長崎の過去と今-45

朽ちていく建物、護られる建物(その45)

下山

09:07
四方山山頂でしばらく時間を過ごしたのち、下山する。

山頂から貯水タンクに向かっていく道。若干木が倒れ込んでいるのであるきにくいが、足元はしっかりしているので道をロストすることはない。そもそも、もう目の前にタンクの周囲に張り巡らしてある柵が見えているくらいで、タンクから山頂はすぐだ。

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夏場はもっと下草が茂るだろうから、もう少し道がわかりにくくなるかもしれない。その点は注意だが、「タンク左脇から山頂に出られる」ということさえ知っていれば、道に迷うことはない。何しろ、「上を目指せば山頂」なのだから。

廃墟の8階建て建物

09:15
八階建てアパートの真下までやってきた。山の上から見下ろしてもすごい光景だったけど、下から見上げてもやっぱりすごい。なんだこりゃあ。

独特のデザインだ。これまで見てきた池島のアパート群は、企業が提供するアパートとしてはよくありがちな、機能性重視のシンプルな建物だった。しかしここだけは何やら形が変わっている。一言で言えば、凸凹が多い。

人っ子一人いなくなり、廃墟となった今、その凸凹が一層の凄みを感じさせる。

この建物は、太陽が高い位置にある真っ昼間よりも、朝夕のほうが陰影がくっきり出て写真映えすると思う。

見上げる蛋白質

唖然とした表情でマンションを見上げる蛋白質。

下から見た8階建てアパート

5階部分が背後の山と接続しているということもあって、5階の構造は他の階とちょっと違う。

ひさしのようなものが出っ張っている。

下から見た8階建てアパート

そして、背後の山から伸びている渡り廊下。

「あ、ひさしのようになっているのは、外廊下だったのか」
「そういうことか!」

3枚前の写真に写っている建物は、5階部分の廊下は外に突き出ているもののコンクリートで覆われている。しかしこちらの建物はそうなっていない。まさかコンクリートがごっそり落ちたとは思えないので、この建物は鉄柵が取り付けてあったのだろう。しかし、鉄柵が傷んでなくなってしまい、今や廊下からそのまま飛び降りることができちゃう構造になってしまっている。

アパートアップ

このアパートには木の雨戸が備わっていたらしい。退去時に雨戸を閉めていったようだけど、時間の経過とともに破れてしまいボロボロだ。

雨戸、というのは一軒家に備わるものだと思いこんでいたので、アパートにあるのを見てびっくりした。

もちろん窓はサッシではない。

解説するばばろあ

「蛋白質、このマンションは独特な作りをしているんだけど、それが何かわかるか?」

ばばろあが蛋白質にクイズを出す。もちろん、言うまでもなく5階部分が裏山からアプローチできる作りになっているという構造だ。

蛋白質名人、「うーん」と唸ったまま考え込んでしまった。あれっ、昨日から一連の池島学習をしてきたのに、覚えてないの?

「このアパート、エレベーターは付いとるか?」
「昔だからついとらんじゃろ」
「それじゃったら、上の階の人はどうしてたんじゃろうか?」
「うーん」
「日々の生活、大変よね?
「まあ、たしかにそうだけど・・・」

8階建てアパート解説

「あ、見えちゃった」

悩んでいる蛋白質が、道端にある解説看板に気がついた。そこにはちゃんと答えが買いてあった。

昭和45年の炭鉱最盛期、池島の人口は約8,000人近くまで増えていました。住まいを確保するため、池島には多くのアパートが立ち並んでおりますが、ここのアパート群にはエレベーターが設置されていません。そのため、エレベーターを設置するかわりに地形の高低差を利用し、4階部分と5階部分に廊下と通路橋を設置することで、8階の住人は1階から8階まで、階段で上がらなくてもいいような作りになっています。この「8階建てアパート」は、アパート用地の確保が難しい中で、多くの従業員の住まいを確保するのに苦労・工夫してきたことを物語る、池島ならではの炭鉱関連遺産です。

8階建てアパート解説

「つまり、こういうことだよな?」

と蛋白質は、解説を読みながら何やら手をもぞもぞさせている。

「こうなって、ここがこうだから・・・」

どうやら、自分の頭のなかで、この8階建ての建物を立体的にイメージしているらしい。しかしそれって身振りは必要なのだろうか。

で、しばらくして、蛋白質はポン!と手をたたき、

「分かった!」

とにっこり。ばばろあから

「遅いわ!」

と言われていた。

(つづく)

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