山中秘湯旅館を貸し切り大満喫【那須岳・三斗小屋温泉】

朝日岳

10:31
茶臼岳登頂再開。峰の茶屋跡を後にする。

茶臼岳を登りながら、今きた道を振り返ったところ。眼下に峰の茶屋跡避難小屋が見え、正面には朝日岳(1,896m)が見える。岩山で格好いい。本当は今日、茶臼岳を登ったらその足であっちにてくてく歩いて行くつもりだったのだが、あいにくの天気なのでそれは中止。明日あらためて登ることにしてある。待ってろよ、朝日岳。

さっきから何度も繰り返してるが、登山口からものの1時間くらいでこういうカッチョイイ山にアプローチできるんだから、那須岳さん素敵っす。しかも、下山後のお楽しみとしては、天下に名高い那須の温泉があるわけで。言うことなしだ。

それにしても、今日は本当に人がいない。これまで、一人もすれ違っていない。この山を独占。いいぞいいぞ。人だらけの山だと、すれ違う際に「こんにちはー」ってあいさつするのに疲れちゃうからイヤなんだ。

ガスが出ている山頂を目指す

10:31
俺は後ろを振り向かない人なんだ、とか言いながら、進行方向を向き直す。普段、一人称は「僕」なのに、こういうときだけ「俺」という言葉を使う俺。

荒涼とした山。自分が歩いているところはまだ若干の草が生えているが、ここから先は草すら生えていない、地獄。山の中腹から噴気が上がっているし、なかなか迫力がある。

岩肌の茶臼山

10:40
登山道は、山をぐるっと回り込む形になっている。ざっと、1/4周ほど回り込む。直登するのがキツいほどの傾斜ではないのだが、何でかそうなっている。ロープウェイ乗り場からの道と合流させたいからだろうか。

岩がゴロゴロしているけど、浮き石は少ない。足下はしっかりしているので、歩きにくいということはない。おっと、登山靴の紐をまともに縛ってないぞ。「下道を歩く用」にゆるく結んでいるだけだ。それでも全然支障ない、そんな山歩き。でも怪我してからじゃ遅いぞ。良い子のみんなはちゃんと靴紐は縛ろう。

一人岩の中を歩く

10:40
岩だらけの斜面を登っていくのも楽しいけど、写真のような「比較的なだらかな岩場」ってのが好き。なんだか別世界にきちゃった感じがするからだ。月面に立った気分、とでも言おうか。周囲360度見渡しても、人口建造物は一切なし。電柱もない、鎖場などすらない。そして何よりも人がいない。この大自然を独り占め。最高だ。

・・・と思うでしょ。でも相変わらず僕は「何のために山に登ってるんだ」と自問自答中なので、案外楽しめていない。ただ黙々と、目の前の「山頂」という宿題をこなすために標高を稼いでいるだけ。

とはいえ、こうやって自画撮り写真を撮影しているんだから、なんやかやいってもこの山歩きを楽しんでるだろオイ、とは思う。

ガスに包まれる

10:50
山の上の方に行けば、再びなだらかになる。正面の丘の上に、小さなほこらが見えた。あそこが山頂らしい。こんな場所、山頂以外にほこらなんてあるものか。でもそのほこらには、またもや回り道をして行くことになる。まっすぐ、直登の道がない。つくづく、この山は峰の茶屋跡側からの登山に不向きだ。まあ、回り道をするといっても微々たるものなのだが。

山頂口

10:56
山頂口、と書かれた標識を発見。ここで登山道は茶臼岳山頂への道と、ロープウェイ山頂駅への道とが分岐する。ロープウェイ山頂駅まで800m、そして山頂は200m。つまり、ロープウェイを使えばたった1kmの歩きで素敵な山頂にたどり着けるってこった。お子さんがいたりして、どうしても楽に山に登りたいんだ!という人は便利なロープウェイを御利用ください。

楽をしたがる僕がなんで今回はロープウェイを使わなかったのかって?使っちゃったら、今日の行程が短くなりすぎるからだよ!あっという間に山頂に登って、あっという間に三斗小屋温泉到着。チェックインできる時間以前に到着しちゃって、暇を持てあましちゃうよ!だから、徒歩。今回は緩めの行程でスケジュールを組んでいるので、こういう事になる。

