広島、ふるさとの味は今も【広島ミニ食べ歩き】

EDIONに行く

20:09
市民球場跡地を立ち去り、また町歩きを再開する。

ばばろあが

「無線LANルータを買い換えようと思っとるんよ。今使ってるのが古くて、WPA2の脆弱性に対応せんことがわかったけえ」

と言い、市民球場跡地からすぐ近くにあるエディオン広島本店新館に向かう。

・・・が、閉店時間をすでに過ぎていて、中には入れなかった。しまった、明かりが灯っているから油断していた。いくら広島とはいえ、家電量販店は20時には閉まってしまうのか。

この建物も僕は知らない。昔は2階建てで、時計などを売っていた気がするけどいつの間にこんなに立派になっちゃったの?しかも、隣にあったはずのエディオン広島本店本館が消滅している。建て替え中らしい。えー。

全国各地の家電量販店が大合併を遂げて「エディオン」という名前になる前は、「ダイイチ」という名前で広島の家電需要を担ってきた定番中の定番だった。僕が中学の頃だったか高校の頃だったか、九州から「ベスト電器」が殴り込みをかけてきたけど、市内超一等地にお店があるダイイチと、広島市民から絶大なる信頼を得ていたブランド力はそう簡単に崩れなかった。そんな本丸が今、こうやって建て替えられているとはなぁ・・・。昔は、ほぼ毎週末、ここにやってきてはウォークマンやミニコンポのカタログを集めたり、CD売り場をウロウロしていたものだ。

「アワレみ隊」の前身である、高校文化祭の映像サークル「主よ、アワレみ給へ・・・」は、文化祭当日に投影するためのディスプレイをダイイチからレンタルしたことがある。そんなことを思い出しつつ、この場を後にする。

ばばろあが

「せっかくじゃけえ、ビスコ行っとこうで」

と言い、路地裏へと誘った。

ビスコとは、パソコンゲームなどを売るお店だ。特に18禁ゲームの取り扱いにおいては広島随一で、鼻の下を伸ばしながら「大変にけしからん」と言いつつお店をうろつく場所となる。

東京界隈でさえ、その手のゲームを入手するのは若干難しい。秋葉原のような場所に行けばいくらでも売っているけれど、大手家電量販店のPCソフトコーナーで売っているか?というとまずお目にかからない。18禁ゲームとそれ以外のゲームとをゾーニングできるほどPCゲーム売り場が広くないので、「うっかり18歳未満の子供の目に触れたら社会問題化する」「お店のイメージが損なわれる」などと気にしているのだろう。

東京でさえそうなのだから、広島ならなおさらそうだ。だから、ビスコのようなお店は、その手のゲームを愛する人からすると貴重な存在となる。

もっとも僕は、ここでゲーム類を買ったためしがない。なにせ、その手のゲームは無駄にパッケージが大きい。国語辞典か百科事典か、というくらい大きな箱に入っているのはザラで、そこに可愛い女の子の絵がバーンと描かれているのだ。広島に滞在している、ということは実家に帰省しているわけであり、そんなパッケージを家に置くのはまずい。家族会議モノだ。家族計画モノじゃないぞ?

一昔前の僕は、エロゲー評論をよくやっていたものだ。1990年代なので、「エロゲー文化論」的な概念は薄かったし、まだブログやら個人のインターネットサイトすら無かった時代だ。そんな中僕は、あるネットコミュニティでエロゲー評論を繰り返していた。当時のインターネットは実名署名が当たり前だったので、大学名と学部名および本名まで出して、エロゲーについて熱く語っていたものだ。今思うと馬鹿としか思えない。

本名や所属を出してもなお、匿名性が担保されているという雰囲気があったのが1990年代のインターネットだ。

それはともかく、ビスコの店内で久々にその手のゲームたちとご対面する。21世紀になってからほとんどこういうゲームはやらなくなったので、ものすごく久しぶりに見る光景だ。こういうところに連れてきてくれたばばろあには感謝。自分一人じゃ、すっかり興味が失せているのでこんな機会は得られなかっただろう。

