天国と地獄、真実は霧の中に【表銀座縦走】

さて。

読者の皆様、大変長らくお待たせいたしました。はっきり言って、山の話なんてどーでもいいと思っていたと思います。くそつまらない話を延々とやりやがって、とお思いのことと存じ上げます。ご愁傷様です。

書いている方としても、あまりにもボケるところがなく、死ぬほど真面目に山旅レポを書いているのでいい加減ウンザリしていたところでございます。

忘れちゃいけません、このコーナーが「へべれけ紀行」だということを。ああ忘れてはいませんとももちろん。今回は容赦しませんよ、なにせ水断ちすること2時間だもんなあ。山歩きで2時間水断ち、これは結構なことですよ。年輩の方は絶対にやっちゃいけません、血がドロドロになって心臓に負担がかかりますからねぇ。いや、若者だってやっぱりやっちゃいけない事なんですけどね、でもこれからちゃんと水分補給しますからねぇ。

※注意:アルコールは体内の水分を奪う働きがあるため、血がドロドロになっている時にビールを飲む行為は逆効果。体に悪影響なので、本当はやるべきではない。

かといって、山小屋に戻ってすぐにビールビールってやるのは至ってクールではない。やはり、さりげない顔をして、「たまにはビールなんか飲んでみるのも悪くない選択肢じゃない?」と、やっておきたい。まずは、汗で汚れた体を濡れタオルで入念にふき、簡単に洗髪もして、着替えを済ませる。やはりビールを飲むからには、斎戒沐浴?しておかなければ。

展望喫茶室サンルームのメニュー

じらすことしばし。御飯は炊きあがった直後に食べるのではなく、少し蒸らしてから食べるのが正解なのと同じだ。ビールだって、「ああもう我慢できん」という情熱が湯気となって自分自身を蒸らすまで待たなくてはいけない。

で、十分蒸れたところで、展望喫茶室サンルームに向かった。

ここはスタッフが2名がかりで対応していた。相変わらずスケールがでかい山小屋だ。毎度毎度感心させられる。

適当な席に座り、メニューを見る。・・・メニュー?おい、写真入りのメニューがあるのか。しかも結構豊富な品そろえだ。何気なくメニューを眺めていたが、あらためてここが高度2,700mの山小屋であることを思い出すと、驚いてしまう。信じられない。

一例を挙げると、コーヒーや紅茶が500円。ケーキセットで950円。地酒650円。ボトルワイン2,200円、デキャンタワインL2,000円~グラスワイン400円。ウィスキーまでメニューにある。

食べ物は、ソーセージ盛り合わせ500円、三種類のパン500円、ミックスナッツ420円、チーズ盛り合わせ500円、おでん720円、枝豆420円だった。三種類のパンは「朝8時から」と書いてあるところを見ると、どうやら自家製らしい。山の上でそこまでやるか。(ちなみに槍ヶ岳山荘でも自家製パンを焼いている)

メニューは完全に酒のつまみだ。カレーやラーメンといった昼食メニューに相当するものは置いていない。

注文はカウンターに行ってお会計と共に自分で済ませる、カフェ形式だ。商品は準備でき次第スタッフが運んできてくれる。

おかでんはもちろん、力強く、腹から出る声で「大ナマを」と宣言。人差し指を高らかに突き立てて。

お店のお姉ちゃんも、「大ナマですね?」とニコヤカに深くうなずいた。そうだ、やっぱり山に登った後は大以外はあり得ない。

あわせて、ソーセージ盛り合わせを注文しておいた。カウンタには、100円そこらの「味ごのみ」パックが売られていたので、それをつまみながらビールというのも廉価で良かった。しかし、せっかくこういう場所に来たのだから、できあいのおつまみをぽりぽりやっていたのではもったいない。ソーセージ、盛り合わされてみようじゃあないの。

よーしよーしよーし、と立ち会い直前の力士のように気合いが入って、自席にどっかと腰掛けていたらコダマ青年がオーダーを終えて戻ってきた。

「あのぉ、あらかじめ言って置くけど」
「ん?」
「たぶん、おかでんからチキン野郎とかさんざん言われると思うんだけど」
「何だ?味ごのみを買ったって事か?」
「いや、そうじゃなくって・・・中ジョッキにした」
「な、何ぃ?き、貴様それでも山屋かぁぁぁっ」
「いや、俺ウィスキーとかあるし、あんまりビールは飲まなくてもいいかなって」
「まあ、人それぞれだとは思うが、このシチュエーション、大しかあり得ないと思わないか?思えないのか?」
「わかるよ、言ってることは分かるんだけど、さ」

