なにかずっと望遠鏡のあたりで「しゅこん、しゅこん」という音が規則的に鳴っている。空気を抜いているような音。
何だろう、と研究員さんに聞いてみたら、「機械を冷やしている音」なのだそうだ。
150センチ望遠鏡を見た後、さらに迷路のような通路を進むともう一つ観測用のドームに到着した。こちらは一回り小さい、先ほどの天体望遠鏡とは違う望遠鏡が鎮座。
65センチ望遠鏡なのだという。
「65センチ」望遠鏡とは、ミラーの直系が65 センチなんだそうで、倍率200倍。思ったよりエクセレントな倍率ではない。今日日コンパクトデジカメでも10倍ズームくらいは備わっている。
きっと、デジカメレベルのレンズから200倍天体望遠鏡までの間に超えられない高い壁があって、その結果天体望遠鏡はこんなに大きな物体になってしまったのだろう。もちろん、「なんとなく200倍に拡大しました」では済まないのが天体観測だから、ボケなくくっきり表現する、という点では比べものにならないのだろうし。
面白いのは「150cm望遠鏡との違い」という説明。
この65cm望遠鏡の方が視野が広いです。(暗い天体を見る場合は、150cm望遠鏡の方がよく見えます)
だって。そうか、デカい方がエラいのかと思っていたが、使い分けというのがあるのか。
「なぜ寒いの?」
夜にドームを開けた時、外と温度差があると対流(かげろう)が起き、星の像ががゆがむので、昼間でもドームの中を冷やしています。
そのため、昼間はドームの屋根を開けることができません。「なぜドームまで迷路のように遠いの?」
望遠鏡に熱は大敵なので、本館の暖房や熱源となる機械室から離して設置しています。
ということで、密閉されているドーム内ではあるが、気温18度湿度36度という状態がキープされていた。幸い、この季節は既に外が寒いので、18度であっても寒いとは思わなかった。これが夏だったら結構寒く感じていただろう。
館内をひととおり見たので、外のストーンヘンジを見に行く。
天文台の玄関には、「熊鈴 お貸しします」という箱が置いてあった。中には鈴が入っておらずすべて貸し出し中だったようだが、このあたりは熊がでるのか。
天文台という性質上、夜にこの施設周辺を歩く事もあるだろう。そういう時、熊鈴があれば一安心というわけだな。
屋外から天文台施設を見ていると、メインの建物の脇になにやらゆがんだバウムクーヘンのようなものが。
館内地図で調べてみたら、あそこは個人が天体望遠鏡を持ち込んだりして観測できるスペースになっているようだ。そうか、ご自慢の望遠鏡をここで存分にお楽しみください!ということができるのか。天体マニアにはたまらん施設だな、ここは。
天文台の受付脇には、売店も完備。
ポストカード、星座早見表、キーホルダー、写真集と品そろえ豊富。宇宙食なんかも売っていた。
連れは非常にうれしそうに、でもどれか一つに決めきれなくて困った顔しながらポストカードを選んでいた。
「ポストカード、買って帰るん?」
「うん、いいのがあったら買いますよ」
「別にここで買わなくても、どこでも売ってそうなものだけどなあ」
「いやいやいや、ここで買わないと」
そんなものか。
天文台を後にする。延々とまた遊歩道を下り、水星、金星、地球、火星、木星・・・と距離が伸びていく。そして、最後駐車場に着いたら、そこには冥王星があった。冥王星遠すぎ。水星と金星なんて数メートルしか離れていないのに、海王星から冥王星までの間は100mくらいあったんじゃないか?
「そりゃ太陽系の惑星から除名されるわなあ」
勝手に納得する。
駐車場にあった天文台のご案内。
行きの際は時間がなくて慌てていたので、これは見ていなかった。
見ると、遊歩道は全長600mあったそうだ。ここを駆け上ったのだから、よく頑張ったものだ。
一方、施設関係者が利用する林道は900m。車で移動できる分、道がなだらかな反面距離が長くなっている。「ベビーカーを押しながらでもお越しいただけます」だって。林道とはいえ山道を900m、ベビーカーを押すのは結構難儀だと思う。
なんでこんなへんぴなところに駐車場を作ったのかというと、夜間の観測中に車のライトが映り込んだらよくないから、という理由があるらしい。なるほど、利便性より観測最優先というわけだったのか。
これにて一泊二日の旅は終わり。最初は紅葉を見て、最後は天文台を見るという一貫性がない旅行だったが、いやでも普通旅行ってそんなもんでしょ。「○○づくし」な旅行ってそんなにないと思うんですけどどうですかねお客さん!
いずれにせよ、紅葉はこれ以上ないくらいきれいなものを見られたし、温泉はとても良かった。天文台は未知との遭遇で天体観測の素人でも十分に楽しめた。よい旅だったと思う。群馬界隈の旅行を考えている方は、この旅行記が参考になれば幸い。
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