
大滝荘のすぐ近くにある「七滝茶屋」というところでお昼ごはんを食べる。
いかにも伊豆らしい蕎麦、「わさびざるそば」を食べる。840円。
薬味皿の上にわさびがてんこ盛りになっている蕎麦、ではないぞ。なんとわさびが練り込んである蕎麦だぞ。つるつるッと手繰ると、鼻にツーンときてむせたりするんだろうか?
このときの様子はこちら

雪が本格的に降ってきた。温暖な気候の伊豆半島でも、こんなに雪が降るんだな・・・雪ってきれいだよな・・・
って、楽しんでいる場合じゃない。今日は雪は味方でもなんでもない。われわれの行く手を阻む、敵だ。
さあ、食事がすんだことだし、とっとと宿に向かおう。
楽天家なおかでんは「こんなに早く宿についても暇じゃん。もっと寄り道していこうぜ」、と思っていたのだが、状況がそれを許さなかった。刻一刻とチェーン規制、そして道路封鎖されていく道が増えていく。伊豆半島は今まさにずたずたに分断されてしまっている状態となった。われわれが通る天城峠も、うねうね峠道の旧道の方は既に通行止め。新道が通行止めになるのは時間の問題だった。
宿に電話してみたところ、早い時間にチェックインするのは構わないとのこと。あと、「ノーマルタイヤの車も結構天城峠方面に向かっているので大丈夫ではないか」とのことだった。

ループ橋をぐるぐるとのぼっていく。雪は相当降っている。

天城トンネルを超えたところで、渋滞に巻き込まれた。何事だろう。

あーあー、こんなことになっている。
峠を下る方は事故はないのだが、上る方は脱輪している車、タイヤが空回りして全く前に進めなくなった車、様々だ。そんな車が路上に立ち往生しているので、上り下りともに渋滞してしまっているのだった。
事故っている車を後目にわれわれは移動する。しぶちょおの絶妙なアクセル/ブレーキワークの賜物で、スリップすることもなく車は峠越えを完了させた。
湯ヶ島のはずれにわれわれが二泊目をする宿があった。民宿富士見山荘。いったん通り過ぎてしまい、「?」となってUターンしてようやく発見した宿。

富士見山荘がわれわれの目に留まり予約と相成ったのは、冬季期間中猪料理を出してくれる宿だったからだ。伊豆の冬の味覚といえば猪が有名。あちこちの宿で当たり前のように猪料理を出してはいるのだろうが、「どうだ!猪を食わせるぜ!」と言わんばかりのやる気満々な宿って案外見つからないものだ。そんな中、富士見山荘はこんなことをwebに書いている。
猪は豚化に属するため、一般的に出回っている猪肉は固くて臭いというイメージをお持ちの方が多いことと思われます。当荘がお出しする猪肉は、マグロで言う大トロ!口に入れた時の歯ごたえは、まるで牛のようなまろやかな食感・・・・。ここでしか食べられないぜいたくでジューシーな5種類の猪料理が味わえます。
<1.猪シチュー 2.いのししコロッケ 3.猪焼き 4.猪釜飯し>
なんたる自信。そして、一品とはいわない、3品でも4品でも猪料理を出すぜ、というこの意気込みが素晴らしい。ぜひこの宿に泊まろう、となったのは必然だ。でも、「5種類の!」と言っておきながら、紹介するのは4種類というこの間違いっぷりがお茶目。

宿の前に車を停めた際、犬がやたらとけたたましく鳴いていた。出てきたご主人に話を聞くと、飼っているのは猟犬なんだという。ご主人自らがこの猟犬とともに山に分け入り、猪をはじめとするジビエを狩猟しているんだそうな。すごいな、ハンターの家だったのか、ここは。
というわけで、玄関先にはハンティングしたものと思われる動物の剥製がずらり。
「気を付けないとわれわれも狩られるぞ」と身構える。

通された部屋は、縦長だった。6畳+3畳で9畳の部屋。どうやってこの部屋を満喫しようか、ちょっと悩む。せっかくの広い部屋だ、できるだけ大きく使いたいところだ。
でもそれは、夜になってあっけなく解決した。6畳間の方に布団を敷いて、3畳の方でおしゃべりしたりゲームしたりすればよいのだった。簡単な話だ。
6畳間の部屋だったら、布団を敷いたら机は部屋の隅に移動させないといけない。しかしこの部屋ではそれが不要なのだった。

部屋のすぐ横がお風呂。さっそくお風呂に入りに行く。内風呂は一つだけで、男女の別はない。
壁に貼ってあるいわゆる「温泉効能書き」のような紙を読んでみたら、ここの宿は温泉ではなく水道水を使っていることが分かった。おや、温泉じゃなかったのか。まあ、あまりその点は気にしないので全然問題はない。猪さえ満喫できれば今回は満足。

