草津の共同浴場がどこにあるのかについては、こちらの地図を参照されたい。
瑠璃の湯の入口に温度計がかけられていたので、ただいまの気温を確認。
19時51分現在の気温、摂氏8.5度。
ぬお、10度を下回っている。これは相当に冷え込んでいるな。道行く人を見れば、みな寒そうに厚着をしている。しかし自分一人だけは半袖一枚という大変にやる気がなくて素敵なファッション。異様だ。しかし、湯巡りを続けていて体が常に温まっているため、寒さをあまり感じなかったのは幸いした。
夕食をどこで食べるか、出発前日に慌ただしくも調査はしてあった。イタリア料理の店があるな・・・とか、ドイツ料理の店というのも悪くないな・・・とか。今回は一人旅、夜の時間はとても長い。充実した夕食で、充実した一晩を過ごしたいところだ。
ただ、ここで切っても切れない話として出てくるのがアルコールだ。飲んだら乗るな、これは常識。飲む気でいるんだったら、今晩テント張る場所に車を移動させた後に、徒歩でお店まで移動するしかない。結構遠いぞ、それ。
いや、そもそもアルコールを飲むのか?というのも思案のしどころだった。せっかく良質の温泉で体を癒している最中なのに、アルコールで体を疲弊させてどうする。最大限温泉の効能を活かすためにも、酒は抜くべきではないのか。
・・・「抜くべきではないのか。」という疑問提起している時点で、すでに敗北が決定しているんだけど。少なくとも今朝家を出発する時点では「酒は飲まない。」だったんだけどなあ。おかしいなあ。
まあ、そういう事をだ、湯船に浸かりながらつらつらと考えてきたわけですよ。考える時間はいっぱいある一日だったから。で、結局落としどころとして、「テントで飲み食いしよう」という事になった。今晩は駐車場に停めた車の横にテントを張り、そこで一泊する。せっかくテントを張るんだから、「単なる寝床」じゃなくて「我がベースキャンプ」としてテントに居る時間を楽しみたいじゃないか。テントの中でのんびりしながら飲食することにしよう。
この考えを下支えしたのが、草津バスターミナルの飲食店で見かけたおもち帰り弁当の表示。舞茸・山菜・焼肉・生姜焼きの4種類あって、各500円。弁当が500円というのは、オフィス街に昼出没する弁当売りの屋台並だ。観光地であること、しかもバスターミナル内のお店であるという物価上昇要素を踏まえると、500円は安い。相当安い、と言って良いと思う。よし、今晩はこれにしよう。怖いもの見たさ、という気持ちがあるし。
お店には失礼だが、500円という値段設定から考えるに中身については全く信用していなかった。量だって少ない可能性が高い。リスクを十分に承知していたので、リスク分散のために舞茸・山菜・生姜焼の3種類の弁当を注文することにした。・・・同じお店で弁当を買っている時点で、「リスク分散」とは言わないのだが。まあ、3つ買っても1,500円。へたな飲食店で失敗作を掴んでしまうよりは安い出費だとしよう。量が少ない可能性については、3つもあればまず確実に満足できるはず。
弁当を購入後、セブンイレブンでビールを購入。草津交差点のセブンイレブン、大層繁盛していた。弁当やお菓子、アルコールがよく売れていた。駐車場には車が入りきらず、行き詰まって立ち往生する車が出てくるくらいだった。
こちらの目論見としては、草津温泉街の南の外れにある道の駅に居を構えるつもりだった。道の駅だとお手洗いが完備されているし、今日行き損ねた躑躅の湯にも近い。朝おきたらまず躑躅の湯でしゃきっと目を覚ます、というのはなかなか良さそうな行動予定だ。
しかし、いざ道の駅に行ってみると駐車場には車がいっぱいだった。もう20時を回っているので、「ドライブ途中に立ち寄りました~」という類の車ではあるまい。全てが車中泊と思われる。これにはまいった。
仕方がないので、第二候補地である天狗山第一駐車場に車を移動させた。草津国際スキー場、ベルツ温泉センターの近く。以前、「日本三大の旅」でも宿泊地として選定した場所だ。案の定、車の影はまばら。駐車場の隅っこに車を停め、ここをキャンプ地と決めた。
天狗山第一駐車場にはお手洗いがない。西の河原に通じる遊歩道を数百メートル歩いたところにようやくお手洗いがあるので、利用する際は不便。まあ、男性の場合は草むらで・・・という事が可能だが、女性同伴だとテントを張るのはちょっと難しいだろう。不可能ではないけど。
