2002年06月09日(月) 3日目
3日目。今日が最終日だ。
さすがに今日くらいは、ちゃんとリゾートライフしようではないか、という提案により、トマムの中で朝食を食べることにした。敷地内で朝飯を食べることが果たしてリゾートなのかどうかは知らないが、慌ただしく出発するというのは少なくとも優雅ではあるまい。値段が高い事は覚悟の上。
ザ・タワーに向かう歩道の先に、なにやらピラミッドの形をした建物がある。これがこれから目指すお店だ。
それにしても、人間はデザインのネタがつきるとピラミッド型に走るのだろうか。昨日の美瑛しかり。
じゃーん。
その名もずばり、「三角」。
「さんかく」と読んではいかんぞ、「みすみ」とよまなくてはいかん。さもないと、「何のひねりもないではないか!」と悲しくなってしまう。まあ、「みすみ」と読んだところで、やっぱりひねりが無い事実には変わりないのだけど。
夜は、郷土料理のお店になっているらしい。郷土料理?広大な北海道において、郷土料理という表現もこれまた胡散臭いのだが、まあそこは初日に考察したように、観光客が思い描く「北海道像」になるべく近づけた料理を出すお店、という定義づけでいいのだろう。
朝食はバイキングだった。何でホテルの朝食はバイキングばっかりなのか?一度いろいろ考察してみたいテーマではある。僕は、単純に値段をつり上げるいい口実になるからではないかと踏んでいるのだが、どうだろう。定食だったら、せいぜい一人から1,000円までしか徴収できないが、バイキング形式だと、「食べ放題だから」という理由がついて2,000円近く徴収することだって可能。これで客単価を倍にすることができる。
一昔前だったら、「フザケンナよ、バイキングにしたことを後悔させてやるぜ」と逆に気合いが入って、店の人ががっかりするくらいおかわりしまくっていたものだ。しかし、やはり歳には勝てませんな、摂取カロリーが気になってしまい、どうしても遠慮がちに。おかげでたったこれだけしか取り分けられなかった。・・・え、多い?いや、こんなもんです。
この後、もう一回おかわりに行ったという事実はひみつ。
今日の目的地は池田。池田といえば、帯広の東にある普通の町だが、「池田ワイン城」があることで有名。っていうか、それ以外何かあったっけ?という町でもある。にも関わらず、今では道東巡りの旅では有力な訪問地の一つに数えられているのだから、凄いことだ。単に「ワイナリー」を作っただけではここまで有名にならなかったはずだ。「ワイン城」という奇抜な建物を造ったからこそ、成り立った観光ビジネスだ。発案者は先見の明があったとしか言いようがない。
で、トマムから延々車で2時間以上かけて、やってきましたワイン城。池田の町自体は大平野の中にあるのだけど、このワイン場は平野を見下ろす小高い丘の上にたたずんでいた。
・・・あれが、城、ですか。
確かに、円柱が建物の両脇にあるあたりが、中世ヨーロッパのお城っぽくも見えるが、なんか「城」と聞くと、赤いとんがり屋根があったり、跳ね上げ式の城門があったりするのを想像してしまう。それから比べると、単なるコンクリートの建造物、に見えてしまうのはどうしたものか。
ワイン城は、その周りに複合的に観光施設があるわけではなく、本当にシンプルにこの城一つで成り立っているようなものだった。せいぜい、駐車場に売店があるくらいだ。
もちろん、そもそもが観光名所というより「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」という名称のとおり研究所であることから、あんまり色気が無いのかもしれない。
みよ、この十勝平野の広いこと。
おかげで、風が吹けば遮るものがなく、突風が吹き抜ける事になる。三脚を何度セットしても、その都度風でひっくり返されるのでおちおち写真撮影すらできやしない。
こういう、いかにも「観光客さん、ここで記念撮影をどうぞ」というものを見つけてしまうと、ついつい記念撮影をしてしまうわれわれは至って凡人なのでしょうか。まんまと策略にはまり、しかもニコヤカに写真に収まってしまった。
おかでん 「何かこのワイン城、近くでみると閉鎖されたチェルノブイリ原発4号機みたいに見えるんですけど」
兄 「怒られるぞ、そんなこと言ってると」
ワイン城には立派な正面玄関があるのだが、なんとそこから入る事はできず、脇にある通路から観光客は入館するようになっていた。正面玄関は職員用らしい。
ううむ、何か違うような気がするけど、まあ仕方がない。
中に入ると、核廃棄物が・・・あわわ、違った、ワイン樽が並んでいた。現在ワイン熟成中。
階段を登ると、そこからは瓶詰め工場を見下ろす事ができた。
さすがに6月、瓶詰めの季節ではないらしく工場は作動していなかった。
この手の工場見学は、ここ最近ではビール工場ばかりだったのでワイン瓶詰め工場を見るとすごくスケールが小さく見える。
逆だ、逆。ビール工場の方がバカでかいんだってば。
見学ルートの途中に飾られていた、十勝ワインのポスター。あまりの濃さに目が釘付けになってしまった。
このポスターの問題点は、ワイン(もしくはブランデー)に目が奪われるというより、むしろオッサンの方に目線が行ってしまうことにあることだと思う。
(恐らく、クラシックの世界では非常に有名なバイオリニストなんだろうけど・・・)
階段を登ると、もうそれで見るところはすべて終了。レストランと、土産物屋と試飲コーナーがあった。
外にも出ることができるようだが、今日は強風のため不可だった。
団体でやってきたおじーさんおばーさんの群れが、試飲コーナーにたむろしてガハハハってやっていたのがしみじみイヤだった。
