おもてなし三昧な世界【台湾南部滞在】

台灣紀行初日。

14時成田発の便なので、比較的ゆったりとした朝となった。その時間がちょっともったいない気がするが、荷物のパッキングに十分時間をかけられたのが良かった。また、お金をケチって、京成スカイライナーではなく京成特急で行けたのもコスト削減の観点で大変によろしゅうございました。

ただ、その代わりに事前出費も結構あった。前日午後、デパートに出かけてお土産の購入に余念が無かったからだ。現地では皆様にお世話になりっぱなし状態なので、手土産をそれぞれの方に持参しないと示しがつかない。えーと、あの人と、あの人と・・・と買っていくと、結構なボリュームと金額になった。

こういう時、「どれくらいのお土産を持参すれば良いのか?」という相場がわからない。そもそも、あれだけ人が良い台灣の人のことだ、謝礼という概念が無いかもしれない。「困った時はお互い様でしょ?」なんて感じで。十分それはあり得る。

だとしたら、あまり高額なものを持っていったらいけないだろう。かといって、安いものを持っていってこちらが無礼者だと恥をかくのもイヤだ。数多ある土産物店の前で悶絶。

さらに、「やはり『ワタシ日本から来マシタ』っていう風情のお菓子じゃなくちゃな」と条件を絞ると、大層困るのだった。

デパ地下を見渡すと、「いかにも日本」なお店で目に付くのは、佃煮や漬物を売っているお店。・・・台灣の人、絶対にこれは口に合わないだろうな。コンパクトだし、軽いし、美味いのだがお土産には向かないだろう。台灣の人は、日本人よりも薄味嗜好だ。

台灣人と食事をしていて気がつくのだが、彼らは「ご飯」を食事の中ではあまり重視していない。恐らく野菜などが豊かに採れる土壌だからなのだろう。日本人のように、「塩辛い料理少々で、ご飯を丼いっぱい食らう」という発想は皆無だ。それを考えると、日本ってある意味貧乏な国なんだな。そんなわけで、台灣の人は大抵「日本の料理は塩辛い」とコメントする。そりゃそうだ、白米をどれだけ効率よく食べられるか、が重要なんだから塩辛いことは正義だったんだ。

あと、「いかにも日本風な手土産」となると、なんといっても和菓子だ。

しかし、熱帯圏に行く上に、お土産を渡すまで数日間常温保存になる場合もあるので、これは現実的ではない。腐ったものを贈ると、末代まで恥さらしだ。

ならば落雁、とも思ったが、輸送中の衝撃でぱっかり割れたり、「開封してみたら単なる粉砂糖になっていました」状態だったら情けない。これも却下。

結局、「日本はこれから春です」ということで、桜の花をあしらった煎餅や饅頭といったものを選択しておいた。日本の国花だし。ちなみに台灣の国の花は梅。

あと、それだけでは足りないので、他の方々には「鳩サブレ」を一箱ずつ。日本風ではないが、れっきとした日本を代表するお土産の一つだ。きっとこのかわいらしい風貌は気に入って貰えるだろう。

そんなものを会う人分全部買ったら、とてもじゃないがスーツケースに荷物が収まらなくなってしまった。結局、まるで「外国からお土産たくさん買って帰国しました」状態で、別の大きな袋を用意する羽目になった。出国時にこれだけの荷物を抱え込んだのは初めてだ。

そもそも、お土産の中にはワンちゃん1匹、猫ちゃん2匹分の餌まで入っている念の入れようだ。こういうところまで土産を用意する「心配り」で、台灣の「おもてなし」に対抗だ。

ただし愛玩動物の餌を買う際には注意が必要。成分表を見ると、「生産国:中国」というのがたくさんあるからだ。日本土産で中国産というのはあんまりだ。そこで注意深く「国産」だけを選択した。

あと、人間様が食べるわけではないので、美味いかまずいかなんてのは飼い主には判断がつかない。しかし、飼い主には「もらってうれしい贈り物」と認識されないといけない。だから、パッケージに、わかりやすい「有り難そうな漢字」が使われているものを敢えて選んでおいた。「国産」もそうだし、猫の土産である猫缶の名前は「金缶」。その他いろいろ気を配った。

本当は、猫用にはマタタビを買ってみようかと思っていた。しかし、値段が高くて人間様の土産(鳩サブレ)よりも高額になりそうなので却下。あと、加工品ではない植物なので、検疫に引っかかる恐れがあったのでやめた。

なお、日本から台灣へは肉、植物といったものの加工品持ち込みは比較的認められているが、その逆は大変に厳しい。仮に台灣でキャットフードを買っても、日本には持ち込めない。要注意だ。

今回自動車を運転するので、海外旅行保険に加入することにした。今はネットで加入できるので便利だ。しかも、各社の条件と値段を比較できるし。それにしても東京海上日動、男らしい強気な価格設定でぶっちぎっております。条件面や緊急時の対応がその分良いのかもしれない。しかし、比較サイトでぱっと見る限り、誰も選ばないであろう孤高の価格で日夜奮闘中。

保障対象について調べてみたのだが、どの保険会社も「自動車運転時の事故」については見事に対象外としていた。全社、一律横並びでそうだ。やはり、「やってもうた」時の被害額が他のトラブルとは桁違いになるし、事後処理がくそ面倒くさいので面倒見切れないのだろう。

