灼熱の台湾

爆醤鶏排屋台

臭豆腐を満喫(?)した後、さてあともう少しくらいいっとくか、という感じだった。そんなとき、おかでんとしてはぜひ食べておきたいものがあった。チキンカツだ。

チキンカツといっても、超巨大な、手のひらよりも大きな化け物サイズのものだ。薄くなるまで叩いて肉をのばして揚げてあるのだろう。TVで見たことがあるし、台湾の友人も「大好物。ぜひ食べて欲しい」と言っていた。

大腸小腸も気になったが、残り限られた胃袋を考えたら友人にリコメンドされたものを食べないわけにはいかないだろう。しかし、該当する店はあるのだが・・・TV見た店とは違うし、友人が言っていた名前とも違う。何?「爆醤鶏排」だって?何がどう爆発しているのかわからんが、多分「油で揚げている」くらいの意味なんだろう。「猪排」とも書いてあるので、このお店はチキンカツ以外にもトンカツもやっているようだ。

違う店のものを食べても納得はしないが、他に手頃な店が無かったのでここのお世話になることにした。やけくそで、チーズ入りのチキンカツをオーダー。さすがに一人一個はでかいので、二人で一個をシェアすることにした。

巨大チキンカツ

到着しました、チキンカツ。さすがにでかい。

薄いので一人一枚くらいはぺろりだ、と聞いていたが、さすがに今のわれわれにとってはそりゃ無理ってもんだ。一人一枚にしなくて良かった。

屋台テーブル

鶏排の店は飲食スペースが無かったので、通路を挟んで向かい側のお店の飲食スペースに陣取ることにする。

縄張り意識があまりないのか、人が自分のテリトリーにやってきて座ったからといって店員はオーダーをとりにやってこない。われわれのように「間借り」することを許容しているのだろう。

雑然とした店内だが、決して不衛生ではない。いろいろな物が置いてあるが、きっと店員にとってはシステマチックに配置しているのだろう。

卓上には巨大な豆板醤の容器が置いてある。これで味付けをせよ、ということなのだろう。一種類だけというのがなんとも潔い。日本のように、醤油、塩、胡椒と・・・くるくる回転する調味料置きに並べるのとは訳が違う。

メニュー

ここはメニューが写真入りで机に貼り付けてあったので大変に判りやすかった。

ざっくり言って、上段が蚵仔煎系、中段が臭豆腐系、下段がその他という配置になっている。

「鴨血臭豆腐」なんてのがあって、名前だけで結構グロテスクだ。どんな臭いと味がするんだろう。気になる。(味よりも臭いの方が気になるので、「臭い」を先に記述するという表現を使った)

あれ?下段に魯肉飯があるが、その横に肉圓30元がメニューとして載っている。魯肉飯の肉増しじゃないのか。写真を解析したが、スープなんだかなんだかよくわからんが、恐らくスープなんだろう、きっと。隣のメニューがスープだから。冬瓜スープに紅ショウガが浮いているように見えるが・・・?

※後注:帰国後調べたら、「肉入り餅」の事だった。薩摩芋と米の粉を練ったもので豚肉のあんをくるんで揚げたもの、だそうで。なるほど、だから「肉圓」なのだな。

魯肉飯

ジーニアスが「米もの食べたいんスけど頼んでいいスか」というので、魯肉飯を頼んでみた。牛挽肉の煮込みかけご飯。おいしいと思うが、日本では意外なほど売られているのを見かけた事がない。なぜだろう。東京には「ひげ張魯肉飯」とというチェーン店があるが、店舗数は僅かだ。

さて届いた魯肉飯は、本当に湯飲み茶碗に毛が生えた程度の大きさに盛られて出てきた。20元と安いのにはこういうわけがある。恐らく、あくまでも「最後のシメ」として食べられるものであって、日本の牛丼のように「これでがっつり満腹になるぜぇ」という感じの品ではないのだろう。仏前にお供えしたくなってしまうサイズ。でも、シメにはもってこいだ。

