蕎麦ピザの生地だが、案の定安定感がない。ピザのようにぐいーんと生地が伸びていくのは期待できない。というか、あきらめろ。しぶちょおが慎重に生地を伸ばす。麺棒なんて邪魔なものはあいにくキャンプ場には持ち込んでいないので、手の平でぐりぐりと押さえながら生地を広げていく。
蕎麦屋だけどピザを出す店、「山の実」をイメージしてこしらえていくしぶちょお。
結局、2枚の蕎麦ピザの生地を作り上げた。
具は、玉ねぎ、ピーマン、にんにく、えのき、ベーコン、カニ缶詰。それにトマトソースと、とろけるチーズ。
カニ缶詰が唐突だが、これはしぶちょおが自宅から持ってきたもの。せっかくだから何かに使おう、という話になったのだが、それがピザだった。
同時に、今日のお昼ごはんとしてパエリアをこしらえる。
パエリアを一からこしらえるのは大変なので、もちろんパエリアの素を使う。たまたまスーパーの売り場でこの「パエリアの素」を発見し、こんな面白いものがあるのか!と感心したわれわれ。とりあえず買っちゃえ、ということで買ってしまったのだった。そのおかげで、パエリア食べつつピザを食べる、という非常に中途半端な昼ごはんとなってしまった。しかも、パエリアの素はご飯3合分だ。さりげなく食い地獄だ。
具は玉ねぎ、ピーマン、にんにく、ベーコン、カニ缶詰。ピザの具と相当かぶってしまった。というか、ピザ用のものを利活用したという言い方が正しいか。
ご飯を炊く。過去2回、ご飯釜がひっくり返ってご飯が大地に還ったことがあるので、慎重に炊く。なにせここは尾根筋、風が吹き抜ける場所だ。いつ強風が吹き抜けるか分かったもんじゃない。しぶちょおは風よけとしてベンチを立てかけて炊飯をしていた。
一方おかでんはガスストーブで炭火をおこしている最中。
「ガスストーブを使って炭火を作って、その炭火で調理するってなんだか意味不明だな」
思わずぼやいてしまう。火力から火力を生む、ってとても不毛だ。最初からガスストーブで調理すれば話は早いのだけどね。でもダッチオーブンを使う以上、風情が大事ですよ風情が。炭を使わないと様にならない。
U字溝に炭を敷き、その上にダッチオーブンを置き、ふたの上にも炭を置く。これぞダッチオーブンの醍醐味(だいごみ)、「上からも下からも熱を与えまっせ」だ。これはふつうの鍋ではできないこと。ピザを調理するには最適。
そうこうするうちにパエリアが炊き上がってしまった。相変わらず米モノは早いな。ノートラブルでできちゃうコツをつかんでいるので、楽だ。
ピザは炭火をケチったためなかなか火が通らない。先行してパエリアを食べることにする。
一品だけ料理するのに炭火を使う場合、どうしても無意識のうちに量をケチってしまうんだよな。その結果、炭火が真っ赤におこる事なく、うんともすんとも言わない程度にしか火がつかないのだった。で、そんなものを料理に使ってもほとんど火が通らない、と。炭は豪快に使った方がいいな。どうせ4kgで400円くらいで手に入る廉価なものだし。
蕎麦ピザ、完成。こんがりきつね色、とまではいかなかったが、一応火が通っているはずだ。
ピザに手を伸ばす二人。
「・・・すっぱいな」
「ああ」
「傷んでるぞ、これ」
なんと、蕎麦粉がすっかり劣化してしまったらしく、酸味がする。いや、酸味しかしない、というものなのだった。なんスかこの罰ゲームは。
振り返るに、この蕎麦粉を「山の実」で購入したのは1年以上前のこと。その間、じっくりと熟成し劣化し、今となっては食べるのが危険な代物に育ってしまったのだった。
仕方がないので、生地は食べないで上の具だけを食べることにした。箸で。
「まさか箸でピザを食べることになるとは・・・」
これまでも、そしてこれからもこんな機会はないと思う。箸で食べる和風?ピザ。
もうこうなれば二枚目のピザは適当だ。どうせでき上がっても、まずい上に危険なピザができてしまう。とはいえ、トッピングした部分だけでも食べたいところ。結局、手抜きで二枚目のピザをちゃちゃちゃっと仕上げることにした。手抜きポイントは、炭火を使うのをやめてガスストーブで下から熱を加える、というもの。なんだ結局ガスストーブかよ。
