おもてなし三昧な世界【台湾南部滞在】

・・・あ、忘れてた。台灣啤酒。あれが無いと始まらない。

このお店もやっぱり勝手に冷蔵庫から持ってくるスタイルのようだ。でもわれわれには店員さんが持ってきてくれた。

グラスは既に卓上にセットしてあるので、有り難く頂戴・・・いや待て待て、早速次々と料理が到着し始めたぞ。このスピード感こそ、中華料理だ。和風居酒屋のように、お通し食べて待っててね、なんて必要は全くない。料理そのものがお通しだと言わんばかりだ。

蒜泥白肉

まず届いたのは「蒜泥白肉(ソワンニィパイロー)」。豚の三枚肉を薄くスライスしたものに、たれがかかっているものだ。実物を見れば十分に味の想像はつくが、料理名からはいまいち想像できない料理だ。聞くと、「蒜泥」はにんにくソースの事で、「白肉」はゆで豚の事なんだって。四川料理の定番なんだそうだ。

早速食べてみると、確かにこのとろっとしたソースが強烈。にんにくの味がばつんと効いていて、おかでんストライクゾーンにいい具合にはまった。もっとも、おかでんのストライクゾーンはもともと結構広めなのだが。醤油膏をベースにしたものだと思われる。白肉の上には針生姜がどっさり。これもまた刺激的な食感で楽しい。にんにくと生姜、東西のくせ者俳優が競演だ。まずかろうはずがない。ただし、大技の連発状態であり、この味を「雑で下品」と形容するブルジョアがいるかもしれん。まあ、人それぞれだ。おかでんは熱烈にこの料理を歓迎する。啤酒のつまみに最高。

炒青菜

お次は一気に明るい色彩、「炒青菜」。炒青菜、というメニューは料理の総称であり、実際に注文すると店員さんから「何の野菜を炒めますか?」と聞かれる事が多い。まあ大抵、豆苗だったり空心菜だったりするわけだが、この日は「大陸菜」なるものがあるという。ではそれにしよう、と大陸菜の炒青菜を注文してみた。

出てきた料理は、なるほどシンプルに葉野菜を炒めましたというもの。にんにくを刻んだものが入っていて、この国の人・・・というか中華な人たちがにんにくをいかに愛しているかが分かる。おう、俺も同じだ、同士よ。

で、肝心の大陸菜だが、ええとこれはレタスの一種のようだ。レタスにしては、緑がほうれん草のように濃い部分があるので、日本にはありそうで無い野菜だ。恐らく中国大陸原産のものだと思われる。では中国では何という名前なのか、それがちょっと興味をひいた。

味は、レタス的シャキシャキ感と、レタスにはないしぶとさというか、しっかりした青い味で力強かった。こういう骨太の野菜だからこそ、にんにくと一緒に炒めても負けないのだろう。絶品、とまではいわないが、悪くない味だった。

炒蝦子

お次の皿は、「炒蝦子」。

エビを中心に、葱、にんにく、生姜、唐辛子を炒めたもの。「蝦子」と書いてあるので小さなエビを想像するが、それなりに大きい。

色合いからして淡泊な味を想像したが、にんにくと生姜が入っている事もあってしっかりとした味つけ。葱がごろんごろんと入っているので見た目が日本人好みのセンスではないが、「家常菜」の店であることを考えればこれで十分すぎる。

三杯鶏

次は茶色にテカる、こってり系の料理が山盛り出てきた。すごいボリュームだ。ええと、この料理は「三杯鶏」。見ると、鶏のもも肉をぶつ切りにしたものを、生姜、にんにく、唐辛子、葱などと一緒に炒め、たれで絡めたものだ。生姜が大ぶりな薄切りで存在感を示しており、もっさり、こってりした味わいに引き締め効果がある。

「三杯って何?」と聞いてみたら、「ごま油、酒、醤油を1:1:1の割合で混ぜたもの」なんだそうだ。へえ、なるほど。日本でもありそうな組合せだけど、ありそうであんまりないと思う。「サンベイジー」と読み、台灣ではとてもポピュラーな料理なんだって。そういえば、これ以降意識して飲食店のメニューを見てみたら、あちこちで「三杯○○」という名前が付けられた料理を見かけた。「鶏」じゃなくても、どんな食材でも合わせることができる。

肉は骨付きなので、手をベタベタにしながら肉を食べる事になる。

日本人って骨付き肉の美味さは知っているものの、「面倒だから」と敬遠しがち。でも台灣の人は「美味いなら労力は惜しまぬ」とばかりに、骨付き肉を愛する。

丼に盛られた白米

白米もやってきた。

「ご飯食べる?」と聞かれて、「うん」と答えたからだが、まさか巨大な丼に盛られてくるとは思わなかった。これが日本でいう「おひつ」の役目になり、あとは大きなレンゲで各自よそって食べよ、というスタイルだった。なんだか豪快だ。てっきり、魯肉飯などを入れる小さな汁椀で個別に出てくると思っていたので、これにはひっくり返った。食べられんぞ、こんなに。しかもおかでんは啤酒を大絶賛満喫中だし。

とはいえ、三杯鶏などのこってりした料理は、どうしてもご飯が欲しくなる。最初は「いやーこれだけ濃い味付けはお酒によく合うねえ」なんて豪快に笑い飛ばしていたが、本当に濃い料理って、やっぱりご飯なんだよな。「飲酒中にご飯は食べぬ」というポリシーだったおかでんも、さすがにご飯にエスケープせざるを得なかった。いや、エスケープ、というと負け犬のようだが、濃い料理とご飯の組合せという魅力に勝てなかった、というのが本当のところだ。

