13:21
古里ヶ浜の変わってしまった景色にショックを受けてしまったわれわれ。また浜に戻って、詳しく検証しなくちゃ。でも、その前にこの岬をもう少し歩き回ってみようと思う。
この岬は、20年前の天幕合宿時、ビールを冷やす場所として使っていた。魚を干す網の中に缶ビールを詰め、そこに長い荒縄をくくりつけて海に放りこんでいた。その場所がここ、というわけだ。縄の端は、岩にくくりつけておいた。
岬に遊びにやってきていた島の子供達が、「なんだこれ?」と縄を引っ張りあげ始めたので、それを見たわれわれは慌てて岬に走っていって止めに入ったっけ。
肝心のビールだが、全然冷えなかった。海に投げ込んでも、網は沈む事はなく、ぷかぷか浮いた。そのため、太陽に温められた海表面にずっと放置され、ビールはぬるいままだった。これは作戦大失敗。かといって、石でも詰めて重たくしたら、今度は縄が切れてしまい、大切なビールは海底に沈んでしまう。それは悲しいので、結局諦めてしまった。
13:22
ここで21年前、神島の下見に訪れた時、写真を撮っている。スマホで写真を表示させながら、場所を特定させていく。海にある岩場の位置が、場所特定の参考になった。
1992年の神島。
崖が迫る岩場に、靴を脱いでそろえた状態で一枚。
まあ、入水自殺を図りました、という写真だ。若かりし頃の僕は、こういうブラックな事が好きだった。今はそんなことないのだけど。
こんな写真、なんで撮ったのか今では疑問だが、瀬戸内育ちの僕らのことだ、荒い波、海にせり出した岬、崖・・・という構図に興奮したんだと思う。
13:23
「もう一段、上から撮影した方がいいんじゃないか?」
「いやもう、これ以上は無理だ」
なんて言いながら、微妙にアングルを調整する。場所が特定できてからも、遠ざかってからズームさせるか、近づいて広角にするか。調整が難しい。
試行錯誤の末、撮影したのがこちら。たかだか靴を撮影するためだけに、結構手間取った。でも、随分再現性が高くできたと思う。バックの岩場など、さすがに20年経っても一緒だ。波に打たれても、そう簡単には変形しなかったか。
13:25
この岬では、もう一枚21年前に写真を残していた。その再現のため、もう少しここで粘る。ばばろあが細かい指示を、しぶちょおとちぇるのぶに対して出す。
1992年のアワレみ隊。
これも、さっきの靴と同様、神島の下見に訪れた時に撮影したもの。当時は、事前に1/25,000の地図で事前検討をしていて、本気でこの岬で天幕が張れると思っていた。砂浜は椎名誠かぶれのキャンパーがごろごろいるだろうから、われわれは孤高の存在として岬にテントを張るぜ、というわけだ。実際は、岩がゴロゴロしていて平らなところなど全くなく、とてもじゃないけど天幕なんて張れるわけがなかったのだけど。
13:28
2013年のアワレみ隊。
21年前(正確に言うと、20.5年前)と同じ面子で、同じポーズをとってみた。ばばろあが、岩のクラックの位置などを入念に確認し、画角を決めていた。おかでんはとてもじゃないがこういう細かい作業はできない。
また、写真に写る2人も、できるだけ当時と同じポーズをとろうと苦労していた。当時は、ごく自然にとったポーズだというのに、いざそれを再現しようとすると、なんと難しい事か!
「うわ、これはきつい」
などと悲鳴を上げながら、二人はポーズを固めていった。
砂浜に戻り、われわれが20年前に天幕を張った場所を探す。
ちょうど、「この20年ですっかり様子が変わってしまった」場所にあたるらしく、われわれはその場所の特定に少し苦労した。
1992年当時の様子はこちら。ばばろあが、折りたたみスコップを取りだし、地ならしを行っているところ。ブロックのぎりぎりのところに当時、天幕を張った。
2013年の古里ヶ浜。
すっかり、ブロックの上にかぶせてあった砂はなくなってしまい、ブロックが剥き出しになっている。これでもまだ、このあたりは砂が残っている方。写真に写っていないところでは、完全にブロックが丸出しの場所もあった。一体何があったらこんなに砂が抜けてしまうのだろう?