お風呂は湯気が溜まり、自然のぼかし効果を生んでいた。ここだったら大股開きをしたって、カメラに写ってはいけないものが写りこむことはなかろう。
では、さっそく私が四股を踏むところを写真で・・・
やめとけ。

この宿には内風呂とは別に露天風呂があるという。小規模の民宿なのに、沸かし湯で露天風呂をこさえるとは結構大変なことだ。感心する。
やることがないわれわれは、さっき内風呂に入ったばかりなのに露天風呂に行ってみることにした。

露天風呂は玄関からいったん外に出なければならない。

宿の人から、「長靴を履いていかないとすべりますよ」と言われ、長靴を貸してもらう。大げさな、と思ったが、いざ外に出てみると確かにこりゃ長靴が必要だわ。露天風呂への道は雪に埋もれていた。今日の伊豆はどうかしてるぜ。

露天岩風呂。3人が入ればいっぱいになる湯船。男女混浴と書かれているが、実際は貸切風呂の扱いになる。間違っても女性が入浴中にわれわれが入っちゃいけない。
富士見山荘、という名前からして、多分晴れていれば富士山が見えるのだろうが、今日はあいにくの雪。眼下に道路が見えるだけだった。

風呂上り、さきほど盛大に吠えていた犬を見に行く。
人間が来た、ということで愛想を見せるが、うっかり手を差し出したら噛まれるんじゃあるまいか。怖くて手が出せなかった。なにせ、猪や鹿を追い立てる犬だ、人間に対して忠誠心は高いだろうが、一見さんのわれわれに心を開いてくれるかどうかはわからない。

17時過ぎ、食堂の横を通りがかったら、既に料理の準備が始まっていた。今回はわれわれ3名のほかに、1組だけが宿泊するようだ。その1組はわれわれとは違う料理なので、どうやら連泊しているらしい。
そんなわけで、突撃!となりの晩ごはん。
われわれの料理の写真は後でたっぷり撮るとして、他人様の料理の写真を今のうちに激写することにした。

カニが丸ごと一匹入った鍋があるな。これは伊豆名物のズガニ(モクズガニ)の鍋だろうか。よくわからない。

あと、薄切り肉があるが、これは鹿の刺身だな。どれも伊豆、しかも伊豆の内陸部の風情を感じさせるメニューだ。素晴らしい。ちなみにこれはわれわれのメニューには存在しないものだ。連泊しても伊豆っぽさを引き続き満喫できるというのは宿泊客にとってありがたいことだ。

18時過ぎ、夕食の時間になったのであらためて食堂へ行く。
民宿だからといって侮ることなかれ、品数豊富な料理が机いっぱいに並んでいた。何がすごいって、固形燃料を使った料理が一人あたり3つも並んでいることだ。過去、豪華な旅館に接待でご招待された際、2つの固形燃料料理がお膳に並んだ時はずいぶん感動したものだ。しかししかし、この宿はその「豪華な旅館」を上回る3つの固形燃料で勝負をかけている。すごい。固形燃料の数の多さがが食事のおいしさだとか豪華さを表すものではないが、なんだかお得感満載な感じ。
とはいっても、こんなものが食堂のあちこちで着火された日にゃ、酸欠になってしまう。なので、寒い真冬だというのにもかかわらず、頭上の換気扇がブンブンフル稼働で回っていたのだった。










料理の数々。猪を全面的に押し出しつつも、それ以外の料理もしっかり並ぶ。さすが伊豆だな、と思わせるのは、お刺身用のわさびは生わさび丸ごと一本、用意されていたことだ。これは昨晩雲見温泉に泊まった時も同様だったし、伊豆半島内ではわさびが格安で流通しているのだろうか?

とりあえず乾杯。昨日はアオリイカ&タカアシガニの圧倒的パワーの前にビールおかわりをしそびれたが、今日こそは猪でビールを飲むぞ。・・・結果的に、手酌でビール大びん3本飲んだった。腹がたぽたぽいうぞ、おい。

われわれが食堂に姿を現す前から、宿のおかみさんが次々と料理の固形燃料に着火していた。そのおかげで、食べるペースと全く関係なく暖かい料理ができ上がってしまって、大忙しだ。特に酒飲みのおかでんにとって、猪釜飯があっという間に炊き上がってしまったのにはまいった。釜飯つまみにビール飲めというのか。
否!猛烈な勢いで飲んで、食うべし。それそれ、しゃべっている余裕はないぞ。
とはいっても、乾杯したのが18時ちょうど、釜飯ができ上がったのは18時3分。むう。
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