来日したら標高3,003メートル【立山・黒部アルペンルート】

雨の中身支度をする

本日のお宿「雷鳥荘」を目指す。室堂ターミナルから徒歩30分、山道というほどではないが、舗装されていない道をアップダウンしなければならない。

弥陀ヶ原では暫定的な格好しかしていなかったが、今度こそ本格装備にならないと。

全員、ゴソゴソと身支度をする。

すいませんねえ、せっかくの日本旅行なのに、天気が悪くて。でも、今朝、称名滝が雨にたたられなかった分セーフ。

ありがたいことに、旅の企画についてはFishから家族にちゃんと説明がされていたようだ。「なんでこんな風雨にさらされるような場所にいかなければならんのだ。この日本人、悪意があるんちゃうんか」という不平不満の声は聞こえてこなかった。

幹事としては、ヒヤヒヤもんですわ。すいませんすいませんといいながら、身支度する。

雨の中でも立山はよく見える

外に出る。

あれ。

相変わらず雨は降っているのだが、視界は随分と晴れてきた。

正面に立山の雄山、大汝山などがくっきりと見える。

「ひゃー」

思わず声を上げてしまった。ナイス天気。雨は仕方が無いとしても、視界が広がったのは大ラッキーだ。

「こういう天気の時こそ、雷鳥が出やすいんですよ。よく探しながら歩きましょう」

と3名に伝える。

立山玉殿の湧水

室堂のすぐ近くに「立山玉殿の湧水」という湧き水ポイントがある。

立山玉殿の湧水を汲む

全員、そこで水を飲んだり、ペットボトルに補充したりする。

あれれ、台湾の人って生水は飲まない印象があったが、案外飲むもんだな。

・・・ああそうか、「これはミネラルウォーターだ」と思えば飲んでも何らおかしくない。

ありがたくも雨が止む

せっかくの重装備だったが、室堂から歩き始めてものの数分で雨はほとんど上がってしまった。

下界の方は一部雲が切れており、富山湾まで見下ろす事ができたくらいだ。

美女平、弥陀ヶ原と無駄な時間を過ごしてしまったが、結果的に大正解となった。美女平からストレートに室堂に到着していたら、多分土砂降りの雨の中を宿に向かっていただろう。しかし、今この眼下に広がる光景を見よ!雨が止んできたので、高山ハイキングを楽しみたい放題だ。

チングルマ

あちこちに高山植物が花を咲かせている。

写真の可憐な白い花はチングルマ。

多分、気候の関係で台湾ではお目にかからない花だろう。

そもそも、台湾において森林限界というのはおそらく標高3,000メートルをはるかに超えた位置になるだろうから、こういう開けた空間すら珍しいと思う。(ちなみに日本の森林限界は、大体2,500mくらい)

どうだどうだ。雨の中ここまで来て良かったでしょう皆さん?

昨日からこのかた、ずっとおかでんの中では「あ、今ので減点1」「今のは喜んでもらえたようなのでプラス2点」なんて計算をしていたのだが、ここで一気に得点増。

立山がくっきり

立山がいよいよくっきりと見えてきた。

明日登る予定の雄山(3,003メートル)もくっきりと見える。

「ほら、明日はあそこに行きますよ。山のてっぺんに神社がある、独特な山ですよ」

と紹介しておく。

ここで3人から「えー、あんなところまで登るのー」と言われそうなので、

「山の上から室堂を見下ろしたら素晴らしい景色ですよ」

と言い訳をしておく。ここからは標高差500mちょっと。近いようで、非常にそびえ立って見える。

みくりが池

みくりが池が見えてきた。

山上の池で、神秘的。「ここには昔、大蛇と美しい姫のロマンスがあって・・・」などと解説できればよかったのだが、幸か不幸かそんな話は聞いたことがないのでパス。

「ここ、みくりが池といいます」

と、案内表示以上のことは言えなかった。

せっかくだから、思いっきり嘘をここで台湾勢に教え込み、そのうそがどれだけ台湾に戻ってから広まるかを観察するのも楽しいと思ったが、そういう悪いことはやめとけ。

みくりが池と立山をアングルに収めつつ記念撮影、とやろうとしたが、結構難儀。窪んでいる池と、盛り上がっている山と、その真ん中にいる人物を一度に撮るというのは難しい。

何度か失敗したが、みんなにこにこ顔で再撮影に応じてくれた。雨が止んでくれて一安心だ。心に余裕ができる。

みくりが池温泉

室堂から歩いて最初に出会う山小屋、「みくりが池温泉」。標高2,430メートルにある宿で、「日本最高所の温泉」の称号を誇っている。最初はここを予約しようとしたのだが、「日本最高所」の称号があること、室堂から歩いてそう遠くないところにある地の利、から大人気。予約は取れなかった。7月に予約のTELを入れたら、「今頃何言ってるんだい」というような対応をされた。聞くと、夏場の予約はゴールデンウィーク頃にしておかないとダメらしい。