結局、海外旅行保険については、手持ちのクレジットカードに付帯しているもので我慢することにした。これはこれで使い勝手あまりよくないんだけどなあ。まあ、仕方がない。

成田空港第一ターミナル

成田空港第一ターミナル南ウィング。

前回約2年前に台灣に行った時以来だ。スターアライアンスのたまり場としてほぼ占拠してしまっているのが凄い。

で、電車の駅からエスカレーターで出発ロビー階まで登っていき、南ウィングに着くとそこはファーストクラス専用のカウンターが並ぶ。その次がビジネスクラス、そして随分歩かされてエコノミークラスのカウンターだ。一般的な空港の「航空会社別にブースが分かれている」作りではないのが面白い。

カウンターの列はAからKまであるのだが、JとKはツアー旅行用のカウンターになっている。チケット当日渡しになっているツアー客用に、旅行代理店がブースを開設する場所だ。

で、おかでんが今回乗るエバー航空は「I」。すなわち、航空会社カウンターの中では最果ての地にあるのだった。遠い、遠い。エバー航空は全日空とコードシェア便を飛ばしてはいるが、スターアライアンスには属していない。その結果、「お前あっち行け」状態でIカウンターに居を構えているのだろう。とっととスターアライアンスに入ればいいのに。何か政治的な問題があるんかねえ?

台灣で国際便を飛ばしている航空会社の二大巨頭は「チャイナエアライン(中華航空)」と「エバーエアー(長榮航空)」の2社。ちょうど日本における「日航」と「全日空」に似た関係で、チャイナエアは昔の日航のように半国営的な民間企業だ。もっぱら国民党との繋がりが強いと言われている。対してエバーは世界的な海運企業「エバーグリーン」でおなじみのエバーグループの航空部門であり、民進党系と言われる。航空会社にも政治色が出ているのがちょっと興味深い。

エバー航空のチェックインカウンター

エバー航空のチェックインカウンターには、大きく「台北」の文字があって目立つ。文字が緑色なあたり、エバーのコーポレートカラーというわけか。

チェックインする時、グランドスタッフに「ニイハオ」くらいは言った方が良いのかしら、と思ったのだが、搭乗までに関わったスタッフは全て日本人だった。というか、ANAの職員だった。

ANAは「成田から1日4便」成田から台北に飛行機を飛ばしている。しかし実際は4便全てエバーとのコードシェア便となっている。ドル箱路線だったら独自機材で単独飛行するのだろうが、全便コードシェアとはどういうことだろう。あんまり儲かっていないのだろうか?

前日にwebサイトでチェックインを済ませておいたので、手続きは簡単。2次元バーコードをプリントアウトしたものを出せば、あっという間に終わる。グランドスタッフがパスポート番号をPCに入力したりあれこれする手間が省けてよろしい。

一般的に「海外旅行の際は空港に2時間前に到着すること」と言われる。しかし、今やE-チェックインによって「1時間前でもOK」な時代になったのですよ。これ、知らなかった。事前搭乗登録って、国内線だけの話かと思ってたよ。(もちろん、直前チェックインによるトラブルはオウンリスクなので、早く着くのに越したことはない)

もちろん、事前座席指定もできた。まあ、国内線でできるんだから、国際線でできて当たり前ではある。しかし、エバー航空の当該サイトを発見したときは思わず「おお」と感嘆の声を上げてしまった。

ただし問題有り。エバー航空、さすがに日本語サイトを持っていて全く不自由を感じさせないところがありがたい。ところが、座席指定画面になると、画面が崩れるのだった。恐らく、座席をGIF画像のアイコンで表示しているのだろうが、そのGIFが全く表示されない。その結果、なんだかわからない四角いブロックがずらりと並ぶ意味不明なページになっているのだった。

ええと、ブロックの数だけ数えていくと・・・おい、横に15席くらいあることになるぞ。ありえんだろ、それ。5-5-5の配置か?現実的には、3-5-3が限界だろ。一体どんな機材を使うつもりだ。

当然、画面上部には「ABC・・・」とアルファベットが振られ、縦列には列番号の数字が記載されている。しかし、そのABC・・・もところどころ欠番がある。何か縁起の悪いアルファベットは削除したか?

ためしに「ぽちっとな」と適当なところを押してみる。・・・反応がない。どうやら既に指定されている席のようだ。

「じゃあこっちはどうだ」。一番窓側を押してみる。ここも反応が無い。どうやら壁のようだ。おい、壁かよ。

モグラたたきゲームのように押していたら、エコノミーシート最前列で窓側、20列A席の指定がとれた。結果オーライだ。

やはりE-チェックインはあまり普及していないようだ。今なら窓際席、しかも前列を取りたい放題だぜ。

そんなわけで話は戻って成田空港エバー航空カウンター。グランドスタッフがこんなことを言ってきた。

「お客様がご指定されました20のAですが、こちらの方、窓がないお座席になってしまいますが如何なさいましょうか」

な、なんだってー。

壁のGIF画像が表示されなかったので、窓の有無までは全然気がつかなかったぜ。というか、飛行機の席には当然のように窓があると思っていたぜ。よく指摘してくださった、感謝だ。