で、食べてみる。

んー。ぱさついた米だ。1日以上炊飯器の中で保温したご飯のような印象。米が黄色っぽい色になっているし。香りが強く、明らかに日本の米とは異なる。ただ、「まずい。こんな米は食えん」とは思わなかった。パンチの効いた料理だから、むしろこういう米の方が合うんじゃないかと。逆に、日本のもちもちふっくら銀シャリだとべたついてくどくなりそう。

卓上に並ぶ料理

ずらりと卓上に並ぶ料理。

明らかに頼みすぎた気配ありあり。一皿あたりのボリュームが凄いんだよな。4人前くらいはあるだろう。今回は男性1名(おかでん)+女性2名なので、この量はさすがに多かった。でも注文したのは女性陣であり、これが適切だと思ったのだろう。まあ、食事を残すことに対してはそれほど気にしない文化の国なので、適度にいろいろ食べられてナイスな皿数、ということなのだろう。

ちなみに、「旅の指さし会話帳・台灣」という本には、「料理を頼む際は人数+1皿が目安」、と書いてあった。今後の参考にしよう。

ぱぱぱっと適当にオーダーした風だったが、きちんと海鮮、野菜、豚肉、鶏肉とジャンルが別れており、重複していないのはさすがだ。こういう店で頼み慣れているんだろうな。われわれ日本人だと、居酒屋なんぞでオーダーしていたら気がついたら似たようなものばかりがテーブルに並んだ、なんてことが多々ある。台灣人に見習うところはたくさんありそうだ。

それにしても、皿には不自由させられる。4種類の汁気ある料理を取り皿に取っていると、あっという間に皿の上が混沌とした味のカオスになって困る。女性陣を見ると、例のごとく「台灣式食べ方」で、ご飯の上に料理を載せ、料理置き場兼汁気取り場にしている。うーん、便利だ。これだと、平皿+お椀だけで十分だ。でも、「白米の上に料理を放置」するという事が日本人にはどうにもマナー違反に見えて真似できないので、便利とは思いつつも平皿一枚で頑張った。

海苔魩仔魚湯

遅れて、湯が出てきた。こちらも大きな丼にいっぱい。

「海苔魩仔魚湯」だという。おお、枋寮名物の魩仔魚を取り入れた料理をオーダーしてくれたのか。ありがたい。

早速頂こう・・・と思ったが、うーむ、うーむ、汁椀に相当するものは一つしかないのだな。その中には既にご飯が居座っている。この湯、どうやって飲むんだ。

もちろん追加でお皿を貰えば何ら問題はないのだが、全くその気配がないこの卓上の様子。何かコツでもあるのだろうか。

とりあえず、ご飯を平らげて湯を飲んでみる。・・・薄い。味つけがほとんどない。ダシも取れているかどうか疑問。あれれ。

さっきまでは、「いやー、やっぱり台湾南部の味つけは口に合うなあ、台北の味の薄さは何だったんだろう?」と毎度の論説をしていたのだが、この湯で一気に「?」となってしまった。何なんだ、これは。どう考えても物足りない味だぞ。

Fishに聞いてみると、「湯は食事の最後に飲むものだよ。だから味が薄い」という予想外の回答が返ってきてびっくり。そ、そうなのか。ご飯を支える名脇役として位置しているのではないのか。うーん、じゃあ日本の味噌汁とは全く位置づけが違うな。道理で、台灣や中国の人が「日本の味噌汁は塩辛すぎる」と言うわけだ。ようやく納得だ。

女性陣二人を見ていると、食事が一段落したところで、まるで食後のお茶でも飲むかのごとくこの湯をすすっていた。なるほどねえ。確かにこれだったら、塩気はほとんどいらないな。

大量に並ぶ空き瓶

このお店に来てうれしかったのは、料理の味もさることながら、周囲のお客さんのほとんどが啤酒を飲んでいた事だ。中華圏の人って、あまりアルコールを飲まないものだと思っていたが、案外こういう庶民的な店では飲んでいるようだ。それを知ったために、「おお、同士よ!」と何だか連帯意識を持ってしまった。

そんな中、やたら盛大に飲んでいるグループがいた。先ほどJenny姉とあいさつしていた、テラス席のグループだ。見ると、床にビール瓶が大量に並べられていた。なんとも豪快だ。Jenny姉に聞くと、職場の同僚であり、この近くにある恆春原発に勤めている人たちだという。

日本人が来たぞ、ということでその原発な人たちが次々とこちらの席にあいさつにやってきた。そしてその手には必ず、啤酒の瓶が。「まあ飲み賜え」ということで、有り難く杯を受ける。んで、お約束の「乾杯~!」。生まれて初めてよ、本場の「乾杯」をやったのは。もちろんその名の通り、杯を乾かさないと許してくれないやつ。

すでに上機嫌の彼らが、口々に「このお店も良いが、もう一軒俺たちの行きつけの店があるんだ」と言う(通訳:Fish)。「これからそのお店に行くから貴方たちもぜひ来なさい」と何度も言うので、じゃあ台灣の原発マンとサシで勝負したらあ、と敵地に乗り込む事に急きょ決めた。行き先はどこか、と問うたら、「鴨肉蔡(イァーローツァイ)」だという。おや、地球の歩き方に載っていたお店じゃないか。