まあよい。他人様のビール量の大小はどうでもいいことだ。いかに、そのビールで天国に近づけるかという事が重要だ。ほら、そうこう言っているうちにビールが到着したぞ。

生ビール大と中

う、うひゃーっ。本当に大ジョッキが来た!しかも、ジョッキの表面にうっすらと霜がついているではないか!本当かよ、これ。しかも、生ビール特有のきめの細かい泡が、スバラシイ層を作っているではないか。信じられるか、これが山小屋で飲めるなんて。

これだけきれいな泡を出そうとすると、きっちりとジョッキを洗って乾燥させていないと無理。雑にあらうと、泡はすぐになくなってしまう。この泡ひとつとっても、燕山荘の徹底っぷりがよく分かる。

「とりあえず乾杯の前に写真撮っておくから待ってくれ」
「あっ、おかでんさては大ジョッキと中ジョッキを並べて撮影して、後で『コダマ青年は中ジョッキしか飲まないチキン野郎でした』ってアワレみ隊に書くつもりだろ?」
「いや、そりゃ被害妄想だぜ、ただ単に写真撮りたいだけだってば」

大ジョッキを前にご満悦なおかでん

乾杯。

お疲れさまでしたー、という言葉をよく乾杯の時に使うが、山に登った後でこそこの言葉はふさわしい。

手にするジョッキが、非常に重い。山歩きは、脚力を要する運動だ。手がおろそかになっている。だから、このジョッキの重さであらためて上半身を鍛えようという事なのだろうか。

・・・妄想だぞ、それ。

ぐぐぐぐいいい。ふ、ふわぁ。

うまい!今年飲んだ中では、最高に旨いビールだ!

あまりに旨かったので、「ぐいっ」「ぷはあ」といういつものルーティンとは異なり、「ぐぐぐぐいいい」と飲み、ため息が出てしまった。ほら、一息でこれだけ飲んじゃった。(写真参照)

「あああ、いいねえええええ」

「うはああああ、たまらないねえええええ」

なにやら、「あ」と「え」の言葉がえらく長くなっているような。

お手製POP

若い女性スタッフが書いたと想われる、あれこれ四方山話がテーブルに置いてあった。

well come to sunroom!(よくサンルームに来てください!)というのが恐らくスペル間違いなんだろうなあ、本当はwelcome to sunroom!(サンルームへようこそ!)と言いたかったんだろうなあとは思わせるものの、こういうスタッフの生の声が読めるのは楽しい。

早番のスタッフは朝3時には起きているという裏話も書いてあって、びっくり。

秋のワインフェア開催中

その裏面は・・・ああ!秋のワインフェア開催中、だって?

デキャンタS(グラス2杯分)の白ワイン+チーズ盛り合わせで1,100円。それぞれ単品で注文するより、100円安い。

これも手書き。非常に親近感が沸いてくる。

「そうかコダマ青年。ワインフェア開催中です!と言われた以上、おつきあいしなくちゃなるまい。夕食後、ぜひワインとチーズを楽しもうではないか」

「やっぱそうくると思ったよ」

サンルームは太陽に包まれて

ビールを楽しむ二人。

あまりに神々しい姿だったのか、後光が差していた。

ソーセージ盛り合わせ

しばらくして、注文していたソーセージ盛り合わせがやってきた。4本で500円だから、安い部類に入ると思う。下界の居酒屋メニューでも、この手の料理は結構値が張るものだ。

こういうボイルする料理を用意していたり、きれいに洗われているジョッキを見るに付け、水不足のはずの稜線の山小屋とはとても思えない。

ザワークラウトや彩りのパセリが添えてあるのが泣ける。

大ジョッキおかわり

「いやぁ、困ったなあ、もうあらかたビール飲んじゃった後になってソーセージ来ちゃったもんなあ」
「何が言いたいか、大体わかった。いいよ、行って来いよ遠慮しないで」
「いや、遠慮はしていないんだけどね・・・では、お言葉に甘えて」

しばらくして、もう一杯大ジョッキが届けられた。

「おい!本当に遠慮していないな、また大ジョッキか!」

ジョッキのサイズ比較

サンルームのそばに、ジョッキが陳列されていた。ビール容量をメニューに明記しているだけでもとても親切だが、こうやって実際のジョッキを並べて置いているというのはさらに親切だ。これだと、量の実感がわく。いや、至れり尽くせりだホント。