「窓際で前の方でしたら、28のKでしたらお取りできますが」と言われたので、その言葉に従う。

かなり通いボーディングブリッジ

「搭乗ゲートは47番になります」と言われて、空港内の地図を貰った上で出国審査。47番ゲートって、第一ターミナル南ウィングの中で最も遠いところじゃないか。鉄道駅から最も遠いカウンターでチェックインし、そこから延々と歩いて手荷物検査場に行き、出国審査の後一番遠いゲートへ。何かの嫌がらせですか、これは。

貰った地図によると、出国審査場から47番ゲートまでは570m、徒歩13分だそうだ。空港内を歩いているだけで、体脂肪が燃焼してしまうぜ。

搭乗する機材が見えてきた

遠く彼方に、これからのるエバー航空の飛行機が見えてきた。えーと、羽田ではあまり見かけない機種のようですが、エアバス社製のA-330かな。ハローキティをデザインした、恥ずかしいことこの上ない「キティジェット」をちょっとだけ期待したのだが、違った。ちょっとだけ残念。

各国の観光ガイド本

手荷物を預けてあるので身軽になったので、歩くのに不自由はない。逆に歩くのは大いに歓迎だ。これからの数日間は食い地獄になりそうなので、今の内に運動しておかなければ。

とはいえ、大股で空港内を闊歩するのはやめておいた。手には、割れ物注意なお土産がある。どこかにぶつけて、鳩サブレの鳩の首が折れたりしたら何とも縁起が悪い。

47番ゲートへの道中のお店で、観光ガイドブックがずらりと並べられてあった。

成田に着いた時点でガイドを買うヤツなんているのかよ、と思うが、これだけ「どうだ!」と並べているところを見るとそこそこ売れているのだろう。海外出張の人が、「あ、そうだ、せっかくだから仕事の合間にちょっとだけ観光しようか・・・」なんて思って買うのかもしれない。

それにしても、我が台灣がないぞ。そんなに人気が無いのか?ハワイなんて、「ハワイ」版と「ホノルル」版の2冊もそろえているというのに。せめて台北の本くらいは置いてあげなよー。ニーズがないのかねえ。でも、「マレーシア」とか「ホーチミン」があるのだから、不思議だ。絶対ホーチミンよりも台北に行く人の方が多いだろ。

あと微妙に笑えるのが、「アメリカ」という本があったこと。あまりに広大な国すぎて、そんなものを一冊にまとめるのは相当無理があると思う。

円高進行中の為替レート

為替をやっているブースで、レートの確認をしておく。

昨秋から円高が急激に進行し、ユーロもドルもメロメロな状態なのは日々新聞で目にしている。しかし、NT$(ニュー台灣ドル。以降、元と表記)がどうなっているのかについては、さすがの日経でも報じていない。さてどうなっているかなと。

台灣ドルを探している途中、おかでんの個人資産の何割かがMMFで投資されているオーストラリアドルとニュージーランドドルの悲惨な姿を見てあらためて動揺。下落しすぎだ。

まあいい、忘れろ。

ええと、台灣ドル、あった。3.19だそうで。だから、例えば夜市の屋台でよくお目にする30元の魯肉飯だったら、約96円というわけだ。なるほど了解。

前回の訪台時(2007年07月)が4.23だったので、それから比べると25%も円高になっていることになる。今回は現地で相当お得に楽しめそうだ。

しかし、その「前回の訪台時」のレートを確認するため、その時の写真を引っ張り出してみたのだが・・・オーストラリアドルが117.31、ニュージーランドドルが105.81。ひどい、ひどすぎる。価値半減じゃないか。またもや動揺。

空水ペットボトル

47番ゲートのある第四サテライトまで、延々と歩く。

何しろ、あまりに遠いので第五サテライトからショートカット地下道があるくらいの場所だ。増改築を繰り返した温泉旅館と一緒だな。つぎはぎだらけで不便。

それにしても因果なものよ。

羽田空港第二ターミナルでANAの広島便に乗ろうとすると、多くの場合は増築された最果ての地、南ピアの60番台ゲートに回される。手荷物検査場から歩くこと10分は要する場所だ。何で国内も国外もこうなるのかね。まあ、たまたま運が悪かっただけだと思うが。

47番ゲートに向かう途中、ミネラルウォーターの自販機がぽつんと設置されてあった。曰く、「成田国際空港限定 空水」だそうで。

駅で売る弁当だから「駅弁」。だったら空港で弁当を売ったら「空便」だよね、と言われるようになって空便プチブームが来て早数年。今や、「空港で売る水=空水」の時代になったか。もう、なんでも有りだな。

それにしてもぶっさいくなマスコットキャラクターだ。これは何の動物をベースにしたのかさえ、わからない。選んだ奴と描いた奴出てこい。・・・いや、出てこなくても良いです。特に何も言うことはないので。

空港だからって舐めた商売してやがんなぁ、と思って値段を見たら500mlで140円。空港物価を考慮すると妥当な値段といえる。そして、「2008年モンド・セレクションで金賞受賞」という。へぇ。まさか、成田空港がある三里塚周辺の水を採取したわけではないだろうから、一体どこの水を使っているのだろう?

