おもてなし三昧な世界【台湾南部滞在】

救世漢音

龍の胎内を歩いていると、「救世漢音」様なる人が立っていた。おいたわしい、あなたは龍に食べられてしまったのですか。

そんな不必要な同情と憐憫を尻目に、この観音様は左手の指からちょーっと水を流していた。しょんべん小僧ならぬ、甘露観音様だ。どうするのかとおもったら、その水を有り難く飲むらしい。日本では見かけなくなった、昔新幹線や特急列車のデッキにあった給水器の紙容器を渡され、それで水を頂いた。

蓮池潭の水をそのまま使っているんじゃないだろうな。・・・まさか。

わざわざこのために、龍の胎内に水道管を引き込んでいるのは立派だ。しかも、ここは台灣故、単なる水道水は飲み水に適さない。飲み水である、ということは結構手間をかけてこの水はしたたっているのだった。ありがたいことです。

緑色の数珠

拝観記念、ということで、拝観料と引き替えに緑色の数珠のようなものを貰った。これ、どうするのよ。ナンマンダブと拝んだらいいの?

どうやらこれ、手首に装着するものらしい。なるほどと早速はめてみたが、大変に似合わなかった事に加えて、しばらくすると手がうっ血してきて大層塩梅が悪かったので装着はやめた。

宗教施設で何かモノを貰ったとき、それが本人にとって不要だったときは扱いに困るから参るな。安易に捨てるわけにもいかないし。でもまあ、良い記念にはなるのでしばらくは家のどこかに飾っておこう。

売店

龍から出たところに、おでんやら水餃子や茶卵を売る店があった。先ほどの「塔の真下に子供用遊具」もちょっと驚きだが、こちらも地味に珍しい。そりゃ日本だって、縁日の時には神社の参道に屋台が並ぶが、あれは臨時のもの。こうやって常設で、しかも庶民感覚バリバリな料理を出しているお店があるというのは興味深い。あんまり「神聖なる場所」という特別特殊な考えはないのだろう。

龍虎塔

さて左營蓮池潭におけるメインイベント、龍虎塔にやって参りました。

入龍喉出虎口

政府から第一級古蹟に認定されている施設だ。といっても、歴史は200年足らずなのだが。台灣は全体的に歴史が浅い国だ。

入龍喉出虎口

池の上に立つ龍虎塔にたどり着くまで、ジグザグした橋をクネクネ曲がりながら歩いていく。近づいたところに、「入龍喉出虎口」という案内看板が出ていた。そうそう、間違っても虎の口から入っちゃいかん。

御利益としては、「消災解厄」と「増吉祥」なんだって。そりゃありがたいことだ、ぜひ享受しようではないか。

龍の喉から入る

龍の喉から入る。どうやら虎は「口」、龍は「喉」と表現を使い分けているようだ。

龍の背後にある塔には龍の彫り物が、虎の背後にある塔には虎の彫り物が見える。

龍の胎内

ここも龍の胎内で拝観料を支払う。いくら、と決まっているわけではないようで、金額は明示されていない。ただ、最低10元は払うのがルールとなっているようだ。

記念の絵はがき

奉納すると、記念として絵はがきをくれた。ここでもまたネックレスが渡されたらどうしようと思ったが、さすがにそういう事はなかった。10元(約32円)を払ってカラーの絵はがきが1枚貰えるのだから、うれしい。

ところでこの拝観料、なぜ龍の胎内で支払うのだろう。本来的には、龍虎塔の手前にゲートを作って、そこで前金として取るものだが。外の景観を最優先させて、外観はできるだけシンプルにしたかったのかもしれない。

螺旋階段

せっかくなので、虎の塔に登ってみることにする。

塔の真ん中に螺旋階段があるので、それを登るのだが、これが相当キツい。Fish母が「私はいいから貴方たちだけで行ってきなさい」と言った意味が分かった。半径が短い円でらせんを描いているので、相当足腰に負担がくるのだった。「もう最上階だよな・・・えっ、まだ上があるの?」という連続。

塔の上から見る

ひいひい言いながら最上階まで到着してみる。特に双眼鏡があったり俯瞰図とともに周辺風景の解説があったりすることはない。シンプルに、塔の上にいるだけだ。手すりは低い位置にあるので、身を乗り出すと転落するので注意。

虎を見下ろす

虎を見下ろす。

虎の塔には絶対登るまい、と思った。登っても景色は一緒だし、何か差があるわけではない。厳密に言うと、両方登ると何かスペシャルな御利益が天から振ってくるのかもしれんが。

・・・この塔の意味って、何だ?

