遍路はつづくよどこまでも【倉敷八十八カ所礼状巡り】

現在地点の確認のため、地図を参照しつつ読み進むと一層味わい深くなります。

観龍寺から山を下りきったところは、商店街だった。

その片隅に、お手洗いがある。

コンクリートのかたまりのようで、ぱっと見はお手洗いには見えない。だが、これもれっきとした公衆トイレ。お立ち寄りの際にはぜひどうぞ。

このすぐ近くには「えびす饅頭」という二重焼きの店があって、道中のおやつに最適。昔は「店が開いている方が珍しい」お店だったのだが、ここ10年くらいは閉まっている方が珍しいお店になった。何があったんだろう。

モノは試しでいっぺん買ってみるか・・・と思ったら、うわあ、財布を持ってくるの忘れてた。えらいこっちゃ。今日、この後お昼ご飯はおろか水分補給すらできないぞ。

いったん宿泊先まで戻って、体勢立て直して出直しを図ることも考えたが、さすがにそれは時間の無駄なのでやめた。道ばたでお接待して頂けるなんてことはまずあり得ないし、えーいここは覚悟を決めて最後まで飲まず食わずで行くしかないな。これもまた修行なり。

財布を忘れたことに軽くショックを受けながら、次の道を探す。ええと、何だっけ。

公衆トイレの裏、路地を入り30m石垣の下 木造堂

倉敷はある程度詳しいといっても、路地裏まで精通はしていないぞ。公衆トイレの前には道(といっても、一車線半程度のあまり広くない車道)が斜めに走っているが・・・これじゃないよな。トイレの裏?路地?

・・・おい、本気かよ。民家と民家の間に僅かな隙間を発見。あれが「路地」なのだろうか。

いやぁ、ディスカバー倉敷、だな。こんな狭い路地があるのは知らなかったし、知っていてもへんろみちでない限りは一生通らなかっただろう。

美観地区、だとか大原美術館、といったそういう観光スポットとは目と鼻の先だけど、こんな路地を散策する自分。なんだかとても不思議な気分。

不思議なのはいいけど、本当に札所があるんだろうか。こんな道を歩くなんて、全く想定していなかった。

全く見知らぬ土地だったら、「まあこういう道を通るのも有りだろう」と割り切ると思う。しかし、勝手知ったる土地であるが故に、「え、こんな道があったんだ」というところを通ると衝撃が強い。

78番札所:郷照寺

[78番札所:郷照寺] 10:19

おおおう、確かにあった。狭い路地を抜けたそこには、今までの「石堂」とはちょっとスケールの違う、一軒家風な札所があったぞ。78番郷照寺。

「狭い路地を抜けたそこには」なんて表現したけど、しょせん30mしか歩いていないんだけど。でも心細かったなあ、この30m。

ちょうど観龍寺の真下に位置するのね。見上げるとそこには観龍寺の本堂があった。

77番道隆寺を目指す。

トンネル北口、東側の狭い石段上がる途中

ということなので、引き続き狭い道を歩く。行き止まりになってないだろうな、と不安になりつつ。

「倉敷遍路をぜひ車遍路で」なんて考えちゃダメだ、車じゃ入れないところに札所がある。

疑い深く、慎重に歩いていると鶴形山トンネルの北口に出た。スタート地点である観龍寺駐車場はこのトンネル南口にあるので、鶴形山を半周したことになる。

さて、と。石段上がる途中に・・・

あー、あるぞあるぞ。石堂が階段の途中に建立されてる。目標物発見。

[77番札所:道隆寺] 10:27

道隆寺。

紫色の布(何て呼ぶんだか知らないので「布」と形容させてください)と、のぼり旗があるから札所だということに気付く。このあたりはお墓が多いこともあって、大変に紛らわしい。これらの目印が無いと見落としている可能性有りだ。寄進してくれた人ありがとう。