ちなみに、「モンド・セレクション」をWikipediaで調べてみたところ、

日本国内では近年急激に知名度を上げたが、国際的にはほとんど無名であり、その結果として、全世界からの審査対象品の5割が日本からの出品という異常な状態にある。さらに、日本から出品した食品の8割が何らかの賞を受賞している。

んだそうで。

とはいえ、認証は絶対評価によって決まるものであり、「日本だらけの出品」だからといってこの賞の格が下がるわけではない。ちなみに、「金賞」が最上位ではなく、その上に「特別金賞」があるので、要注意。

BR2197便に搭乗。

ネットブックを持ち歩いているので、機内でも文章を書いたり写真の整理をするのは万全だぜ。

とはいっても、離陸して高度が安定するまでは電子機器類が使えないので、ひたすら辛抱。国際線の場合、この「我慢時間」が結構長いので代替の暇つぶし手段が必要だ。こういうときのために雑誌は持参してある。結局最終的にはローテク頼りというわけだ。

台北便は機材が軽いために短いB滑走路を使うことになる。そのため、第一ターミナル目の前にあるA滑走路を使わない。おかげ様でゲートから離脱後、延々と空港敷地内観光をさせられる。しかも、あちこちに空港反対派の皆様のご厚意によって障害物があるため、飛行機は右へ左へと避けてトリッキーな動きをする。そして、傍らに見えるのは誘導路や滑走路のすぐ側まで迫る、無機質なコンクリートフェンス。もう成田はいいよ、高速鉄道作ったりして延命しないでいいからさっさと別の場所に移っちゃえよ、と真剣に思う。でも、「さっさと別の場所」に移動できないからこそこうしていまだに地元の方々との軋轢があるわけだが。

かくして、日本の国際空港は沈没の一途を辿り、各地方空港からは韓国の仁川国際空港へ飛んでそこをハブにして世界に行く、という構図がより一層鮮明になるのであった。まる。

それぞれの立場の人にはそれぞれの意見があるだろうから、用地接収問題については安易にコメントはだせない。ただ、経緯がどうあれ、結果である成田空港はダメじゃのう、というのは利用者の立場としては間違いないと思う。よく「都心へのアクセスが悪い」ということがやり玉に挙がるが、それ以前に空港そのものがダメじゃないスか。

まあいいや。年に二桁レベルで世界を行き来するビジネスマンならいい加減頭に来ても良いが、おかでんのような「数年に一度しか使いませーん」の人が何かを言う立場ではあるまい。

視線を機内に戻す。「K」という席だったので、まさか横16席・・・ということは、5-6-5というありえん座席配置・・・と思ったがさにあらず。そんな旅客機、世の中に存在しないぞ。結局、2-4-2の8列配置だった。

グランドスタッフが「20のAは窓がない席です」と言っていたが、ありゃ?20Aは窓があるんですけど。どうなってるんだ、一体。まあいいけど。

この旅行では行きも帰りも窓側の席だったが、ほとんど意味が無いね。お手洗いに行くなどの動作が不自由になる上に、成田空港のダメっぷりを延々と見るだけ。しかもずっと海の上を飛んでいくので、眼下の光景は全く楽しくない。

PANDA POWER 大貓熊魅力 横掃世界

さて座席にはエバー航空の雑誌が置いてあった。さすがにコードシェア便とはいえ、ANAの「翼の王国」は置いていない。雑誌の表紙は、パンダ。「PANDA POWER 大貓熊魅力 横掃世界」と題されている。

今、台灣はパンダブームだ。2009年の春節、つまりつい先日から台北市立動物園で初公開となっているからだ。かつて日本がそうであったように、パンダの愛嬌の前に庶民はひたすら弱い。そんなわけで、このエバー航空の機内誌もパンダの特集記事を組んでいるのだった。

日本ではつい1年ほど前、上野動物園のパンダが死んだために再度中国からパンダを貸してもらおうと福田首相が中国の温家宝首相と会談を持った事があった。その際、「中国のパンダ外交にみすみす乗るな」と国内では議論があった。それと同じ事が、台灣でも2006年にあったのだから興味深い。

そもそも「パンダを台灣に提供する」と言い出したのは中国側。2006年当時は台灣独立志向の強い民進党の陳水扁が総統を務めていたので、この申し出は受け入れられなかった。「一方的に何を発表しとんねんコラ、こっちは聞いてないぞ」と怒ったくらいだ。しかも、台灣に贈られるパンダ2頭の名前は中国の国民投票で決めるという事になり(要するに台灣の意向は無視)、ここでも中国優位の姿勢をこれでもかと見せつけられ、話がこじれる。

だめ押しに、台灣側が「パンダはワシントン条約に該当する絶滅危機種なので、双方の国の承諾が必要である。台灣としては認めていないので、台灣にパンダは無理」と言ったら、中国からは「だって中国と台灣って同じ国じゃん?国内移送は何ら問題ないんですが、何か?」と言われ、台灣(というか、独立派の人たち)激怒、と。