岸の方を見る

岸の方を見る。

龍と虎が仲良く並んでいて、そこからジグザグの橋が延びている。ジグザグなのは稲妻を意味していて、何だか宗教的に意味があったような気がするが、あまり覚えていない。

仏教的意味合いのある龍と虎だが、その橋の向こうには道教寺院がそびえているのがなんとも不思議な光景だ。

蓮池潭の北側

蓮池潭の北側を眺める。

手前に春秋閣、奥はぼやけてほとんど見えないが玄帝親分がいる北極亭。

春秋閣、あまりに沖合いに突き出しすぎだ。われわれは、さすがにあの先端までは行かなかった。面倒だったので。岸にある龍の胎内に入っておしまいだった。

今度は虎に入る

さあ折り返し地点。今度は虎に入る。

虎のケツから入るのかと思ったが、さすがにそうではなく横っ腹から入る。

虎は非常にシンプル

龍の胎内は上下左右にうねっていたのに対し、虎は非常にシンプルな作り。素通りするのに最適。

われわれも、既に龍で雰囲気は分かっていたので、実に見事にスルーした。壁面には、仏教法話をベースにした絵がぎっしり。

虎の口から

無事、「干支で最も嫌われている虎」の口から出てきて、何だか御利益UPの予感。・・・と自分に言い聞かせてみる。「すごい」施設だとは思わないが、日本的ではない建造物なので、高雄に観光で来る機会があればぜひぜひどうぞ、という場所だった。

写真は、「地球の歩き方・台灣」の表紙と全く同じ構図。

新左營站

車に戻り、最終地点・台灣高速鐵路の新左營站へと向かう。蓮池潭からはすぐ近くの場所。見えてきた建物は、笑ってしまうくらい立派だった。何なんだ、これは。

駅ビル内にホテルやらレストラン街があるのか、と思うくらいでかい。実際はそのようなものはなく、吹き抜けになっているだけなのだが、それを3日前に内側から既に見ているが故に余計びっくりする。金かけすぎだ。

駅前にはイエローキャブがびっしり。こんなにタクシーが殺到していて、ニーズはあるんだろうか?そりゃうまくいけば、屏東の方まで行ってくれ、なんていう長距離のお客さんが捕まるかもしれないけど。

駅前ロータリー機能を駅内に包含

案内に従って進んでいくと、駅ビルの中に入ってしまった。普通、駅前にロータリーがあって、そこで送迎やら乗降を行うものだが、この駅は駅前ロータリー機能を駅内に包含してしまっている。だからこんなにデカい建物なのか。

駅内にもタクシーはいっぱい。こんなにタクシーがいっぱいだと、高雄中心部はタクシー不足になるんじゃないかと心配になってしまうくらいだ。でも実際はタクシーは余っているようで、運転手さんはお客さんを捕まえるので必死。昨晩、道路脇に突っ立っていたら、ひっきりなしにタクシーがすすすっと寄ってきて、クラクションを鳴らしてきた。「乗らないか?」という合図だ。積極的な客引きをするタクシーって初めて見た。

Fish家族が名残惜しそうにお別れのあいさつをしているのを、おかでんはぼーっと眺めているだけだった。そうか、おかでんにとっては「さあ帰国」だが、Fishからすると「出国」なのだな。家族ともしばらくお別れ。

そんな中Fish母から「日本では娘をよろしくお願いします」と言われ、「えっ、あ、はあ、こんな僕でよろしければ」なんていう間の抜けた答えをしてしまった。でもちょっと待って欲しい、その「娘をよろしくお願いします」にはどういう意味があるのか。深読みしてしまったぞ。ええと、その、まだ心の準備ってものが。

せっかくなのでFishの「中華民国」のパスポートを見せて貰ったが、就労ビザでの入国なのでスタンプが普通のと違っていて「おおー」と感心した。

なおこの中華民国パスポートだが、さすがに諸外国と国交が非常に少ない国のことだけあり、汎用性が低くて困るようだ。日本だと、ほぼどの国に行くとしても、一週間程度の観光ならノービザで入国できる。ビザっ何?というくらいだ。しかし、台灣だと、当然「国交がない国」に行くには、その国の領事館で観光ビザを発行してもらわなくてはならず、難儀するそうだ。場合によっては面接もあるらしく、なんやかやで1カ月近く事務手続きに時間がかかるというから呆れる。

