

館内をざっと探検する。
洗面所の蛇口の多さが素晴らしい。これだけの蛇口全部が同時に使われる事なんてないと思うが、どうしてこんなに蛇口を取り付けちゃったんだろう?ダークダックス状態に人間が並んでも、この幅では人が溢れるぞ。


廊下。
突き当たりのところに防火壁があってそこから先へは行けなくなっていた。どうやら、ハイシーズンだけオープンするエリアがあるらしい。今は6月末、シーズンではないらしく扉が閉まった状態。



六畳一間の部屋。二人で寝泊まりするには申し分ない。角部屋をあてがってくれたので、開放感がある。
そういえばおかでん、三泊ともに角部屋だったな。角部屋運がついているぞ。
頭上を見上げると、そこには高い天井が。仰向けになってしばらく天井を眺めていたくなった。


まずは一息つく前にやるべき事をやっておかないと。それは、「河原を掘ってアワレみの湯をこさえる」事だ。到着して早々に身支度をして、外に出る。
玄関先にはシャベルが置いてあり、これを持参して河原へ行く事になる。
おかでん、やる気満々。わざわざ河原に行くのにも関わらず浴衣を着込んでいる。
「温泉といえば、浴衣だ」
厳かに宣言するおかでん。
シャベルなんて久しく手にしていないので、テンションが上がる。ギターをかき鳴らす格好をしてこの今置かれている喜びを表現。
それにしてもおかでんの浴衣、サイズが合っていなくてまるで大きめのはっぴを着ているかのようだ。すね丸出し。身長178センチのおかでんにとって、浴衣を着ると大抵こういう事になる。おかでんでさえこうなのだから、180センチを超える人なんかは浴衣で不自由する機会が多いだろうな。

吊り橋を渡って河原へと向かう。背景は雄川閣。
吊り橋というのも風情があって良いじゃないですか、さあがぜん盛り上がってまいりました。

掘れば温泉が湧くという、中津川の河原。この川の右側が目指すポイントらしいが・・・
遠目で見た限りでは、なんのこっちゃわからん。


しばらく茂みの中を歩く。茂みといっても道はよく整備されているので、草をかき分けて前へ進むようなことはない。
さあ、目指す河原に到着しました。


「あれえ?何だこれは」
目の前にあったのは、丸いマンホール型をしたコンクリート。そこにはなみなみとお湯が溜まっていて、溢れたお湯がどんどん河原に流れ出している。
「熱湯が出ていますご注意ください」「熱湯注意」と注意書きが二つも書いてある。
どれどれ・・・と手を突っ込んでみたら、うん、確かに熱い。確か雄川閣の温泉表示によると源泉温度は52度だと書いてあったので、ここもそれくらいの温度があるのだろう。
さすがにこのお湯に入るわけにはいかない。だいたい、ここが適温だったとしてもこれでは風情もへったくれもない。やはり、「河原を掘ってmy温泉をこさえる」事が目標だから。

何気ない小さな水たまりでも、手を突っ込んでみたら温泉だった、という場所柄だ。ぷくぷくと泡が出ているので、今まさにお湯が底から沸いているのだろう。
「さすがですなぁ・・・あれっ、泡が止まった」
「多分ね、歩いていると(地面を押しつける)空気圧で泡が出るんじゃないかと」
しぶちょおが水たまりの脇でジョギングを始めたら、また泡が底からわき上がってきた。
「・・・これ、沸いている、と言うのか?」
「さあ・・・それは知らん」
周囲を探索してみたが、やはりイチから湯船をこしらえるのは無理に等しい事が判った。本格的にやるとなると半日作業だ。河原の地面は石ころが多いので、シャベル使ってもそう簡単には掘らしてくれない。
幸い、先人がこしらえた血と汗と涙の湯船があったので、それを流用させてもらうことにした。ちょうど先ほどの熱湯注意コンクリからのお湯が流れ込んでいて、いい湯船に仕上がっていた。やはり好立地条件のところには先人が目を付けないはずがない。逆に、今から新しいのをこしらえても、多分ハズレくじを引く羽目になるだろう。お湯の量が少ない、とか。

既にできている湯船ではあるが、そのまま風呂には入れない。底に泥が溜まっているので、それをくみ出す努力が必要。そうしないと、湯船に浸かった際泥が巻き上がって、あまり気持ちがよいものではない。
あと、先人達がこしらえた湯船は深さが足りなかった。もっとどっぷりと湯に浸かりたい。そういう思いで掘った。
おかでんは浴衣の裾が濡れてしまうので、浴衣を脱ぎ捨てている。パンツ一丁で土木工事中。既に裸祭り開催中なありさま。
掘る作業は熱い源泉との戦いでもあった。湯船は均一な温度に保たれているわけではない。温泉が注いでいるところは強烈に熱いし、水が川から引き込まれているところは冷たい。だから、作業の最中、うっかり源泉注ぎ口の近くに行ってしまうと、「あちちっ」となってしまうのだった。

