地獄と山のマリアージュ【阿蘇山・九重連山】

仕事がこのとき一段落していた。

せめて家でのんびり、という気がしたが、この機を逃さずに遠出を!という気もする。どちらも正解だと思う。どちらもいい思いができるだろうが、どちらも後悔することになるだろう。外出したら「せっかくの休みで余計くたびれちゃった」となるし、家にいたらいたで「無駄に時間を過ごしちゃった」ということになる。さてどうしたものか。

そんな折、福岡の知人からお誘いがあった。博多名物でもある焼き鳥で一献やらないか、というものだ。はい、行きます。

即決かい。

物事というのは何か単純な、シンプルな、背中を押してくれるものがありさえすれば決まってしまうものだ。複雑である必然性はない。

ただ、さすがに「焼き鳥でビールを愉しむだけのために福岡まで行く」というのは金銭的負担を考えるとあまりに馬鹿馬鹿しい。ついでに福岡界隈の観光もセットにしたいものだ。・・・九州国立博物館?太宰府天満宮?ううーん。

いまいち決定打に欠けるため、地図を眺める範囲がどんどん拡大していった。すると目に付いたのが阿蘇山だった。福岡県を外れて隣の熊本県じゃないか。

「登山か!」

ここでカチリとクラッチがかみ合った気がする。山に登って、下山して博多で焼き鳥。これだ。

ここからは早かった。次々とてきぱきと決めていった。阿蘇山だけじゃつまらないので、せっかくなのでお隣にある九重連山の久住山に登るのもプラスにしよう。せっかくだから温泉にも泊まりたいので、「日本秘湯を守る会」に加盟していて、ネーミングが以前から気になっていた「寒の地獄温泉」に一泊してみたい。

当初予定は、

1泊2日の行程で朝熊本空港着→レンタカーで阿蘇山→登山→寒の地獄温泉泊→翌日久住山登頂→レンタカーで博多まで移動、乗り捨て→焼き鳥→福岡空港から羽田へ

という行程を考えていた。しかしあまりにバタバタしていて、特に一日目がキツい。そして、レンタカーを他県の営業所で乗り捨てすると涙がでるくらい高い割り増し運賃になることが判明し、これも断念。結局、2泊に行程延長、レンタカーは熊本発着、熊本→博多は高速バスで移動することにした。焼き鳥だけのために高速バスか。後になって考えてみるとなんだか凄いな。まあ、人と会うってのは何かとハードルが高いもんです。

で、二泊に増やしたわけだが、初日は熊本市街の激安ビジネスホテルに根城を構える予定にした。熊本城をじっくりと観賞し、その夜は熊本の美食を満喫しようと。馬刺し、いいですねえ。辛子蓮根って熊本名物だったっけどうだったっけ。まあとにかくそれらで英気を養った上で翌朝阿蘇山登山だ。

その気満々で熊本市街の飲食店候補まで見繕っていたのだが、ふと阿蘇山の地図を眺めていたら南山麓に「地獄温泉」という場所があることに気がついた。すごい名前だ。「地獄谷」という地名がついている場所は日本各地いろいろあるし、別府には「地獄巡り」なんてのがある。しかしそのまんま「地獄温泉」と名乗っているのは素晴らしい。ぐつぐつと煮たっているのだろうか。それとも色が奇抜なのだろうか。とても惹かれてしまった。

オフィシャルサイトで情報収集してみると、温泉として素晴らしい予感。あと値段が手頃なのもうれしい。それよりも何よりも、二泊目が「寒の地獄温泉」ということで、一泊目が「地獄温泉」だと地獄繋がりになるというのが激しくそそられた。そうだ地獄巡りだ。決まり。熊本市街で美食と観光は却下、地獄巡りと山巡りツアー+焼き鳥に変更。

結局、最終的にツアー企画はこうなった。

[行程:2泊3日]
1日目:羽田から熊本空港へ飛行機→レンタカーを借り、地獄温泉(泊)
2日目:阿蘇山登山→寒の地獄温泉(泊)
3日目:久住山登山→レンタカーを熊本市街の営業所に返却→高速バスで博多→焼き鳥→福岡空港から羽田へ飛行機

ぜいたくなもので、今回のツアー行程は2泊とも平日。普通は宿から敬遠される一人泊であっても、直前の予約であっても、あっけなく確保することができた。土日を絡めた行程だったらこうはいかなかっただろう。ああ仕事に復帰したくないよぅ。旅する前から仕事がイヤになってきた。ってまだアンタ仕事残ってるじゃないの。早く片付けなさい。旅に行けませんよ。

はーい。

2007年09月06日(木) 1日目

雨の空港

出発当日数日前からやきもきしていた。この季節、台風が日本列島をこよなく愛する。ストーカーじみているといっても過言ではない。その台風が関東地方を直撃するというのだ。

幸い、目的地の九州は影響を受けないという予報だったが、こちとら飛行機で九州入りを目論んでいる立場。飛行機が欠航になってしまったら、旅が始まらない。

間一髪セーフで飛行機は飛んでくれた

「これ以上接近したら訴えるぞ」という、毎晩寝る前の念が台風に通じたらしく進路が一瞬たじろいだ。その間に飛行機は無事出発することができた。

間一髪セーフ。その証拠に、伊豆大島便は台風のため欠航だった。多分この後の羽田空港は欠航が相次いで大わらわになっていたことだろう。

熊本空港

風の影響で機体が激震するということもなく、つつがなく飛行機は熊本空港に到着。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください