新しい床板、水分を吸って膨張しちゃってるんですけどー。
膨張した板が行き場所を無くし、デコボコになっている。危ないったらありゃしない。
「なるほど、木造建築というのはこういう事も考えないといかんのか!」
と思わず感心する次第で。
よし、まずは宿の名前にもなっている御殿湯に浸かってみることにしよう。コップが流入口のそばにおいてあるということは源泉かけ流しということなのだろう。
片足を突っ込んでみる・・・
ギャー
寒い。26度といっても、この外気温だったら水風呂と変わらないではないか。とてもじゃないけど、一発目に入る場所じゃない。退散だ、退散。
次に、床下湧出が自慢の長寿湯に向かう。こちらも源泉温度は31度、と体温奪われまくりな湯温なわけですが・・・恐る恐る入浴してみる。
あ、これならぎりぎり我慢できるかな、といった感じ。
われわれが入るまでは青みがかった透明なお湯で、底のすのこが見えた。しかし、二人が入ったことによって湯の花が舞い上がり、一瞬にして白濁したお湯に変わった。
白濁したお湯の中から、あちこちで「ぷちぷち」と泡が吹き出ている。床下からお湯が沸いている証拠なのだろう。溢れたお湯は横にある排水溝みたいな溝から流されていた。
「うん、ここはいい。なにしろ、しぶちょお-じゅじゅ、だもんな」
としぶちょおはご満悦。
ただ、そうはいってもさすがは31度、やっぱり浸かっているうちにどんどん体温は奪われていく。この季節、そう長く浸かっていられるものではない。
寒い寒いといいながら、木のフタがかぶせてある湯船の、フタを取り除きあわてて飛び込む。こちらは42度の御殿湯(加温)だ。
「ああ、生き返る」
やっぱ、人間ってのは42度くらいの湯温が一番心地よい。
加温しているので、源泉26度のものと比べると温泉の鮮度は落ちているのだろうが、もうこの際どうでもいいや、という気持ちになる。
ああ、気持ちよい。
とはいっても、やっぱり源泉そのものに浸かっておかねば、ということで再度26度の御殿湯源泉にチャレンジ。
「20度近い差があるぞ。俺らこんなことやってて体調良くなるんだか悪くなるんだかさっぱりわからん」
「一つ言えることは、確実に疲弊していっているということだ」
「それは言えてる」
何だか暖まったような、体を冷やしたような微妙な状態になりつつ、もう17時半になってしまったのであわてて食堂に行く。
食堂をのぞき込むと、既に全ての宿泊客は食事を開始していた。やっぱりみなさん律儀に17時には食卓についていたのか。
それにしても宿泊客は少ない。まだ道は凍結しているし、ぬる湯の宿だし、登山シーズンでもないので閑散期なのだろう。
この日の夕食。
宿泊料金のことを考えれば、これで十分だと思う。
この季節、鍋がうれしい。
「ああ、暖まるなあ」
「おい待て、風呂から上がってきたばかりの人間が言う言葉ではないぞ」
例のごとく、てんこもりご飯でおかずをもりもりと食べるしぶちょお。
外がまだ明るい・・・。
一方、こちらはビールでますます体を冷やすおかでん。
寒いもんだから、鍋だけはしっかりと汁まで食べ尽くしている。
鍋を肴にビールを飲むのは久しぶりだ。
寒かったり暖かかったりで、何だか変な酔い方をしちまった。
部屋に戻ると、既に布団が敷いてあった。まだ夜6時半なんだけど。もう寝ろ、ということでしょうかこれは。厚手の毛布が掛け布団として用意されているあたり、寒さの厳しさを物語っている。
ではお言葉に甘えてそのまま寝てしまおう・・・という気にもなるが、いや待て、ここのお風呂は夜の10時までしかやっていない。夜中に起きてひとっ風呂浴びる、なんてわけにはいかない。今のうちにお風呂に入っておかなくては。
まだ未入浴の、「西の湯」に向かうことにした。
よく見ると、玄関のところには諏訪大社のお守りが祀られてあった。まさかこの大黒柱は御柱ではあるまいか、と思ったが、さすがにそれは違うようだ。
一般日帰り入浴客が使うことができる、西の湯。
おっと、女子浴室に誰もいないぞ。
そういえば、今日の宿泊客で女性って誰もいなかったなあ・・・。
って、おいおいまさか女風呂に入っちゃえ、なんて変態行為に及ぶんじゃあるまいな。やめとけ。
おっと。
こちらにも例の温泉表記を発見したが、先ほどの東の湯とは表現が変わっているぞ。
泉質名が、「硫黄泉」だけじゃなくて「天然水」って書いてある。どうやら、川の水か井戸水を使っているらしい。素直だなあ。
いろいろ読んでみると、供給湯量の不足を補うために循環ろ過をやってます、とか殺菌剤を入れてます、なんて書いてある。東の湯と西の湯、似ているようでちょっと性質が違うお湯、ということになる。
なるほど、この地図を見て納得。
左側の小さな湯船が、渋御殿湯源泉26度。これは東の湯と一緒。
もう一方の大きめの湯船が、「天然水加温循環ろ過42度。殺菌剤入り」と書いてある。東の湯の加温風呂は、御殿湯を加温したのに対し、西の湯のほうはたんなる水を加温した、銭湯的なお風呂でござんすよ、ということだ。なお、こちらのお風呂には長寿湯は引き湯されていない。
ということは、この宿の湯を満喫しようとおもったら、やっぱり宿泊するしかない、ということだ。日帰り入浴だけじゃもったいない。
こちらにはカランが用意されており、シャワーで体や頭を洗うことができた。
御殿湯。26度の恐怖は先ほど十分に味わったので、まずは見るだけ。
二人して、「えっさ、ほいさ」とフタになっている板をはがし、ありがたみの薄い天然水42度加温殺菌あり、に浸かる。
まずは体を十分に慣らしてからだ、26度はそれからだ。
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