食わずに死ねるか!【東京下町食べ歩き】

地下街

15:31
雷門から浅草寺につづく「仲見世通り」を一通り歩いたあとは、やみくもに周辺の商店街を歩く。浅草界隈はアーケード付きの商店街があるし、ちょっとした路地にもいろいろなお店がある。

浅草は東京を代表する観光地だけど、どこか垢抜けなさが残る町だ。お店もそうだし、売られているものもどこか古めかしさがある。それが観光客、特に外国からの観光客にとっては「日本的」に写るのだろう。

もっとイケてる観光施設というのは、都内にはいくらでもある・・・と思ったが、ふと思い返してみると、それは六本木ヒルズだったりデパートだったり、「大型商業施設」をイメージしていることに気がついた。つまり、歴史もへったくれもないし、よさげなお店を寄せ集めた、人工的なものだ。

ここ、浅草のようなガチな観光地というのは、どことなく「古めかしく」感じるくらいがちょうど良いのかもしれない。

そんなわけで、知る人ぞ知る地下街に潜ってみる。

東京メトロ浅草駅から地上に出ず、うらぶれた狭い通路に入る。するとそこは、「こんな世界が地下に広がっているのか!」と驚く、地下街が形成されている。

タイ料理のような、「昔ながらの日本とは言えない」外来のお店もあるけれど、それでも拭い去れない昭和臭漂う、ディープな場所。

こういう場所で写真を撮るときは、カラーではなくクロームの方が似合うと思う。セピアだとちょっとわざとらしすぎるか。

忍者場

とはいえ、さすがは世界的観光地浅草の地下だ。いつまでも時が止まり続けているというわけにはいかないようだ。昔はなかったはずのお店が、居を構えていたりする。

これはなんだ?「忍者場」と書いてある。そして、ルビ代わりに英語で「NINJA BAR」だって。なるほど、バーなのか。どうやら、カップ酒を提供するバーらしい。

ひょい、と店内を覗いてみて、びっくりした。中に忍者がいたからだ。

「わ、びっくりした。忍者がいるぞここ」

我ながら間抜けな発言だけど、本当にびっくりしたし、本当に忍者がいたんだから仕方がない。カウンターの中にいる店員さんが、黒装束の忍者なのだった。面白い店だ。

食品サンプル

15:37
仲見世通り近くの路地を歩き回る。暑いので本当は動くのが面倒なのだが、かといって次の目的地へ一直線だと、あまりに芸がない。折角観光地に来ているのだから、蛇行しながらあちこちを見て回った方がいい。

ばばろあが

「あっ、なんやアレは。ちょっと近くで見たい」

と言い、すすすっと歩いて行く。向かった先は、「ニュー浅草」という居酒屋だった。「ニュー」と名乗っている割には、随分と味わい深いお店に見える。少なくとも、ここ数年レベルの「ニュー」ではない。20世紀まで時計の針を逆戻りさせないといけないっぽい。

「こんなの、珍しくないだろ?いくら山口だからって」
「いや、案外ないで、こういうのは」

確かに、食品サンプルまで店頭に出すような居酒屋って、あんまりないかもしれない。あと、東京の地場居酒屋というのが、地元と比べてどれくらい物価高なのか、というのを確認するのも面白いだろう。

この手の古いお店は、食品サンプルがどす黒くなっていたり、皿から料理が半分ずり落ちていたり、食欲が萎えることが多い。しかしこのニュー浅草、さすが「ニュー」を名乗るだけあってサンプルは全部ピカピカ。大したもんんだな、と感心した。

おそらく、外国人が大勢やってくる場所なので、「ここはメシ屋ですよ」「こんなものが食べられますよ」というのを食品サンプルでわかりやすく表現したかったのだろう。そもそも、外国において「居酒屋」という概念自体が珍しいということなので、こういうサンプルはあった方が良いのかもしれない。

梅園

15:40
浅草で有名な甘味処、「梅園」の横を通過する。この時間でもお客さんがいっぱいだ。いや、違うか、おやつの時間だからいっぱいなのは当然か。とにかく繁盛している。

「有名なお店だぞ、あわぜんざいの元祖だぞ」

とばばろあに解説したが、肝心の僕がこのお店に入ったことがないし、「あわぜんざい」なるものを食べたことがない。うまいんだろうか?

ばばろあが「よし、中に入るぞ」と言えば僕も「がってん」とばかりに追随するつもりだったが、さすがにお腹がそこまで減っていなかった。

ばばろあが言う。

「いや待て、今日はまずはどぜうじゃ。どぜうを食べることを優先させよう」

そうだな、僕らはもう44歳~45歳だ。いい歳なんだし、気力・体力・胃袋の力ともに踏ん張りがきかなくなってきている。

だいたい、2時間前にチュニジア料理を食べたばかりだ。ばばろあはクスクスを食べたわけで、これが腹にずっしりと溜まっている筈だ。そうやすやすと、あれこれ食べられるわけがない。ばばろあは、食いしん坊だけど元来小食だ。

「うまいもんが、ちょびっと食えればええ」

と彼はよく言っていたものだ。

老舗の甘味処であわぜんざい。とても結構なことだけど、ちょっと今はその気分ではなさそうだ。それは僕とて一緒。

興味がある方は梅園のあわぜんざいの料理写真を検索して見て欲しいのだけど、ねっとりとした風貌は夏場向けではない。卒倒しそうなくらいに蒸し暑い今日、歩き回っている我々二人。かき氷くらいならいくらでも胃袋には入るけど、ねっとり系はいかん。

