よこさんは生ビールを頼み、僕はジンジャーエールを頼む。ビールを頼むと突き出しが出て、ジンジャーエールを頼むと突き出しが出ない。これは和食でもなんでもそうだけど、ちょっと不思議ではある。それだけソフトドリンクは安くしてるんですよ、ということか。
いや、そうじゃないか。「酒が進んでしょうがないぜ!」状態にすればお店は儲かるので、ガンガン飲ませるための「着火剤」として突き出しを出している、という陰謀があるのかもしれない。ソフトドリンクだと、ガンガンおかわりなんてしないから。
名物だというモツ皿が来た。
あー、これは絶対うまいやつやー。見た瞬間にがばっと立ち上がり、惜しみないスタンディングオベーションを送りたくなったくらいだ。酒飲みでこれが嫌いな人がいようか。いや、いない。
モツ、というから腸を使った、臭みが抜け切れていないゴムみたいなやつが出てくるのかと思ったがとんでもない。ハチノスを使っていて、さすが中華街のお店だけあってしっかりと下ごしらえをして、柔らかくかつ弾力を残しつつ、まあうまいことうまいこと。いいね、これ。
もう一つの名物、レバ皿も来たよ。これもうまいね。酒の肴だ、日本中から酒もってこい。
で、気になっていた「巻揚」、実際に頼んでみたらこんなんきたー。
要するに春巻きなんだけど、この表面を見よ。春巻きのつるっとしたものとは違い、唐揚げチックに「油、吸ったぜー!」という感じに仕上がっている。デブまっしぐら、といえばお店に申し訳ないが、やっぱりそういうジャンクなイメージは、ある。
これ、店員さんに聞いてみたら、春巻きの皮の代わりに豚の網脂を使っているのだそうだ。なるほど道理で。しかしこれはうまそうやで。
実際食べてみたら、かなりいい感じ。というか相当いい感じ。これを名物と呼ばないのは卑怯だ。まだ見ぬ強豪現る!リピートしたくなる味だ。
これだけでは食事として物足りないので、追加注文をすることにした。野菜炒めと、唐揚げ。
「えっ、唐揚げ?」
よこさんの追加注文にびびった。巻揚に続いてさらに揚げさせやがりますか。
「いやーだってー、こういうお店の唐揚げってどんな味か確かめたいじゃないっすかー」
いやごもっとも。僕ら普段、スーパーのお惣菜とか弁当とかでしか食べないから。本場中国の唐揚げって、言われてみれば知らないよな。
「でも、今この段階で唐揚げ頼むって、もう飲む気満々じゃないッスか」
「またー。そうやって飲ませようとするー」
「紹興酒、ありますよ?」
「うーんどうしましょうかね?」
どうしましょうもへったくれもなく、紹興酒が追加注文された。
出てきた紹興酒は清酒を入れる徳利に入っており、よこさんはこれを手酌でくいくい飲んでいた。いやー、そりゃあ唐揚げ食べながら紹興酒は極上でしょうよ。僕は甘ったるいジンジャーエールを切り上げ、ひたすらお冷をがぶがぶ。のどが渇く。
最後、シンプルなお粥を頼んでシメ。これもまたよかった。このお店、リピートしたくなるわー。通いたいわー。巻揚もう一度食べたいわー。
最後、大きなお土産物屋を物色。辛い中華風ナッツがことのほかうまかったので、ついつい買ってしまった。
それにしても今日は昼から、麺三昧を楽しみ、そして夜は中華街。中華三昧な一日だった。食い地獄というわけではないが、一日中食べ物と触れ合っていたので精神的満腹感はかなりなものだ。とても楽しい一日だった。中華街は探検しがいのある場所なので、また訪れたいものだ。
よこさんは言う。
「一度、オフ会で『肉まん屋台を全部食べ歩く』ってのをやったら楽しそうっすねー」
確かに、中華街のあちこちで肉まんが売られている。デカいの、小さいの、具もいろいろだ。それぞれ味は違うのだろうし、どこが一番の肉まんなのか、俺らが決めちゃる!という企画をやってみるのも楽しそうだ。これは次回以降の課題にしよう。
「さすがに今日これからは無理だ」
「いや、今日やれとはだれもいってないっすよ?」
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