

脱衣スペースは一度に3人入るのが難しい狭さ。2人がやっとというところ。浴室も非常に狭い。「大浴場完備!」とか「展望露天風呂が絶景!」なんてことはないので、温泉目当てで宿泊というのはちょっと難しい宿といえる。でも、今回はそんなことはどうでもよいのであった。なにしろ、タカアシガニを食べることが目的だから。温泉旅館(民宿)に泊まって、温泉が目当てじゃないなんてことはアワレみ隊史上初の試みだ。

3人が同時に湯船に入ると、こんな感じ。どうですか奥さん、セクシーな男たちが湯船にてんこ盛りですぜ。さすがは「男子会」だけあるぜ。ワイルドだぜ。

風呂上り、玄関近くにある休憩所で一息つく。セルフサービスでコーヒーを飲むことができるので、いっぱいいただく。なお、ここにはカラフルな浴衣が色とりどり用意されていて、「お気に入りの浴衣でのんびりお過ごしください」と書いてあった。
「よし、着替えてみようか」
「これ、女性用だろ。着られるわけがない」
多分サイズがあわず、浴衣がミニスカート状態になるのがオチだ。やめとけ。

玄関のど真ん中に何やらバケツが置かれていたので、何事かと思ったらタカアシガニでたー。まだ生きているので、わさわさうごめいている。「かに道楽」状態。すげー。
一同、生まれて初めてご存命中のタカアシガニを見たので、興奮度MAX。これがこの後われわれの目の前で調理されるのか。
「おい、食べきれるのか、これ?」
思わず声が出る。何しろ、タカアシガニは通常の料理に追加される別注料理。その「通常の料理」がもともとボリューム満点という噂を聞いているので、果たしてカニにまで行きつくのだろうか、と心配になってきたぞ。
おっと、心配していたらおなかが空いてきた。さあ、そろそろ夕食時間だ、楽しませてもらおうじゃないか。

18時15分、食事時間到来。一組一部屋で食事が提供されるようだ。

テーブルを見ると、鍋が二つある。ひとつはカセットコンロに土鍋が据え付けられていて、うどんを中心とした具が入っている。もう一つはなんとプロパンガスの火力の上に大きな土鍋。こちらはふたを開けてみるとお湯が入っているだけだった。どうやらこっちの大きな土鍋、タカアシガニを押し込めるためにあるらしい。ぞくぞくするなぁ、おい。










松崎荘の夕食。シンプルながらも「ああ、伊豆で一泊しているんだなあ」と旅情を感じさせるラインナップになっていた。
アオリイカの姿造り、金目鯛の煮つけ、熱川ポークの陶板焼き、カニ、サザエの壺焼き、なます、茶わん蒸し、果物、うどん、たくわん。
これだけの食材が並んで、一泊二食で8,000円しない程度の価格なのだから素晴らしい。
本日のメインイベント、タカアシガニは後程登場するようだ。
既にテーブル上にはありふれたカニが「俺が本日のメインだ」といばっているが、これは冷凍ものであり伊豆で採れたものではない。そうか、タカアシガニは別料金別注文の一品だから、別注文しない人にとってはこんなちっこいカニも貴重な存在なわけだな。

一同がとりわけ歓声を上げたのは、桶に入って出てきたアオリイカの姿造りだった。でかい!3人でシェアするとはいえ、このデカさは相当なものだ。わざわざ巻尺を持ち込んでいたわれわれは、めいめい己の巻尺で寸法を測る。
頭のてっぺんからげそ部分を除いた「腰の部分(?)」までで34センチ。貫禄のサイズだ。これ、2名でこのアオリイカ一匹を食べようとしたら、それだけでおなかいっぱいになってしまいそうだ。3人で訪れてよかったー。なにせ、この巨大アオリイカを食べた後、さらに超巨大タカアシガニが待っているんだもんな。
このアオリイカが「通常料金(一泊二食8,000円弱)」に含まれているんだから、あきれる。この宿、どれだけ食い地獄にしようとしているんだよ。しかも、イカの周囲にはマグロの赤身などが並び、「イカが非常に多い刺身盛り合わせ」状態になっとる。さらに、わさびは丸ごと一本、自分でお好みにあわせてすりおろしてくれ、と。なんていうぜいたくなんだ。
西伊豆は交通の便がかなり悪い場所だが、わざわざここまでやってきた甲斐があったというもんだ。

勝ち誇るしぶちょお。その手には保温ジャー。ご飯をここからセルフでよそうことになっているのだが、おひつではなく保温ジャーというのは初めて見た。で、中を開けてみたら、結構な量のご飯が入っていたのでさらにびっくり。たぶん3合は余裕であるぞ、という量だ。この宿、冗談でなく食い地獄を目指している。
お酒を飲まない、ご飯スキーなしぶちょおにとってはこの大量のご飯を見て血糖値とテンションが同時に上がらないわけがない。勝ち誇ったのはそういう意味がある。

酒が飲めるおかでんとばばろあは冷たいビールを喉に流し込みながらイカやらなんやらをつまみまくる。のっけからご飯のしぶちょおはご飯をわっさわっさと食べながらアワビやらなんやらを食べまくる。幸せな一時だ!