到着後、ランタンに明かりを灯し、早速テント設営にかかる。小型のテントなので、一人でも設営が可能。このテント、「へべれけ紀行」第一回目から登場しているので早8年以上が経過していることになる。途中数年間使っていなかったとはいえ、物持ちが非常に悪いおかでんからすると奇跡的な長寿製品だ。
テント設営完了。いくらがら空きの無料駐車場とはいえ、テントを張っているのはあまり褒められた行為ではない。車に隠れるようにテントを配置した。
いいぞ、なんだか盛り上がって参りました。
すぐにテントに入って食事、でも良かったのだが、ちょっとまだ早い気がする20時半。ビール飲んじゃうので、食後はそのまま寝てしまうことになるだろう。そうなると、翌朝早く目が覚めてしまう。せっかくだから、夕食はもう少し後にして、それまで時間つぶしをすることにした。
ノートパソコンを取り出し、今日のできごとを早速記事として書き始める。この連載の冒頭の「体調悪い」とさんざん愚痴を書き連ねているのは、このときに書いた文章。
本当は、それぞれの共同浴場について、印象が薄れる前に個別に特徴やでき事を残しておくべきだった。しかし、時系列順にしか物を考える事ができない性分のため、「なぜ草津に出かけることになったのか」という導入部分を書くのが精いっぱいだった。ダメじゃん。
そうこうしているうちに、首が痛くなってきた。ノートパソコンを見下ろしていたため、首に負担がかかってしまっていたのだった。体から温泉熱が抜けてきた事もあり、そろそろまた体調が悪くなってきたぞ。何をやっているんだ、温泉に来てまでパソコンいじるのはやめろ。
こりゃいかん、と途中で執筆をやめてテントに転がり込んだ。
さあお楽しみの夕食の時間ですよー。
温泉地に宿泊、とくれば今までは当然のごとくお膳に並べられた旅館料理の品々に目を奪われていたものだ。ああ、茶碗蒸しはどこでも定番だねぇ、とか固形燃料料理は陶板焼きかぁ、とか。どんな料理が出てくるか、わくわくしてたまらない。たとえ、それが食事が貧相である山小屋であっても一緒。外泊における夕食は特別だ。
それは今晩も一緒。何が出てくるかは、当然注文した以上知っている。でも、手渡された袋の中身までは見ていない。500円弁当、どんな物が出てくるんだろう。わくわく。
袋、オープン。
あっれえ?牛丼チェーン店のお持ち帰り弁当みたいな容器が3つ出てきた。これは一体何。幕の内弁当スタイルを想定していたので、ちょっとびっくり。
なるほど、ご飯の上に具が乗っかっている、丼っぽいスタイルの弁当だ。決して丼のつもりで作ったわけではないのだろうが、結果的にそうなっている。これだと、幕の内弁当のように「ちょっと煮物を添える」などの一手間が全く省けてコストカットできるわな。500円ワンコイン弁当の正体はこれだったのか。
写真上、生姜焼き弁当。ご飯の上に生姜焼きが数枚。あと、梅干し大1個と、柴漬け、紅ショウガ。
写真下、舞茸弁当。舞茸を油で炒めたもの。漬物類は生姜焼き同様。せめてバターソテーにして欲しかったが、恐らくサラダ油で炒めている。
そしてこちらが山菜弁当。おっと、山菜の混ぜご飯だ。載っけ盛りじゃないぞ。これはビールのつまみにはならない。
危ねぇー。3種類買っておいて正解だった。たとえば、「せっかく山に来たんだから山菜弁当と舞茸弁当でいいや」とした場合、山菜弁当では酒肴にならないので、舞茸だけをちびちび食べながらビールを飲むことになっていた。
今晩は、生姜焼きを酒肴の主格とし、脇役に舞茸を添え飲食することにしよう。
ではビールを頂きましょうかね。
かしゅ。ぐいーっ。
ううむ、うまい。風呂上がりのビールは美味い、とよく言うが、今日は合計9回の風呂上がりがある。9倍美味くて当然。
特に、テントで飲むというのが心地よい。自分だけの秘密空間、という感じが楽しい。
せっかくならテントの外で、夜風に吹かれながら・・・いや、それは激しく却下だ。日没後、冷え込みが結構きつくなってきた。さすがのおかでんも、長袖を着用している。
テントの中はランタンから発せられる強烈な熱で温かい。しかし、それだけの光量と発熱があるということは室内の酸素を猛烈に消費している証でもある。ちゃんと換気をしないと、一酸化炭素中毒になりかねない。テントの天井を開放し、入口も少し開けることで換気は行った。おかげで、温かいような寒いような。