日本って、政治がグダグダでダメな国じゃのぅ、と思うことはしばしばあるが、こういうところで「でも日本って凄い国だよな」と思う。

HSRの自動券売機

自動券売機に向かう。

たくさん並んでいるが、全部同じ券売機ではないので注意が必要だ。現金が使える「フルスペック券売機」と、「デビットカードとクレジットカードのみ」の「カード券売機」に別れているので注意だ。一連の操作を終え、いざお会計・・・という段になって、「あれ?現金が使えないのかよ」なんてなると、大層がっかりするハメになる。

自動券売機の画面

カードが使えるなら極力カード払いで、というカード万歳生活を送っているおかでんだが、ここではニコニコ現金払い。何しろ、現金が余りすぎた。至る所でご馳走になったり、車に乗せてくれたりというのがあって、あんまりお金を使っていないのだった。うれしい誤算、というか若干不気味な誤算だ。そこで現金払い。もちろん、Fish分もこちらが払う。なぜかFishにまであちこちでおごってもらっていたからだ。普段日本で友だちづきあいしているFishに、わざわざ台湾でおごってもらうのは申し訳ない。

始発駅だし、自由席でもよかろうと思っていたのだが、Fishから「指定席にするべきだ」と言われた。聞いて納得、ああそうか、平日昼間なので、指定席が35%割引になっているのだった。このおかげで、自由席より指定席の方が安いという逆転現象の真っ最中。

自動券売機の上には、「高鐵双色優恵」と大きな看板が出ていた。これ、15%引きを意味する青色、35%引きを意味するオレンジの2色があるから、「双色」なのね。時間帯によって、15%引き列車や35%引き列車といのが異なるので、あらかじめ時刻表とにらめっこしておくのが吉。列車一本違いで結構な値段差になることがある。

HSRの電光掲示板

便数が多いので、大変に便利な高鐵。

・・・というのはこの時点での話。この後、2009年春のダイヤ改正で、昼間の35%引きは消えるやら、平日昼間は1時間3本に減便されるやら、最速便(台北-板橋-台中-左營)が絶滅寸前に追い込まれるやら、悲惨な粛正をされてしまっている。

残念ながら建設時の赤字がもの凄いことになっているのがその原因。民進党政権の時は借金返済は待って貰えていたのだが、国民党政権になってからは「とっとと金返せ。民間企業なんだから例外は認めん」と言われてしまっているのが現状。乗客数は順調に増えているのだが、借金返済せにゃならんが故に、目下の支出を減らすしか無く減便となったわけだ。国民党、ひでぇ。国の背骨を担っている高鐵にも容赦ない。パネエっす、馬総裁。

自動改札

改札を通過したところに、コーポレートカラーのオレンジ色のチョッキを着たお姉さんが待ちかまえていた。Fishのデカいスーツケース(中身はパイナップルケーキ満載)を見て、「エレベーターがこちらにあるからご利用ください」とアドバイスしてくれる。親切だ。新しい台灣の基幹インフラ、ということでホテル並のサービスを心がけたのだろう。こういうことができるのは、台灣人の国民性だろう。多分、大陸の人は無理だと思う。

ただ残念なことに、案内されたエレベーターで月台に降りてみたら、違うホームだった。われわれが乗る列車はまた別のホーム。おいちょっと待て。

巨大な日立の広告

まあそれは兎も角、コンコースの壁には巨大な日立の広告。「ビッグドラム」なんて日本語も書いてある。ドラム式洗濯乾燥機の広告だ。日立は車内でも広告を見かけたので、積極的に高鐵の広告に関わっているようだ。台灣で日立がどれだけのシェアを持つのかは知らないが、新幹線導入に際していろいろ日立と高鐵側で何か取引があったのかもしれない。まあ、うがった見方だが。

高鐵前と高鐵後

高鐵の広告が壁に貼ってあった。ぱっとみると、これが高鐵の広告には見えないが、れっきとした新幹線広告なのです。

左は、ベランダでビル群を眺めつつ、樽風呂に入っている兄ちゃん。「高鐵前」と解説されている。右は、山や紅葉を愛でつつ、露天岩風呂に入っている兄ちゃん。「高鐵後」だって。

意味を100%は理解できないが、「高鐵がありゃ気軽に地方の温泉なんかも行くことができますよ」という事なんだろう。それはそれで結構なことだが、おかでんからすると「高鐵前」の樽風呂もええのぅ、と思うのであんまり対比になっていない気がする。でもちょっと面白い広告だったので、写真撮影しておいた。

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