そう考えると、和菓子って全般的に真夏の炎天下では食べたくないものだ。水信玄餅くらいか、夏に食べたい和菓子って。

三味線屋

15:42
浅草は、仲見世通りをはじめとする「昔っからのド定番観光地」よりも、寄席やらJRAの除外馬券売り場があるあたりの方が面白いと思う。昔は場末感があったかもしれないけど、今や「つくばエクスプレス」の浅草駅がこの近くにできたこともあり、賑わうようになった。

「つくばエクスプレス」は秋葉原からつくばまでを最短45分で結ぶ新しい路線で、まだ開業してから十年ちょっとしか経っていない。新路線の悲しい運命で、「運賃はアホみたいに高い」「都内の駅はとんでもなく地下深くで、地上に出るまで大変」「まったくの新路線・新駅なので、駅周辺に何もない」というデメリットはある。

しかし外国人観光客にとっては、「アキバ」と「浅草」が直通路線で行ける!たった2駅!ということでよく利用されている。

なおつくばエクスプレスをdisってばかりいるとかわいそうなのでフォローすると、時速130kmでぶっ飛ばす上にロングレールのおかげで殆ど電車が揺れず、乗り心地は最高だ。都心に通勤できる範囲で、一戸建ての家が欲しい・・・なんて人は検討対象にしても悪くはない。

ばばろあが、ふと足を止め嘆息する。

「こういう店がさりげなくある、というのもええよね」

見ると、そこにあるのは三味線と琴を売るお店だった。なるほど、確かに。

僕やばばろあがこのお店に入り、実際に商品を買うということは今後もないと思う。でも、こういう文化的懐の深さを見せるお店が町に点在している、というのが、なんとなくいいものだ。

ばばろあは、そういうところをいち早く察知しているようだ。

スカイツリー

15:42
振り返ると、東京スカイツリー。ばばろあが写真を撮影している。

傍らには、どす黒い天丼を出すことで知られる、「大黒屋」の別館。ここには、以前一人で訪れて、その天丼にびっくりしたことがある。

そのときの話をばばろあにしたら、

「ええね、食いたいね」

という。いやちょっと待て、濃いめのつゆがしっかりとかかっていて衣がどす黒いとはいえ、所詮は天丼だぞ?天丼自体はばばろあの居住地界隈でも食べられるだろう?

「まあ、折角じゃけえ。どじょうってあんまり量ないじゃろ。どじょう食って、まだ小腹が空いとったら天丼」

まじか。すごいじゃないか。その発想はなかった。どじょうを食べた後、シメのために梅園で甘味、という発想ならまだわかるけど、天丼をシメに持ってくる気か。

そういえば、最近の浅草は、メロンパンが評判のお店があるぞ、という話も我々の間ではしていた。隙あらばメロンパンも買って食べちゃおう、という勢いだ。なんだなんだ、今回は食い地獄企画になるのか?いや、しぶちょおとおかでんのコンビならともかく、ばばろあとおかでんではそうはならないだろう?

(結局、メロンパンは途中でうっかりそのことを忘れてしまい、買いそびれた)

伝報院通り

伝法院通りを通って、浅草六区方面へ。

昔はこのあたりに、ポルノ写真を使ったカレンダーやポスターを売るお店があったっけなあ。びっくりして立ち止まって商品を眺めたら、お店のおっちゃんに「冷やかしならあっちいってくれ!」と追い払われたものだ。昔はもう少し、浅草というのは殺伐としていた。今はもう少しマイルドになっている。

とはいえ、日本全国の観光地がそうであるように、浅草もやっぱり殺伐感は若干ある。たちの悪い観光客に長年サラされ続け、土産物店の人が辟易しているのだろう。そもそも、やってくるお客さんの数が毎日尋常ではない。一人一人にこやかに接していたら、お店の人は疲れ切ってしまう。「愛想がいまいち」と思われてしまうのも、仕方がないことだ。

寄席

15:56
浅草フランス座演芸場「東洋館」前。

この辺りは、いろいろな思惑の人が入り乱れて右へ左へと移動している。

「ワー浅草だー」と嬉しそうな観光客。

場外馬券売り場にやってきて、惨敗を喫したおじさん。

ホッピー通りで昼から飲んでいる男女。

ドンキホーテなどでお買い物をしている人。

さまざまだ。

ホッピー通りは、場外馬券売り場(WINS)にやってきたおっちゃんたちを相手に、昼から飲めるお店が軒を連ねている。もともとはそういう場所だったのだけど、今や「昼からでもカジュアルに飲める場所」として、若い男女や外国人まで、ここで昼酒を楽しんでいる。テラス席っぽく道路まで椅子と机が出ていて、そこで朗らかに酒を酌み交わしている光景は、見ている側もウキウキしてくるものだ。万馬券狙いのギラギラしたひとたちばかりが集う場所、という雰囲気は、少なくとも3連休の今日は見当たらなかった。

この界隈は、煮込みを売りにするお店が多いのだが、その中でも「生ホッピー」を売りにしているお店もある。ホッピーといえば、ビール風ノンアルコール飲料で、焼酎で割って飲む、安く酔える酒の代表格だ。普通は、茶色い小瓶でホッピーは供されるものだけど、このお店の場合は生ビール同様、ホッピー専用サーバーから注がれる。生ホッピーが飲めるお店は全国的に見ても貴重で、ここに来たならば是非飲んでみてほしいものだ。

僕は飲んだことがない。今後ももちろん飲む予定がないので、残念だ。

ばばろあに何度か「生のホッピーだぞ?」と挑発したのだけど、「いや、酒はええわ」とスルーされた。

「これだけ暑いと、すぐに酔って動けんようになりそうじゃけえ」

と彼は言う。それはそうかもしれない。お酒が入ったら、もう何もかも面倒くさくなって、動く気力が失せる。折角時間とお金をかけて東京までやってきたばばろあだ。ここで早々に「動きません宣言」というわけにはいかない。

(つづく)

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