おかでんは大ジョッキ2杯で、相当いい感じに熟成されてしまった。ふと時計を見ると、まだ午後5時前。アルコールのせいもあって、「うひひひ」と笑い出してしまった。

「な、なんだ一体いきなり笑い出して」
「いやねぇ、うひひひ。だって今日平日だぜ?今、職場じゃ本当だったら仕事してるんだから、まさに。それがだよ、うふふ、今こうしてだ、絶景を眺めながらぁ、ビールをぐい、ぐい、と。幸せだよなあ、俺らって」

一人で幸せがっていた。

ポットのお茶を飲む

大ジョッキ2杯を泡まで飲み尽くし、満足したのでサンルームをあとにした。ちょっと足下がおぼつかないような気がしないでもない。やはり、山登り後のビールは相当酔いやすいようだ。

食堂のよこに、お茶の入ったポットと湯飲みが置いてあった。ご自由にお飲みください、ということだ。

山小屋によっては、水はタダだけどお茶はお金がいるよ、というのがある。一般的には、お茶は食事の時にしか出てこないものだ。しかし、この山小屋ではご自由にどうぞとなっている。このあたりの配慮もさりげなく凄いことだ。

こんな様を見せつけられると、この建物に水道が布設されているんじゃないかって真剣に疑わしくなってくる。

お手洗いは簡易水洗

夕食までまだ時間があるし、やることがないのでこの広い山小屋内外を探検してみることにした。

まずはお手洗いから。

お手洗いは簡易水洗になっていた。

ビニールプールを膨らませる時に使うような、蛇腹式の踏む場所があり、そこをぐいと踏み込むと洗浄液が流れる仕組みだ。水を無駄遣いしないための策なのだろう。

軽油タンク

裏手に回ると、大きな軽油タンクが2つ、そびえていた。これでディーゼルエンジンを回し、自家発電をしているのだろう。それにしてもえらくデカい。工場みたいだ。

山小屋裏手から
山小屋裏手から2
山小屋裏手から3

山小屋裏手から。右側が本館にあたり、左側の高台が新館になるのだろう。収容人数を増やすため、後になって増設したものと思われる。

表銀座縦走コース

あらためて、明日歩く表銀座縦走コースを。

大天井岳までのルートがよく見える。

取っ手のない蛇口

先ほどビールを飲んでいたサンルームの外側に回ってみると、取っ手のない蛇口とお願い文が張り出してあった。

ああ、やっぱり水は不足しているのだな。

外向けのメニュー

通りすがりの登山客や、テント宿泊者のためにも外で飲み食いができるようになっていた。こちらは、外向けのメニュー。

りんごが600円になっていた!

合戦小屋の2倍!

苺みるく

ここにも手書きのポスターが。

非常に可愛らしい。苺みるくは「これはぜったいおすすめです!!」と注釈がつけられている。

なぜか、苺みるくにもビールにも熊さんが描かれている。えらくお目目がぱっちりしていて、ドラえもんもびっくりの二頭身だ。

「まずは、生ビールで乾杯!!」という言葉に、深く「我が意を得たり!」と思った。そう、「まずは」なんですよビールの場合は。「まずは」であるし、「とりえあえず」なわけですよ、うん。

個室確保できる人は金持ち

屋内の探検を進める。ここは個室料金(一人あたり5,000円アップ)を払えば、ちゃんと個室が与えられる。何でも、ノリがぱしーッと利いたシーツを敷いて寝ることができるらしい。

空き部屋があったので、勝手に侵入してみる。

むぅ。旅館の部屋と比べれば殺風景だが、山の中であるということを考慮すれば凄い。というか、凄すぎてこうなると山小屋の範疇外になりつつある。こうなると、長期滞在したくなってくるな。

本館から新館に向かう

本館から新館に向かうためには、この階段を登っていく必要がある。後づけで作りました感ばりばり。まだ非常に新しい。

ここから先は、われわれのように追加料金を払わなかった貧乏人・・・ああうそです冗談です、一般料金を払った人たちの領域に入る模様。

乾燥室

乾燥室・・・といっていいのかな、ここは。

汗で濡れた衣服が、廊下の途中でぶら下げられていた。

カイコだな

こちらが、1泊2食8,700円の標準価格で泊まった人たちのブロック。カイコだなになっているのはわれわれの居住区と変わりないのだが、横にずらっと並ぶようになっていて知らない人と同居するかたちになる。さすがに男女は別にしているようだった。

人の数が多い分、居心地が悪いかと思ったが建物そのものが新しく清潔で、ある程度ゆったりとした作りになっているのでこれで全然問題はないと思う。

また、寝る際はここの山小屋は寝袋が用意されているため、寝ている間に他人の足が絡まってくるといった事態にはならなくて済むようだ。

入口

こちらの建物に宿泊する人は、受付を済ませたら一度外を回ってから専用の入り口から入るようになっているらしい。われわれが感心した、スタッフのお部屋案内も特にない模様。おお、案外価格差による差別ってあるのだな。