早速地球の歩き方を相手に示し、「日本でも話題沸騰の店だぜ、それは。楽しみじゃないか。渡りに船だ、行ってやらあ」と意気込んでみせた。こっちもちょっと酒が回って調子に乗ってきたようだ。

というわけで、当初はJenny姉が「漢方のお店を紹介してあげる」と言っていて、大いに乗り気だったのだが、その話は横においておいてそのまま鴨肉蔡行きとなったのだった。

「じゃあ俺達は先に行くけど、絶対に来いよな、絶対だぞ」

と散々念押しされて、彼らは一足先に鴨肉蔡へ移動していった。あれれ、車の運転は誰がしたんだろう。大丈夫かな。あ、でも飲んでいない人もいたから大丈夫・・・か。

嵐が過ぎ去って、「いやー、すごいテンションだなあの人達は」と呆気にとられつつわれわれも一息。

原発マンたちの同僚であるJenny姉は、「毎晩ああやって飲んでいるから、肝臓が心配」と言っていた。まあでも、啤酒しか飲んでいないから大丈夫だとは思う。

しばらく3名で食事と会話を楽しんでいたら、Jenny姉のところに電話がかかってきた。先ほどの人達が、「まだあの日本人は来ないのか。早く来なさい」という督促だった。はいはい、行きます行きます。もう少し待っていてください。

お店を後にする。食事代はJenny姉がおごってくれた。す、すいません・・・。初対面の方にご馳走してもらうなんて・・・。しかも、啤酒代まで払ってもらうなんて、恐縮だ。Jenny姉は、「友達の友達の姉。初対面。」という関係なのに、お店を紹介してくれただけでなくご馳走してくれるとは。おもてなし三昧はまだ続く。

鴨肉蔡

原発の人たちからの督促に後押しされるように、二次会会場である鴨肉蔡へと向かう。

「彼らにとって鴨肉蔡って何なの?」

と聞くと、同僚であるJenny姉曰く、

「しょっちゅう行っているお店で、年末にはお店のオーナーのおごりで忘年会をやっているらしい」

という話だ。おいおい、10名規模のお客さんを無料で食べさせるなんて、すごい太っ腹だ。

「それくらい、鴨肉蔡でお酒飲んで食べているということ」

と、Jenny姉は「困ったもんよね」と肩をすくめてみせた。

で、彼らが「日本人絶対に来いよな」と念押ししていたのは、売り切れじまいの鴨肉を先ほど電話で押さえておいてくれたからだ。北門家常菜で日本人おかでんをロックオンした後、即座に鴨肉蔡にTELして「日本からの来客だ。鴨肉は確保しておいてくれ」とリクエストしたんだと。そんなわけで「早く来い、鴨肉が待っているぞ」と頻繁に督促がくるのだった。

いざ、鴨肉蔡の前に来ると、小さな、あまり目立たない地味なお店だった。こんなお店が地球の歩き方で唯一、恆春の飲食店として紹介されていることに驚く。地道に調べたもんだ。

看板には、「海産・鹹水鴨・快炒」と書いてある。鴨肉専門店かと思ったが、いろいろその他も手広くやっているようだ。まあ、台灣の飲食店だから当然か。

鴨料理といえば、日本ではロースの薄切りを石焼きにしたり、鍋に入れたりするものだ。しかし、こちらでは「鹹水鴨」と書かれている。ええと、「かん水」?あのラーメンに入れる奴のこと?何だ、それは。まさか麺に練り込まれていたらびっくりだが、さすがにそれはあるまい。

酔っ払った原発マンがお出迎え

・・・なんて店頭で写真を撮っていたら、「リーベンが来たぞ!」と店内からわらわらと原発の奴らが転がり出てきた。「よく来たな、まあ中に入れ入れ、今すぐ入れ」とぐいぐいと店内に引きずり込まれる歓迎っぷり。いやうれしいですが、そんなに大層なもんじゃないっすよ、僕。50歳過ぎのオトーサンに手厚くお迎えされるほどの大人物じゃないんだけど、大丈夫かしら。

ガラスケース
鴨料理のメニュー

このお店も、厨房は店頭にある。狭い入口の左手が、屋台型をした厨房。そして入口を挟んで右手がショーケース。中を覗くと、カエル、豚肉、イカ、クラゲ、サバヒーなどを確認できた。結構生ものを多く扱っている。これだけ見ると「鴨肉蔡」という店名とは思えないラインナップだ。

なお、台灣にはいたるところに「鴨肉○」という店名をみかける。どうやら、この「○」というところにはオーナーの名字が入るというお約束らしい。その法則に従い、このお店のオーナーさんは「蔡(ツァイ)さん」だ。

二次会真っ最中

お店に入ると、先ほど北門家常菜のテラスで飲んでいた人がまるっとそのままこのお店の円卓に座っていた。なんたる結束力。んで、卓上に並ぶビール瓶。よく飲むなあ。

大歓迎されて末席に座らせてもらう。・・・わっ、床に黒犬がいるぞ。何をやってるんだお前。首輪をつけていないので野良犬・・・なのかな。その割には堂々と店内にいるけど、アンタなにやってるの。「おいお前、ちょっとどいてくれ」と居座る黒犬をおしのけて、着席。