今だったら、ここにはテントを張ろうとは想わない。
1992年、初のテント設営を終え、その記念撮影を行った写真が残っている。その写真を再現してみることにした。何しろ、テントはないやら、地面はすっかり砂地が消えているやら、撮影がとても難しかった。背景の山を見ながら、場所をじりじりと特定していく。
1993年のアワレみ隊。
張り立てのテントを前に、ご満悦の一同。アワレみ隊初の、テント設営だった。まだ新品のテント。未開封品だ。「キャンプ用品は、本番で使う前に一度組み立ててみて手順や中身を確認すべきだ」とは耳にたこができるほど聞いてきたが、おかでんに関してはそれは一切やらなかった。面倒だったからだ。何しろ一人暮らしだ、一人でテントを組み立てたり、畳んだりするだけの場所も、人手もなかった。
2013年のアワレみ隊。
古里ヶ浜も、そして、写っている人たちも、後ろの山も、時代の流れを感じさせる一枚となった。
山なんて、20年経っても変わりはしないものだと思っていた。でも、木の茂り方などで、見え方はがらりと変わるのだな。
同じく、テント設営記念の写真。カメラマンが入れ替わっている。さっきの写真はおかでんが撮影したものだが、今度の写真はしぶちょおが撮影。そのため、二人が入れ替わっている。
腕を組んだおかでん(当時19歳)の誇らしげな顔を見よ!一年がかりでここまでたどり着いた事により、感無量だったというわけだ。
2013年のアワレみ隊。
なんか、荒涼感があるというか、なんというか。
おかでん(現在39歳)も、全然誇らしげな顔をしていない。良くも悪くも、ただのオッサンだ。これが「老い」というやつなのか・・・。
20年前のアワレみ隊は、毎朝5時起きだった。炊事班長のばばろあ以外は、全員起床直後から肉体労働が待っていた。薪拾いだ。太陽が高くなってしまうと暑くてかなわないので、まだ涼しいうちにやっておこうというわけだ。
当時は、薪をナタやのこぎりで切る際、砂浜の一部に顔をだしていたコンクリートブロックに木を据えて行っていた。
2013年の古里ヶ浜。
これは衝撃の一枚。すっかり変わってしまった・・・。
20年前は、ごく一部しか顔をだしていなかったブロックが、今では顔をだしまくりだ。
すっかり砂の位置が下がってしまったので、今までは腰をかがめて行っていた薪割りが、今だと半分見上げるような形で行う事になる。写真を見ると、隊員3人がブロックに埋没してしまってる。あああ。
すっかり変わってしまった古里ヶ浜に衝撃を受けつつも、われわれは往時の再現に時間と手間暇を費やす。
今度は、「カレーを作るばばろあ」。20年前、天幕合宿最終日の夜にばばろあがこしらえたカレー。その製造過程を写したものだ。バターが余っていたので、一箱全部ぶち込んでいる最中。
写真の右上がピンク色にぼやけているのは、レンズに指がかかってしまったから。「写ルンです」は、こういう撮影トラブルが頻繁におきた。レンズが出っ張っていなかったからだ。せっかくの大切な写真が、こういうトラブルに巻き込まれる事は当時は当たり前のことだった。デジカメ全盛のご時世、今じゃ、あんまり考えられないことだけど。
2013年のばばろあ。
すっかり砂が消えてしまった浜辺で、ブロックの上に乗ってポーズを決めるばばろあ。以前はここが砂で覆われていたとは、到底思えない。
この何気ないポーズだが、相当注文を付けて、10枚以上も写真を撮ってようやく完成したものだ。肩の角度とか、そういうのが再現できずに難航した。
14:00
次は、ちょっと難易度が高い写真の再現に挑戦。場所の特定がまずちょっと難しいのと、場所特定後もカメラアングルが難しい。
何度も何度も、スマホの写真を確認しながら、みんなで場所を探していく。
14:03
なにしろ、写真を撮った場所が、「既に砂を失った」ブロックのところだ。すっかり様相が変わってしまったので、なかなか場所の特定が難しい。
ちぇるのぶが、膝を上げて足を宙に浮かせている。結構しんどい格好だが、敢えてこのポーズをとっているのは、当時このあたりはずっと砂地だったからだ。当時と同じポーズを撮ろうとすると、「エア砂地」を演出しなければならない。そのため、ちぇるのぶは腹筋に力を入れて、ぷるぷるしながらこのポーズをキープしなければならないのだった。
14:06
さすがにちぇるのぶの腹筋が限界。写真を撮る前にどうにもならなくなってしまった。そのため、ちぇるのぶ用に流木の竹を探し出し、それを足を載せることにした。これでちぇるのぶ、随分楽になった。ご満悦の表情。
1993年のアワレみ隊。
最終日前日の夕方。炊事班長としてカレー作りに精を出したばばろあと、島一周をしてきた蛋白質。二人とも喉が渇いているので、ペットボトルに入ったお茶をぐいっとあおっているところ。それをちぇるのぶが、振り向いて見ているという図。
この写真の難しいのは、低いところから見上げるように撮影しているということと、そのカメラが地面に対して水平になっていないということ。さて、どうやって再現させようか。
14:14
2013年のアワレみ隊。
蛋白質のかわりに、おかでん。真ん中にある、突き刺さった流木が邪魔だが、これもまた「20年の歴史」の一つ。ブロックが、寒々しい。
二人が持っているペットボトルは、そのあたりに転がっていたものを拾ってきた。
さりげなく写真に写っているが、一応三人とも、格好については細かい指示を受けて、その通りの格好をしている。
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