長崎の過去と今-59

朽ちていく建物、護られる建物(その59)

坑道

坑道の中を歩きながら、ガイドさんの説明を受ける。

坑道は、まさに博物館。いろいろな展示品が置いてある。建物の中に展示しても問題ないものが多いけど、坑道に置くということで迫力がぜんぜん違ってくる。

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無造作にだらんと垂れたケーブル。ただそれだけでも「おお!」と思う。

たぶん、何かのはずみで野良猫が「ニャーン」と現れても、「おお!さすが炭鉱!」とか思ったに違いない。炭鉱とぜんぜん関係なくても。

とにかく、見るもの全てが新鮮だし、圧倒させられる。ずっとキョロキョロしっぱなしだ。

このあたりは地下深くにもぐっているわけではないので、地熱で熱いということはない。むしろ、地下水の気化熱のせいで涼しい。

坑道

さすが元炭鉱マン、実体験に基づいたいろいろな話をしてくれる。池島はどんどん廃墟化が進んでいるけど、それと同時にこうやって語り継げる人自体がこれから先減っていくことになる。つくづく、「池島は今が旬。今以上の旬はもうやってこない。」と思う。

炭鉱で使う器具の説明なんて表面的な話題だけじゃない。防災のためにどのような対策がとられていたのか、とか事務職と炭鉱にもぐる人との給与格差の話など、話題は多岐に渡る。さすがホンモノだ。

何かの弾みに火花が出たら、坑道内の微細なガスに引火し爆発する恐れがある。そうならないように電気まわりは厳重にガードされているし、衣類は静電気がでにくい繊維を使っているし、金具類も火花が出ない金属を使っている。爆発したら最後、それで人生おしまい、場合によっては鉱山そのものがおしまいになってしまうのでこのあたりは徹底している。

そういう話が聞けるのは、「チョンマゲ鉱山」ではないからだ。近現代でも稼動していた鉱山だからこそ、さまざまな技術が導入されている。「ガスに弱いインコを坑道で飼っておいて、インコが死んだらヤバいから逃げろ」みたいな話じゃない。すごく体系的に、安全管理が行われいてるのが興味深い。

坑道

ガス警報機。

こんな坑道の浅いところに4つも警報機があるのは大げさだけど、おそらく研修生の指導のために設置したのだろう。

池島炭鉱は閉山後しばらくの間、東南アジアからの研修生を受け入れて坑道を実際に使った炭鉱研修を行っていたそうだ。三井松島リソーシス、という会社はなにも「観光客向けの炭鉱ツアーの企画・実施」のためのものじゃない。本来は、研修受け入れのための会社だ。

しかし、今ではその研修生も池島を訪れることはない。研修は実際の東南アジアで行われることがあるそうだ。

坑道

無限軌道の機械がある。

「サイドダンプローダー」という名札が取り付けられている。何をやっているのか解説を受けたかもしれないけど、忘れた。

調べてみたら、炭鉱に限らずトンネル工事用の特殊機器というのは多数あることを知った。排ガスがバンバン出るものはダメだし、静電気が出てもダメだし、狭いところで取りまわせる設計になっていないとダメだ。地上の工事現場で使うものとは一味違う、配慮がされているらしい。

坑道

坑道の中は昼も夜も関係ない。当たり前だけど、照明がなければ常に真っ暗だ。

炭鉱は24時間操業で1日3交代制だったという話を聞いた際、「何でそこまで必死になって掘っていたんだろう?」と不思議だった。製鉄所だったら、溶鉱炉を止めるわけにはいかないので24時間操業せざるをえない。でも鉱山なら「夜はみんな寝よう!」としてもいいだろうに。

・・・しかし私が浅はかでした。坑道の中だと、時間なんて全く関係ない。お日様が昇ろうが沈もうが、雨が降ろうが晴れようが、いつだって同じ景色。「日が昇れば働き、日が沈めば仕事を終える」というほうがおかしい発想だった。

坑道

いろいろなものが壁面に張り巡らされている。

坑道

そんな壁に何かが突き刺さっていると思ったら、掘削するための削岩機だった。

こういうのも、電動ではない。水圧だったか空気圧だったか忘れてしまったけど、いずれにせよガスが出やすい最先端の場所なので、電気なんて使えなかったのだろう。

削岩機というのは、尖がった針のようなものを強引に岩にねじ込むものだと思っていたが、実際はちょっと違う。削岩機の中に、ハンマー的な部分と、釘のような部分があって、空気圧だか水圧だかでそのハンマーを高速で動かし、釘相当の部分をガンガン岩に打ち付ける、という作りになっている。なるほど、だから「ドドドド」と断続的な音がするのだな。

坑道

いろいろ解説があったのだけど、説明を覚え切れていないのが本当に惜しい。何度でも通って、炭鉱について学びたい気持ちになる。

坑道

赤いランプ

坑道

採炭機ドラムカッター。実際にスイッチを入れてグルグル回り、前後に動くところを見せてくれた。

スイッチを入れるやいなやグイン!と派手にメカニカルな起動音が鳴ることはない。なめらかに動き出す。派手な音が出る、ということはそれだけ摩擦などが内部で発生しているわけで、火花が出やすい。滑らかである、ということは安全であることでもある。

それにしても、こんなハリネズミの針みたいなもので、固い岩盤を掘削できるのだからすごいな。硬くて硬くてしょうがない材質で作っているのだろうけど、だとしてもすぐにナマクラになりそうだ。どれくらいの頻度で交換していたのだろう?

(つづく)

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