ただ一方で、親・大陸派である国民党はこのパンダを歓迎する意向を表明。当時台北市長だった馬英九は台北市営動物園にパンダ館を作ると総統府を無視して宣言しちゃった。で、その馬氏は2008年の総統選で総統に選ばれ、無事パンダ2頭は台灣に届けられた、というわけだ。パンダ2頭ごときでもの凄い駆け引きだ。

二匹は結局「団団」と「圓圓」と命名されている。写真に写っているのは多分団団の方。

春節の初公開時には整理券を2万2千枚配ったらしい。パンダフィーバーだ。ただ、その裏にはいろいろな思惑があるってことを知っている台灣国民(?←国民、と呼ぶのが妥当なのかどうかよくわからん)はあまりいないのではないか。

長榮寰宇佳人1
長榮寰宇佳人2

まあ、空港建設やらパンダ外交といったきな臭い話はここまでにしておこう。

パンダ雑誌の後ろには、なにやら怪しいものを発見。おい、ちょっと待て。パンダよりも萌えるものがあるぞ。

そこには、なにやら日本の漫画やアニメを意識したと思われる女の子の絵が。「長榮寰宇佳人」というタイトルがついている。要するに、エバー航空のスッチーさんフィギュア、というわけだ。

以前、ANAが「フィギュアコレクション」として初代~現行(9代目)キャビンアテンダントの制服を着た女性のフィギュアを発売したことがあったが、そのエバー版とでも言おうか。ただ、ANA版が「制服の移り変わり」でバリエーションを出したのに対し、エバー版は「機内でのお仕事別」でバリエーションを出しているのが特徴。役割にあわせて、4体のフィギュアが用意されているようだ。

髪の毛の色が、青かったり赤かったりするのは、明らかに日本の影響だな。ある程度アニメ耐性が頭の中にできていないと、こういう髪の毛の色は到底受け入れられない。現実には無い髪の色だからだ。しかし、それをすんなり受け入れている辺り、ああ日本のアニメは国境を越えた、とつくづく感慨深いものがある。

こんなマニアなネタが転がっているとは思いも寄らなかったが、全く知らなかった。帰国後、webでこの情報をさらってみたのだが(2009.03.01)、日本語サイトではヒットしなかった。いろいろ台灣のサイトを探ると、どうやら2009年に入ってから発売になったばかりのニューカマーらしい。

キティにしろこのフィギュアにしろ、なんてエバーはこっち方面を愛するのかね。うれしくなっちゃうじゃないか。

長榮寰宇佳人3

4体のうちトップを飾るのが、「専業體貼篇 Liz」。

Lizさん、っすか。イングリッシュネームなのね。イングリッシュネームに馴染みのない日本人からすると、ちょっと違和感。というか、せっかく台灣の航空会社なんだから、台灣風な名前にすればいいのに。

ところで「専業體貼」って何。「體貼」は思いやり、という意味なので、「思いやり専門家」ということか。そんな役割分担、CAにあったっけ?

フィギュアを見ると、非常出口のところに着席している。誰ですか、確かに思いやりのある目で前方を見ているようだが・・・?

ええと、解説によると「専業體貼的事務長」となっているので、要するにチーフパーサーということだ。いや、「要するに」とはいったが、実際意味を理解したのは英文の方だ。漢字見てもわからんよ、これは。漢文だと、「事務長Liz」の後に、「美麗高桃」「勇敢且精力旺盛」と記されている。後者は理解できるが、前者の「美麗高桃」ってなんだ。ヒップラインが美しいと言っているわけではあるまい?よくわからん。

【後注】後日、「蛙老師」さんからご指摘あり。これは「高桃」ではなく、「高挑」である、と。「背が高くてスリム」という意味になるそうです。なるほど!

他には、「時時刻刻掌握機艙內各個服務流程與突發狀況,確保旅客享有舒適安全的飛行旅程。」なんだそうで。うん、大体何が言いたいか理解できる。お仕事お疲れさまです。

長榮寰宇佳人4

次に登場するのは「熱誠大方篇 Zoe」。

気前が良い、という意味のようだがその正体は何?フィギュアでは、エプロン姿でギャレーの側に立っている。手にしているお盆の上には、せいろと大きな肉まん1個。こんな料理出さないだろ、と突っ込みつつも、なんだか良いです。

「熱誠大方,協助事務長指揮處理機內事務,規劃航班的服務流程,讓旅客有賓至如歸的感覺。」

だって。

その次は「微少用心篇 Abbey」。

この人もエプロンを身につけており、カートが横にある。

「微笑用心,負責餐點準備工作及客艙服務,烹調精緻的佳餚,滿足旅客的味蕾。」

と記述されているのが面白い。ぜひ僕の味蕾も満足させてください。

長榮寰宇佳人5

最後が「待客如親篇 Nicole」。

手に熊の人形を持っているのが特徴。しかも、ご丁寧に座席の上に立ち上がっている子供まで付随していて、シチュエーションとしては「子供にプレゼントをあげる」ようになっている。このエバーフィギュア、女性単体ではなく、ジオラマ風に周囲のシチュエーションまで含めた作りになっているのが面白い。