卓上には台灣啤酒の瓶だけじゃなくて、料理皿も結構並んでいた。飲むだけじゃなくて、よく食べるな。これが二次会の席とは思えないわ。

もっとも、皿が並んでいるとはいえ、人数も多い。それを考えると、一人当たりの食べる量というのはそれほど多いわけではない。しかし、いろいろな種類の料理が並ぶため、なんとも卓上が華やかで豪華だ。日本ではあまり見かけない光景なので、こういう外食生活っていいなあ、とちょっと憧れた。

「まあ何はともあれまずは乾杯だ」という事なので、お酌していただく。では乾杯・・・って、あれれ。アナタと僕だけで乾杯ですか。躊躇していると、「どうした、ほれほれ」と督促されるので、ぐいーっと一息で開けた。「おーリーベンやるなあ」という感じの声がテーブルのあちこちで聞かれたところで、「じゃあ今度は俺が」と次の人がおかでんにお酌。で、乾杯。なるほど、こちらでは乾杯は1対1のサシでやるのだな。これ、全員とやるといい感じに仕上がってしまうんですが。

隣でJenny姉がおかでんの裾を引っ張り、「あんまりつきあっていると大変だから適当なところでやめておいた方が」と忠告をしてくれた。そこで、一応Fishに「危なくなったらギブって宣言するので、場をストップさせてくれ」とお願いしておいた。今日は「注がれたら注がれた分だけ飲む」ぜ。異国の地とはいえ遠慮はしねぇぜ。

何しろ、「台灣電力の原発の奴ら」だ。そんな人たちと杯を交わしたというのはこちらとしても名誉なことだ。せっかくの機会だ、痛飲しようではないか。

しばらくお酌合戦・・・というか、一方的にこちらが注がれっぱなし状態で杯を重ねた。向こうが「名前はなんというの?」と聞いてくるので、「おかでんだ」と答えたら、「オカテンさんカンパーイ」などと言ってくる。ちょっとうれしい。ただ、中国語を母語とする人はdの発音が苦手なので、どうしても「おかでん」とは発音できず、全員が「おかテん」と言っていた。これは他の言葉でも同様で、「うどん」のことは「うろん」と言ってしまう。

鹽水鴨

「おかてんサン、せっかく予約しておいたものだからぜひこれを食べなさい」と言われ、ずずずいと目の前に押しやられた皿が、「鹽水鴨」。へー、これが鴨なのか。どうやら塩ゆでした鴨肉らしい。鴨肉=赤っぽいイメージがあったので、この白っぽさはちょっとびっくり。例のごとく、ここにも針生姜がどっさり。ホント好きだな、この国の人。臭み消しとも思えないので、純粋に生姜の味を愛しているっぽい。

で、食べる時はこの骨付き鴨肉をタレにつけて、生姜も添えつつかじると。なんとも手が汚れる料理だが、これがまた美味いのだな。

「とてもおいしいです。鴨肉はもともと好きですが、こういう調理法は初めてで珍しいです」

と絶賛すると、

「そうだろうそうだろう、この鴨はこの日最後の鴨だからな。予約しておいて良かった」

という声があがった。

なんと、台湾もサンマを食べるのだな

会話はほとんどFish経由で通訳してもらっていたのだが、中には2名ほどカタコトの英語ができる人がいた。その人とは英語で会話をしたので、コミュニケーションはスムーズだった。

とはいえ、会話の内容はというと、

原発の人「俺は日本の原発メーカーを知ってるぜ。東芝だろ、日立だろ・・・」
おかでん「東芝は最近ウェスティンハウスを買収しましたね」
原発の人「そう!ウェスティンハウス!あの合併はインパクトあったな」

なんていう内容。異国の地で酒飲みながらなんだこの会話は。

あと、その人経由でいろいろ聞いてみたら、ここにいる人たちは全員管理職であることが分かった。中には副所長様もいらっしゃって、なんとも恐れ多い席であったよ。その割にはすげーフランクで酔っ払いばっかりな席だったが。

乾杯したり、英語で話したり、Fishに通訳してもらったり、Jenny姉の顔色を伺ったり、忙しくしているうちにすっかり料理の事を忘れていた。

「せっかくだからいろいろ食べなさい」

と原発メンに水をむけられ、ようやく卓上のお皿に目が向いた。

「あれ!サンマだ!?」

思わず素っ頓狂な声を上げてしまったのが、焼き魚のお皿だった。どう見ても日本でおなじみのサンマではないか。

「そう、サンマ」

と、カタコトの日本語でおっちゃんが肯定する。しらんかったなあ、台灣でもサンマが捕れて、しかも食べるんだ。「さんま さんま さんま苦いかしょっぱいか」でおなじみ、秋の風物詩なんだがなあ。こちらには日本で言う四季らしいものが乏しいので、季節感ある魚ではなさそうだ。

焼き色は見事。どうやってこの焼き色を出したんだ、と感心してしまった。あの店頭の屋台厨房、煮炊きどころか炙りもできるんだな。よくできたもんだ。

面白いことに、この秋刀魚、醤油ベースのたれがかかっていた。そのまま塩だけで食べる、というシンプルな食べ方をしないあたりが台灣なのだろう。日本人だと「馬鹿を言え、塩だけの味つけの秋刀魚で、ご飯を何杯も食う」と言うだろうな。なお、お皿の脇には柑橘と粗挽き胡椒もたくさん添えられていたのも興味深い。味は・・・覚えていない。もう、この場が混沌としちゃっていて、何が何だか。