そうこうしているうちにタカアシガニ到着。たらいに入れられて出てきたが、それがまだ生きてむわんむわんと動いている奴。おおう、これはでかい。「バイキングに行ったらカニばっかり食べているんですよ」という奴でも納得、満足のでかさ。
「本当にこれ、食えるんか?(量的に)」
という声が上がるが、宿の人は
「食べられなかったら翌日の朝にお出ししますから」
と言う。食い地獄へようこそ、という心の声が聞こえた気がする。
「測らせてクダサイ!サイズ、測らせてクダサイ!」
宿の人を前に完全に子供状態のアワレみ隊。やはり「大は小を兼ねる」「でかいことは良いことだ」というのは本当だな。こんなデカいカニを見て、テンションが上がらない訳がないではないか。
ざっくりと横幅を計測してみたら、 110センチもあった。やっぱりでけぇ!「見かけ倒しのでかさ」ではない。本当にでかい。
しぶちょおが「持たせてください!」と宿の人にお願いし、その巨体を手に。そうしたらその他二人も「俺も俺も」となって「ふれあい動物園」+「写真撮影会」の様相を呈してきた。ほんと、よい記念だ。
それにしても、でかいカニではあえるが、凶悪なツメを持っているわけでもなく、おどろおどろしい外観をしているわけでもない。誰でも手にすることができる気楽な様相。安心せい、このあともうすぐでおいしく頂戴しちゃうからな。

タカアシガニを触りまくったり、写真を撮りまくる行為が一段落したところで、ようやく次の工程に進む。宿の人がおもむろにカニの足をつかみ、そしてハサミで足の根元をばっさりと切り落とし始めた。
「うわあ、残酷!」

一同若干引くが、食というのはいのちを犠牲にしなければならないものである、ということをあらためて実感する。カニが巨大な足をバタつかせて苦しがっていたら相当グロテスクなシチュエーションだが、案外カニはおとなしくこの状態を受け入れていた。悟りを開いているのかもしれん。生死これ同じなり、なんて考えていそう。

切り取った脚がポイポイと沸騰したお湯の中に投入される。・・・いや、「ポイポイと」という表現は妥当ではないな。「ドプンドプンと」という、もっと重たい音の方が当てはまりそうだ。それだけ、でかい。こんなでかい脚を鍋に入れるわけだから、鍋も当然でかい。だからだな、わざわざプロパンガスのコンロを使っているのは。タカアシガニをゆでるためには高火力が必要。ひとつ勉強になった。

結婚式の「ケーキ入刀」状態の食卓。ばばろあ、しぶちょおがカメラを構え、カニ脚をゆでているのを撮影中。
そしてその様を撮影するおかでん。

残された胴体だけのカニ。なんだかとても無念そうにも見えるが、大丈夫だろうか。こころのケアをしてあげたい。・・・このカニを食べることによって。

ものの8分ほどゆでたところで、待望のカニ脚が鍋から引きずり出されてきた。宿の方がカニ脚の関節をくいっとひねり、そのままスポンと殻を引き抜いた。えっ、そんなに簡単に抜けるの?ほんとに「スポン」という擬音がぴったりなくらい、すっぽ抜けた。今までカニを食べる時、カニ用のスプーンで必死にほじくり返していたあの労力はいったいなんだったんだ。
どんどん積みあがるカニ脚。さあ、あとは食べるだけだ。

おっと、食べる前に計測計測。
巻尺で測ってみたところ、間接と関節の間(人間で言ったら太もも部分?)の長さは17センチあった。でけー。長さもさることながら、太さも相当なものだ。大人の指ほどの太さがあるぞ。これ、合計10本だから一人3本ちょっと。結構な量だ。
さっきまでアオリイカに注目が集まっていたのに、一気にアオリイカ人気暴落。もうこの場の空気は完全にタカアシガニに乗っ取られていた。

通常のカニを食べるおかでん。

タカアシガニを食べるおかでん。
この差はいったいなんなんだ。同じカニと名がつく生き物とは思えないサイズの違いだ。小さいのは子供で、大きいのが大人ですといわれても信じられる。
さっそくほおばってみる。今まではカニスプーンでさんざんほじくられ、粉砕されたカニを食べることが多かったが、ここのカニは違う!まさに「かぶりつく」のだ。「むしゃぶりつく」のだ。なんて素晴らしい。深海の奥深く、どうやったらこんなに大きく、むっちりと成長できるというのか。
味はねっとりと甘い。タラバやズワイとちょっと味の系統が違うが、カニに間違いない。

二回に分けて10脚全部をゆで、そして堪能した。結構ぺろりと食べられるものだな。
そのあと、今度は残された胴体部分をゆでにとりかかる。
この胴体はしっかりとゆでることになっているらしく、なんと35分もゴトゴトとゆでまくった。
てっきり宿の方に忘れられ、放置プレイの憂き目にあっているのではないかと心配になったくらいだ。

胴体がゆで上がるまでの間、カラになった脚の殻をたらいに並べてみる。
計測してみると、どれも20センチくらいの長さがあり、あらためてそのでかさに驚く。そして、それらを全部食べてしまった自分たちにもびっくりだ。案外ぺろりと食べられるものだな。でも、これだけカニを食べたら、翌朝起きたら自分自身がカニになっているんじゃあるまいか?


金目鯛の煮つけのタレを残しておいて、ご飯に混ぜておじやにして食べるばばろあ。なるほど!そういう食べ方もあるのか。しかも、用意周到なことに、火がついていた固形燃料を途中で消しておいて、ご飯とまぜまぜする時になって再度着火するという凶悪な行為に及んでいた。美味いに決まっているだろ、それは!
結局3人ともタレをご飯と混ぜて食べた。
ビール飲みのおかでんだが、ここで大量のおかずにギブアップしてご飯に移行。ビールが進む料理たちであったが、日本人の性なのか、ご飯が欲しくなっちゃった。そのため、今回の食事では瓶ビール1本だけ、というおかでんとしてはあり得ないくらい少量の飲酒量となった。
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