小笠原遠征

おが丸の夕食風景

19:04

時間は一気に流れて日没19時。

外でずっと見張りに立っていれば、伊豆大島の脇を14時頃、三宅島を15時頃、八丈島を18時頃に通過するんだという。ただ、天候が悪くて伊豆大島を全然見えなかった事に腹を立て、後の島は完全無視。部屋でおとなしく読書に明け暮れたのであった。

夜はまだ長い。つーか、到着までまだ長い。まだ行程の半分にすら届いていないよー。だから、夕食もできるだけ遅くして、なるべく「船内イベント」を分散させたかった。しかし、昼食を食べたのがやけに早かったということもあり、もうどうにでもなれ、と19時にレストランに向かった。

さて、何を食べようか。

「船上ディナークルーズ」ということに一応なるわけで、ちょっとは気の利いたものを食べたい、と思う。しかし、メニューの種類がそれを許さないわけで。さてさて。

生姜焼き定食

19:12

結局、おかでんが選んだのは生姜焼き定食+サラダ+瓶ビール。

このレストラン、生ビールも取り扱っているのだけど、530円という値段にしてはあまりに悲惨な量の少なさだったので完全無視。悔しいけど630円の瓶ビールで我慢だ。

自販機で300円の缶ビール持ち込めばいいじゃん、とも思うが、さすがそれは商売上困るらしく、「レストラン内への飲食物の持ち込みは禁止」って注意書きが出ていた。ちぇっ。

さてこの「学食風なディナー」、総合計がおいくらかというと・・・ええと、

生姜焼き680円+ライス150円+みそ汁150円+海草サラダ260円+瓶ビール630円。しめて1,870円なり。ひえー、大御馳走(なお値段)だ!

おが丸レストランぼったくってんじゃねーよ、なんて言うつもりはない。従業員の確保、資材の運搬、過酷な労働環境などを考えたらこれくらいの値段になっても仕方がないことだ。しかしおみそ汁150円にはビビったな。これはいくらなんでもちと高すぎると思うんだが、どうか。

特製おが丸島塩ラーメン

19:14

しぶちょおの夕食。

「特製おが丸島塩ラーメン」+ご飯。これで830円。

「昼も夜も『おが丸』って名前がついているものを選んでしまった」と本人は言っていたが、このあたりしぶちょおの割り切りの早さが伺える。

健啖家のしぶちょおからすると、この組み合わせじゃやや物足りないハズだが、お昼の島塩ステーキの味と量、そして価格を勘案して、「ここでぜいたくしちゃもったいない」という結論に達したらしい。

その結果、一番腹に溜まりやすいラーメンライスという選択。

本人曰く、「麺コーナーにいるポニーテールの女性従業員が好みだったので」なんて謙遜?しながらメニュー選択の理由を語っていた。

船が揺れる中夕食

19:18

揺れますなあ。昼とは比べ物にならないくらい、うぐぐいと揺れる。もちろん皿が右に行ったり左に行ったりするような事はない安全設計だが、考えてみれば只今黒潮通過中なんだっけ。

ばばろあは、「揺れ防止のためのフィンスタビライザーが作動するので余計わざとらしくて気持ち悪い」とイヤな顔をしつつ、ラーメンをすすっていた。

ちなみに小食なばばろあは、ラーメンにご飯の代わりになぜかヨーグルトを選んでいた。

ナイフとフォークを使って優雅に「でぃなーくるーず」

19:20

ナイフとフォークを使って優雅に「でぃなーくるーず」ですよ。この揺れも、一種のスパイスだと思えば心地よい。

ただ、船に乗り込んで以来、どうも酒びたしな時間をすごしているので、ここはビール1本でおとなしくやめておく。

実際のところは、「中瓶1本630円」に相当お財布的ダメージを受けてしまったからに他ならないわけだが。

外に出て夜風にあたる

19:34

食後の腹ごなしではないが、外に出て夜風にあたる。小雨なのか波しぶきなのか、めがねに細かい水滴がつく。

回りは完全な漆黒。海と空の違いすらわからない。こんな漆黒を見るのは生まれて初めてだ。ちょっと感動。

外部デッキへの扉は、夜10時だか9時だか(忘れた)に閉めてしまうそうだ。翌朝になるまでは外に出ることはできない。酔っぱらいが海面に転落したり、自殺志望者がいたりしても困るからだろう。

シャワー室

19:42

部屋に戻りがてら、シャワー室を発見したので撮影しておいた。

ここのシャワー室、JRの寝台列車のように「5分間だけシャワー使用する権利があるカード」を購入して使う、なんてけちくさい仕組みにはなっていない。24時間、使いたい時に使いたいだけ温水真水シャワーを使うことができる。素晴らしい。ただしその代わり、1,000人収容という大規模フェリーながらも大浴場はついていない。