厚揚げを炒めたもの

もう一皿は、厚揚げと何かの野菜を炒めたもの。こちらも醤油ベース。これは日本には無い料理だけど、全然違和感がない。シンプルだけどうまかった。

トマトスープ

トマトと玉子と何かの葉っぱ野菜が入ってとろみがついたスープが、丼いっぱいなみなみとあった。

さすがにみんな啤酒を痛飲しているので、このスープは誰も手をつけていなかった。おかでんも同じく痛飲していたので、このスープを味わいそびれた。残念な事をした。

やはりというか、さすがというか、スープはあるけどご飯は卓上にない。ご飯とスープはセット、という考えはこの食卓では通用しないということだ。しかし、これ頼んだ人はどういうシチュエーションを想定して注文したのだろう。酒飲んだ後のシメ、ということだろうか。

そういえば、テーブルの上には台灣啤酒の瓶がたくさん並んでいるのだが、緑色のものと茶色の二種類があった。何だろうこれは。

聞いてみたら、緑は「ジンパイ」だという。何それ。「ドラフト、ドラフト」とカタコトの英語で教えてくれるので、Fishの通訳を経由してもう少し聞いてみると、緑瓶は「金牌(ジンパイ)」と呼ばれる台灣啤酒で、非加熱処理の「生」ビールなんだという。

どっちが美味いの?と聞いてみたら、「金牌の方が美味い」と即答が返ってきた。長年飲んできた人の発言には説得力がある。モンド・セレクション金賞受賞、なんだそうだ。プレミアムモルツと一緒だ。

よく見ると、おかでんにお酌してくれる啤酒は必ず金牌で、自分たちが飲むのは金牌も少しあるけど茶色瓶のノーマル版が主だった。そうきたか。ごちそうするとか、そういうおもてなしだけではなく、相手に自分よりも良い物を提供するのか。こちらの人の親切っぷりは想像をはるかに超える。「恐れ多いですから、僕も茶色の奴でいいです」と言ったが、「いやいやせっかくだから」と応じてくれなかった。逆に、ますます四方八方からお酌がやってきた。

「どうだ、美味いか?」と聞かれたので、「いやもう大変においしいし楽しいです」と、最大限の賛辞を送った。

「皆さんビールを愛しているというのが、素晴らしいです。てっきりこちらの方はお酒を飲まないと思っていたんですよ。台北の屋台街を歩くと、誰も飲んでいないから」

と言うと、

「オレら毎日飲んでるなあ」
「そうだなあ」
「ビール美味いよなあ」

という声があちこちから挙がった。おかでんとしては、「なぜ台北の人たちはあの好吃な屋台料理でビールを飲もうという発想に至らないのか?」という議論をこの人たちとしたかったのだが、話がすぐにぐだぐだになるので実現しなかった。とにかく、一度にたくさんの人が話し出すので、収集がつかないのだった。Fishの通訳がキャパシティオーバーになるし、そもそもFishを介さずに英語で話しかけてくる人、言葉が通じなくても北京語で直接話す人など大変。何かおかでんが問題提起する都度、わーっとテーブル上は混沌となった。

一応、「日本人のイメージとしては、台灣の人って紹興酒をよく飲むんですが、違いますか」という問いだけは意志疎通が正しくできた。曰く、「滅多に飲まん」のだそうだ。かしこまった宴会の席なんぞには出てくるが、日常の飲み食いにはお出ましすることはまずないと。まあ、暑い場所だし、まったりした紹興酒よりもビールをカーンと煽った方が美味い、と考えるのは当然っちゃあ当然だ。このお店にも、紹興酒は無かった。アルコールは台灣啤酒2種類だけだったと思う。

食べ終わった皿。何の料理なんだろう?

写真右の皿は、ほとんど平らげられていた料理。これがこの日、原発メンの間では一番人気料理だったようだ。原型を留めておらず、なにかはわからない。ピーマンと、しめじ。

恆春といえば玉ねぎ
卓上に玉ねぎ

「恆春は良いところだろう」
「俺たちは原発ができてから30年、ずっとここに住んでいる」

などという恆春自慢の話をあれこれ聞いているうちに、ふと気がついた。

「あれ・・・そう言えば、恆春って玉ねぎが名物ですよね。昨日からこちらに滞在していて、全く玉ねぎ料理を見かけないんですが、地元じゃ食べないんですか?」

すると、

「ああ、玉ねぎ食べていないのか!それはいけない。もちろん、恆春といえば玉ねぎだ」

という話になり、数名がかりでおかでんを店頭のショーケースまで連れていってくれた。そこで、厨房を任されているオーナーの息子さんに引き合わせてもらい、なぜか「日本から来ましたおかでんです」と自己紹介。

「玉ねぎ、当然あるよね?」
「ええ、ありますよ」

といった雰囲気の会話をなにやらしていたら、奥から巨大ネットに入った玉ねぎが出てきた。

「ヒャッハー、これが恆春名物の玉ねぎだぜ。ぜひこれは食べるべきだ」

とかいう話になって、なにやらわざわざおかでんのために玉ねぎ料理を作ってくれることになった。

あっという間に、テーブルには玉ねぎ料理。この素早さこそ中華料理だ。出てきたのは玉ねぎの油炒め。シンプルだけど大変に美味そうな一品だ。

「わー、楽しみです、せっかくだから地元の名産品を食べたいですから」

とわくわくしながらカメラを構えると、

「写真撮るのか?だったら、ちょっと待ってろ」

といって、おっちゃんが厨房から玉ねぎ一個持ってきた。お客だけど厨房出入りし放題。で、何をするのかと思ったら、「この玉ねぎもフレームに入れるとよい」だって。恐縮です、ぜひそうさせてもらいます。向こうも相当酔っているし、こっちもイイカンジで酔ってきたぞ。サシでやる乾杯は心地よい酔いを提供してくれる。久々だ、「それ一気に杯を乾かせ」なんてやいやい言われるのは。節度を知っている大人同士がこういうのをやるのは楽しい。