ここにある町営レストランは、全体的にお値段高めで「あれれ、町営にしては・・・」という気もする。しかし、「牛一頭まるごとコース」なる愉快なメニューがあって、ヒレステーキ、ロースステーキ、タンシチュー、テールシチューなどを出してくれるようだ。これは面白い。池田は牛の産地でもあるので、ここでワインを飲みつつ池田牛を食べるというのは悪くない選択だ。ただし、お値段は・・・うわあ、8,500円もするぞ!即座に却下。
車の運転があるので、ワインのしずくを舐める程度で試飲してみる。
十勝ワインは「トカップ」という名称で全国区で売られているが、えぐみがあっておかでんはあまり好きではない。久々にワインを飲んでみて、相変わらずその嗜好に変化が無いことを確認。
ただし、売店で売られていたぶどうジュース(Vintage2001という名前だった)は、よくありがちな甘ったるさがなく、すっきりとした渋みがあって非常においしい飲み物だった。これは、お奨め。
・・・だけど、ここ、1回来たらもう一度来るほどの事はないなあ、という施設ではあったよ。まあ、ワイナリーってのはどこでもそういうものなのだろうけど、その絶大なる知名度と特異な外観に激しく期待を寄せてしまうため、見学を終えたあとの「あれれ」感は非常に強い。集客の瞬発力は非常に強いのだけど、持久力としては弱い、って感じだった。
意外とあっけなく終わってしまったワイン城を後にし、途方に暮れてしまったわれわれは「じゃあ、とりあえず」ということで「十勝川資料館」に行ってみることにした。手持ちのガイドブックで、池田の紹介においてワイン城を差し置いてトップで紹介されていたからだ。入館無料というのも気に入った。
到着してみると、平日ということもあって、がらーん。
おかでん 「わ、わわわ。誰もいない。やめようぜ、入るの」
兄 「かまうものか、どうせ入館無料なんだし」
中に入ってみました。
うーん。中規模都市によくありがちな、「こども科学博物館」みたいな感じだぞ?
おかでん 「こ、これは」
兄 「十勝川の洪水シミュレーションだと」
おかでん 「このジオラマもそうだけど、全体的に国土交通省マンセーな内容になっているな」
兄 「そういうことか。だから無料なのだな」
おかでん 「少なくとも、これってダムの脇にある電力会社のPR館と何ら変わりないよな」
兄 「だな。何でガイドブックにこんなところが紹介されているんだ?」
おかでん 「さあ?・・・よっぽど池田で紹介することが無かったとしか・・・」
十勝川資料館から池田ワイン城を見る、の図。
右側に観覧車がある。強風にあおられて倒れるんじゃないかと不安になる。それくらい、風が強い。
さて、夕方の飛行機で今日は帰京しなければならないので、昼には帯広から脱出しておく必要がある。退却しながら、途中「十勝川温泉」に立ち寄ってみることにした。
日帰り入浴ができる、「かんぽの宿」をセレクト。
ここは、「モール温泉」と呼ばれる、世界で2カ所にしかない性質の温泉だという。
「モール」とは、ドイツ語で「泥炭」を意味するらしく、要するに地下の植物堆積層を通った温泉ということだ。
短時間で体の芯まで暖まるという性質と、天然保湿成分を多く含んでいるために、入浴後は肌がつるつるになるという性質をもっているらしい。
「世界で2カ所しかない」という言葉に惹かれて、入浴。
風呂内部を激写。
ああこらこら、別に女性の裸体とかそういうものは写っていないので期待しないように。
しかし、こういう事をやっているから1年に1回はデジカメを買い換えないといけなくなるんだよな。すぐに壊れる。
ついでに露天風呂も激写。
確かに、非常に暖まった。湯冷めをぜんぜんせず、1時間くらいは体が暖かかったのはしみじみと意外だった。すこぶる名湯だと思うんですが、どうよ。
退却。本当は帯広名物という「豚丼」を食べる予定だったのだけど、すいすいと車を進めていくうちに素通りしてしまった。北海道は、強い意志を持って飯を食いに行かないと、食べそびれる事があると言うことを思い知らされた。
結局、延々と食べるタイミングを失ってしまい、どんどんと山の中へ。気がついたら、「道の駅 樹海ロード日高」というところまで来てしまった。
日高?
日高って、襟裳岬がある、日高?
地図を確認してみると、なるほど、札幌方面に向かう道路はほんのわずかながら日高をかするらしい。
ここで遅い昼食。
道の駅に併設されていた、「インパクト」なるカレー屋に入る。
野菜カレー。
「インパクト」という店名、しかもその看板が黄色に黒字であったことから、劇辛カレーでも出すのではないかと警戒していたのだが、何のことはない普通のカレーで安心するやらちょっとがっかりするやら。
野菜カレーは、写真の通り見栄えもよく野菜も多く満足でした。味は、取り立ててインパクトは無かったけど。
17時すぎ、5時間近くかけてようやく千歳空港に帰着。
2泊3日の北海道うろちょろ旅行は、これにて終了。リゾートライフ満喫・・・のはずが、やっぱり慌ただしい旅行になってしまった。まあ、それが運命(さだめ)って奴なんだろう。こればっかりは死ぬまで直りそうにない。
最後。千歳空港のレストラン街で発見した、ラーメン屋のメニューサンプル。ラーメンがこれだけ豪華に並んでいるのは初めて見た。
ちなみに、最上段のバカデカラーメンも売り物かと思ったが、値札が付いていなかったので恐らくあれは単なる飾りなんだろう。
ホタテラーメン、カニラーメンという「いかにも北海道」というメニューの中に、どさくさに紛れて「山菜ラーメン」という一品が隠されていて、地味に笑えた。
あと、メニューで中央に鎮座していた「北海ラーメン」には、「一度食べたら北海道」という意味不明なキャッチコピーがつけられていたというのも、しみじみ笑えた。
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