お昼ごはんの片づけが済んだところで、お風呂に入りに行くことにした。かやの山荘は日帰り入浴を受け付けていないが、下界まで下りたところに「みのわ温泉ながたの湯」という温泉があるらしい。カーナビを頼りに行ってみる。現地まで車で30分程度。
この温泉、肌がつるつるになって楽しいお湯だった。翌日までつるつる感が残っているのだからなかなかなものだ。汗を流してさっぱり。
帰り道、広域農道を進んでいると見晴らし台のようなスペースがあった。
そこから対面にある山を見る。われわれがテントを張っている萱野高原はあの山のてっぺんあたりだ。
それにしてもかやの山荘が非常に目立つところにある。まるで「ザ・ウィンザーホテル洞爺」のようだ。よくあんな所に宿をこしらえたもんだと感心。
ここからは南アルプスの眺めがとても良い。
まだ雪を纏っている遠方の山は上:甲斐駒ケ岳、下:仙丈ケ岳。あとはよくわからん。
どちらも登ったことがない山だ。いつか登らなくては。
下界から見上げてよく見える山だから、山頂から見下ろすとさぞや景色が良いことだろう。
温泉から宿に帰る途中、見かけたお店。その名もずばり「ファミリーレストラン ゲルマン」。
一体なんでこんな名前をつけちゃったんだオイ。
「店のオーナーがドイツ人なんじゃないか?」
「だとしてもゲルマン、というのはちょっと不思議な名前だな」
「ひょっとしてドイツ料理の店?」
「いや、ファミリーレストランって書いてあるぞ」
全く想像がつかない。しかも、恐怖映画に出てきそうな字体がさらに味わい深くしてくれる。
興味本位で入ってみたい衝動に駆られたが、空腹でもないのでやめにした。後で知ったが、このお店は2011年夏に惜しまれつつ閉店してしまったらしい。惜しい!結局「ゲルマン」というネーミングは謎に包まれたままだった。
帰りがけ、この先を行けば福与城という城跡がある、という看板が見えたので、立ち寄ってみた。しぶちょおにしろおかでんにしろ、城跡には全く興味がないのだが、ばばろあが好きだといことで少し感化されている。実際、こうしてばばろあ不在の状態でもお城を見に行ってしまった。
福与城跡は大きな駐車場、そして仮設トイレが3つも設置されている立派な設備が整っていた。
「なんでこんなに設備が整っているんだろう?」
「夏まつり会場とかになるのかな?」
「小学校の遠足なんかに使われているかもしれない」
これまた謎が多い城。
後日、写真を見たばばろあが
「城の写真がないのが残念」
と言っていたが、そりゃ無理ですぜ旦那、城跡に立ち入ったわれわれだけど、一体何が「興味深い」箇所なのか、そうでないのかが全く分からんかった。通には通なりの見どころってのが城跡にはあるのだろう。
テントに戻ったら、タープのペグが外れてタープがべろんべろんになっていた。テントもダッチオーブンが重しになっているから転倒こそしていないが、ずいぶんシルエットがいびつな状態になっていた。われわれが風呂に入っている間も、やはり強い風が吹いていたようだ。稜線のテント場なので、天気があまりすぐれない日はモロに影響を受ける。でもまだ雨が降っていないだけマシだ。予報だと明日の午後から降り始めるということだが・・・。
16時半、夕食の準備開始。この日の夕食はチリコンカン(ポークチリビーンズ)と豚テキ、そしてご飯の予定。
豚テキなんて作ったことも食べたこともあまりないが、スーパーで買い物中に豚テキ用の肉を発見してしまい、興味本位で買ってしまったのだった。でも、いつ食べるかという計画があいまいだったので、結局二日目夕食のところに押し込まれた格好。チリコンカンでも肉はたくさん使うわけだし、今日の夕食はやたらと肉が多いな。いや、それだけじゃない。前日の昼はバックリブ、夜は焼肉だったことから、今回のキャンプは全体的にやたらと肉が多い、ということになる。スーパーの精肉売り場、してやったりだな。まんまとアワレみ隊が売り場のリコメンドに乗せられてしまっている。
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