長崎の過去と今-36

朽ちていく建物、護られる建物(その36)

公共施設

16:49
「みなと亭」を通り過ぎると、おや?これはまだ新しい建物がある。「池島開発総合センター」という文字が見える。どうやら公民館的な位置づけの建物らしい。

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もちろん炭鉱が開いていた頃のものではなく、閉山後に作られたものだろう。閉山しても人はこの島に住み続けるわけで、だからこそ行政が地域振興にお金をかけなければならない。これまでは、炭鉱の会社が率先して福利厚生や生活のパイプラインを担ってきたのだろうが、閉山してしまえば何も残らない。

団地

総合センター周囲はアパートが並ぶ。特に奇抜なデザインということもなく、4階建てのクリーム色、と相場が決まっているようだ。昭和40年代に建てられたらしいので、まだ半世紀程度の築年数ということになる。

ちゃんとメンテナンスすればまだまだ現役で人が住めるが、さすがに住んでいる人自体が少ないので老朽化が隠しきれない。

この建物は、ベランダの柵が腐食して落ちてしまっているところ、トタンで覆っているところ、まだピカピカする新しい柵に交換されているところといろいろある。つい最近まで人が住んでいたのだろうか。ざっと見る限り、人の気配がない建物だ。

そりゃそうだ、この島には大小合わせて一体いくつのアパートが建っているのだろう?島民人口が150名だとして、一人ずつアパート1棟に住んでも余りがあるんじゃないか、という状況。当然、無人化したアパートがそこらじゅうにあるはずだ。

こういう建物をジロジロ好奇の目で見てよいのかどうか、一瞬戸惑う。人が住んでいたら悪いし。かといって、全く興味なさげに素通りするのも、池島観光にやってきた意味がない。

ここで、通りすがりの車が我々を呼び止めてくれた。「乗っていきなさい」と。島民の方らしい。ありがたくお世話になり、車で一気に池島中央会館まで運んでもらった。

池島中央会館

16:54
池島中央会館。

港があるエリアからぐーっと坂を登っていった先にある。港から見て、鉱山の裏手側は高台になっている。そこに港界隈よりも広大な居住エリアが広がっている。中央会館はそんな居住エリアの入り口に近い場所にある。

建物は3階建て。研修施設という雰囲気。島唯一の宿泊施設で、素泊まりのみの受付となっている。

せっかくたくさんのアパートが開いているのだから、そこに短期から長期まで、滞在者を受け入れればいいのに・・・と思ったが、そこまでの需要はないのだろう。この小さな中央会館一つで十分、というわけだ。

実際、池島といえば周囲4キロ程度の島内をぐるっと散策するのに数時間、炭鉱ツアーに参加して2時間あれば十分といえる規模だ。なので、長崎から日帰りで事足りる。我々のように一泊して炭鉱ツアーに挑む、という方が少数派だ。でももったいないと思う、宿泊してじっくりと島時間を過ごす、というのが醍醐味だと思う。僕らは島内一泊といってもほとんど駆け足だったけど、できることならあともう一日は滞在したかった。そのかわりやることがないので、ひたすらのんびり過ごす、という時間の費やし方になるけれど。

池島中央会館1階部分

池島中央会館の一角に、「松濤苑」と書かれた入り口があった。「和風レストラン・仕出し」と銘打っている。昔はここでレストラン兼、中央会館宿泊客への食事の便宜を図っていたのだろう。もちろん今は営業していない。窓から見える障子が物悲しい。

明日のお昼ごはんは炭鉱ツアー中に食べることになるけど、「炭鉱弁当」なるお弁当を注文してある。これは、先ほど見た「みなと亭」が作っているはずだ。

今、池島に残っているのは、飲食店では「かあちゃんの店」1店舗だけ。売店としては、池島開発総合センターの裏手に一店舗、あともう一店舗あると聞いている。角打ちできる酒屋があったけど2014年閉店、スナックも同じく2014年に閉店してしまっている。つまり、「物を買う」ことができるのは、島に3店舗しかなく、あとは自販機だけだ。これでも閉山してまだ16年。いくら軍艦島のように無人にはならなかったとはいえ、現実はかくも厳しい。

池島中央会館フロント

16:55
中央会館1階のフロントでチェックインをする。

池島中央会館間取り図

ばばろあが手続きを行っている間、管内案内図を眺める。

1階はフロントと大会議室、そして松濤苑跡地。2階は大中小3つの会議室と、調理教室がある。この調理教室で宿泊客は自炊をしても良いそうだ。

3階が宿泊部屋になっていて、7室+大きな部屋の研修室。つまり、1晩につきこの池島は8組の宿泊客しか受け入れられない、ということだ。島唯一の宿泊施設がここなんだから、これが現実。

そんな中、我々は2部屋を確保していた。「いびきが気になる」というばばろあが一人部屋、残りの2名が二人部屋だ。

池島中央会館料金表

中央会館の使用料金表。

時間単位で会議室などを使うことができるのだけど、誰がどのように使うのだろうか。

宿泊客は、「一般」「中学校の生徒」「小学校の児童」で値段が異なっている、というのが面白い。宿でこういう料金体系というのは、見たことがない。おそらく、修学旅行や社会科見学で訪れる学生たちへの配慮、ということなのだろう。ちなみに「一般」の区分になる我々は、3,384円。歯ブラシやタオルが付いてこの値段だから、かなり安い。商売としては成り立っていないと思う。

池島中央会館地図

中央会館のフロントにおいてあった、手書きの池島マップ。

ちょうど島の中央部分に僕らはいる。

島の右半分、船着き場がある池島港までのエリアに鉱山がある。しかしここにある第一立坑は閉山前は使われておらず、もっぱら島の左端にある第二立坑が使われていたそうだ。

池島中央会館2階

16:58
3階の部屋に入る前に、2階に立ち寄る。調理教室に冷蔵庫があるということなので、そこに飲み物やお刺身を入れておくためだ。

池島中央会館調理場

2階調理教室。

あ、なるほど。「調理室」ではなく「調理教室」という名前になっているわけだ。学校の家庭科の教室みたいなアイランドキッチンがあった。

冷蔵庫に食材を入れる

そんな調理教室の片隅に冷蔵庫があったので、荷物を保管させてもらう。

食器棚には食器類が備え付けてあるので、必要に応じて使えて便利。

便利、とはいっても、飲食物のすべてを島の外から持ち込んでいるわけで、それを思えば便利ではないのだけれど。

本当なら、島にお金を少しでも落とせると良いのだけど・・・。落とそうにも、落とす場所がほとんどない。

(つづく)

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