長崎の過去と今-04

朽ちていく建物、護られる建物(その4)

路面電車

11:33
オランダ坂をそのまま進み、一旦谷に下りる。

途中、「東山手洋風住居群」という場所があり、洋館がまるで一戸建て分譲団地のように並んでいるのを見学したりした。住居群から坂の下を見下ろすと、そこには明るい色をした屋根の孔子廟。もう、何がなんだかごちゃ混ぜだ。さらにはキリスト教文化があちこちに息づいているわけで、とても面白い。

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谷を下りたところには、路面電車の電停があった。石橋、という名前らしい。ちょうどここが終点になっていて、線路がぶっつりと途切れていた。

「線路の終点って、ロマンだよな」

心底そう思うのだが、この考えに賛同してくれる人ってどれだけいるだろうか?

さっき、JR長崎駅でまさに線路の突き当たりを見たばっかりなので、今日はなんだかロマンが満ちあふれている。ロマンポルノだ。いや、全然違うけど。どさくさに紛れて何を言い出すんだキミは。

斜面をのぼるエレベーター

11:35
グラバー邸がある山にはここから取り付くことになるのだけど、遠方からも目立つ怪しいアーチ状の建物が見えていた。どうやらここにはエスカレーターか何かが備わっていて、階段をヒイヒイ言わなくてもスイーっと上に行けてしまうらしい。すげー。

その途中ループ橋のようなものがあるが、あれは歩道らしい。車いすの人向けに、バリアフリーで上まで登れます・・・というわけではなさそうで、おそらく展望台的な意味合いの方が強いんだと思う。推測だけど。

エレベーターで山の上にいける

おう、「グラーバースカイロード」という名前なんだな、ここ。

グラバー園までこれでぐいーっと行ける。あれ?斜行エレベーターなの?これ。それは随分お金をかけたものだ。

「一体いくらかかるんだろう」

と思いながらエレベーターホールまで行ってみたが、料金所は存在しなかった。なんと、無料らしい。

「すげえな、無料かよ」
「無料にでもせにゃ、観光客は山の上まで登ってこないんじゃろ」
「そうか、で、エレベーターで客を引き上げてから、グラバー邸のところで入場料をいただいてペイ、という仕組みか」

エレベーターの扉

エレベーターは1基しかない。なので、既に出払っている場合、戻ってくるまでに随分と時間がかかる。これ、観光客が多い時期なんて長蛇の列ができるんじゃあるまいか?「混んでいるから、歩いて階段を登ろう」と気持ちには今更なれない距離と斜度なので、ひたすら待ち続けるしかない。

エレベーター現在地

さすが斜行エレベーター。矢印表示が「上」と「下」ではなく、「左斜め上」と「右斜め下」だった。

「この山は5階建てなんだな」
「まさか途中で下りられるわけないよな?」
「途中で下りてどうすんだよ」

丸い窓があるエレベーター

しばらく待って、ようやくエレベーターに乗車。エレベーターはさほど大きくないので、こりゃあ混むときは混むぞ。GWみたいな時は。って、あれ?今ちょうどGWか。その割にはさほど混んではいない。平日だからだろうか。

エレベーターには円い窓がついていて、そこから潜水艦に搭乗している気分になりながら外を眺めることができる。

外では、階段で頑張ってはみたものの、途中で力尽きて苦笑いをしている人を何人か見かけた。頑張れ、頑張れ。僕らはお先に失礼しますけれど。

エレベーター上部

11:42
グラバースカイロードを上りきったところ。

やあ、一気に開放感ある景色になった。

というかなんだこりゃ。まるで平野がごとく、山の斜面であるべきところに建物がびっしり植わっているぞ。

「長崎は坂の町」とは聞いていたけど、確かにこりゃあ・・・凄すぎる。

ここまでミッチミチに家が詰まっているということは、コイツァものすごい人口が住んでいるに違いない。軍艦島どころの騒ぎじゃない人口密度に違いない。

・・・えっ?長崎市の人口、42万人?あれ、思ったより少なかった。ここまで斜面を切り開くフロンティアスピリットがあるくらいだから、よっぽど土地が足りないのだろうけど。恐らく、単に「平野が殆どないから、斜面に住まざるをえない」というだけなんだろう。

エレベーター上部2

11:45
大浦天主堂が眼下に見える。まってろ、あとで行くぞ。

「こりゃあもうタクシーで軍艦島ツアーのところに行くしかないな、昼飯は手続きを終えてからだ。場合によっちゃあ、昼飯抜きじゃね」

ばばろあが時計を気にする。あれっ、気がついたらもう正午近い。13時20分までに受付をしておく必要があるので、あと1時間半くらいだ。確かにこれからおちおちメシを食べてる場合じゃ、なさそうだ。