売店の売り物をディスプレイ

壁にいろいろ貼ってあったり飾ってあったので、「ほー、なかなか小じゃれたことをやるなあ」と感心して見ていたら、全てに値札がついていた。売店で売っているもののディスプレイだった模様。

しかしその全てが燕山荘のオリジナルグッズというのだから恐れ入る。一体ここはどれだけの財力を持っているというのだろう?オリジナルグッズを他品種制作するためには、相当なキャッシュフローが要求されるはずだ。山小屋って儲からない商売かとおもったが、案外そうでも無いと言うことだろうか?

・・・ああ、そうだ。さっき僕ぁ喫茶サンルームで2,500円も使っちゃったっけ。ああいう事だな、さては。

チェックイン時にもらったもの

チェックイン時にもらった紙切れ。

左側は、お土産にどうぞというものだったが、雨に濡れてすぐにボロボロになってしまった。あまりもらってうれしいものではない。

右側は、食券の役目となるらしい。夕食2名、朝食2名、弁当いらないという印がついている。これを食事の際には切り離して、スタッフに渡す事になる。

お教えください

驚いた!

チェックイン時にもらった、何やらハガキらしきもの。裏を読んでみると、「お教えください」というタイトルで燕山荘オーナー名義で文章が書いてある。

読んでみると、

この度は、私どもの宿泊施設をご利用頂きまして深く感謝申し上げます。
私ども一生懸命やっておりますが、至らないこと、気付かないことがたくさんあります。
サービス不足もすべて社長の責任でございます。
待遇、清掃・・・その他お客様のお気づきになられました、どのような事でもお叱りください。お教えください。心からお願い申し上げます。

と書いてあるではないか。なんだぁ、こりゃあ。山小屋の範疇では納まらないぞ、これでは。

「山で宿泊できて、食事が食べられればそれでOK。それ以上ぜいたく言っちゃいかん」というのが山小屋の一般的認識。ただ、人間である以上「できれば生ビール飲めたらうれしいよね」とかそういう欲がある程度だ。にもかかわらず、ここのオーナーはそういうボトムアップ型の積み上げではなく、いきなり「最上級のサービスとはどうあるべきか」という視点から物事を見ているのだった。山小屋だからしょうがないよね、という事は言わせないぞ、という決意が伺える。これには本当に恐れ入った。道理で建物は清潔だしスタッフは全員すごく応対が丁寧で気さくなわけだ。今日何度目かの「やりすぎだよ!」という言葉が頭に浮かんだが、とにかく素直に感激した。

夕食タイム
山小屋の食堂

さあ、お楽しみの夕食タイムだ。5時半からの夕食ということで、外はまだ日が暮れていない時間での夕食開始となる。先ほどビールをぐいぐいと飲んでからまだそれほど時間が経っていないのだが、ビールと飯は別腹よ、早速頂くことにしましょうか。

向いの席に座っているオッチャンが、サンルームから大ジョッキを抱えてきた。夕食のお供にいっぱい飲るつもりらしい。

「あっ、大ジョッキですね?」
「うふふ、わかります?いや、夕食で生が飲めるなんていいですねここ」

ととてもうれしそうだ。おかでんとしてもぜひご相伴に預かりたいところだったが、すでに先ほどの大ジョッキ2杯で体は「もうアルコールは十分頂きました」状態になっていて、断念。まあ、メリハリを付けて飲み食いをするってことは重要でしょう。・・・と自分を慰める。

燕山荘の夕食

本日の夕食。ちょっと薄暗く写ってしまったため、イマイチおいしそうに写っていないのが申し訳ないのだが。

メインディッシュは豚とタマネギの炒め物、サバの塩焼き、しゅうまい、キャベツの千切り。小鉢としてめかぶ。そして、御飯とみそ汁、デザートに桃の缶詰。

朝ご飯に鮭が出てくる山小屋は珍しくないが、鯖が出てきたのは意外だった。

料理はとてもおいしかった。いやぁ、幸せだなあなんて言いながら山小屋御飯を食べられるとは思わなかった。

・・・ああ、そういえばそういう経験も過去にあったぞ、ヒュッテ大槍。ワイン付きの夕食。

・・・ヒュッテ大槍も燕山荘グループじゃん。 なるほど。

裏銀座主脈に沈んでいく夕日

裏銀座主脈に沈んでいく夕日。

さすがにこの時間になると、寒くなってきた。フリースを着込んでおかないと、寒くて外に長時間居るのは無理。

夕暮れの槍ヶ岳

しつこいくらいに写真を撮ってみました、槍ヶ岳。

もう今日はこれでおしまいにしよう。

部屋にある窓

「自室」に戻って、寝る準備を始める。

小窓が用意されていて、そこから外を見ると穂高の町がよく見えた。ためしに扉を開けてみたら、寒い風がどばぁと入ってきたので、あわてて閉めた。ううう、9月上旬とは思えない寒さだ。