日本の宴会の場合、お座敷席での開催が多いということもあって、酔っ払うとぐったりする人が多い。しかし、こちらの人は円卓、そして質素なガタガタした椅子だ。酔うと不必要にフットワークが軽くなり、縦横無尽に歩き回りながら場を盛り上げていた。気がつくと背後から話しかけられたりいつの間にか横から啤酒瓶を差し出されるのでこちらも油断ならない。

カボチャの料理

しばらくして、今度はカボチャの料理も出てきた。時系列から考えて、どうやらこれもおかでん用に作ってくれたものらしい。カボチャもこの地の名物なのだろうか。それについては確認が取れなかった。相当カボチャが煮くずれているので、玉ねぎの話題が出る以前から、全員用に調理していたものかもしれない。

玉ねぎのフライ

あっ、まだ出てきた。今度は玉ねぎのフライ。

加熱調理した玉ねぎを熱々のまま食べる、これがまずかろうはずがない。ああ、幸せだ。これだけで啤酒飲んでも十分だ・・・が、台灣に来てまで玉ねぎ料理を食べるのもどうかと思う。目の前にあるできたての玉ねぎを食するか、それともテーブルの奥の方に移動した台灣独特の料理を食べるべきか、悩んだ。

・・・のもつかの間、「さあこの料理を食べながら啤酒を飲もうではないか」ということでお酌が。ありゃりゃりゃ。で、一人にお酌してもらうと、次々と「じゃあ俺も注ぐ」「俺も」となるので止まらない。

こちらもお酌を仕返したかったのだが、やり方が分からずほとんどできなかった。「俺も俺も」と集中砲火を浴びせる「団体芸」を期待して、おかでんも先方に注ぐのだが、単発で終わり。逆に、「じゃあ返杯」と注いでいただき、そこから急に団体芸スタート。いつも飲むのはおかでんだった。

「どうすりゃいいの?」

とFishに助けを求めるが、学生時代に来日してそのまま日本企業に就職したFish、しかも女性ということで「さあ?知らない」という回答。社会人的乾杯の流儀は彼女は知らないのだった。そりゃそうだ。

お店のオーナー登場
店の前で撮影

わーっと宴席が盛り上がっている(?)ところで、原発メンの一人がおっちゃんを引きずってきた。おかでんに紹介させたいらしい。誰ですか、この血色の良い親父は。

聞くと、この店のオーナーだという。ああそれはどうも、今日はお世話になっております。

「日本にいるときからこのお店をお伺いしたかったんです。今日はここに居ることがとても光栄です」

とかなんとか、お礼を述べたり料理を褒めたりしているうちにオーナーも盛り上がっちゃって、

「じゃあせっかくだから日本にこのお店の事をどんどんPRしてくださいよ」

なんて話に。

「だったら店の前の看板で一緒に写真撮ればいいじゃん」

とか何とか話が進み(おかでんは言葉が通じないのでなすがまま)、気がついたら店の外でオーナーと肩をがっちり組んで記念撮影。すいません、日本から来た単なる酔っぱらいです。

鴨肉蔡の名刺

オーナーから名刺をもらった。カラフルな名刺だ。鴨さんがニーハオしている。ごめん、さっき君を食べちゃった。

台灣、そして後日訪問した上海で思ったことだが、飲食店の人は積極的に店の名刺を配るようだ。もちろん日本でもお店の名刺は存在するが、大抵レジカウンターにおいてあって、「ご自由にどうぞ」状態だ。手渡しで名刺を頂戴する機会はあまりない。この差はちょっと面白かった。

さて、円卓では、「ゲームをやるぞ!」などと盛り上がっている。日本人にゲームを教える!となぜか皆テンション高く、入れ替わり立ち替わり「俺が教える」「いや俺が」という感じでルール説明をしてくれる。しかし、いろんな人がわーっと無秩序に教えてくれるのでさっぱり理解ができない。ただ、どうやらゲームに負けたら、啤酒を飲まないといかんというのだけは理解した。台日一気飲み対決を狙っているらしい。おもしれぇ、受けて立つぜ。でもその前にルールを誰か整理して教えてくれ。

カタコトの英語ができる人経由で教えて貰ったが、やっぱり細かいディティールが理解できない。で、こちらが質問をすると、全員がハチの巣をつついたように一斉にしゃべり出すから、まるでコントのようだった。思わずおかでんは立ち上がり、「待て!待ってくれ!誰か代表して説明してくれませんか。一度に話しかけられると分かりません」と周囲をなだめる始末。でも、みんな説明したくてしょうがないので、しばらくするとすぐにまた全員がおかでんに向けて各自説明開始なのだった。