世のサラリーマン諸氏が、「酒席のシメにラーメン食べようかどうしようか悩む」ことはしばしある。帰り道ラーメン屋についつい立ち寄っちゃってさあ、今日は体重激増だよーなんて話は日常茶飯事。しかし、こういう小降りだけどがっつり感があるメニューがもし駅前に屋台としてでていたら、結構繁盛すると思うんだがな、どうだろう。

チキンカツを二等分

チキンカツを二等分にする。

二等分されたチキンカツ

二等分されたチキンカツ。中のチーズが溢れてきた。

さすがにこれまで薄味だったら拷問だと思ったが、これだけは普通の味付けだった。塩胡椒がちゃんときいていて、十分食べることができた。・・・いや、待て、違う。やっぱり日本のものと比べると味付けに遠慮がある。今までの料理で舌が慣らされてきたので、これでも十分濃い味付けに感じるだけだ。

面白いもんだねえ。やっぱりこれに豆板醤つけて食べた方がいいのかね?

隣のカップル

「おい、ちょっと隣を見ろ!」

急におかでんがエマージェンシーモード発令。魯肉飯に取りかかっていたジーニアスを呼び止めた。

「隣のカップルを見よ」

「おお・・・揚げ臭豆腐を食ってるな」

「しかも豆板醤をかけて食ってる。さらに言うとカップルで、だぞ」

「それだけ一般に浸透してるって事なんだろうねえ」

「口、臭くならないのかな?食後には。臭豆腐食べた後のキスはイヤ!なんて場面は台湾には存在しないのだろうか?」

士林夜市前で記念撮影

鶏排と魯肉飯をやっつけた後、われわれは士林の街を散策することにした。MRTの駅とは反対方向の、より深いところに夜市が広がっているという。そのあたりを散策しようというわけだ。

最後に、飲食店屋台が入っていた建物の前で記念撮影。

「・・・なんか、人が増えてないか?」

「増えたな、確実に。台湾じゃ、夜更かしする人の事を『夜猫子』って言うらしいぞ」

「というか、こっちの方がメインな感じがするのは気のせいか」

思い出されるのは、MRT駅からそのまま建物に入った時の閑散とした雰囲気。薄暗くさえあった。あちらは裏手になっていたのだろうか?

「しまったな、僕らこっちの方の屋台、見てなかったぞ」

「まだ食べる気ですかアナタは」

「いや、もう十分なんだけど、見てない場所があるとなんだか悔しくって」

「悔しいったって、どうせ同じものしか売ってないでしょ、臭豆腐、牡蛎オムレツ、その他諸々」

青い看板のチキンカツ屋

写真撮影で使った三脚を片付けながら、何気なく屋台を眺めていたおかでんだったが、思わず「あっ」と叫び声を上げてしまった。

「あれだ!あれだ!ちくしょう!」

「なんなんだ君は一体」

「あそこに青い看板があるだろ、あれだよ、本当に食べたかったチキンカツのお店は。おかしいと思ったんだよなあ、店は建物の外に面しているっていうのをテレビで見ていたから、あんな場所じゃないとは思っていたんだけど」

「しょせんチキンカツだろ。そんなに違うはずはないだろ?・・・それにしてもえらい行列だな」

見ると、ものすごい行列なんである。20人以上がチキンカツを求めて並んでいる。

「そんなに凄いのか?ここ」

「さあ?味はさっきのと変わりないというのはジーニアスの言うとおりだと思うけど、人気店故に何かあるんだろ」

「まあ、そうじゃないとこれだけ行列はできんわなあ」

たかがチキンカツ、でこんな行列なのには驚いた。日本で想像してみたらいい。ケンタッキーフライドチキンに大行列を作るか?(割引セールの時を除く)