Nicoleさんの解説は、「待客如親,協助客艙服務與販售免稅品,用心對待每一位旅客。」

この4つのフィギュアは別々で売られているが、4つの床を合体させると一つの「飛行機内断面図」みたいなものができ上がる仕組みになっている。よく考えられている。

しかし、その分お値段は相当よろしいようで。1体、NT$570。1,700円以上するということだ。すっげえ高い、としか言いようがない。しかも、残念なことに原画の萌えっぷりが若干クオリティ低く、そのせいでかフィギュアもそそらない。コンセプトは良いのだが、まだまだ「萌え」と「マニア」の研究不足の感が否めない。惜しい。ほっそい二本足で直立しているなど、フィギュアとしては良いと思うので、次回Ver.2に登場に期待したい。・・・いや、おかでんは買わないですけどね。

スター・ギャラリー
スカイ・コンパス

高度が安定したところで、電子機器類の使用がOKとなった。

まずは、自分の前の座席にある液晶モニタに自分の飛行位置を示す画面を表示させることにした。エバー航空の場合、「スター・ギャラリー」という機内総合エンターテイメントアプリケーションの一つの機能として、飛行位置表示の「スカイ・コンパス」機能がある。

座席肘掛けから引っ張り出す事ができる、ゲーム機のコントローラと電話機を足して二で割ったような操作機でマウスポインタを操作する。少々操作がしづらい。

ビデオ・オン・デマンド方式の映画や音楽が楽しめる他、メールも送ることができるというすぐれものだ。上級席になるとこれがコントローラ操作ではなくタッチパネルになるらしいし、ヘッドフォンはノイズキャンセリング機能付きとなる。ええのう。でもそれだけのために高いお金を払う気にはなれないが。

スカイ・コンパスで地図を表示する。中途半端に成田~台北間は距離が近いので、地図の倍率設定がちょっとだけ面倒だった。「日本海」と表記されるべきところに「東海」と書いてあるという大層香ばしい噂を耳にしていたので、どんなものかと思ったが何も表記は無し。

その代わり、敢えて変なところを挙げるとすれば、何でかこの地図に表示される日本の代表的地名が、「前橋」「甲府」「大津」などだということだ。そのかわりに日本有数の都市である「大阪」がない。どういう基準なんだ、これ。

エバー航空機内食(台北便)

早速ネットブックを取り出して文章書いたり写真の整理をしようと思ったのだが、まあ待て、国際線には機内食がある。機内食のトレイがテーブルを占拠している間は、PC操作は無理だ。しばし待機。

海外旅行経験に乏しいおかでんにとっては、機内食というのは「非日常的空間」の幕開けとも言える楽しいひとときだ。何が出てくるのだろう、とわくわくさせられる。実際のところはそんな大層なものが出るわけじゃあないのだが、航空会社によって機内食の雰囲気が全然違うので興味津々だ。

ギャレーで準備が進められている間、前の座席のポケットからメニューを探す。・・・無い。どうやらメニューは配っていないらしい。短距離路線だし、コスト削減というわけか。勿体ぶってメニューを用意するまでもないでしょ、ということかな。

お隣に坐っていた女性には、真っ先に機内食が届けられていた。おや、特別食か。機内食のオンライン予約はビジネスクラス以上だと可能だと認識していたが、アレルギーや宗教などの理由があればきっと融通が利くのだな。

じろじろ料理をのぞき込むわけにはいかないので、どんな料理なのかまでは確認できなかった。しかし、ぱっと見た限り、根野菜やがんもどき?などの煮物料理のように見えた。ベジタリアンだろうか。特に台灣の場合、宗教上の理由で肉を食べない人向けの料理「素食」の店が結構ある。そういう人だったのかもしれない。

お隣の方があらかた食べ終わった頃になって、自分のところにも料理を積んだカートがやってきた。さあ、どう来る?大抵機内食は2種類からの選択となるわけだが、今回はメニューが無いので事前に検討ができない。

「チキンorシーフード?」

キャビンアテンダントさんから聞かれる。やっぱり名前はAbbeyさん・・・なわけ、ないよな。

あ、選択肢は鶏肉と海鮮でしたか。ええと、シーフード、ください。

メインディッシュ容器の上にかぶせられているアルミホイルの色で、チキンとシーフードを区別していた。シーフードだと金色、チキンだと銀色。

で、手元に届けられたのがこちら。

機内食アップ1
機内食アップ2

えーとですね、事前にご了承願いたいんですが、これからの5日間、たくさんの料理が登場します。でも味、全然覚えてません。あまりにいろいろな事がありすぎて、おかでんの記憶容量から溢れてしまいました。具が何だったか、なんていう事も聞かないでお願い。

シーフード皿には、海老や貝などをトマトソースで煮込み、黒オリーブが乗っているというイタリアンな一品。大きなカボチャが添えられているのが色合いとしてよろしい。そして、ご飯。「ご飯があるけど、ご飯を食べない人用にパンもあります」という、日本人からしたら「主食が二品?」というありがちな機内食ではない。黙って米食え、と。なんかエバー航空とは仲良くなれそうな気がする、ボク。

そして、気になるのが蕎麦と、えーと、これはうどん?多分うどんという解釈で良いと思われる麺。機内食で蕎麦や茶蕎麦が出てくる機会、多いような気がするけど気のせいか?そんなに日本人、蕎麦好きか?台灣の人、蕎麦なんて食べないだろ。メニュー開発スタッフに聞いてみたい、なぜここに蕎麦なのか、と。きっといろいろ理由があって、相当に面白い話が聞けそうなのだが・・・。