1,000人全員が1回ずつシャワーを使うということを考えたら、べらぼうな水がめが無いとやってられないと思うのだが、水の確保はどうしているのだろう。海水を水に替える技術を活用しているのだろうか。

レストラン入口は行列

19:53

おや。レストラン入口は行列ができていた。

座席はまだ空きがあるようだが、カフェテリア方式なのでどうしても列ができてしまうらしい。

昼どきはカップ麺で済ましていた人たちも、さすがに夕食くらいはリッチにレストランで食うべえ、というわけだろうか。

緑油精

19:58

・・・と思ってタコ部屋に戻ってきたら、いやもう部屋がカップ麺臭いこと。そして、あちこちでずるずると音がする。

ま、そりゃそうだよな。あっという間に1,000円超えてしまうレストランで食事するよりも、100円ショップなんぞで買ってきたカップ麺1個すすれば900円も予算が浮く。学生にとっては死活問題だ、この価格差は。

おー。

やっぱり狭い部屋に居ると揺れが気になるなあ・・・。

ここで台湾土産パート2。

「緑油精」という何やら怪しい目薬のような薬。これ、液体版漢方メンソレータムみたいなヤツで、鼻の下なんぞに塗っておくと激しくすーっとするわけですな。で、吐き気とかの不快感を緩和しちゃいましょう、というもの。

ま、気分を誤魔化す程度にしか役に立たないが、あるとないとでは大違い。相当臭いがきついけど、お世話になりました。

アクティビティの紹介ポスター

21:37

ありゃっ。21時半になったら2等客室、強制消灯になってしまったではないか。何をする。もうおとなしく寝ろというのか。

いや、待ってくださいよ先生、まだ僕興奮冷めやらない状態で寝るわけにはいかんのですよ。これから夜明けまで、他人のいびきのフルコーラスや、前後左右の人との陣取り合戦をする気はさらさら無い。こりゃいかん、読みかけの本を持って2等客室からエスケープ。

逃げ出してみると、まあいろんなところに死体が転がってますな。Cデッキ、本来なら乗船口近くということもあって優雅な作りになっている場所なのに、ちょっとしたスペースを見つけてはみんな毛布にくるまって廊下で寝てる。この人達は「あんな狭い所で寝るくらいだったら、廊下で寝た方がまだマシ」と見切りを付けた人なんだろう。その数、一人や二人なんかじゃない。結構な数、存在していた。

この難民キャンプぶりに驚きつつ、レストランに向かう。確か居酒屋タイムとして23時まで営業していたハズだ。そこで本でも読むことにしよう。

レストラン入口には、様々なアクティビティの紹介ポスターが張り出されていた。体験ダイビング、ホエールウォッチ、ドルフィンスイム、シーカヤック等。まだ予約していない人は、ここでよさげなショップを選び、船内公衆電話から予約を入れていた。

そうだ、僕も電話をかけなくちゃいけない友人がいるんだった。百円玉と十円玉を確認しつつ公衆電話に行ってみたら・・・あ、テレホンカード専用ですかそうですか。ま、そりゃそうだ。運悪く、「遠距離旅行の際には財布の中のポイントカード類は極力持参しない」方針でテレカも抜き取っていた。自分自身の脇の甘さに非常に腹を立てつつ、1,000円のテレカを購入する。こういうときに限って、500円のが売られてないんだよな。ちくしょう。

「もしもし?今僕どこにいるかわかる?」

相手に、今自分が小笠原行きの船に乗っていること、その船上からこうして衛星電話をかけていること、まだこれだけ乗船していても全行程の半分にも至っていない事を熱く語り明かしたのだが、向こうにはほとんど通じなかったようだ。

「ふーん。すごいねー」

で終わりだった。ま、実体験しないとこの興奮は伝わらないだろうな。東京の自宅にいる人に理解しろって言っても無理だ。ちなみに衛星公衆電話なので、昼間の電話の場合10円で6.5秒しか話すことができない。衛星通信ということで、昔の国際電話のように会話にタイムラグができる。そのため、「うわあ」と思わず声がでてしまうくらい、テレカの残高が減っていってしまうのであった。500円のテレカを売っていないわけだ。500円じゃとても足りねぇ。

父島まで529.3km

21:52

現在船は23.1ノットで航行中。ほぼフルスピードで突っ走っている事になる。

ただ、「父島まで529.3km」なんだそうで。まだ半分も届いていないのかよ。

でも、ようやく半分近くまで来た、ということも言えるわけで。長いなあ。ホント、長旅だなあ。

夜の船内レストラン

21:55

レストランにやってきました。

さすがに値段がそこそこするお店というだけあって、2等客室で体力有り余って悶々としているワカモノ達が養老乃瀧や白木屋状態でバカ盛り上がりしているということは無かった。

