すべての食材をダッチの中に入れ終わったら、フタをしてフタの上にも炭火を置く。
ダッチオーブンが優れているのは、鍋の下からだけでなく、上からも加熱できる点にある。だから「オーブン」と呼ばれているわけで。
しかし、一つ大きなミスをしていた。鍋の上に載せる炭をこしらえていなかったことだ。鍋の下に敷く程度の炭の量しかスタンバイしていなかった。
今から炭をおこしていたら時間がものすごくかかるので、少ない炭をダッチの上と下に分けて乗せることにした。火力、弱ぁ。
ここでまたまた隣の奥さん登場。
「まだやってるの?」
小馬鹿にしたような声で聞いてくる。
「ダッチオーブン一つで4つの料理を作っているから、手間がかかるんです!」
と言ってやりたかったが、説明が面倒なので「ええ、まあそうです」とだけ答えておいた。こっち構わないで欲しい、お願いだから。
火力が弱いと言えば、オリーブオイルと共に着火されたたき火も火が消えてしまっていた。全く相手にしていなかったので、すねてしまったらしい。待て、落ち着け、もう少ししたら相手しちゃるから、早まるな。
グラタンはしばらく時間がかかりそうなので、まずはできあがった3品で食事を開始することにする。
カレイとエリンギのフライ、ラタテュイユ、かぼちゃのデザート。
これにご飯が一人一合ついてくるわけだから、これだけで十分じゃあるまいか、という量だ。グラタン、無くても良かったかも。でも、もう現在絶賛加熱中なので、後には戻れないデスよ。
というわけで、すっかり日が暮れて19時半になってしまったが、ようやく夕食ですよと。4時50分から調理を開始していたので、2時間40分もかかってしまった。自宅でこんな手間暇かけた料理なんて作るわけがないので、喜びもひとしおだ。写真上のおかでんの笑顔を見よ。おかでんは写真撮影の際は無表情であることが多いのだが、このときばかりは良い笑顔を見せている。
えっ、ビールがあるから、だって?うーん、その可能性も否定できんな。今日は朝も昼もビール飲んでいないから。
まずはカレイのフライを食べる。
うん、おいしいぞ、これ。きれいに揚がっているから、まずかろうはずはないとは思っていたのだが、このサワーソースがなんとも美味い。知らなかったよ、マヨネーズをヨーグルトと混ぜるとこんなにおいしいソースができあがるなんて。
エリンギのフライも美味い美味い。片栗粉で揚げるよりもはるかにおいしくできたと思う。さすが「まかせて粉」と名乗るだけはある。
ラタテュイユも良くできていた。ピリ辛に仕上がっているのが大変に結構なことだ。なんのこっちゃよくわからん状態からこしらえたにしてはおいしくなっていたと思う。これはご飯のお供というよりもワインなんかとあわせたらおいしいと思う。
20分ほど加熱されたダッチオーブンをサルベージする。火力が弱いので、もっと時間をかけた方が良かったかもしれないが、20分かけても火が通っていないようだったら30分やろうが40分やろうが一緒。とっとと中身を確認してみることにする。
ダッチオーブン、オープン。
うーん、本当は表面のチーズに適度な焦げ目がついているのが理想なんだろうが、さすがにそこまでは火力が強くなかった。でも、茄子が美味そうに並んでいる、良いグラタンができあがった。
お椀に山盛り盛ってもまだあまりがあるグラタン。食い地獄だ。
「食べきれなかったら残せばいいじゃない。明日の朝食べればいい」
と思うだろうが、明日の朝は朝でしこたま食材がスタンバイされているんですわ。基本的に食べ残しを次の食事に持ち越しするのは禁止。
それにしても、このグラタンとご飯だけで食事として完結してしまうぞ。ダッチオーブンで4品作る、というのは面白いチャレンジではあったが、人数が多い時にやらないと食い地獄になるというのは想定していなかった。そうだよなあ、レシピは4人前で作られているからなあ。よく考えれば当然のことだった。てへぺろ。
今日のおかでんは、ビールだけじゃない。ナナーズで売られていた「マルメロ酒」なるものを買ってきてあったので、それを開けることにした。
単に語感が面白いから買っただけで、あんまり深い意味はない。おかでんは基本ビールしか飲まない性分なので、自ら率先してこういうお酒を買うのは珍しい。それだけ、「マルメロ」という言葉に惹かれたのだった。
どうやら、マルメロという果実は諏訪地方の特産品らしい。初めて聞いた。そのマルメロを焼酎に漬け込んだものがマルメロ酒。