豪大大雞排店頭

店の名前は豪大大雞排というらしい。鶏という字が難しくて執筆者泣かせなのは台湾旅行記の常道だな、もういい加減慣れてきた。あーしんど。

次から次へとチキンは揚げられていく。見ると、でかい!先ほどの店のがインチキに見えてくるくらい、こっちの方が薄くてデカい。ますゐのサービストンカツを思い出させる薄さの肉が、お面くらいのサイズに広がっている。決して、日本の天麩羅のように衣でかさをふやしました、というのではない。肉そのものがデカいのだ。圧倒的なインパクトだ。

それをざばーとフライヤーから数枚まとめてすくいあげるのだから豪快だ。トングや掬い網じゃ間に合わねぇ、ということで、ステンレスかアルミの棒2本を店員さんは使って、その棒で5枚くらいのフライを一度にはさんで油から引き上げていた。豪快だ。

行列は製造が間に合っていないからではなく、どうやらラッピングとお会計に手間取っているかららしい。くそう、さっきの店でチキンカツを食べていなければ、ここで行列作って食べたのに。悔やまれる。あれだけ薄いとサクサクしておいしいだろうな。繁盛店故に揚げたてだし。

店の看板には「本店雞排一律不切!」と記されていた。どうやら、鳥肉を半羽使っているけど、切って小さくしたりはしてませんよ、さばいたままのサイズでご提供してますよ、ということを言っているんだろう。すげえ。

それにしてもあんなん食べたらゲームオーバーだろ。おなかいっぱいになるぞ。一軒目に選んだらもう駄目だ。

でも一方で、知り合いの台湾人女性(40kgもない小さな女の子)曰く、「あれは一人で食べるものですヨ。その後別の店にも行く」ってけろりと言ってた。信じられねぇ。カロリーだけ考えても、ちょっと恐怖だ。

終極警探4.0

「すごいものを見たな」

「ありゃあ繁盛するわ」

最後になって良いものを見た、ということでほくほくしながら士林の街に繰り出す。街の目立つところに大きな看板。おや、ブルースウィルスさんじゃございませんか。

「終極警探4.0」

だそうで。どうやらダイハードのことらしい。國語になるとこういう表現になるのだな。ちなみに「ブルースウィルス」は「布魯斯威利」と書くようで。

賑わう夜の町

士林の中心地に向かう道はごらんのありさま。

「駄目だ、こりゃとても侵入できる状態ではない!」

ジーニアスが悲鳴をあげる。

スリも怖いが、それ以前にお互いがはぐれたらもうどうしようもない。日本ではないのだ、携帯で連絡を取り合うといった事はできない。

後先考えずに突撃する性格のおかでんもこの数にはびびってしまい、
「やめよう。ぐるっと士林を回り込む形で見て回ろうぜ。ど真ん中は危ない」

ということでギブアップせざるを得なかった。

「それにしても夜型な人たちだねえ」

ジーニアスが感心して言う。

「昼間、あんなに暑いもんだからみんな涼しいところに居るんだぜ。で、夜になって涼しくなったら出てくるんだな」

「きっとそうだろうね。それにしても一気にでて来すぎ」

これだけ人がたくさんでてくりゃ、さぞやお店は儲かることだろう。

日本だと、東京原宿の竹下通りが人混みのすごさでは有数だが、台湾人からすれば別に珍しくもなんともない光景なんだろうな、きっと。

怪怪専賣

人混みから逃げたわれわれ負け組は、ぐるりと士林の中心を回り込むように歩き始めた。すると目についたのが、「怪怪専賣」というお店だった。

何だあれは。入口は垂れ幕がかかっているし、バイクがたくさん駐輪してあるしでよく中が見えない。試しにお店に突撃してみることにした。

ミリタリーグッズ

あら。売られているのはミリタリーグッズだった。

店先でおかでんにも馴染みのM4やM60、MP5などがお出迎え。ニーハオ。そういえば最近サバイバルゲームやってないなあ。

思わず、「実戦(もちろんゲームのことだぞ)で使える安いグッズがあったら」と色目を使って物色したが、日本製のものが多かった。これだったら日本で買った方がいいや。だいたい、こんな武器を空港に持ち込んだら税関で捕まるぞ。