ちなみに上級クラスで、事前ネット予約をしておけば鼎泰豊の海老ワンタン麺だとか担仔麺、客家料理といった台灣ならではの料理を食べる事が可能(出発便限定)。また、便によってはファーストクラスにサラダバーが用意されているというのだから驚いた。サービスを競い合ってるねえ。

醤油、わさび、きざみ海苔

台灣も麺をよく食べる国だ。ひょっとしたらこの目の前にある蕎麦らしきもの、うどんらしきものは日本の麺ではないかもしれない。

そう思って傍らのカップを見たら、ちゃんと醤油、わさび、きざみ海苔が。やっぱり日本料理でしたか。

ちなみに醤油には「NOODLE SAUCE」の字が。「醤油」と書けばいいじゃん、と思うが、それでは理解できない非・漢字文化圏の人がいることを考慮して英字にしたのかもしれない。そのわりには「きざみ海苔」はそのまんまだな。これ、どうやって使うのか理解できない人が結構いるんじゃないのか?大丈夫か?そもそも食べ物と気付いて貰えるかどうか。まあ、SUSHIが世界中で食べられている現代だと、「何だこの黒い気持ち悪い紙切れは」と言われることはもうないか。

ちなみにわさびのパッケージには「OROSHI WASABI」と記載されていた。

本当はこれらのつゆと薬味類は、そのまま麺にかける「ぶっかけスタイル」で食べるべきだった。しかし、このようにカップの中にご丁寧に納まっているので、ついうっかりつゆをカップに入れて、蕎麦猪口に見立てて食べてしまった。機内に響く、「ずずずずっ」という蕎麦を手繰る音。ちょっと違和感あり。

食後、「お茶もしくはコーヒーはいかがですか」とCAさんがやってきたとき、「お茶ください」と言ったら、めんつゆが入っているカップを見て「ちょっと待っててくださいね、そのカップでは使えませんから」と言われてようやく己の間違いに気がついた。うわ、恥ずかしい。

いちごのケーキ
うさちゃんリンゴ

デザートに、いちごのケーキとりんご。りんごはただ切っただけでなく、皮に細工を施した一手間で好印象。あと、この手のりんごはアクがでないようにするために塩水につけることがあるが、そうするとしょっぱいりんごになってしまう。その点このりんごは全く問題なしでおいしく頂きました。

ただ、理解ができんのですよ。なぜにデザートが二品も?

おかでんはそもそも間食を全くしないし、デザートも一切食べない。果物を食べる機会なんて、実家に帰った時くらいだ。だから単に無知なのかもしれないが、それにしてもフルーツとケーキの組合せはなんだか不思議。

後でFishにこの点を聞いてみたら、「ケーキとフルーツは全然別ものだよー」とあっさり言われた。そういうものなのか。

そういえば、台灣滞在中、Fishのお母さんが「今晩の私の夕食はこれよ」と食事を見せてくれたのだが、その中にフルーツが占める割合は1/3くらいだった。どうやらフルーツは野菜と同じ感覚らしい。

「残さず食べるのが礼儀」と育てられ、いまだにその信念を曲げずに、どんなまずい料理でも全部食べるおかでん。今回の機内食はとてもおいしく、満足のいくものだったが、ケーキとりんごを中心として1/3程は残した。最近体重が増え気味で困っているというのがその真相だが、単にダイエットしたいから機内食を残したわけではない。この後、士林夜市に行って台灣小吃をあれこれ食べまくろうと画策しているからだ。限られた胃袋の容量と、体重増の許容範囲。それらを考えると、ここで全てを食べ尽くすわけにはいかんのだった。すまん、残す。

機内食と一緒に一番絞り

機内食と言えば、忘れちゃいけませんドリンクサービス。

料理のカートの後から、ドリンクを積んだカートが遅れてやってきた。さすがに昼便ということもあって、皆さんあまりアルコールには手を伸ばしていないようだ。オレンジジュースやお茶といったニーズが高い様子。

とはいえ、選択肢にビールがある限り、おかでんはビール道を一人邁進するのであります。

せっかくだから、中国語(北京語)でオーダーしてみることにした。この後数日間、台灣の人たちに取り囲まれての生活だ。今の内に実践しておかないと。今、ここだったら失敗しても大丈夫だ。少しでも中国語を覚えておきたい。

早速電子辞書を取り出し、ビールをオーダーする言葉を探す。あった。

ビールを一本ください→請給我一瓶啤酒(ちん げい うお いー びん ぴー ちう)

早速、ヘッドフォンを電子辞書に取り付け、発音を確認してみる。カタカナで書かれている日本語風読み方をそのまま棒読みにしても、相手には全く通じないからだ。中国語は複雑な音程変化がある言語なので、ナマの音を聴いて勉強するしか、コミュニケーションは無理だ。

で、再生ボタンをぽちっとな。

その途端、悲劇は起きた。

靜かな機内に響き渡る、「ちんげいいうぉー いーびん ぴいーちぅ」の言葉。うわっ、ヘッドフォンしてるのに。

迂闊だった、この電子辞書、ヘッドフォンを装着した時点で内蔵スピーカからヘッドフォン出力に自動切り替えされる機能は無いのだった。スイッチ操作で音声出力を切り替えるタイプだ。それに気がつかなかったので、機内に音声が響いてしまったのだった。

