長崎の過去と今-42

朽ちていく建物、護られる建物(その42)

夕食

島に関するお勉強を終え、驚いたり感心したり嘆息したりしながら部屋に戻ってきた。まだ現役の島だからこそ、奥が深い。軍艦島の廃墟もすごいが、むしろこの池島のほうがすごいんじゃないか?

本当の廃墟になってしまうまえに、「有人島」であるうちに池島は探検したほうがいい。無人島になってしまったら、廃墟が存在していることが当然になってしまう。それでは意味がない。現役の島だからこそ、「うわっ、アパートが緑に飲み込まれてる!」という驚きと、諸行無常を感じ取ることができる。

今がまさに「見ごろ」なのかもしれない、池島は。

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夕食の準備を始める。「かあちゃんの店」でトルコライスを食べなかった分、ここであれこれ食べよう。

ふか

フカ(サメ)の湯引きがあったので、酢味噌をかけて食べてみる。

この手のもので美味いのに出会ったことがないのだけど、ひょっとしたら長崎のフカはうまいかもしれん・・・とチャレンジした品。

「うん、いまいちじゃね」

ばばろあがくちゃくちゃと噛みながら一言。うん、僕もそう思った。

ふかの傍らにはえんがわ。

クジラカツ

水産食堂で買った鯨カツもお目見え。3皿分も買い込んだので、みっちりと詰まっている。昼に食べたんだし、そこまでしなくても・・・とも思うが、なにせ美味かったんだからしょうがない。そして次回いつ食べることができるやら、と思うと、ついつい買い込んでしまったのだった。

その横には蛋白質のリクエストで、かき揚げが置いてある。・・・なんでかき揚げ?

蛋白質は、スーパーでしきりにきょろきょろしていた。彼が言うに、

「玉ねぎ料理を探しているんだ」

とのこと。何を言ってるんだ?意味不明だ。しかも、

「折角外海にやってきて、遠藤周作の世界に触れることができるわけだし」

とか謎なことを言っている。そのどこが「玉ねぎ料理」なのか、いよいよわからない。シンプルに「血液サラサラにしたいんです」とか言えよ。

「いや、遠藤周作の『深い河』で、イエス・キリストのことを『玉ねぎ』と表現しているんだよ。だから今回それにちなんで玉ねぎ料理を食べてみよう、と思ったんだ」

へえー。だからかき揚げなのか。まさかの展開に遠藤周作先生もびっくりだ。でも確かに、スーパーで売っているお惣菜で、確実に玉ねぎを食べることができるのはかき揚げだ。

乾杯

乾杯。今日もよく歩いた。昨日も歩いたが、健康なうちが華だな。特にアワレみ隊が愛してやまない「離島散策」なんて、足腰が弱るとてきめんに難しくなる。

ばばろあがビール、蛋白質がノンアルコールワイン、そして僕がノンアルコールビールを掲げる。

ノンアルコールワインを飲む蛋白質

「蛋白質、飲めるクチなんだから本物のワインでもいいのに」

蛋白質が、まるで本当のワインを飲むかのようにちびちびと「ワイン風味のぶどうジュース」を飲む。

「いや、案外これも本格的だぞ?アルコールが入っていないのに酔ったような気がする」
「本当に酔ってもいいのに」
「最近疲れているんで、酔ったらすぐ寝てしまいそうだわ。今日は飲まんでええわ」

彼はさほど酒が強いわけではない。大学時代、腕に貼るアルコール耐性のパッチテストを受けて、皮膚が赤くなった!ということを何度も何度もアツく語っていたっけ。「だから俺は酒が弱いんだ!」と胸を張る。

宴会は続く

今日も昨日に引き続き、ばばろあの独演会状態。とにかく、こっちが相槌を打つ限りは彼が延々としゃべり続けるのには驚いた。「~だと思わん?」と時折聞いてきたり、「~と思うんよ。」と同意を求めてくるので、それに対して「そうだねぇ」と返すと、そこからばばろあはさらに話を続けていく。憂国の人として時には問題提起をし、時には残念がり、ひたすら話は続いた。

どんな話題の展開だったか忘れたが、ばばろあが蛋白質によからぬ提案をした際、蛋白質は「失せろサタン!」と大きな声を上げて一蹴していた。さすが蛋白質、とっさに出る言葉も大げさだ。

ちなみに蛋白質は昔っからいちいちオーバーアクションをとる。特にそれが顕著なのが「なるほど!」と思った時だ。わざわざ手をポン!と打ち、「なるほどポーズ」を内外に見せ付ける。わざとらしい身振りをするところが愛すべきキャラだ。

