[No.2 近藤富蔵墓碑 2005年05月01日 09:49]
島の中心部を東側から、じわじわと西側に攻めていく。
次は、「近藤富蔵墓碑」に行かなくてはならない。
「また碑か。困るんだよな、デカいんだか小さいんだかさっぱりわからないから、探すのが難しい」
これから観光を満喫しようとしているのに、「困る」という言い方はあんまりだと思うが、実際のところそうだ。そもそも、近藤富蔵って誰だ。・・・ああ、そういえばこの名前覚えがある。さっきの尾端観音を建立した人じゃないか。
ついさっきのことなのに既に忘れかかっていた。
地図を見ると、幹線道から一本入った脇道にあるようだ。こういうの、難しいんだよなあ・・・地図がいい加減だし・・・まあ、車だからなんとでもなるだろう。
と、思ったが、これがやっぱりわからない。これまでの経験があるので、上下左右くまなく見たのだが、どうしてもみつからないのであった。
「おい、僕ら絶対変質者に見られるぞ」
「男二人で車に乗って、裏道を行ったり来たり。しかも何かきょろきょろしている。痴漢っぽいな」
同じ道をいったりきたりするが、どうにも発見できない。こりゃどうやら地図を疑ってかからないといけないようだ。地図上では、お寺の正面 、道路を挟んだ向かい側にあるような印象だが・・・。うーん。
とりあえず万策尽き果てたので、お寺の境内に恐る恐る侵入してみる。お寺の回りにはお墓が立ち並んでいるので、ひょっとしたらこの中にあるのかもしれない。
・・・あ、何やら見慣れた東京都教育委員会の黒看板が見えた。あれか?あれが近藤富蔵墓碑、なのか?
あーれー?
近藤富蔵、じゃないぞ。近藤守真、って書いてあるぞ。
違うじゃん。間違えて親類縁者か誰かの墓を発見してしまったか。いや、でもこの看板があるってことはそれなりのお墓なはずだが・・・
小さい字で書かれた近藤守真の説明文を読んで、ようやく状況が読めた。近藤守真、別名近藤富蔵。同一人物じゃないか。
紛らわしい!おい、ちゃんと看板と地図の表記をそろえろよな!
「またやったか、八丈島観光協会!」
「地図の場所も違うし、何をやっとるんだ!」
驚くやら、呆れるやら。
21歳の時に七人を殺生するという派手な殺陣をやらかして八丈島流人となった近藤大先生。その後53年間もの間八丈島に過ごし、ご赦免されたという。しかし、浦島太郎状態で江戸に戻っても居心地が悪かったとみえ、その2年後にまた八丈島に舞い戻り、5年後に83歳で亡くなったという。当時としては相当な長生きをした人だ。よっぽど八丈島の気候が体にあったのだろうか。
島の文化に大変寄与した、ということでこうしてお墓が大切に保管されている。七人もの人命を奪った人でも、良い死に方をすることはあるということだ。
「今は意地汚く生きていますが、死ぬときは良い死に方をしますように」
と都合の良いお祈りを、お墓に捧げた。
きっと無理だと思うけど。
[No.1 一字一石供養塔 2005年05月01日 09:50]
観光地図上では近藤富蔵墓碑のすぐ近くに、「一字一石供養塔」なる観光スポットがある、という表記がなされていた。
「何がなんだかさっぱりわからん」
どうやら塔、を名乗る以上はとがって天高く突き出ていると思われるのだが、一字一石というのが想像すらつかない。
「伯耆大山にさ、一木一石運動ってのがあってね」
「何だそりゃ?」
「山が崩れちゃって、木や石が足りないんだよ。だから、大山に登る人は一人が一つずつ、木や石を持って登りましょう、という活動。で、その石を山頂に置いて帰ってくるわけだ」
「で、それとこれとの関係は?」
「さあ?」
場所探しが難航しそうだったが、近藤富蔵墓碑の探索中に同時に発見することができた。
お経の文言を一石に一字ずつ書く一字一石供養は、江戸時代全国的に行われたもので、八丈島では流人の宗柏(1798流罪、1884没)が天保6年(1835)8月建立したこの一基のみが遺されている。
宗柏が大乗妙典というお経を書いた、小さな美しい石は、垂戸から拾わせたものだという。
碑(墓)が現地に移される前は、この碑の下に黒い丸石が大量に埋まっていた。
んーと。僕らの頭が悪いからでしょうか?何を書いているのか、いまいちすっと頭に入ってこない文章なんですけど。そもそも、指示代名詞である「この一墓」ってどれだ?碑が現地に移される前は、って現地ってどこだ。垂戸というのは八丈島北東部にある海岸の名前なのだが、観光客に理解させる気がないとしか思えない文章。
何だかよく理解できなかったので、とりあえず看板が据えてある地面を確認してみる。
うーん、やっぱりよくわからない。
看板の奥にあったお墓、この基礎部分に石がたくさん埋め込んであった。・・・これがその「お経が書かれている石」なのか?