山頂まであともう少し

10:54
ガスっている先に、ほこらがうっすらと見えてきた。ほら、あそこが山頂だ。「最後の急な登りを、必死になって登る」なんてことはない。ご覧の通り、ゆるやかに歩く。気楽なものだ。

雨は相変わらず降っているけど、小雨なのでレインウェアを羽織る気にならず。普段着のままで登頂だ。でも、ザックカバーだけは片付けるのが面倒なので装着したままという、アンバランスさ。

鳥居が見えてきた

10:56
那須岳山頂にある、鳥居とほこら。ここが本日の行程で最高地点となる、山頂でござい。標高、1,917m。

もちろん、ここにも誰もいない。どうやら、ロープウェイは今日はずっと空気をひたすら輸送しているらしい。「乗る人がいないから、運転中止」というわけにはいかないんだろうな。

那須嶽神社

10:58
茶臼岳山頂、「那須嶽神社」のほこらと共に登頂記念撮影。えーと、360度何も景色は見えませぬ。ひたすら、霧です。そして、強風、小雨。

こんな天気の中、どうして山に登るの?バカなの?死ぬの?って言われそうだが、そりゃまあ、計画立案時点からこんな天気だって分かってりゃ登りはしなかったさ。でも、宿の手配とか新幹線の予約とか、山に登るには遅くとも数日前にはいろいろな大人の事情ってのが発生するわけで。そうなると、当日の天気なんて構ってられんのですよ。身の危険にさらされそうな天気だったら、もちろん勇気ある撤退ってやつをやるけど、それほどの天気じゃなかったら突撃しちゃいますよモウ。

岩陰に隠れる

11:06
雨はともかく、風が強すぎる。ちょっとほこらの横でリラックスなんて到底できないので、近くの岩場に逃げ込む。とはいっても、身を隠せるほどの大きな岩はないので、気休め程度だ。

せっかくの山頂なんだから、昼メシでも・・・とも思ったが、それにしてはちと時間が早すぎる。それに、これだけの風ときたものだ、落ち着いてくつろぐなんて到底無理だ。こりゃあ、せっかくの山頂だけど、とっとと引き上げた方が良さそうだねん。峰の茶屋跡まで下りて、そこで一息つくことにしようか。

那須岳三角点

11:11
居心地が悪いので、早々に山頂から退却開始。一人下界から登ってきて、山頂が僕一人独占というわけでもなくなったし、長居は無用だ。

下山している最中、「那須岳三角点」という標識を発見した。あれ、こんな何の変哲も無いところに三角点があるんだ?普通、三角点って、山の中でも一番高い場所、つまり山頂にあるものなんだが。

標識には、「那須岳三角点 10m 0.5min.」と書かれていた。えっと、ということはすぐ目の前、ってことか。・・・ああ、あったあった、10mどころか、数メートルのところに三角点があるぞ。これ、30秒もかからないって。どれ、せっかくだから三角点を拝んでいこうか。

デジカメが壊れた

11:17
三角点なんて、見たところで何の変哲もないものだ。単なる石柱。でも、山に登っている人は、このつまらないモニュメントにも何らかの感慨を抱いてしまうものだ。山頂とイコールであることが多いからだ。「山頂についたら、必ず三角点を踏みつけることにしている」などと変なマイルールを持っている人も結構いたりする。

僕は三角点に対して何ら思う事はないのだが、それでもどうせ暇なんだし、三角点を前に記念撮影をしておくことにした。三脚を立て、カメラを10秒のセルフタイマーモードにして・・・いざ、撮影。

その時、どうっと強い風が吹いた。いや、このときに限らず常に強い風は吹き続けていたのだが、特に強いのが一発、やってきた。その風にあおられ、ゆっくりと三脚ごと倒れ込むデジカメ。そして、そのデジカメはガン、と鈍い音を立てて岩に激突した。三脚がついていたので、無反動で。

慌てて駆け寄ったが、カメラをチェックする前に確信した。ああこれはやっちまったぞ、と。文句なしの豪快なワンショット。これで壊れていないわけがない。案の定、見てみたらレンズ部が格納されず、沈黙してしまっていた。そりゃそうだ、レンズから岩に突撃していったもんな。