会話は延々と続いたが、12時前になってお開き。解散となった。

ばばろあは部屋に戻る際、「さてこれから寝る前にちょっと仕掛けてこないとな」と言う。何かと言うと、持参したタブレットでゲーム「艦これ」をやらなくちゃいかんのだという。旅行先でもやるの?と驚いたが、彼は照れ笑いを浮かべながら

「数日間家を留守にしている間、放置しておくわけにもいかんのでね」

という。なんのこっちゃ。僕は艦これをやらないのでよくわからん世界だ。

「いやね、わしだって最初はこんなんやる気、なかったんよ。もともと軍事ものとか艦船とかは詳しい方じゃけえ、『何を今更!』って思っとったんよ。じゃけど、いざやってみると・・・おもろいねえ、これが」

艦これが世に人気となって早数年、遅まきながらばばろあは現在進行形で没頭中。

「3階じゃとWi-Fiがうまく入らんのよ。これから1階行って来るわ。明日の朝もやらんとな」

と独り言を言いながら、彼は自分の部屋へと戻っていった。夜の見回り、お疲れ様です。

さて僕らはゲームなんてないことだし、とっとと寝よう。明日は炭鉱ツアーに参加後、大移動して佐賀県の嬉野温泉行きだ。

2017年05月04日(木) 3日目

朝の池島

3日目の朝を迎えた。

天気は晴れ。GWといえば天気が悪い、という印象が強烈に植えつけられているので、お天気続きだとむしろ拍子抜けさえする。やっぱり、2001年のお遍路が「7日中6日、雨だった」というのが大きい。

四国巡礼一週間
アワレみ隊お遍路チャレンジ2001 日 時:2001年(平成13年) 04月28日~05月04日 場 所:四国八十八カ所 参 加:...

ばばろあはこの旅行のことを「トラウマだ」とさえ言っているくらいだ。

池島小・中学校の奥に、灰色の大きなアパートが立ち並んでいることに気が付いた。あそこが、池島の名所ともいえる「8階建て高層アパート」なのだろう。今日はこのあと、あそこまで見に行く予定だ。

池島の海

一方、海側はこんな感じ。右手に見えるのは松島。もともとはここに炭鉱があったわけだけど、閉山後この池島に移ってきて石炭を掘っていたことになる。

空き部屋

301号室の隣にある「研修室」を覗いてみた。

畳敷きの広い部屋で、洗濯物が干してあったりアイロンが置いてあった。

団体の宿泊があるときはこの部屋で寝泊りするのかもしれない。今日は使われていない。

窓からの景色

小・中学校とは逆方向を見ると、やぐらが立っていた。あれが第一立坑だろう。まだ風雨に晒されて倒壊しないまま現存しているのだな。

軍艦島には立坑のやぐらは全く残されていなかった。こんな塔、錆びるしゆがむし、人の手が離れたらすぐにダメになってしまいそうだ。しかしこうやってまだ残っているのは、閉山から16年しか経過していない賜物だろう。

ここはまだ見ていない部屋

二階に、「第三会議室」という場所があった。扉が開いていたので中を覗き込むと、ここも一階の大会議室同様に池島関連の展示がされていた。

開拓前の池島

鉱山の島として大開拓するまえの池島。

あっ、池島港となっている場所が、島の名前どおりに「池」になってる!本当に「池島」だったんだ、ここ。不思議なものだ。

当時は「鏡池」と呼ばれていたらしい。

写真を見ると、当たり前のことだけど島は急峻な山で構成されている。人間様の都合のよいように、山のてっぺんが平らな高台にはなっていない。ということは、このあたり一帯、大規模に造成して平らにしたのだな。炭鉱のためにそこまで島を大改造しやがりますか。

会議室

会議室を見渡す。長机とパイプ椅子。

朝ごはん

朝ごはんを食べる。

各自バラバラだ。僕みたいなセンチメンタリストは「みんなで揃ってご飯を食べたほうがいい」と考えるが、ばばろあは逆で、「朝飯なんてすぐに済むんだから勝手に各自の都合で食べればいいじゃないか」という発想だ。そのため、今朝はめいめいが黙々とメシを食う。

僕は、昨日のスーパーで買った菓子パン2個を食べる。

菓子パンなんて普段全く食べないので、「こんなパンがあるのか!」と驚きながらの食事だ。それにしてもカロリーが高そうだな、と思って袋の裏面を見て後悔した。見るんじゃなかった、と。

そのくせ、「デミグラスダブルバーガー」とか「ビスケパン」とか、名前を聞いただけでハイカロリーが予見されるものを敢えて買ってしまった。「めったに買わないんだから、今回くらいはカロリーには目をつぶろう」と。

(つづく)

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