よく目を凝らして見てみたが、読みとれなかった。
いや、でもですぜ、これ普通の一般人さんのお墓じゃないですか。これが、一字一石供養塔??
わけがわからないまま、「まあとりあえずそれっぽいものを見た、ということで」とこの地を後にした。消化不良気味だ。ううむ。
[筆者後注]この文章を執筆しているときになって、ようやく状況を理解した。ああ、「一字一石」のための供養塔、なんじゃないんだ、と。「一字一石」が組み込まれた「供養塔(墓)」なんだなと。だから、墓そのものは一般人さんを祀ったもので全然問題ない。1年越しで、すっきりした気分だ。(この文章を書いているのは2006年9月)
[番外編 八丈ビジターセンターバードウォッチング 2005年05月01日 10:06]
ここで観光名所探索はいったんお休み。
昨日のうちに予約を入れておいた、ビジターセンター主催の無料バードウォッチング教室に参加するべく、植物園に車を移動させた。
二日連続植物園さんコンニチハ。
一字一石供養塔を見終わった時点で9時56分。あと30分なので移動したのだが、その移動開始から10分後にはほら、こうしてビジターセンター内の大型ビジョンによる海中映像なんぞをみている自分がいる。
近い。
八丈島、本当に感心するくらいそれぞれの距離が近い。かといって、小さい島という印象は特になく、圧迫感がないのにコンパクトにまとまっているバランス感が気持ちいい。すいすい、と目的地間を移動することができる。
映像では、海の中を優雅に泳ぐウミガメの姿があった。ええのぅ。
時間になったので、バードウォッチングに向かう。まずは、八丈島に生息する鳥の種類について簡単な講義。
アカコッコ、カラスバトなどの紹介を受ける。
植物園内を散策しながら、鳥を探す。
全員首からは貸与された双眼鏡をぶら下げての行軍。
ガイドさんが、「ほら、これ」と地面を指さす。そこには雑草しか生えていない。
「この植物、アシタバです。伊豆諸島名物の植物です。もう食べましたか?」
「えっ、こんなにあっけなく食べ物って生えていていいもんなんですか」
ビジターセンターから出てまだ数分。遊歩道の道沿いだ。あまりに雑草チックに生えているので驚いてしまった。まあ、実際のところこのあたりじゃアシタバは雑草みたいなモノなんだろうが。
「このあたりだと、勝手に持って行っちゃう人がいるみたいですねえ」
とガイドさんは呑気な事をいっている。「今日つみ取っても、また明日生えてくる」と言われるほど生命力の強い植物なので、少々盗まれても問題ないのだろうか?