一応こんな感じで仕上がり。底の汚泥が舞い上がって泥水の様相を呈しているが、「濁り湯である」と自分自身を信じ込ませればまあ、なんとかなるっしょ。
写真左下から熱いお湯が流れ込んでくる。そこで、画面右上のほうを決壊させ、水を流し混んで湯温を調整することになる。そうなると、「冷たいゾーン」と「温かいゾーン」が火鍋のごとく二色に分かれて存在してしまうので、常にお湯(水)をかき混ぜ続けないといけないのだった。かといって派手にかき混ぜるとまたお湯が濁るので、そっと、慎重に。

男二人で丸裸になって湯船(?)に身を沈める。
といっても、非常に浅いので半身浴にすらならないくらいのありさま。
泥で濁っているので、ちょうど股間が隠されて良い。


川と一体化した感じがいい。
正直、温泉を楽しむという点では全身浴ができないし、温かかったり冷たかったり極端だし、あまり気持ちが良いものではない。しかし、大自然の中でくつろげるというのはとても快適だ。
以前、下呂温泉の河川敷にある湯船に真っ裸で浸かった事があるが、あのときは周囲に人がいるわ、橋や対岸の旅館から丸見えだわ、で全く落ち着かなかった。その点、ここは周囲に誰もいなくて素敵。
ただ、オンシーズンの時にここを訪れたら、全く別の印象を持ってしまうと思う。事実上湯船はわれわれがいるところだけしか存在せず、イチから新しい湯船をこしらえるのは無理に等しい。で、この湯船、熱いお湯が流れ込む事を踏まえるとわれわれ2名、頑張ってもあともう1名が浸かるのがやっと。先客が居るとまず入るのは無理だと思わないと。

しぶちょおがスリッパを洗っている。
スリッパと足の間に細かい砂利が入ってしまい、その都度足の裏が痛くなるのだった。
風呂入る時はスリッパ着用のこと。裸足だと痛くて歩けないからだ。川の上流地点だけあって、砂利は結構鋭い。
丸裸になっておきながら、スリッパだけは履いているというのは変態紳士っぽくてなんだかわくわくするよな。

お湯の濁りが落ち着いてくると、写真が非常に撮りにくくなってきた。
何せ、浅い湯船だ、肩までお湯に浸かろうとするとどうしても股間をせり上げるような体型になってしまう。そうすると、写真に「良い思い出」として残ってしまうのだった。
写真を撮っては確認し、
「おい、写ってるぞこれ。モロやないか」
なんてゲラゲラ笑い合う二人。お互い交互にそんなことをやっている、変なチ●コ祭り。

湯温が高いので、二人とも川の水の流入口近くに陣取るのが定番となった。写真だと、おかでんの頭上すぐのところに流入口があるのが判る。こんなに近くに冷たい水が流れ込む場所があったら、肩周りが冷えるでしょう、と思うだろうが、実際その通り。しかし、足下の方は熱いのだから、微妙過ぎる。
全身浴をしている状態、の写真を撮ろうとするしぶちょおだが、おかでんとしてはなんとしても親から授かった大切な股間だけは隠さないといけない。その結果、体を縮めてしまい、なんとも格好が悪いのだった。
「大自然の中で雄大な気持ちになって豪快に風呂に入っている」雰囲気ではない、これは。

結局一番妥当な写真となったのがこちら。
あぐらをかいて座り、手で股間を隠すことで対応。手で隠していなかったら、お湯から透けて見えてしまう。
しかし、こういう写真を撮るために、何度も湯船から出たり入ったりしていたので、その間は股間ががら空き。もう、チ●コにはなんの希少価値がない状態に。

最後、広大な水風呂にざぶんと浸かるおかでん。なに、水風呂といっても中津川のことなんだけどね。
さすがに冷たかった。のぼせるほど湯に浸かっていたわけではないので(物理的にそれは困難な湯船だった)、体が温まりきる前の水風呂。強烈に効いた。

風呂から上がり、服を着て宿へと戻る。
宿の前の自販機でスポーツドリンクを買って飲むしぶちょお。時計を見てみたら、1時間半くらい河原に滞在していたことになる。そりゃ喉も渇くわな。
おかでん?いや、おかでんは夜のビールに備えて今から水断ちっすわ。


夕食までまだ時間があるので、宿の中にある露天風呂に行ってみることにした。さっき、河原を掘った露天風呂に入ったばかりだが、今度もまた露天風呂。
あまり大きくないらしく、貸し切り露天風呂になっていた。家族などで入るのに最適。
下駄箱があり、いったん外に出なければならないらしい。その下駄箱にはサンダルがあるのは当然として、長靴、そしてかんじきまで用意されていたのにはびっくりした。そうか、冬の季節に露天風呂に入ろうと思ったら、外は大雪だもんな。
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