味はどうだったか覚えていないが、ストレートで飲むよりオンザロックにした方がおいしいかな、と思ったことは覚えている。
食事が一段落したところで、たき火。今度こそちゃんと着火させ、火が織りなすスペクタルショーを堪能した。
3時間ほどたき火をしたが、それだけの薪をものの数十分であちこちからかき集めてこれたのだから、廻り目平はたき火天国だ。しかも、直火OKときたもんだ。今日び、直火を認めているキャンプ場はそれほど多くない。
これで「飯能河原」で合宿をやっていた時のように、歌を歌ったり踊ったりできれば最高なんだが、何せ目と鼻の先に別のテントがある密集状態。火は盛大でも結構だけど、声だけは大人しくしないと。その点窮屈ではある。
結局、デザートとして用意されていたかぼちゃは食べられる事無く翌日持ち越しとなった。残念!「ダッチオーブンで4品作る」ことはできたけど、「胃袋は3品しか受け付けなかった」ってこった。アワレみ隊の負けぇ。
カレイのフライ用に使ったサワーソースが余っているので、これをかぼちゃにつけて食べるとおいしいかもしれない。サワーソースも明日の朝まで残しておくことにした。
クーラーバッグを冷やし続けていた、1.7kgの板氷が完全に溶けて水になっていた。キャンプ場の近くにあるスーパーは、こういう「冷却グッズ」も売られているから利用者にとっては大変ありがたい。都会のスーパーではなかなかこういう「板状の氷」なんて売っていないと思う。カラテの必殺技で板氷をぶち破る、くらいのニーズしかないもんな。
24時就寝。
2010年07月19日(月) 3日目
最終日朝。7時過ぎに起床。
まずやることは、お茶を沸かすことと、昨晩のダッチオーブンの始末。グラタンがダッチオーブンにべったりとついているので、それをまずは拭き取り、その後洗う。洗い終わったら丹念に乾かして、油を塗って、冷めるのを待って、袋に詰めて。手間がかかるやっちゃ。
残っている食材を全部並べてみた。
結構あるぞ、これ。
今回の朝食がキャンプ最後の朝食になるので、すなわちこれを朝ご飯として全部食べてしまわないといけない、ということだ。
いや、いけない、という事はない。お持ち帰りにしたっていい。でも、キャンプの余り物を持ち帰るのはなんとも冴えないものだ。できればここで使い切ってしまいたいところ。
というわけで、まずは余っているにんにくの処理から。
えーい、ご飯の中に入れちゃえ。ガーリックライスだ。朝からなんてことしてくれるんだ、と米に抗議されそうだが、許せ。
お味噌汁の中にも刻みにんにくを入れてやった。どうだどうだ。
具だらけ。揚げと豆腐も入っているので、汁よりも具の方が偉そうにしているお味噌汁になってしまった。しかも、にんにくという強烈な個性を持っている食材が投入されたわけで。
これでにんにくは全部使い切った。やったぜ。
キャベツも結構残っていたので、使い切る事にする。千切りを作ってサラダとして食べるのと、細かめに刻んで味噌汁に投入するのと。
ただでさえ具が多い味噌汁に、さらにキャベツを投入とな。お味噌汁の鍋が野菜だらけだ。これ、お好み焼きをこれから焼こうとしているかのようだ。
悲劇はやっぱり起こった。
どさっ、という音がしたので振り返ってみたら、炊飯鍋が地べたに転がっていた。
アワレみ隊史上二度目の事件。
「ああ!」
ただ、前回と違うのは、二人とも冷静で、「まずは写真を撮っておこう」とデジカメを取りに走った事。もうひっくり返っちゃったものは今更仕方がない。今一秒でも早く救出したところで、事態が改善する事はない。だったら写真撮って記念に取っておこうぜー、という楽観的な考え。
不幸中の幸いだったのは、ご飯が炊けているタイミングが良かったのか、あまり米がこぼれ落ちなかったということだ。
この後、何事も無かったように炊飯続行。
もっとも、炊いている最中のお湯がこぼれてしまったので、水加減は調整しないといけない。どれくらい水を追加すればちょうど良いのかは、運任せで適当に加減するしかない。
ついさっきご飯の悲劇があったばかりなので、味噌汁を作るガスストーブは慎重に場所選びをして据え付け。
しぶちょおが見ていないうちに、まだ残っていたこーれーぐーすの島唐辛子を全部味噌汁に投入。
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