以前伊豆大島でデジカメを壊しかかった時、レンズを強引にねじ込んだら直ったという事例があった。だから、今回も壊れてもしょうがないという覚悟のもと、レンズをねじ込んでみた。・・・ぱきっ、と何かプラスチックのようなものが折れる音がした。そして、レンズがスカスカになって手で動くようになった。この瞬間、レンズはただの「ガラス付き筒」に成り下がってしまった。さようなら、デジカメさん。故障確定。あああ。

壊れる直前のデジカメが撮影したもの

11:13
このデジカメが写した最後の1枚。

倒れる最中だったのか、倒れた瞬間だったのか。

いずれにせよ、この黒い棒のようなものが一体何を写したものなのか、さっぱりわからない。ストラップだろうか?謎のまま、デジカメは沈黙してしまった。さぞや無念だっただろう。

一体おかでん、こういう形で何回デジカメを壊せば気が済むのやら。いい加減、雨とか風の時に三脚を立てるのはやめようぜ?悪い結果が待ってるばかりだ。

三斗小屋温泉2.4km

11:45
旅の序盤でデジカメを無くし、大層がっかりしてしまった僕だったが、そういえばスマホのカメラを使えばいいんじゃないかとひらめいた。今時の人から言わせれば、スマホで写真撮影するのは当たり前のこと。何を今更?と思うだろうが、僕の場合は古来よりずっとデジカメ一辺倒だったので、携帯で写真撮影という発想がはなから欠落していた。スマホの写真なんて汚いしうまく撮れないだろ、くらいの認識だった。

しかしいざ、峰の茶屋跡に下りてきてみて写真を撮ってみたら、案外上手くいきそうだった。悪くないぞ、これ。急場しのぎとはいえ、案外まともに写真が撮れそうだ。よし、明日下山するまではスマホにお世話になることにしよう。

ただそうなると、バッテリーの持ちが非常に気になってくる。何しろ、ほっといても1日しか持たないバッテリーだ、写真撮影を繰り返していたら、あっという間に電池切れになっちまう。そこで、ここから先はどうせ電波が入らないエリアになるわけだし、スマホを「機内モード」にして節電することにした。これで、結果的に下山までなんとか持ちこたえてみせた。よくやった、スマホ・・・と、俺。

さて、峰の茶屋跡には標識が出ているのだが、「三斗小屋温泉2.4km」と記されていた。あともうちょい。1時間弱もあれば十分に到着できる距離だ。煙草屋旅館のチェックイン時間はうれしい13時なので、ここでお昼ご飯を食べてから出発すれば、ちょうどチェックイン時間に到着できそうだ。よし、今日は温泉三昧決定だな。

「三斗小屋」の記述の下に、「SANDOGOYA」とローマ字が記してあった。あれっ、「さんと小屋」じゃなくて、「さんど小屋」だったのか。今頃気がついたぜ。

お昼ご飯はおにぎり

11:51
本日のお昼ご飯は、コンビニで買ったおむすび。全部105円なので、しめて315円なり。

せっかくの山なんだし、お湯を沸かしてカップラーメン食べるとかなんとかすりゃいいんだけどね。でも面倒臭くって、ついついコンビニおむすびに頼ってしまう。楽だし、食べるのが早いし、かさばらないしゴミはコンパクトだし、言う事ないんだわこれ。堕落しちゃう。

スマホカメラの動作確認中

11:52
ただ今、スマホの写真を動作確認中・・・。

近い!近いよ!

三脚が使えないので、どうしても手で持っての撮影になる。そうすると、僕自身が相当大きく映り込んでしまう。いやぁ、僕が写真を撮りたいのは、自分の姿を記念に留めたいんじゃなくって、「この時間、おかでんはこの場所でこういうことをやっていました」というへべれけ紀行用のものが欲しいんだ。だから、こんなに僕がアップになっちゃってるのって、ちょっと本位じゃない。正直恥ずかしい。やめて欲しい。

それにしても、慣れないカメラなので、どういう角度に向ければどう写るのかがよく分からない。何度も撮影をやり直しながら写り具合を確認する。そうこうしているうちにバッテリーはどんどん消耗していくわけで、ちょっとヒヤヒヤものだ。