ビールのつまみが少ないので、ちびちびと。日本経済新聞を語り相手にしながらビールを飲んだ。お酒が入ってくると、世界金融不安もが楽しくなってくる。
足下が冷えるので、寝袋に入りながらビールをのみつつ、弁当を食べつつ、新聞を読んだ。
24時近くになって、消灯。
首の具合の悪さは相変わらずなので、ちゃんと忘れずに持参したキンチョールのスプレー缶を枕に。
2008年10月12日(日) 2日目
寒い。
10月上旬を舐めたらいかんぜよ。
夜中、何度も冷気で目が覚めた。底冷え、というやつで、地面から冷気があがってくる。ウレタンマットを2枚重ねて敷いているのに、それを貫通する冷気。
寝袋は0度まで耐えられる仕様のものを使っているのだが、だからといって全く寒く感じないわけがない。何しろ、ズボンをはいて寝るのは窮屈だ、ということで下半身はパンツ一丁。そりゃ寒いわ。
寝袋は「マミー型」と呼ばれる、要するに顔だけ寝袋から出して頭まですっぽりかぶるタイプ。「封筒型」と呼ばれる寝袋よりも保温性に優れる。で、この「顔だけ寝袋から出す」ために、寝袋の顔回りを締め上げるのだが、閉め方が足りずすきま風ばんばん。これで目が覚めた。下半身が寒いのでもぞもぞするし。
顔回りの締め付けを強化してみたら、今度は枕代わりにしていたスプレー缶が寝袋の中で行方不明。また締め付けをゆるめ、寝袋の中からスプレー缶を引っ張り出し、再度首にセッティング。なにやら落ち着かない一晩だった。
朝は朝で、子供がきゃあきゃあ言って走り回る音が外から聞こえてくる。恐らく、キャンピングカーで一夜を過ごした家族だろう。キャンピングカーがあればこういう駐車場泊は無敵だな。トイレ完備だから。ただし、汚水の処理は帰宅後、セルフでやらないといけないが。
朝8時過ぎ、ようやく起き出す。夜はあれだけ寒かったのだが、太陽が昇ってくると気温が急激にあがる。特にテントの中は温室効果で、熱いくらいだ。熱さに耐えかね、テントから脱出。
外に出ると、青空と紅葉が始まっている山々が見えた。そうか、草津はもう紅葉シーズンなんだな。昨晩は真っ暗だったので気がつかなかった。後で聞いた話だが、草津白根山のほうはもう紅葉が終わりつつあるんだそうな。早い。あらためて、標高が高いところにいることを実感。まあ、そのせいで寒くて熟睡できなかったわけだが。
首をストレッチしながら、今日の体調を伺う。特に昨日と比べて進展はない。温泉効果はまだ出ていないようだ。ただ、寝起きはとても良い。とはいっても、テント泊、草津滞在という非日常空間が緊張感を生み、寝起きを良くしているだけの可能性が高い。まだまだ、この程度の体調だったら、日常生活に戻ったらすぐに逆戻りだ。
今日も温泉に入りまくって、より一層体を草津まみれにしないと。
健康の基本は一日三食食べること。
普段は朝食を抜くことが多いが、今日はちゃんと食べます。
食べる、といっても昨日の残りもんだけどな。舞茸弁当。
結局昨晩は生姜焼きの肉と舞茸2/3ほどをアテにビールを飲んだことになる。で、締めで生姜焼き弁当のご飯部分を食べた。
結果、今朝の食事は舞茸1/3の舞茸弁当。ご飯の量はしっかりと入っているので、これでも十分な朝食だ。
山菜弁当?ああ、あれね。まだ全く手つかず。明日の朝食にでもとっておくか。傷んでしまう可能性があるけど、まあなんとかなるでしょう。
ふと駐車場入口を見ると、なにやらテント設営の真っ最中。目をこらすと、どうやら観光協会がやっているらしい。うお、邪魔になる前に早くテント片付けないと。
どうせ今晩も同じ場所でテント泊を予定しているので、テント寝袋その他諸々の道具は車の後部座席にぐちゃぐちゃっとまとめた状態で投げ込んだ。袋にしまうの、面倒くさい。一人旅の気楽さだ。
今日巡る共同浴場は、湯畑周辺が多い。テントを張っていた天狗山第一駐車場からでも歩いて行くことは可能だが、ちと遠いので別の場所に車を移動させた。
まず、本日のスタートは「煮川の湯」。
煮川の湯を目指している最中、有料日帰り入浴施設である「大滝乃湯」の横を通った。時刻は9時ちょっと前、開館直前。入口の前には、せっかちな人たちが行列を作っていた。
なぜ行列を作るんだろう?