ちなみに、「日本最高所の温泉」の称号に対抗すべく、「通年営業で日本最高所の温泉」「日本最高所の露天風呂」というのが日本各地にあるので紛らわしい。ちなみに前者は、八ヶ岳東山麓にある本沢温泉。後者は北アルプスの白馬鑓温泉。

みくりが池温泉の前で、看板をバックに記念撮影。「日本最高所の温泉」という字が、台湾人には読めるだろうか?この写真は記念になるだろうか?と思ったが、たぶんこれくらいなら台湾人でも読めると思う。

ハイマツ
あ!雷鳥がいた!

先を行っていたFishが、「雷鳥がいるよ!」と声を上げる。

そんな馬鹿な、と思って指差す方向を見たら、確かに雷鳥がいた。ハイマツの生え際のところに姿を現し、じっとしている。よくこんな雷鳥に気付いたものだ。えらいぞ、Fish。

やっぱりこういう天気だと、雷鳥も警戒心を緩めて外に出てくるようだ。しかし、人間のすぐ目の前までやってくるようなことはせず、ハイマツ脇で時折キョロキョロしているだけだった。雷鳥が動くのが先か、こちらが諦めるのが先か、と身構えていたが、なんとこっちが根負けした。あの雷鳥、何がしたかったのだろう。せめて雛が出てくるくらいのサプライズを期待したのだが。

これまでさんざん売店の土産物やら自然保護センターやらで雷鳥ムードを高めてきたので、ここは一発、派手に動いてほしかったのだが、天然記念物さんはそんな人間の願望なんて気にしちゃいねぇ。でも見ることができただけでもラッキーだった。

鳥2
鳥4
鳥3

雷鳥にしびれを切らしたおかでんは、近くの草むらで別の鳥が何かをついばんでいるのを発見。こっちの方が動きがあったので、雷鳥よりもこの見知らぬ鳥に夢中。ところでこの鳥、なんだろう?

歩く

室堂は非常にアップダウンが激しい土地。途中に池があったり湿地があるって窪地があちこちにあるので、それを避けつつ歩道が続いている。

雨が降って濃霧の中だとなんのこっちゃわからん面倒な道だが、ある程度視界が晴れている今だと結構楽しい。

カメラに敬礼

先行する3人がカメラに向かって敬礼しているところ。

おかでんは彼女たちの前へ後ろへと激しく行き来し、写真を撮りまくった。連れて行くまでがおかでんの仕事ではない。それを「良い思い出」として永久保存させてこそ、ツアー引率者として成功だ。

雪渓

進行方向右手に、雪渓あり。

「写真撮ってー、でしょ?言わなくてもわかっている。待ってろ、写真撮る」

といい、記念撮影。さっき雪渓と記念撮影したのに、と思うが、彼女たちはどんな雪渓でも過敏に反応していた。雪が、この季節に、見られることがうれしくて仕方がないらしい。そのため、写真を何枚撮ろうとも撮りすぎることはなかった模様。

「あの雪のところまで行ってもいいかなあ?」
「歩道以外はダメだぞー。立ち入り禁止だからなー」
「うーん」

また雪に触りたがってる。室堂ターミナルでやったのと同じやりとりをここでも繰り返す。

血の池

そんな雪渓の近くに、赤色の水が溜まっている湿地があった。「血の池」というらしい。おそらくこのあたりには赤色の岩があり、その成分が溶け出しているのだろう。

「ほら、これが血の池」
「おー」

それなりに感心・感動はしているようだが、雪渓を見たときほどエキサイトしない。この明確な違いに思わず笑ってしまう。

いかんなあ、最近のおかでんはこうも無邪気に喜んだり興奮したことがあっただろうか。すっかり人生斜に構えてしまっている。もっと素直にならないと。台湾人三名を見ているとつくづくそう思う。

雷鳥荘

左手にも、池。そこをぐるーっと回り込んだ先に雷鳥荘が見えてきた。

山小屋と呼ぶべきか、温泉旅館と呼ぶべきか、その立地条件と客層と建物のつくりからして微妙なところだ。立山や剱岳登山を考えている人からすると「山小屋」なのだろうが、それにしては立派過ぎる。

以前、この雷鳥荘の先にある「雷鳥沢ヒュッテ」に泊まったことがあるが、二段ベッドが一部屋に4つ(合計8人部屋)の相部屋スタイルだった。さて、今回の宿はどんな宿だろう?もし相部屋だったらFish母なんぞはショック受けるだろうか?

ちなみにその「雷鳥沢ヒュッテ」に泊まった時は、その前にこの雷鳥荘に宿泊の可否をうかがっている。結果的に断られたのだが、その際「予約がないと泊まれないから」と言われた。予約必須なら、温泉旅館寄りの小屋と思われるが、さて。

雷鳥莊到着

17時49分、雷鳥荘到着。

途中で雨が止んで一安心だ。レインウェア着込んでの行進、お疲れさまでした。

雷鳥莊1
雷鳥莊2
雷鳥莊3
雷鳥莊4


雷鳥荘内部。

清潔感あるインテリア。玄関は非常に広く確保されており、快適。登山靴を履く際は、スニーカーを履くのとわけが違い結構手間がかかる。そのためピーク時には出入り口がわちゃーっと人だらけになってしまう。その点ここは広いので便利。

談話室と軽食コーナーは、木の雰囲気いっぱいのつくり。大きなストーブがあるのもなんだかわくわくさせられる。

雷鳥莊自販機

さっそく自販機にあるビールのお値段チェック。500mlで500円だった。山小屋価格としては非常に廉価な部類。売店にはいろいろなシャツや軽食が並んでいたが、いずれも値段は抑え目。室堂から近いという場所がらだろうか?

とはいえ、室堂から車でこの宿まで運搬できるわけではない。途中、さっき歩いてきたアップダウンが激しい歩道がある。人海戦術で運搬?それとも、室堂から近いけどヘリで輸送?どっちなんだろう。

雷鳥莊部屋の中

「あれれ。予想外に立派でびっくり」

案内された部屋は・・・というか、そもそも「一部屋」与えられること自体が驚きなのだが・・・、角部屋の畳部屋。二段ベッドでも雑魚寝でもないしっかりした「旅館仕様の部屋」だった。しかも4人で泊まるには十分な広さ。

「さすがだな、要予約の宿は違う」

妙に感心。

部屋の外の景色

角部屋のメリットを満喫だぜー、と窓の外を見てみる。・・・窓が曇っていたので、窓を開けてみる。すると、立山が正面に。

お茶セット

この宿はチェックイン12時、チェックアウト9時となっていた。チェックインがやたらと早いのが山小屋風だ。また、チェックアウト時間がやや前倒しになっている。

朝食 06:30~08:00(終了)、但し、7月15日~8月末日まで 06:00~08:00(終了)
夕食 通常18:00~19:30(終了) 但し、混雑が予想される場合は 17:30~20:00(終了)
お弁当をご希望のお客様は、19:00までにフロントへお申し出ください

その分朝ごはんも早い。とはいっても、本格的な山小屋のように「朝5時から朝ごはん」という超絶早朝な朝ごはんにはなっていない。夕食もしかり。やはり、山小屋と温泉旅館の中間的位置づけだ。

とはいっても部屋の中のアメニティはシンプルながら必要十分。

お茶はティーバッグだけど一人二杯分ある。それから、タオルと歯ブラシ、浴衣。タオルはバスタオルまで用意されている周到さだ。

浴衣

「浴衣!」

台湾勢、今回の旅行で二度目の浴衣ということでまたしてもうれしそう。いや、そんなに喜ぶほどのものではありませんがね、と思うが、こんなもので喜んでくれるならお手軽だ。ガイジンさんは浴衣をこよなく愛する、と覚えておこう。

おかでん一人部屋の外に出て待機。その間、女性三人でキャッキャ言いながら浴衣を着こんでいた。で、着終わったところで一人ひとり撮影し、あとは全員並んで撮影。コスプレ的感覚なんだろう、きっと。

浴室案内
雷鳥莊浴室


夕食の時間が近かったが、とりあえず温泉に行かねば。タオルを持ってお風呂に。部屋にはちゃんと鍵がかかるので貴重品も安心。

浴槽は二つ。一つは普通の浴槽で、もう一つは窓が大きく開いて「露天風呂的解放感」があるようになっている。さすがにこの気候が厳しくて、なおかつ豪雪地帯な土地柄で露天風呂なんて作ったら大変なことになるので、「露天風呂風」にしたのだろう。

露天風呂風浴室

内風呂風な湯船は温泉ではないので注意。露天風呂風の方が温泉。

単純酸性温泉、源泉湧出地の温泉63.2度、加水あり、加温なし、42度。

みくりが池温泉と同じ、地獄谷から引き湯しているはずなのだが、あちらは単純硫黄泉。泉質が違っている。採取する場所がちょっとずれただけで泉質が変わるらしい。

地獄谷が見下ろせる

大きく窓を開け放つと、8月とはいえ冷気が入ってくる。でもせっかくなので大きく開けてみた。眼下には地獄谷。

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