「うーん」

売れ筋商品のパッケージを一つ一つ見ていくが、どれも欲しいと思わなかった。素晴らしい作品があるのだろうけれど、こういう「エロゲー文脈」およびその前提となる「アニメ・ゲーム文脈」からいったん遠ざかってしまうと、とてもとっつきにくい。

自分の過去を振り返ってみると、最後にこの手のゲームをやったのは2004年だった。21世紀に入ってからまともにクリアしたゲームはなく途中で放棄するものが多かったけど、「あ、こりゃもう完全にこの世界にはついていけない」と悟ったのが2004年。早13年前だ。・・・って、あれ?まだ13年しか経っていないのか。もう20年くらい昔の話だと思っていたけど。

エロゲーは、「単にエロさを追求したゲーム」がある一方で、「エロを正当化するために、複雑なストーリーが背後にある」作品が多かった(過去形にしたのは、現状がどうなっているか知らないから。今でもそうなのかもしれない)。「ロボットに人格は認められるのか?」という倫理的なテーマを扱ったものや、同じ時間を行き来するタイムリープもの、あと一週間で地球が滅亡するとなった時、人間はどういう暮らし方をするのか?という終末論など、多岐にわたる。僕はそういう「エロに至るまでのストーリーテリング」が好きで、むしろ当時のコンシューマーゲームを馬鹿にしていたくらいだ。「時代の先端はエロゲーだ!」と思っていたくらいだ。

しかし、ストーリーテリングをエロゲー業界が追求していった結果どうなったかというと、登場人物の多くが不幸な人、というおかしなゲームが出るようになった。何やら暗い過去とか、問題を抱えるヒロインだらけ。不幸自慢大会。結局、主人公(=プレイヤー)がそのヒロインの心の闇を埋めてあげるというシナリオで、「好き!抱いて!」という話に持って行く展開になるのだった。なるほど、「徐々に惹かれ合って好きになって、付き合って」というプロセスをゲームで再現するのは面倒なので、一足飛びに「抱いて!」と言わせるには効果的だ。しかし、病んだキャラが多すぎてゲッソリさせられた。

さらには、「萌え」という概念が認知されるようになり、急速にその手の登場人物が増えていった。その結果、幼稚な言動を繰り返し、語尾に独特な言い回しを付けるヒロインが続々登場。僕は当時、「馬鹿の見本市」とその様子を形容したけど、それについていけなくなり、足を洗ってしまった。

ゲーム業界が幼稚だとか未熟ということを言いたいのではない。単に僕が、ゲーム業界の流れについて行けなくなった、ということだ。それだけ老いたのだろうし、想像力や気力が衰えてしまったのだろう。

なので今回、何か良さそうな作品があるならば試してみても・・・とは思っていた。しかし、やっぱり10年以上のブランクは分厚く、老化の波はますます高く、全く欲しいと思えるものが見当たらなかった。残念だ。

本通り

20:26
本通り商店街を歩く。

さすがに20時を過ぎているので、営業を終了したお店が多い。

広島の中心地を貫く、アーケード商店街。距離は長いのだけど、複数のアーケードが並んでいるような町全体が回遊式の作りとなっておらず、それが以前から僕は不満だった。広島に観光でやってきても、これじゃ全然面白くないじゃないか!と。しかも、広島土産を買うことができるお店はほとんどない。

しかし、今じゃこの本通り商店街の左右は、魅力的な飲食店が増えており、繁華街としての魅力は以前と比べて増したと思う。ドラッグストアや携帯ショップが増えてしまったのは時代の流れで仕方がないけれど。ちなみに広島土産に関しては、広島駅が今では大充実しているのでそっちで買えばよろしい。なお、平和記念公園界隈では土産を売っているお店はないので注意。