不思議だ。そこまでして早く入りたいのか。「早い者勝ち」な設備が中にあるわけではないので、なんだか不思議な光景。
もっとも、この大滝乃湯は人気が高く、繁忙期になると大変混雑する。そのため、入口に「すごい混んでるよ。『ベルツの湯』は空いているからそっちの方がいいよ。」という注意書きが掲示されることがあるくらいだ。
「それにしてもねえ、入湯料800円だぜ?草津にはたくさんの無料共同浴場があるのに」
とつぶやきながら、おかでんは行列の脇をすり抜けて煮川の湯へと向かった。
大滝乃湯から湯畑方面に真っ直ぐ歩いていくと共同浴場「煮川の湯」があるのだが、その裏手になにやらボイラーのようなものがある。湯気を盛んに噴いていて、素人目にもこれが源泉らしいということがわかる。
どこにも、これが何なのかを示す看板や表示はない。ただ、恐らくこれが煮川源泉なんだと思う。根拠は無いが、煮川の湯が近いから、勝手にそう思っているだけだが。
煮川源泉は、煮川の湯と先ほどの大滝乃湯だけに給湯されている、貴重な源泉の一つ。他の源泉よりも硫黄臭が強く、好きな源泉だ。
煮川の湯。とんがり屋根が特徴的だ。これだけ急斜面な屋根だと、中にはいると屋根に頭をぶつけてしまいそうに見える。しかし、実際は中に段差があって、湯船は地面よりも低いところにあるので大丈夫だ。
基本的にどの源泉も湯温が高い草津だが、これまで入ってきた湯はそれなりに温度調整がされていた。90度を超える源泉温度を誇る万代鉱泉を使っている共同浴場でさえ、快適に入ることができたくらいだ。しかし、この煮川の湯は情け容赦なく、源泉そのものをどばどば投入している激熱の湯。さすが源泉のすぐそば、と言えるが、それにしてもこれはしゃれにならん。
10年くらい前だろうか?初めて草津で共同浴場に入ったのが、この煮川の湯だった。そこでびっくりしてしまい、以降「草津ってスゲー熱い湯しか存在しないんだ」と固く信じ込むようになった。実際は手加減してくれている共同浴場がたくさんあるのだけど。
ありゃっ!
入口に張り紙が貼ってあった。曰く、「工事中」だと。
11月5日まで、補修工事をしているので入湯できないらしい。これは残念。巽の湯に続いて、二つ目の工事中共同浴場となった。
昨日から千歳の湯がリニューアルオープンしたように、補修工事ラッシュなのだな、草津の共同浴場は。それだけ痛みやすいということなのか、たまたま時期が一致しただけなのか。
煮川源泉を楽しみにしていたのだが、ここは断念。
予定を繰り上げて、次は地蔵の湯に向かうことにした。
地蔵の湯は、煮川の湯から丘を登っていった先にある。丘を見上げると、相当な急勾配。こっちの方にはほとんど足を踏み入れた事がない。一回、この丘の中腹にある宿に宿泊したことはあるが。
地蔵の湯に向かう坂。
あまりに坂が急なので、道の脇には階段もしつらえてあるくらいだ。
この坂の上から、みかんを転がしてみたい。大滝乃湯まで転がっていくぞ、きっと。猛烈な勢いで。
温泉玉子ならぬ、温泉蜜柑の誕生だ。絶対まずいと思う。
コメント