近くかけて帰還。地下鉄だとこの間は6分で結んでいる距離なのだが。

マッサージ店の看板

さて、本日のお楽しみの一つは、マッサージを受けようという事だった。これも、初日にJCBプラザで予約を入れておいた。

尖沙咀のいたるところにマッサージの案内看板がでていたが、そのいずれにも下手な日本語が書いてある。香港そのものがマッサージの本場という話はあまり聞いたことがないので、恐らく「安くマッサージが受けられる」という経済的理由により、日本の旅行客が頻繁に使うようになった結果繁盛したのだろう。

ジーニアスは全身60分、おかでんは全身30分+足裏30分のコースをお願いする。

全身マッサージは、もう容赦なくぐいぐいと攻める。右肩胛骨のあたりを押されると痛いなあ、と思っていたら、マッサージ嬢もそれに気づいたらしく、執拗に攻めてくる。いやアンタ全身マッサージちゃうんか、と抗議したくなる直前まで、同一箇所をミシミシともむ。耐え難き苦痛だったが、「これも健康のため」とか何とかつぶやきながら、歯を食いしばって耐えた。

揉み方は繊細かつワイルド。ワイルドモードにスイッチが入ってしまうと、もう情け容赦ない。ごりごりと筋が音を立てるまで揉むし、尻ポケットに財布が入っているのもお構いなしに尻を揉む。30分の短期決戦なので、これくらい強烈にやった方がいい・・・のかも。

足裏マッサージは、揉む場所を変えるたびにこっちの顔色をうかがい、「どうだ?ここ、痛くないんか?あ、そう、痛くないの」という無言のプレッシャーをかけてくる。お愛想で「いやー、痛いっすねえ」とか言った方がいいのかな、とも思ったが、痛くもないので意地でも無表情を決め込む。

特に、肝臓に相当する足裏を攻めている最中は、マッサージ嬢、手元みるのもそこそこに「どうだ?ここ痛いんちゃうんか、おい、痛いって正直に言えこの野郎」という感じでこっちを見つめる。アルコール依存生活のおかでんとしては、恐らく悶絶する場所だろうと覚悟していたのだが、大して痛くないのだからどうしようもない。涼しい顔をしてテレビで流れる香港競馬のオッズを見てやった。すると、マッサージ嬢やや落胆した顔。やはり、お客が痛がる姿を見るのが快感なのだろうか。

終わった後、お茶を一杯頂いておいとま。エレベーターホールに向かう途中、ジーニアスがため息混じりに「いやぁ・・・痛かったわぁ。お前、痛くなかったか?」と話しかけてきた。正直に右肩胛骨あたりが痛かった、と言うと、その話を聞いていたマッサージ嬢が「デショ、右凝ッテタカラ強ク揉ンダ」と口を挟んできた。あ、やっぱり揉んでいるとその人のウィークポイントが分かるんだな。

ジーニアスは相当きついヤツを60分お見舞いされたらしく、

「いやね、俺もう痛いからやめて、って言ったんだよ。おばちゃんが『痛い?』って聞くから、『痛い』って言ってるのによ。ますます気合い入っちゃってさ、もう全身の体重のせてくるのよ、これが。もむとき、『ふん、ふんっ』って鼻息荒くしちゃってるし。涙出ちゃったよ、俺」

だそうで。でも、

「俺、マッサージの善し悪しってわからないけどさ、恐らく巧いんだろうな、あれ。経験つんでそうだし」

という結論に達していた。いや、何にせよ気持ちよかった。「体が軽くなった」という感じはしなかったが、体の可動範囲が広がったような気がする。肩がここまで回ります、みたいな。

ぐぎぎ。あ、痛ぇ。

二人とも、合計60分のコースで280HKD。4,200円だ。日本の場合、10分1,000円が相場だと思うので、それを考えると安く済んだ。やはり、香港に行ったらマッサージ、か。

スコール

外に出ると、スコールだった。ものすごい勢いで雨が降る。

立ち往生してしまい、すぐ近くのHMVで時間を潰すが、やみそうに無かったのでCD1枚買ったのちに全力でダッシュ。

びしょぬれになりながらホテルに帰り着いた。

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