「それにしても不思議な光景じゃね、大泉洋が『フレフレ、広島。』って言ってるぞ」

天井からぶら下がったリクナビの吊り広告を見上げながら、ばばろあが言う。大泉洋は、北海道出身の俳優だ。

びっくりドンキー

特にこの後、何か食べたいという予定は無かったのだが、シメるにはちょっと物足りない感じがする。あともう一軒、八丁堀方面に向かいながらどこか手頃なお店を探す。

するとばばろあが

「隊長!大変であります!びっくりドンキーが前方にあるであります!」

と敬礼しながら報告してきた。ああ本当だ、びっくりドンキーがある。

アワレみ隊は以前、なぜかびっくりドンキーを発見するたびにそこで食事をする、という習慣がある。飯能河原で天幕合宿をやっていた時代の名残だ。「びっくりドンキーを発見してしまったら、有無を言わさずそこに入らなければならない」という謎の文化がある。

とはいえ、今回は完全に虚を突かれた。

「さすがに今回は無理だろ、さっきまでどれだけ食べてきたんだよ」

二人して笑って、このお店はスルー。今から300グラムハンバーグディッシュ、なんて食べるのは無茶だ。

同窓会会場

途中、ばばろあが一軒の小さな時計屋に気づき、「ちょっと待って、ここに入らせてくれ」という。

以前ばばろあは名古屋で数万円もする腕時計を衝動買いしていたが、今回もそんな大盤振る舞いを画策しているのだろうか?

店内に入り、何やら店員さんと相談している。今家にあるアンティークの腕時計を、宅配でお店に届けてオーバーホールしてもらうことはできるか?という内容だった。オーバーホール!

「アンティークの時計っていうのは、数年おきに全部バラしてオーバーホールせんと動かんようになるんよ」

と教えてくれる。面倒くさいものだな。電池交換とは違うのか。

「いくらくらいするものなん?」
「状態にもよるけど、数万くらい」
「ええ!新品が買えるじゃないか」

でも、このリアクションは愚だったのかもしれない。「古くなったら買い換えればいいじゃない」という使い捨ての発想は、むしろかっこ悪い。

「おかでんも買ったらどうだ?ええで、数十年前の腕時計は」

ばばろあが店内にある腕時計を指さす。ガラスケースに入っていてうやうやしいが、見た目は結構地味だ。しかし値札を見ると、桁が一つ違うんじゃないか?という派手さがある。

とはいえ、こういう時計はむしろ主張しすぎず、良いのかもしれない。年期が入っているからこその味わい深さもある・・・気がする。まだこの世界はよくわからないので、「気がする」だけだけど。

次に時計を買うときはソーラーだ!GPSだ!電波時計だ!と考えていたので、全く想定外のシチュエーション。しかし、こういう世界もあるんだよ、ということを知ることができて良かった。

ばばろあは、後日このお店に山口の自宅から時計を送ることにしたようだ。お店の名刺を受け取っていた。

「山口にはないんよ、こういうお店」

という。確かに、時計のオーバーホールをやってくれるようなお店は、ある程度町が大きくないと存在しないだろう。

さて、特に行くあてがない我々だったが、ばばろあが

「今同窓会の二次会をやっているお店の様子を見に行こうぜ」

と提案し、なるほどそいつァ面白い、とお店の前にまで行ってみた。行ったからといって何かあるわけじゃないんだけど。

「わしら同窓会に参加はせんかったけど、お店の前までは行っとったんで、って面白いじゃろ」

とばばろあが言う。うん、面白い。

「いっそのことそこまでするなら、参加すればいいじゃねェか」と思うかもしれないが、今更僕らが参加するわけにはいかない。いや、多分飛び入り参加しても、喜んでみんなは受け入れてくれるだろう。でも、そっとしておいて欲しい気分だからこそ別行動を取っているわけだ。合流はしたくない。

「せっかくだから、奴らの様子を見張るか?」

ばばろあ、ノリノリですやん。

「お店の中で、みんなに気づかれないようにわしらだけで飲み食いしとる、というのはどう?」

店内をのぞく

実際にお店の入り口まで行ってみたが、中をのぞき込んでみて諦めた。推測だけど、お店の中は個室で仕切られていないっぽい。僕らがどこかの席に陣取ったら・・・いや、陣取る前に、店員さんが席に案内している間に・・・ばれる。