これも再築されたものだ。まだ石がぴかぴかしている。

道隆寺のご本尊は薬師如来だが、その横に弘法大師も並んで鎮座されている。ええと、この場合2回お経を唱えた方が良いのかしら。まあいいか、1回にしておこう。

次の札所への道は

○また下へ降りて東へ20m山側。のぼり旗有 通称北向地蔵尊

だ、そうで。階段を下りて、左手に小学校を見ながらちょいと進むと・・・おお?なにやらのぼり旗があるぞ。そして、ご丁寧に看板も出ているようだ。ここかな。

看板には、「鶴形山裏登山道入口」「北向日切地蔵菩薩」と書かれていた。鶴形山のてっぺんには「阿智神社」という地元では信仰されている神社があるので、そこの参拝する際に使う道なのだろう。

遍路ガイドに「通称北向地蔵尊」と記されていたから、「ああここだな」と分かるが、記載が無ければ気付かずに通り過ぎるところだった。札所が全然見えぬ。そもそも、この登山道入口が狭い。駐車場と民家の隙間だ。

[79番札所:高照院] 10:32

民家のモロに裏側。というか、お墓があるんですけど。ええと、納屋みたいな立ち位置にあるこの建物が「お堂」ということでよろしゅうござんすね。

ここは、もともと「倉敷遍路」となる前からずっと信仰されていた場所らしく、これまでの札所では定番となっている「紫の布」や本尊名と札所名が書かれたのぼりが無かった。

[72番札所:曼荼羅寺] 10:36

○79番からもとの道路に沿って東へ20m 駐車場奥新築

最初は「30m!」と驚いていたが、もはや次元は20mスケールなのであった。先ほどから20m間隔で札所が続くなあ。

ここは明らかに「強引に新築しました」感が漂う。駐車場の奥の石垣の上に、石堂。そこに向けて新しい階段がしつらえてあった。

こんなところに新築しちゃいましたか。場所選定の妙というやつだな。観龍寺さんの管轄土地(もしくは檀家の関係土地)で、お堂が設置できる場所を探さないといけないんだから。まさか、用地買収をしてまでお堂を再興したということは無いと思う。そんな費用をかけられるとは思えない。

ここ曼荼羅寺には、今回倉敷遍路を復興させるにあたって募金に応じた人の一覧が掲示されていた。

ありがとう皆さん。おかげで僕はただいまお経漬けの時間を過ごしてます。あまりに札所間が近くてお経三昧なので、ホントに無心になれます。「儲かりますように」とか「健康でいられますように」なんて私利私欲を考えているゆとりなぞありませぬ。

73番出釈迦寺への道

73番出釈迦寺への道は、

○元の道へ戻り、東へ幼稚園の門の向い、山へ登る斜めの小道上へ 目印有

となっている。ええと、小学校を過ぎたら、今度は幼稚園が左手に見えてきたぞと。

この向かい・・・

ああ、看板が出ている。「倉敷88カ所霊場 73番出釈迦寺」って木の札が。これか。今回は大変に親切かつわかりやすいな。

いやでもまてよ、本当にこの道か?

というより、これは道なのか?一般人が通って良いところなのだろうか。

どこかの家の裏側に出て、「きゃードロボー」と言われたりしたら困る。そんな不安にさせてくれる、細道。

むこうから人がおりてきたら、すれ違うのに苦労するくらいの狭さだ。

ただいま鶴形山の北側斜面を歩いております。

細道の先には墓地があった。

んーと、出釈迦寺らしきものは見あたらないな。もう少し先か。

あ!

あった、あった。

カメレオンのようにお墓の石碑に紛れていた。例の紫布のおかげで発見できた。ひな壇状にあるお墓の数々の最上段に、札所発見。

見逃すところだった。

[73番札所:出釈迦寺] 10:45

お墓を見下ろす場所にあるのかと思ったら、お墓に並んで札所はあった。ありがとう紫布とのぼり旗。君たちが居なかったら絶対に見落としてたよ。立派なお墓にしか見えない。

○その上すぐ

ということだが、すぐったって上は雑木林の山の斜面ですよ。ここをよじ登れと?

・・・あ、あった。

本当に山の斜面にぽつんと札所がある。ディープなところに作ったもんだなあ。

驚くやら呆れるやらで、山の斜面をよじ登る。

[13番札所:一之宮(大日寺)] 10:50

山の斜面に忽然と姿を現した孤高の存在、かと思ったらこのあたり一帯にもお墓がある。鶴形山はお墓だらけだな。倉敷という歴史の古い町故だろうか?

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