標高100mに付き気温が0.6度下がる=標高2,700mだと気温が16.2度下がる

うわぁ、寒いわけだ。

明日の行程をチェック

明日のコースを事前に入念にチェックしておく。前回「百名山無謀チャレンジ」で、地図を見なかったがためにえらい目に遭ってしまった教訓だ。当たり前のことだが。

明日の天気は曇りの予報だったが、コダマ青年情報によると「どうやら回復するらしいよ」という事だった。それは良かった、縦走路歩きは風光明媚なのが一番のメリット。展望が利かなくちゃ、面白さは半減だ。

食堂でビデオ上映会

夜7時から、食堂でビデオ上映会があった。オーナーの赤松氏がいるときは、ここでアルペンホルンの生演奏が行われるのが売りになっているのだが、今日は客を募ってスイスにツアーを組んで旅行に出かけているらしい。何ともはや活動的な人だ。そのため、生演奏は無しで、生演奏を録画したビデオの上映だった。大型のプラズマディスプレイが設置されているのに、またしても驚かされた。いや、ホントここは山小屋離れしている。

アルペンホルンの演奏そのものは、「?」という感じだったが(すまぬ)、そのトークは絶妙。合戦小屋で熊と闘った話、疲れない歩き方の話、オリジナルグッズの話・・・次々出てくる話題のそのいずれもで、笑わせる要素が散りばめられていた。熟練の技を見た感じだ。

ブレスサーモ搭載の寝袋

本当は秋のワインフェアを楽しむつもりだったのだが、やはり大ジョッキ2杯の影響をまだ引きずっていて、これ以上アルコールが欲しい気分じゃなかった。よって、泣く泣く断念。また今度、いずれここを訪れる事があったら今度こそ。

さて、部屋に戻って寝袋を広げる。この山小屋では、布団ではなく寝袋で一人一人が快適に眠ることができるように配慮されていた。下界では当然布団の方が居心地が良いに決まっているのだが、山の場合狭い場所で寝るため、「二人で布団1枚」なんてイヤーンな事になるパターンが珍しくない。その点、寝袋形式だと、少なくとも隣の人の足が領海侵犯してきた、とかそういう不愉快な思いをしなくて済むのでありがたい。

ここの寝袋は、ただの寝袋ではなかった。なんと、燕山荘オリジナル寝袋でやんの。おい、土産物に限らずこんなところまでオリジナルかよ!と驚きを通り越して呆れてしまった。

なんと、「山小屋用として快適に眠ることができるように」と、スポーツ用品メーカーのミズノと共同開発して、ブレスサーモ内臓の寝袋を作ってしまったという。部屋の壁には、誇らしげにその説明書きが張り出されていた。

燕山荘オリジナル寝袋

それがこの寝袋。普通この「封筒型」と呼ばれるタイプの寝袋は横にファスナーがついているだけなのだが、この寝袋はL字形にファスナーがついている。すなわち、封筒の底の部分まで解放することができる。だから、広げれば大きな掛け布団としても使えるわけだ。

また、封筒の上からも下からもファスナーを開け閉めできる作りになっているので、寝袋内の温度にあわせて「足下だけファスナーを開けておく」という芸当もできる。なかなかの優れものだ。

しかし・・・いざ寝てみて思ったのだが、暑い!ブレスサーモって、よく冬用のウェアに使われている素材だが、「体内の汗などの水分を吸収して熱に変える」働きがある。寝袋で寝ていて、寝汗をかくと、それが熱にかわるため、どんどん悪循環で暑くなっていっているようだ。屋外にいて、常に冷たい風にさらされて熱を奪われている状態ならともかく、山小屋のようにある程度は気温が安定している場所だったら熱地獄になりそうな気がする。結局、暑くて寝袋を半分くらいはねのけて寝る羽目になった。風邪をひかなくて本当に良かった。

さて、明日からがこの山行の本番だ。気合いを入れていこう。

1 2 3 4

Comments

To comment

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.