峰の茶屋から西側を見下ろす

12:00
さて、食事が終わったことだし、ぼちぼち三斗小屋温泉に旅立とうか。現在時刻は12時。1時間も歩けば、山のいで湯が僕を待っている。いやー、13時過ぎから温泉三昧って、堕落しているというか極楽というか、よくわからんシチュエーションだな。山登りに来たはずなんだけどなんなのこの楽っぷりは。

今朝から連絡を取り合っていた友達たちに、「じゃあ、これから電波が入らないところに旅立ちます。さようなら」とメッセージを送っておいた。で、スマホを「機内モード」に切り替えて、翌日の下山までバッテリーの我慢比べに突入。しかし、下山後にスマホの電源を入れてみたら、友達からたくさんメッセージが届いていた。「早まるな」とかそんな内容。「旅立つ」という表現と、「さようなら」という言葉が、どうも違う意味にとられたらしい。確かに、その直前に僕はネガティブな発言を繰り返していたので、そういう解釈をされても仕方がなかった。すまん、みんな!

峰の茶屋跡から西側は、急な坂を下っていくことになる。裸の地面が荒々しいが、眼下には森が広がっている。これまでは風光明媚な場所ばかりを歩いてきた今日の登山だが、ここからは森歩きにシフトチェンジだ。

ここから先は人里離れた地

12:06
深い森が広がる。ここから先当分は、人里離れた土地になる。でも、そんな中に三斗小屋温泉があるように、昔はこの先に街道があったらしい。今じゃすっかり廃れてしまったので、街道という「流通・物流の大動脈」でも流行り廃りはあるんだなと考えさせられる。栄枯盛衰。そういえば、大内宿も昔は街道沿いだったんだよな。どうやらその道がこっちの方まで伸びていたようだ。

看板によると、この森はダケカンバで構成されているとのこと。ダケカンバ林がこれだけ広大に広がっているのはちょっと見たことがない。雄大な景色だ。

森の中を歩く

12:09
展望が良いエリアはあっという間に終了。ここから、森の中を歩いていくことになる。標高ぐいぐい下げは一段落し、傾斜がゆるい道を歩く。今日は小雨で収まって良かった、足元は幸いぬかるんではいない。ぬかるむと、靴やズボンが泥だらけになるから困るんだよな。それ用にスパッツは持っているのだが、どこにやったか忘れてしまい、今回は持参していない。僕はこういう「持っているんだけど、どこにしまったかわからないので放置」という宝の持ち腐れがとても多い。

避難小屋

12:13
森の中に避難小屋がひっそりとあった。
なんでこんな中途半端な場所に避難小屋があるのか、よくわからない。ちょっと歩けば峰の茶屋跡の避難小屋があるし、逆方向に行けば三斗小屋温泉の旅館2軒がある(こちらはお金がかかるし予約がいるけど)。しかも、なんでよりによってこの場所なのか、その理由もよくわからない。水場が近くにあるわけでもなし。

建設されたまま放置されているようなぼろい避難小屋を想像していたが、窓にはサッシが入っていたりして、ちょっと立派ではあった。小屋へのアプローチ道がよくわからなかったので、これ以上は近寄らなかったけど。ためしに中を覗いてみればよかったな。

日帰り入浴は行っていません 煙草屋旅館

12:16
登山道の途中に、杭が一本打ち込まれていて、そこに注意書きが貼り付けてあった。

日帰り入浴は行っていません 煙草屋旅館

この道を歩く人は、ほぼ100%三斗小屋温泉に用がある人だ。中には「山奥の秘湯、いいじゃないか。ぜひ立ち寄り湯しよう」と考える人もいるだろう。でも、日帰りじゃ無理だよ、と警告しているのがこの看板。日帰り入浴を考えていた人は、これを見てここですごすごと引き返すことになる。というか、山に関する情報は事前にちゃんと入手しておこう。煙草屋旅館が日帰り入浴NGってことくらいはちょっと調べればすぐわかるんだから。

というわけで、ここから先の道は、ほぼ「宿泊者専用道」ということになる。

なお、三斗小屋温泉には「煙草屋旅館」のほかに「大黒屋旅館」があるわけだが、そっちのほうで日帰り入浴を受け付けているかどうかは不明。

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