再度立ち上がり、「すまん、言葉が通じないのでいったんこの通訳のFishに説明し、理解させてやってくれないか。僕にダイレクトに説明されてもわからん」と悲鳴。

時間をかけてようやく理解したのは、このゲームは日本でも似たのがあるぞ、ということだ。日本では、複数名が両手を握り拳にして相手の握り拳とそろえ、「いっせーのーで」で一人が数字を言うゲーム、あれに相当する。日本の場合は、「いっせーのーで」で全員が任意に親指を立て、その親指の数を言い当てる。正式名称はない。

台湾版では、片手をパーの字に広げて1対1で対戦し、「いっせーのーで(に相当する中国語?台灣語?)」のかけ声と共に1から10までの数字を片方の人が宣言する。同時に二人は指を好きな数にして、その合算値と宣言した数字が当たっていれば宣言した人の勝ち。

ただ微妙なのは、数が当たらなかった場合は「ドロー」ではなく負けとなり、一杯飲まないといかんということだ。つまり、結構な確率で飲むという、誰が得をするんだというゲームなのだった。酒好きの、酒好きによる、酒好きのためのゲームだ。

大体ルールは理解できたのだが、数字の数え方がよく分からない。学生時代麻雀は嗜んでいたので、数の数え方は知っていたつもりだった。しかし、麻雀での数字の数え方と、台灣での数字の数え方はちょっと違っていて、そこで混乱した。

「とりあえずトイレ行って頭冷やしてきます」

と席をたち、しばらくして戻ってみたら円卓では既に別の話題で熱く盛り上がっており、ジャンケンゲームの話はどこかへと消え去っていた。あれは一体なんだったんだ。

檳榔

「台灣に来てどう思った?」

なんて話の延長線上で、恆春に来る途中檳榔(ビンラン)畑と檳榔屋台がいっぱいあったので驚いた、という話をした。すると、中の一人が「檳榔なら持ってるぜ」とポケットから檳榔が入ったビニール袋を取り出した。

するとその人は、湯飲みをひっくり返し、高台のところに檳榔を一粒乗せ、うやうやしくおかでんに差し出してくれた。「お一つどうぞ」というときには、この「湯飲みひっくり返し」をするのが台灣の文化なのだろうか。初めて見る檳榔にもびっくりだが、この仕草にもびっくりした。

「檳榔初めてです。びっくりです」

などと言いながらしげしげと眺める。えと、あれ?檳榔って、ビンロウヤシの実じゃなかったんか。これ、葉っぱだぞ。すると、

「葉っぱを剥いて、中の実を食べるのだよ」

と教えてくれた。あ、そうなんだ。実際、くるりと丸められた葉っぱをめくると、中から緑色の実が出てきた。オリーブのような感じ。

さて、これをどうすればよいのだろう。昨日、檳榔を噛んでいて歯が真っ赤なオバチャンを見かけた。檳榔を噛むときはツバをペッペと吐くため、そこら中の路上が赤くなるという話も聞いた。だから、檳榔の実=赤い、と思っていたのに予想外。はて。

「まあ、試してみて」

と熱烈に勧められたので、試してみる。どんなものか興味深い。

実をかじってみた。外見の青さ同様、中も青臭い植物の味。甘くも苦くもなく、昆虫でもない限り食べようとは思わない味だ。

中に種が入っているので、種だけお茶碗にはき出し、飲み込んだ。ええと、何にも起きないんですが。

すると、周囲の人たちがげらげらと笑っている。聞くと、「やり方が違う」という。Fishの解説を交えてなんとか理解したところによると、檳榔の実はガムのようにかみ続けるものであり、唾液と混じった汁をはき出すのだという。二、三口噛んだだけでそのまま飲み込むのはダメらしい。

なるほど、たかが植物の実とはいえ奥が深い。もう一粒貰い、今度は仰せの通りにやってみた。

・・・が、どこまでかみ続ければ良いのか、加減がわからない。適当に汁をはき出したが、赤くもならない。もちろん、高揚感も得られない。んー、よく分からないや。でも、いただいた手前、

「日本には無い文化を体験できて大変うれしいです」

とお礼を言った。もちろんうれしかったのは事実だが、頭の中に「?」がたくさん渦巻いたのも事実だ。

お礼を言われたおっちゃんは、

「檳榔は俺のソウルフードだ」

と檳榔について熱く語っていた。言葉が通じるなら、なぜ檳榔を嗜み始めたのかとか、どこの檳榔が美味いとかそういうのはあるのか?とか、職場で檳榔噛んでも良いのか、などあれこれ聞いてみたかった。

そもそも原発勤務の人となれば、高学歴のエリートのはず。そういうエリートでも檳榔を楽しむというのは新たな発見だった。まあ、あれだけ路頭でたくさん売られていると、学歴関係なく手を出すのだろう。

頭の中の「?」を整理するため、Fishに話を聞いてみた。

(1)なぜ僕のは口が赤くならなかったの?
→赤くなるのは、葉っぱ、石灰、檳榔の実の3つを同時に噛むから。今回は実だけだったので、赤くならなかった。(先方もガイジンに対して気を遣った?)