しっとりと、遅めの夕食を食べている人たちが少々いる程度。

あまり居酒屋としては活用されていないっぽい。

キリン氷結を飲む

21:59

とはいってもね、僕は居酒屋として使うんだよキミイ。

だって「本だけ読ませてください」ってわけにいかないじゃないか。やっぱりレストランに来た以上、何か注文しないと。

でも、高いビールを頼むほどのガッツがちょっと萎え気味だったので、少々お安いキリン氷結なんぞを頂くことに。

ちなみにばばろあとしぶちょおはもう就寝。おかでんの単独行動だ。

ミックスピザ

22:03

ただ単に飲むというわけにもいかんだろ、キミイ。

といっても、筑前煮とかきんぴらとか、手頃なサイズとお値段の小鉢は既に今日のお昼に食べてしまった。ええと、困ったな。

とりあえずミックスピザください。

うわ、こんなところで、こんな時間にピザ食うなんて負け犬くせぇ、と我ながら思うが許せ。

缶チューハイ250円とお安くおさえておきながら、ピザ840円。お前の財布は無尽蔵なのか?我ながら呆れる。

で、840円もするんだからそれなりのものが出てくると「無理矢理、僅かに期待」していたんだけど・・・出てきたのは見るからにありがちな冷凍ピザちゃん。いや、わかっちゃいたんですけどね、でも「あー、こういうことやってるから、いまだに貯金がほとんど無い人生を送ってるんだろうなあ」としみじみしてしまう瞬間。

読書しながら飲酒

22:05

とはいってもやっぱり、一人で読書を楽しみながらの静かな飲酒タイムってのはいいもんです。読みかけの「ダ・ヴィンチ・コード」もなかなかストーリーが盛り上がってきて面白くなってきたし。うん、調子が出てきたぞ。

赤ワインにひじき

22:10

こら。

調子が出てきたからといって追加注文はやめなさい。

しかも、赤ワインにひじきというアホウな組み合わせ。

値段は・・・もういいや。計算するだけアホらしくなってきた。でも、このお酒のおかげでますます楽しい一時を過ごすことができたのは事実なので、結果オーライということにしよう。ドンマイ。

父島まで、489.8kmです

22:47

閉店23時なのだが、ラストオーダーは22時30分。22時30分を過ぎたあたりから、何だか「そろそろ帰らないと邪魔なんちゃうんか、俺」的な雰囲気を周囲に感じだしたので、23時を待たずに退却することにした。

ちなみにこの日最後に見たディスプレイ表示だと、

「父島まで、489.8kmです」

だった。おっ、ようやく500kmを割り込んできたぞ。船は順調に進んでいるようだし、これで心おきなく眠れるってもんだ。頑張れ、夜勤の航海士さんたち。

寝苦しいおが丸二等客室

22:52

・・・と思って部屋に戻ったらこれだもんなあ。ひでぇありさまだ。

とはいっても、所々一切使われた形跡がない毛布と枕のスペースがあった。恐らく、廊下で屍になることを選択した人の分だろう。そういえば、my寝袋を持ち出して寝ている人もいたっけな。

そんなわけで、運が良ければ二人分のスペースで寝られまーす、という状況ではあるわけだが、おかでんの両脇にはしぶちょおとばばろあがしっかりと鎮座。ま、これはしょうがないことです。ただ有難いことに二人とも寝相が大変によろしく、朝まで自分の陣地に割り込んでくることが無かった。思ったよりも快適に眠ることができた。

今日一日、興奮しすぎて疲れたからなのかもしれないが。

2006年05月3日(水) 2日目

おが丸二日目の朝

05:56

まあ、そうはいっても自宅と違って完璧に熟睡できるわけじゃあない。5時過ぎから起き出して、まずは誰も使っていない時間を利用してシャワーを浴びる。うん、随分とすっきりしたぞ。

外部デッキには朝6時から出られるようになる、という話だったが、ちょっと早めにゲートオープン。早速外の空気を吸う。うん、いい気持ち。幾分空気が暖かくなったような気がする。南国に来たからだろうか。

ただ、空は相変わらずのどんよりとした状態。雨が降らなければ良いのだが。

父島まで166.9km

06:16

Cデッキにあるモニタで現在位置を確認してみたら、父島まで166.9kmの地点まで接近してきた。あともう少しだ。

。。。といっても、まだ相当先なのだが。

でも、あと2時間もすれば、小笠原列島最北の岩礁、聟島(ケータ)列島が見えてくるはずだ。ああ、陸地が恋しい。水平線、もう飽きた。

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