グラバー邸入り口

11:46
グラバー園入口。グラバー邸を始めとし、いろいろな洋館があるこの丘広範囲を「グラバー園」とし、公園として整備していた。・・・有料で。

ああそりゃそうだよね有料だよねと。

グラバー園、修学旅行のときも訪れた筈だけど、どうだっけなぁ?お金を払った記憶はないので、ここの入園は学校が払ったんだと思う。自由行動で各自自腹だったら、多分訪れていないと思う。

だって、現に40歳を過ぎた「遅すぎた青年」たちが、

「うお、有料だぞ、どうする?」

なんて顔を見合わせているくらいで。

一方ばばろあはというと、カネを払って当たり前だろ、とばかりにぐいぐいと中へと入っていった。かっけー。僕も入園料610円にビビらない大人に早くなりたいです。

グラバー邸

お金を払って中に入る。

「素晴らしいな、鯉が泳ぐ池があるよ」

お金を払った以上、最大限楽しまないといけない。なので、どうでもいい「鯉」に驚いたり褒めたりしてみる。こういう意地は、本当に人生の中で本当にエネルギーを使う。やめとけ。

アワレみ隊ひさびさ

山の斜面にぽつぽつと建物が点在するグラバー園だが、その最上部にあるのが「旧三菱第2ドックハウス」だった。

「見ろ!グラバーよりも、最後は三菱の方が偉かった、というわけか!」

と思ったが、この建物はその名前のとおり三菱造船のドック脇にあった船員宿舎を、ここに移築したものだった。元からあったわけじゃない。

久しぶりに3人揃っての写真。

赤の他人からしたら、「いい歳こいたオッサンの写真」に過ぎないだろうが、僕らからしたら30年来の親友。オッサン化していくのも、お互い平等な「進化」であると思いつつ、その進化論を記録として留めておく。

解説を読む蛋白質

11:59
グラバー園の中に、「祈りの泉」という場所があった。

山の斜面を石組みで整地し細工を施し、水が壁面を伝わるようにしてある。

「どうだ蛋白質、祈りを見事に表現していると思わないか?」
「うーん、どこがだろう?」

蛋白質が唸り声を上げながら、解説と泉とを見比べている。

「隠れキリシタンの苦悩と救いがテーマだぞ。まさに今回の旅で蛋白質が学びたかったことズバリじゃないか」
「いや、そうかもしれないけど、さすがにこれでは」
「祭壇下部の荒々しい陶板は地下に隠れた信者の厳しさを象徴します、って書いてあるよ」
「そんなの、作者がそう思ったならそうなのかとしか・・・」
「まざまざと見ちゃダメだ、感じるんだ」

さすがに信者である蛋白質であっても、「なるほど!それはごもっともだ!すげえ!ジーザス!」みたいに手を叩くことはなかった。まあ、そりゃそうか。彼は「敬虔」ではあるけれど、「盲信」しているわけではないので。グラバー邸

12:01
旧リンガー邸。

このグラバー園には、グラバー邸のほかにリンガー邸、ウォーカー邸、オルト邸といった外国人さんたちの洋館がある。

「このあたりは西洋人に人気の高級住宅地だったのかな?」と思ったが、単にグラバー園を整備するにあたって移築してきたということだった。

リンガー、というからには、長崎ちゃんぽんでおなじみの「リンガーハット」と関係があるのだろうか?リンガーさんの帽子、という意味に違いない!

・・・まじか?今適当に言っただろ、お前。正直に言え。

はい。適当でした。

でも半分は当たっていたのでびっくり。リンガーハット社のオフィシャルサイトで確認したら、長崎を代表する大商人であるリンガーさんの名前にあやかったんだという。でも待ってくれよ、リンガーさんの肖像写真を見ると、全部つるっパゲ丸出しなんですが。帽子、かぶってないんですが。

これが大いなる誤解で、「ハット」というのは「小さな家」という意味なんだそうで、「リンガーさんの小さな家」が「リンガーハット」の由来だという。へー。

あれ?ということは、宅配ピザチェーンの「ピザハット」というのは、ピザの小さな家ってことだろうか?いや、あれは違うな、ロゴマークに帽子の絵が描いてあったはずだ。じゃあ、江戸幕府が制定した「ブケショハット」は?・・・違う違う、それは「武家諸法度」だ。

みんなグラバー

12:04
入園した時にもらった、「これでキミもグラバーさんになれる髪」を顔につけ、記念撮影。最近はいろいろ考えているものだねえ。こういう「SNS映えするもの」を入場券と一緒に渡すあたり、時代の流れに沿っている。

(つづく)

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