[番外編 一休庵 2005年05月01日 13:00]
予定通り、本日のお昼ご飯は八丈島名物「明日葉」を使ったうどんを食らうことにした。先ほど、植物園で明日葉そのものを見て「うわ、雑草じゃん」という身も蓋もないことを口走ってしまったわけだが、単なる雑草なのかそれとも美味なる食材なのか、己の舌で判別しないと。
八丈島の観光ガイドには必ず載っているといって良い、明日葉うどんで有名なお店「一休庵」に向かった。八丈高校の近くだ。
ガイドブックによると
うどんとソバはすべて手打ちのアシタバ入り。ご主人自慢のオリジナル商品だ。ボリュームたっぷりの大名うどん1,200円や、とんかつうどん900円、カツカレーうどん900円は若いダイバーに人気。シンプルに麺を味わいたい人には天ざるうどん1,200円がおすすめ。
と書かれている。
「なるほどボリュームの点で問題なさそうなのはよく分かった。しかしビールが置いてあるかどうかが不安なのだよキミィ」
「置いてあるだろ、さすがに。観光地なんだし」
「うどんを肴にビールというのはちょっと不安だが、無かったらもっと不安」
一人勝手にそわそわする。
お店に到着してみると、これが結構な繁盛なのであった。ゴールデンウィーク、しかもガイドブックに載っているお店ということもあってか、お店の外まで行列が伸びていた。
「おい!うどん屋で行列だぞ!さぬきうどんブームを彷彿とさせるではないか」
さぬきうどんブームとはまるっきり違う、南海の孤島にあるうどん屋さんなわけだが、それでもどっこい、立派に満員御礼なんである。
「うわあ・・・行列作ってまで、うどん食べる?」
やや弱腰になってしまったが、
「食べるでしょう。アシタバうどんを食べないことには八丈島に来た意味がない」
と、勝手に八丈島の来島目的をアシタバうどんに設定してしまい、強引に自分自身を納得させてしまった。これが単なる「うどんの美味い店」だったら、行列を見た瞬間に「別の店にしようぜ。」となったはずだ。しかし、「美味いかどうかは兎も角、八丈名物のアシタバを使ったうどんの店」だから、行列があっても並んでしまう。
旅情って、そんなもんです。
このあたりは飲食店が何軒か立ち並んでいて、他のお店はすいすいとお客さんが入っていく。お店から満腹そうな顔をして出てくるお客さんが、一瞬こっちの行列を見て「ふっ」という顔をするのがすげー悔しい。
まあ、行列ができているとはいえ、うどん屋さんなので客の回転は悪くない。それほど待たずして、中に入る事ができた。
「あ!大変です軍曹殿!『飲物』欄に生ビールを発見しました!」
下戸のしぶちょおに報告しても何ら意味がないのに、報告せずにはおれないのであった。
「しかも、大と中、二種類あるのであります!大700円、果たしてこれは本当にデカいジョッキで出てくるのか、それとも『えっ、これ普通の中ジョッキじゃないの?』というがっかりサイズで出てくるのか?」
「知らないよ、そんなの。大頼むんだろ?」
「ここは観光地。大頼んだら中レベルのサイズだった、なんていうのはよくある話。中を頼んだら、ジョッキじゃなくてタンブラーでがっかり、みたいな」
「いいから早く頼め」
「おかでん二等兵、ハメられたらどうしようという恐怖と戦いながら、ココロを鬼にして大ジョッキを頼むのであります」
さんざん大騒ぎしたあげくに大ジョッキを注文。
「おっと、そうそう、これを後は頼む」
じゃらり、と車のカギをしぶちょおに渡しておく。よし、これで憂いなく飲める。
さてと、ともみ手をしていたら、卓上に大ジョッキが届けられた。
「うわ、ホントの大ジョッキが出てきたよ」
よーく冷えたビールが、まごうことなき「大ジョッキ」に入れられて出てきた。800mlくらい入るサイズ。これで700円は正直安いと思う。まさか本当の大ジョッキが出てくるとは思っていなかったので、やや動揺する。
「いや、でも、ココロの準備ってものが」
うろたえつつも、飲んでみる。
あふぅ。
うどん屋さんでビールというのはちょっと想定外なシチュエーションだが、これはこれで美味なり。
卓上に、「一休庵特製島唐辛子 激辛」という容器があった。
軽く降り出してみる。赤いかと思ったら、緑色だ。青唐辛子をすりつぶしたものなのだろう。唐辛子以外にも別のものがミックスされているっぽい。
舐めてみる。
おう、ホット。
これは辛党の皆様が挙党一致体制で支援したくなるような辛さだ。素晴らしい。おかでん、しぶちょお共に辛党なので、「この辛さは癖になるな」といいつつ、料理が出てくるまでこの唐辛子をぺろぺろ舐めていた。
注文していた品が届いた。
僕が注文したのは「大名うどん(1,200円)」。かけうどんが500円であることを考えれば、二倍以上のお値段。
高い料理を注文する気はさらさら無かったのだが、メニューを見たときに「大名うどん」というネーミングに惹かれててしまったんだから仕方がない。「おい、大名だぞ、大名!?」
何がどう大名なんだかわからんのだが、これさえ食べておけばオッケーのような気が何となくしたので、注文してしまった。
すき焼き的な肉と玉ねぎの卵とじ+海老天ぷら、というトッピングだ。
こちらはしぶちょおが注文した「カツカレーうどん(900円)」。
「トンカツうどんと同じ値段なんだよ、これ。お得だ」
しかもしぶちょおはライスも一緒に注文していた。