「アシタバはこの季節が一番良いです。もっと後になると堅くなる。食べるなら今が旬です」
「なるほどしぶちょおよ、今日のお昼はアシタバうどんを食らう予定になっておるわけだが、これはまさにジャストタイミングというわけだな」
「そういうことになるな」
「では、大盛りを食ってもバチはあたらないな?」
「大丈夫だ、ぜひ大盛りを食ってくれ」
「一緒にビールを飲んでもいいな?」
「さあ、それは知らん」
がさがさ、という音が木の上からする。
「ほら、あそこ!」
ガイドさんが指さすのだが、なかなか発見できない。ましてや、双眼鏡でその姿を追いかけ始めたら、視界があまりに狭いので全然見つけられないのであった。
「あ、居た!」
と発見して喜ぶ間もなく、すぐに視界から消えてしまう。
赤外線ホーミング型ミサイルがあるご時世だし、生体反応を追撃しまくる双眼鏡って発売されないものか、と強く思った。
あ、でもそれだったら、もっとも身近にある赤外線発出物体・・・自分の体、にフォーカスがあたりそうだ。只今のご意見激しく却下。
なかなか鳥と遭遇できないので、気が散ってしまい何やら別の物体を凝視するおかでん。
先ほどから前方に、珍獣を発見した模様。
双眼鏡からの光景。
珍獣しぶちょお発見。
「何を見てるんだ、見るものが違うだろう」
「いやこれはこれでなかなか興味深い動物だなと」
[No.18 八丈島空港 2005年05月01日 12:09]
バードウォッチングというよりも森林浴といった風情だったが、それでもアカコッコを見ることができたりしたので満足。さて、お昼ご飯を食べる前にもう少し観光名所を巡ろう。
目指した先は、植物公園のお隣にある観光名所・・・というには非常に抵抗があるのだが、八丈島空港だった。
「空港が観光名所として地図上に記載されるあたり、何とも微妙」
「まあ、観光名所じゃなくて、あくまでも観光地図だからな。観光客の起点になる空港や港は書かれていてもおかしくはない」
「いや待て、この地図にプロットされているのは、あくまでも『名所・旧跡』となっているぞ」
「むむむ。八丈島空港が名所なのか・・・」
「でもある意味、こんな公国を堂々と掲示しているあたり、名所といえば名所かもしれない」
「八丈島の空の玄関口におりたったら、いきなりこれだもんなあ。これはちょっとインパクトでかい」
[No.13-1 ビローロード(都市計画道路) 2005年05月01日 12:24]
八丈島空港ロータリーをでてすぐにある道路。ビロウが街路樹として覆い繁っている、よく整備された道路。
「・・・まあね、もうこの期に及んで『これのどこが観光名所なんだ!』と言うことはないけどさ」
「驚いたり、誉めたり」
「そう、まさに驚いっぱなしだよ。誉める?いや、誉めるはないなあ。この道路、どうやって誉めれば良いのよ」
ゴールデンウィークの昼下がり。ぽかぽか陽気の中、民家も車も走っていないがらんとした道路。
「まあ、とりあえず記念撮影、と。」
何を目標にレンズを向けて良いのかもよく分からなかったが、とりあえず一枚記念撮影。記念?えーと、何の記念だ、これ?
[No.7 神止山 2005年05月01日 12:30]
「いやな予感がしてたんだよなあ」
次の目的地は、山だ。
地図上で見る限り、特に高い山ではなさそうだ。明確な登山道も存在しない。
いざ、行ってみると想像通り、何の変哲もない丘が地図が指し示すところと同じ位置に存在していた。
「これ、単なる裏山じゃん」
この石と土の塊に対して、われわれは一体どのような思い入れをもって接すれば良いのか!?
とりあえず、山の全景が見えやすい荒れ地を見つけ、そこに三脚を立てて撮影してみた。
「ううむ・・・何の写真だ、これ」
できあがった写真をのぞき込みながら、二人とも唸る。
「標高3,000m近い山の、肩の部分から山頂を眺める・・・といった図にはなりえるけど」
「いやウソをついても」
「そりゃそうだ。ま、いいや。とりあえず何だか御利益があるんだろこの山も。写真撮っておけば、後になって『えっ、神止山で撮影したの?』って言われる時がくるかもしれん」
[No.3-1 ホタル水路 2005年05月01日 12:45]
三根地区の観光スポット(らしき)ところはこれでほぼ制圧ということになる。次に目指したのはホタル水路。時間が良いあんばいなので、とりあえずここでいったん、午前中の部は終わりにするつもりだ。
「まあ、どんなものなのか想像はつくけどね」
車道よりもよく整備された歩道を歩く。護岸工事がなされていない小川が流れており、川岸には植物がたくさん覆い繁っていた。
「・・・おい、今気づいたのだが」
看板を読んでいて、あることに気が付いた。
「これ、昼間に来る意味ってあるのか?」
「無いねえ。それ以前に、この時期に来ること自体意味がないと思う」
「あれっ」
まあ、尾端夜雨も「まあいいじゃん晴れた昼間でも」とスルーしたことだし、観光地に行ったということで良しとしようじゃないかブラザー。
急きょこの場はほたるウォッチングではなく、バードウォッチングに変更。シラサギの優雅な歩みにしばしのくつろぎを。
「今日からシラサギ水路と名前を変えて貰おう」
とりあえず見るだけ見ておく。
あたり前だが、ほたるなんているわけがない。
「でも、ここってあくまでも『ほたる水路』なんだよな」
「何を今更当たり前のことを?」
「ほたる水路、が観光名所であって。ほたるそのものは観光名物ではないことになるのではないか」
「それだ!!」
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