他にも、さすがは徴兵制の国だけあって、台湾軍の払い下げ品が各種売られていた。鉄かぶとや弾薬ケースなど。でも、残念ながら「台湾軍のグッズだぜー」と自慢してもあんまり周囲のウケは良くないと思うので、買うのはやめておいた。やっぱり米軍の品が一番ミリタリーマニアにはウケる。

しばらく「ほー」「はー」と言いながら品物を眺める。実際台湾でもサバイバルゲームをやる人っているのだろうか?徴兵制がある国だから、滅茶苦茶強そうな気がする。まず基礎体力からして違うだろうからなあ。

超大大雞排

先ほどの豪大大雞排に負けじと、こちらの屋台は超大大雞排と名乗ってチキンカツを売っていた。飲食系屋台は全てあの建物の中に集約されたと聞いていたのだが、またこうして雨後の竹の子のように湧いて出てきている。

それにしても「炸の毎様」って一体なんだよ。

屋台が集まりすぎて狭い

われわれが通っている道は、両側に屋台がせり出してきて狭くなってきた。なるほど、あの大混雑した人の数は、実際に人が多い+道が狭くて身動きがつかないの二面性があったわけだな。

吉野家メニュー

吉野家、ここでも頑張ってます。

しかし根付くのかなあ、これだけの屋台大国において。

値段表を見ると、メニュートップにある「牛丼紅茶組合餐」で100元。400円だ。いくら魯肉飯が小ぶりの丼だから比較はできないとはいえ、ちょっと高い気がする。これだったら、屋台を数軒ハシゴした方が楽しい。

いっそのこと紅茶なんて組合せないで、単品で売れば良いのに。マーケティングの結果その方が良いという結論が出たからこそ、こんな謎のセットメニューができたんだろうが、なぜだろう。よくわからない。

屋台が一斉に消える

道路を歩いていたら、背後から「○×▲!」という号令のような、注意を喚起する怒号が飛んだ。何事かと思って振り向いたら、みんな一斉に屋台を片付けはじめるではないか。

どうやらここで展開している屋台は違法、というか許可をとっていないものらしい。しかも通りの全てが。その証拠に、さっきまで道路を塞ぐがごとく屋台がひしめいていたのに、あらら、広々とした道路があっという間にできてしまったのだった。

それにしても早業だった。怒号から撤去まで10秒程度だろうか。どの屋台も簡単に撤収できるように、折りたたんだり転がしたりする工夫がなされていたようだ。

「みてろ、そろそろ警察がくるぞ」

しばらくその場で様子を見てみることにした。

警察登場

1分もしないうちに、警察と書かれた防弾チョッキを着たバイクのおにーさんが現れた。間一髪だった。

なぜかこの警察のバイクには「三冠王」と書かれていた。インターナショナルヘビー、PWFヘビー、UNヘビーのベルトを巻いているんだろうか。だとすれば相当強いプロレスラーに違いない。

それはともかく、「どーせ予定調和だろ?何時何分頃いくよーって何となく連絡があったりするんでしょ?」というのがまあ一般的な見解だろう。こういうのは捕まえる事が目的ではない。「取り締まっている」「警察に敬意を表して撤収する」という行為そのものが重要なのだ。

・・・と思ったが、しばらく警察は人混みに隠れるようにその場に留まり、屋台が復活しないかどうか見張りをしていた。おっ、奴は本気に捕まえる気があるぞ。うかつにここで「もう大丈夫」と屋台を出したら、その場でお縄頂戴する気だ。

結構見ていて面白かった。スリリングな見せ物でした、観光客にとっては。

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