長崎の過去と今-65

朽ちていく建物、護られる建物(その65)

大野教会

15:35
「おっ、あれじゃないか?」

毎度のことながら、先頭を切ってさっさと歩いて行くばばろあが前方の異変に気がついた。写真を撮りながら歩くので毎度最後尾の僕が追いついて見てみると、確かに何やら怪しい石垣が見える。

いや、怪しいわけじゃないけど。

広告

白い像が見える。マリア様だな、さては。

何しろ今回の我々、事前学習なんて全くしないままに教会群に突撃している。到着してみて「へー、こうなっているのか!」と毎度毎度驚いている。だからこそ、新鮮で楽しい。みっちりと予習していたら、こんなにワクワク感は得られない。

正面の建物には瓦屋根が見える。まさか教会とは思えない外観だけど、マリア様がいらっしゃるということで教会だとわかる。

相変わらず渋い教会を作るものだな、ド・ロ神父。

大野教会

15:36
大野教会堂。

おっと、出津のド・ロ神父記念館で見たのと同じ、風除けのための壁が北側についている。ド・ロ神父記念館は南側についていたけど。

ド・ロ神父記念館のスタッフさんは、「このあたりでこういう壁があるのは、ここと大野教会くらい」とおっしゃっていたけど、それが今目の前にある。

そんな教会を、マリア様がじっとご覧になってらっしゃる。

あれっ、ここのマリア様って、正面入口方面を向いているわけじゃないんだな。教会の横に立っていて、教会の方を眺めている。なんでこっち向きなんだろう?

大野教会解説

おおう、この教会って重要文化財になってるぞ。建物だけでなく、土地まで重要文化財になっているそうだ。これは出津教会と一緒。ド・ロ神父、すごいな。

1893年にできたということなので、1882年に出来た出津教会から11年後ということになる。さすがに神父常駐の教会というわけにはいかなかったようで、巡回教会という位置づけになっている。今でも、1年に1回ミサが行われるだけだそうだ。

大野教会

これぞド・ロ壁。

薄い玄武岩を漆喰で固めた独特のもの。

ぱっと見、なんの変哲もない石積みの壁みたいに見える。でも、よくよく考えてみると、普通の石組みってもっとデカい石を積み上げるものだ。こんな小さい、細かい石は使わない。というか、使っても崩れる。そういうのを漆喰で固めて壁にしちゃう、というのがド・ロ神父のアイディアというわけだ。

実際、壁の裏側は真っ白な漆喰壁になっている。ああこののっぺりした白さ、よく蔵屋敷があるような古い町並みで見かけるヤツだ。

和洋折衷。とてもおもしろい。

ばばろあも感心しっぱなしだ。

昨日、出津教会で基礎知識を学んだあとなので、より一層面白く見ることができる。

マリア像

教会北側にある堂内への入口は、風除けの壁で塞がれている。僕が昨日、「公衆トイレみたい」と迂闊な例えをしてしまった構造だ。

入口と、壁との間隔は狭い。人がすれ違うには体を横に向けないといけないくらいだ。ここまでしたのは、この土地の風雨が厳しいからだろう。

マリア像

マリア様がこっちをご覧になってらっしゃる。

ちょうど、入口と風除け壁の間に視線を向けている。出入りする信者を慈悲の心で見つめていらっしゃるのだろうか。

大野教会

それにしても変わった建物だ。

ド・ロ壁の外壁の奥には、防弾仕様とでも言えるような分厚い壁。小笠原で見た、火薬庫跡みたいに分厚い。そしてそれが漆喰というのも不思議。

さらには、石壁なのに木の雨戸。なのに窓の上部はアーチ型になっていて、もう和洋折衷ゴッチャゴチャ。

ド・ロ神父、よっぽど柔軟な発想の持ち主だったに違いない。キリスト教の教会とはこうでなくてはいかん!と故郷のフランス的な作りにこだわっていない。

建物の中は非公開。信者の蛋白質でも入ることはできない。とはいえ、窓は大きく開け放たれているので、なんとなく中の様子はわかる。10年に一度しか公開しない秘仏、といったものが中にあるわけじゃない。

蛋白質が祭壇を見て、

「あ、聖体ランプがないわ。やっぱりここでは普段ミサをやっとらんのね」

という。確かに、赤いランプが灯っておらず、ここは普段からミサを執り行う場所ではないということがわかる。

大野教会

大野教会堂の南側。祭壇がある方向。

立派な瓦屋根の下にド・ロ壁。不思議な絵だ。

大野教会

窓の上部分のアーチは、さすがに不均一な形の石を組んだらうまくいかないのだろう。そこだけはド・ロ壁ではなく、レンガを組んである。

ばばろあは、出津教会で見かけた「左右どちらからも開け閉めできる雨戸」が気になって仕方がない。この大野教会堂では雨戸が「一般的な」片側から閉まるタイプだったので、よけい不思議がっていた。

教会守の方に解説を受ける

教会守さんにあれこれ話をお伺いする。

本当はここも出津教会同様、事前予約がないと見学ができない場所だった。すいません!旅行後になって知りました。本来は予約が必須なので、この教会に行こうと思う方は、必ず「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンター」に連絡をしてください。

ばばろあが雨戸のことについて聞いていたけど、教会守さんもわからない、と仰っていた。そりゃそうか。

大野教会

教会守さんが雨戸の枠を指差して教えてくださる。

「これ、石の壁なのに木の枠が取り付けられていますよね」

あれっ!?言われてみれば確かにそうだ。どうやってこれ、取り付けたんだよ。接着剤じゃあるまいし。石の隙間にくさびを打ち込んだのか?

「ところどころ、あとで造作しやすいように石の間に木が組み込まれているんです」

なるほど、近くでよく見ると、石積みのところどころに角材らしきものが見える。ここを使って、木の枠を作って釘を打ち込むわけか。

「で、この釘ですけど、あまり上手じゃないですよね?」

根本まで釘が刺さらず、途中でグニャっと曲がったまま放置されている釘があちこちにある。

「多分、大工さんではなくて、地元の素人が作ったと思うんです」

すげえなあ、それでこれだけの立派な教会を作ってしまうのだから。信仰の力ってのには驚かされる。

大野教会をあとにする

15:56
「いやあ、いいものを見させてもらったな」

三人共、感心しながら教会を退却。正面に外海を眺めながら階段を下る。

(つづく)

ソーシャルリンク

広告