隣の店

20:50
2階のお店が同窓会会場なので、1階にある別のお店でしれっと飲み食いしつつ、宴会が終わって外に出てくる人たちの様子を観察しよう・・・という話もあったが、道路側の席は満席で座れそうになかった。

ではお店の対面にあるバーはどうか。いや、ちょっと奥まっていて、店から出てきた連中を発見しそびれそうだ。

あれこれこの周囲を探した結果、同窓会会場の隣のビルの飲食店に潜入することにした。ここの1階は南国リゾート風の開放的なテラス席があり、2階のお店もテラス席がある。なんてぇおしゃれな空間なんだ。こんなのが広島にあるとは驚きだ。

我々は2階のお店を選んだ。1階なら見つかりかねないけど、2階ならバレることはあるまい。

シャレオツな店内

まだ新しいお店なのか、カウンターキッチン形式で開放的なお店。とっても小洒落ている。

テラス席でも良いか?と店員さんに聞くと、OKだというのでテラスに向かう。

テラス席

タイル張りの机になっているテラス席。

おあつらえ向けに、バルコニーの手すりにくっつくようにテーブルがセットされている。これなら、道路の状況を確認するために身を乗り出さなくても大丈夫だ。

テラス席からの光景

テラス席から見下ろした道路の状況。

右隅に、同窓会会場がある。宴会が終われば、ここから出てくるはずだ。20~30名は参加しているはずなので、どわーっと出てきたらこの道路を塞ぐ形になるだろう。若干死角になってはいるけれど、多分気づくはずだ。

ただし問題なのは、いつ宴会が始まって、いつ終わるのかというのを全く把握していないことだ。なのでずっと見張っていないといけない。

ノンアルコールビール

飲食店に入ったからには、当然食べなくちゃ。

さすがにあれもこれもがっつり、という気分でもないので、茹で落花生などをしみじみとつまみつつ、ばばろあは清酒、僕はノンアルコールビールを。

結局今日は

ホルモン天ぷら → 出雲蕎麦 → シュークリーム → オレンジジュース → 焼き小籠包と大鶏排 → 今ここ

と6軒をハシゴしたことになる。よくやるぜ、我ながら。

ひたすら待機

容疑者が自宅から出てくるのを監視する刑事の気分になりながら、ずっと路上を見張る。

しかしいつまで経っても誰も出てこない。見えるのは、酔い潰れて這いつくばっている学生と、それを介抱する仲間たちの寸劇だけだ。

「おかしいのう、仮にもここは100万人都市で?なんでこんなに人が歩いとらんのや。三連休なのに、一体みんなどこへ行っとるんや?」

ばばろあがしきりに首をひねる。

「こんなおしゃれな店があるのに、ここも客は大してはいっとらん。もったいないで」

本当に不思議だ。

ばばろあが、

「終バスが22時には行ってしまうんよ。まだ帰る手段はあるけど、バスを諦めてもう少し粘るか、それとももう諦めてバスに乗るか・・・」

考え込んでいる。

「宴会がコースなのかアラカルト注文なのか、それすらわからないんだよな。コースだったら、2時間できっちりおしまいになるので時間は読みやすい。7時半に始まったとすると、9時半には終わりだ。でも、ここは2軒目だからなぁ。。。頼んだ分だけお会計、っていうアラカルト方式なら、エンドレスに続くぞ?こうなるともう、時間が読めない」
「諦めるか」
「しゃあないな、まさかみんなが出てきたところを見逃したということは無いと思うし」

結局我々は、「お店から出てくる同期たちをこっそり観察する」という野望を果たせないまま、この場を後にした。でも、「どこに隠れればバレずに観察できるだろう?」と考えたり、「いつ仲間が出てくるか」とハラハラしながら監視するひとときはとても楽しかった。

ひねくれた時間の過ごし方ではあったけど、これはこれで良かったと思う。

ただし、

「最初、久しぶりに会う奴らと話なんかあわんし居心地悪いんかと思っとったんじゃけど、案外そうでもなかったね」
「だな。これだったら同窓会に参加していても良かったかも」

という会話を二人でしていたというのは内緒だ。

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