(2)全然高揚感が無いんですが
→ビール飲んでたからかも

帰国後、檳榔について調べてみたら、やはり汁には発ガン性があり、飲んではいかんらしい。おい、最初の一個は汁ごと飲み込んじゃったよ。で、汁を適時捨てながら、実が繊維だけになるまでかみ続けているとイイカンジになっていくらしい。

依存性もあるらしいので、まあ今回は「お試し檳榔」ということで良かったのではないか。うかつに気持ちよくなってしまって、やみつきになってしまうのはちょっと困ったものだから。

オーナーのお孫さんのおもちゃ

台灣式宴会の面白いところは、適当なところで全員そろってお開き、という文化がないところだ。日本だと「ではいったん中締めしましょう」とお声がかかり、一応「締めくくり」がある。しかし、こちらの国では「三々五々適当に解散」のようだった。一人抜け、また一人抜け、気がついたら人の数が減っていた。

客席の奥の方では、オーナーのお孫さんにあたる姉妹が学校の宿題を始めていた。そして、オーナーの息子の嫁さんがお店に顔をだし、見慣れない日本人おかでんにあいさつしてくれた。とても美人でびっくりした。「まるで仏様のような顔をしている」と、奇妙な言葉で奥さんを褒める。酔っているからだろうか。

娘さんは勉強しなくちゃいけないんだけど、なにやら見慣れない、遊んでくれそうなガイジンが居るので気になって仕方がないらしい。ペンギンの形をしたトランジスタラジオ(どうやら旧正月に買って貰ったものらしいお宝)を見せびらかしにきて、なんとかコミュニケーションをとろうとしていたのがかわいらしかった。

気がついたらもう日付が変わって24時半。一部勢力により徹底抗戦の構えを示す宴会ではあったが、そろそろおいとまさせて貰った。何しろ、先ほどの名刺を見ると閉店時間が22時30分とされている。超常連だからやりたい放題だ。

結局この場のお会計は原発の人たちのお世話になった。どうにかして「いや私も払います」というテクニックを身につけたいものだ。ここまでくると、ありがたいという気持ち以上に居心地が悪い。

2009年02月19日(木) 4日目

箱座りする萌萌

4日目朝。Fish家の部屋で目を覚ます。

昨日Fishが言っていた「渡り鳥の鳴き声で目を覚ます」という事は無かった。寝たのが遅かったし。

Fish家にお世話になったわけだが、寝るまでにいろいろゴソゴソしていたので結局就寝は2時を回った。毎日こんなのばっかり。

あてがわれた部屋だが、まず驚いたのがこの部屋にも「部屋付きトイレ」が存在していたことだった。昨日の陳さんの家は、リゾートマンションだし来客もあるだろうから「部屋付きトイレ」があっても理解はできる。あまり日本じゃお目にかからないが。しかし、Fish家のような、長屋作りの庶民派民家にもあるとはどういうことか。

しかも面白いのが、そのトイレはベランダに出たところにあるということだ。扉を開けてベランダに出て、ベランダを横断した先の行き止まり部分にトイレ部屋がある。何で屋外にしちゃったのか、何でベランダを横切らないといけないのかがさっぱり理解できない。単にスペースの問題だったら、部屋から直接トイレに行けるよう扉をこしらえれば良い話だ。

あと、シャワーを使わせてもらってびっくり。ああ、湯船がないぞ。もう、まんま「プール脇のシャワールーム」状態。で、トイレ併設。室内は細長く、日本のユニットバスの2倍くらいの広さがある。これは初日の宿から一貫して同じ。台灣サイズ、なのだろう。

ツアー観光客として台灣を訪れても、このような体験は絶対にできない。Fishに感謝だ。

寝る前に、そのFishと4日目の行程を意識合わせをしておいた。

Fishは、恆春の近くにある湖に行くと良い、という。鳥がたくさんいるよ、とうれしそうに言う。それはおかでんの興味云々以前に、アナタが行きたいわけですね。わかりました。

あと、原発の人たちに「明日は原発に遊びに来てくれよな、絶対だぞ」と何度も念押しされ、こっちも「おう、行ってやらあ」と応じたのでこれも行かないと。

その後、墾丁観光。台灣最南端のビーチリゾートを見せてもらおうじゃないか。

それが終わったら、恆春に別れを告げて、バスで2時間、高雄に移動。・・・いや待て、昨晩Fishからこんな提案があった。

「明日夕方でよければお母さんが高雄まで車で送ってあげるって言ってるよ」

また来た。ここの人は全く限度知らずにお世話してくれる。あまりに恐れ多い提案に頭がくらくらしてしまった。さすがにこれは申し訳ないので遠慮願いたいところだ。

「いやまあ、僕としては明日午前中でこのあたりの観光を切り上げて、午後は高雄の観光にしたいなと思っているんだけど・・・」

と言うと、なんともFishが残念そうな顔をする。どうやら、「お母さんからの提案」だけど、Fishとしてはもうそれがわくわく規定路線になっているらしい。

「まあ、墾丁の観光スポットに何があるか分からないし、どれくらい時間がかかるかもわからないので何とも言えないが・・・」

とその場はお茶を濁しておいた。

夜寝ようとすると、萌萌が部屋までやってきて「遊んでくれないの?」という顔をしてこっちを見る。かといって近づくと逃げるし、もう一体どうすりゃいいんだ。扱いに困ったので部屋から追い出した。

翌朝も、1階のリビングで朝から台灣フルーツ地獄もとい、三昧をしていると階段の上からじっと萌萌がこっちを見ていた。いつ寝てるんだ、この猫。

この日はFish家の車が自由に使えたので、有り難くハンドルを握らせてもらう。

いざ出発・・・と思ったら、また車が動かない。昨日のハンドルロックに続いて、今度はシフトレバーがぴくりともしない。シフトロックしてるな。厳重だな。

目指したのは、恆春の中心からやや南に行ったところにある「龍鑾潭」という湖。

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