「これだと、カツカレーうどん、カレーライス、カツカレーと三種類の味を楽しむことができる」
「なるほど!そういうことか!」
ビールを飲みつつ、うどんをすする。
んー。
アシタバが練り込まれているから、うどんは苦いのかと思っていたのだがあまり気にならなかった。濃い味付けになっているせいか、アシタバな味ってのは感じられなかった。まあ、ヨモギ餅やほうれん草入りパスタを食べているようなもんだ。色が緑色に発色することに意味がある。
食後、島の南部に切り込んでみることにした。
島中部にはまだ名所がそれなりの数残っているのだが、これは後回し。明日あたりから天気が崩れるという予報が出ているので、民宿からあまり遠くないところにある名所は温存しておこうという判断だ。特に、博物館のような屋内施設は「雨天用」として温存しておかないと。
あと、島の南部には温泉が何カ所もある。効率重視で島の端から順番に観光名所巡りをしていたら、あるタイミングで「一日で温泉を何カ所も回らなくちゃいけなくなって大変」という事になりかねない。せっかくの温泉なんだし、日にちを分散して訪問したいものだ。
さあ、そんなわけでまだ足を踏み入れていない南部へGO。
島の南に向かっていく道路は、八重根港から一気に高度を上げていく。正面の山肌に、強引に道を造った橋脚が見える。一気にあそこまで登らないと島の南側に入れないのだから、やはり孤島の地理は険しい。
われわれが乗るレンタカーは軽自動車なので、エンジンが悲鳴を上げながら坂道をあがっていく。
[No.31 大坂トンネルの展望/八丈八景7 大坂夕照 2005年05月01日 14:01]
地図上では、ぐいぐい坂を登っている途中に「大坂トンネルの展望」という観光名所があるという。
「いやでも、こんなところで駐車するわけにはいかんぞ!?」
何しろ道は、容赦無くぐいぐいと登っている急坂だ。こんなところにハザードたいて止まるのはいくら見通しが良い場所だとはいえよくない。
・・・と思ったら、都合良く山側の旧道に分岐する道があって、そこにきゅぃーと車を進めると、あら見事なまでに駐車スペースと展望台っぽいものが。どうやらここが探し求めていた観光名所らしい。
えーと、大坂夕照(おおさかせきしょう)、という八丈八景もここなんですな。
大坂は島一交通の難所で、此処を境に大賀郷、三根は坂下、樫立、中之郷、末吉は坂上と呼ばれている。隧道は日露戦争戦勝記念に掘られたが、その後莫大な費用を投入して隧道の拡幅や横間道路の改修をし、最近夢の逢坂橋が完成し、夕日の美観が八丈八景に選ばれている。
そばだてる 巌に憂きを 隔てつつ 夕日涼しく 越える大坂
鹿島 則文
「夢の逢坂橋・・・そうか、夢だったのか。でもいきなりこの解説文に書くのは主観的過ぎる気が」
「いや、それを言うなら『最近』っていつだよ。これこそ主観的すぎる」
でも確かに、島一の交通の難所だというのはよくわかる。
今でこそ、土木技術の力業でこうやって道を造ってしまったが、この道、もうはなから山肌に沿って作ろうなんて努力を放棄してしまっている。「えーい面倒だから全面高架橋で作っちゃえ」だ。
さて肝心の「大坂夕照」だが、解説図によると、此処から見ると夏の太陽が八丈小島の脇に沈んでいくそうだ。それがまたたまらんらしい。
とはいっても、現在はまだ14時過ぎ。そもそも、夏とは時期が違う。
「なるほど、あの辺に太陽が落ちるのだね」
「きっとそうだね」
と納得だけして、この場を後にした。
[No.38 全国戦没者供養大仏像 2005年05月01日 14:07]
大坂トンネルを越えてすぐのところにある、と地図上では記されている全国戦没者供養大仏像。トンネル通過後、運転手・助手席共に「どこだ?」と目の前の光景を凝視していたが、発見できなかった。
しばらく進んで、「これはどう考えても行き過ぎだ」ということに気づき、「うーん、でも目印になるものは見あたらなかったんだけどなあ」とぼやきつつUターン。「また出たな、八丈島名物の観光名所がどこにあるかわからない事態!」
大坂トンネルの入り口付近まで戻ってきたところで、同時に二人とも大笑いしてしまった。ああ、あったあった、こっちから見るとデカい大仏がよく見えた。
「こりゃあわかるわけないわ、トンネル側からは全く見えないもの」
それにしても不親切だ、案内標識くらいあっても良いだろ、と思うのだが、全くそれらしきものが見えない。道路脇に、駐車場としてどうぞ、と言わんばかりのだだっぴろい草むらが広がっているだけだ。そして、丘の上に真っ赤な大仏らしきものが。
「あれが、目指すものだよな?」
「あれ以外考えられないもんな」
「でも、物的証拠は何もないわけだが」
大仏像のある丘に登っていく階段脇に、石碑があった。ああ、間違いない、これが戦没者供養大仏像だ。
丘を登っていく。
で、これが大仏像。
トンネル側からは全く見えず、素通りしてしまうのだが、逆方向からくるとすごく目立つ。
「なぜここに戦没者供養の大仏像が?」
よくわからない。
よくわからないが、とりあえず観光名所である以上はありがたく記念撮影に収まっておこう。
撮影終了後、そそくさと車に戻る。
駐車場近辺の風景はこんな感じ。
いやー、ホント宝探ししている気分だ。
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