は、恥ずかしい・・・。

できることなら、このまま飛行機からダイブしたい気分になってしまった。

あまりに情けなかったので、ドリンクカートがやってきた時には小さな声で、「び、ビアープリーズ」となぜか英語に。中国語は何処へ行った。

それで出てきた啤酒が日本製の一番搾りだったのだから、なんだか微妙。

エバー航空のスナック

食事のトレイをCAさんが下げたあとしばらくしたら、乗客それぞれにスナック菓子が配られた。食後すぐにスナックを食べる気にはなれないし、もう到着まであまり時間がない事を考えると、正直言っていらん。

せっかくなので貰っておいたが、後でFishに「お土産」といって渡しておいた。

多分、この辺りの感覚は日本人乗客と台灣人乗客によって違うんだろうな。

日本人=観光客なわけであり、さあ入国後は美味いもん腹いっぱい食べるぞ、というやる気満々の戦闘モードだ。ここで胃袋に余計なものを入れるわけにはいかん。

しかし、台灣人となると、「家に戻る途中」なわけであり、ここで腹いっぱいになっておけば夕食が省けていいや、くらいの認識だろう。

しかし、飲み物がないからなあ。ぽりぽり食べると、喉が渇くよ。CAさんを呼んで飲み物をリクエストすれば良いだけなんだけど。

路線/航空会社によっては、やたらとアルコール類を勧めてくる場合があるが、このエバー航空台北便ではそのようなことはなし。何せ、飛行時間が短いから。

以前シンガポール航空に乗ったときは、隣の客が泥酔するまで飲んでいたのを思い出した。

高鐵桃園站行きの直通バス。今回は利用していない

ほぼ定刻で台灣桃園國際機場第二ターミナルに到着。

入国審査で長い行列を作り、ようやく通過。どこの国際空港でもそうだが、外国人の入国審査待ち行列はかなり長い。もっと需要と供給を想定して人員配置しろよ、と思うが、こればっかりは仕方がないのだろう。なにせ、飛行機が一機到着しただけで、数百人がどかっとなだれ込んでくるわけだから。

空港内でのあれこれについては、今更書くことはないので省略。2回目の空港だから。

到着ロビーを出たところにあるATMで、クレジットカードのキャッシングにて現地通貨を入手。とりあえず6,000元を手にした。高雄への新幹線往復はカード払いができるので、あとは1日1,000元の食事x5日+交通費他諸雑費1,000元、というざっくりとした計算だ。もし足りなくなっても、最終日前夜は高雄滞在なのでATMに不自由はない。何しろ、台灣はセブン・イレブンがアホみたいに乱立している国だ。セブン・イレブンの中にはATMだってある(田舎の店まであるのかどうかは知らないが)。何ら困らない。

さて、台北市街へはバスで1時間だ。台灣高速鐵路ができたおかげで、空港からしばらく先にある「高鐵桃園站」までバスで移動→高鐵で台北、という選択肢もできた。とはいえ、乗り換えの手間やコストを考えると、やはりバス一本で行ける方が良い。

台北行きのバス
トランクに荷物を詰める

前回、國光客運のバスで台北車站まで行ったのだが、他社のバスと比べてボロかったという印象が強く残っている。他社のは、新しくて南国風なカラフルボディでちょっと羨ましかった。できれば別の路線で行きたいのだが・・・。

しばらく調べてみたが、台北車站にまっしぐらに行ってくれるのは國光號しかなかった。カッチョいいバスは、ぜんぜん違う方向に行くものだったり、台北市内の主要ホテルにいちいち立ち寄りながらの路線で大回り著しい。仕方がない、今回もお世話になります。

チケット料金は125元で2年前と変わらず。クレジット払いもOKなのだが、こんな安い値段でクレジットはちょっと可哀想な気もする。

面倒なので、英語で「台北車站まで大人一枚」とオーダーし、発券してもらった。

しばらく待っていると、國光號がやってきた。

早速荷物を車体横のトランクに入れようとすると、職員さんに呼び止められた。何を言ってるのかと思ったら、「アナタはどこまで行くのか?」と言っている。ああ、トランクは全部で3箇所あるのだが、下車站によって入れる場所が違うのだな。「台北車站だ」と答えたら、「ならそこじゃない、こっちだ」と詰め替え直してくれた。

台北行きバスの手荷物預け表

飛行機の荷物預かり同様、荷物にシールを貼られ、その半券を渡される。いわゆるバゲッジタグだが、漢字にすると「行李證」になるのだな。

乗車券の半券

そして、乗車時に係員さんにチケットをもぎられるのだが、相変わらず手でびりっとちぎる強引さ。ああ台灣に来たな、と実感する瞬間だ。日本人のセンスだったら、こういうのは生理的に受け付けないだろう。絶対、チケットにミシン目を入れる。入れなけりゃ気が済まないと思う。

いや、台灣の人ががさつであり、日本人の方が素晴らしいと言いたいわけではない。こういう「手でちぎるだけ」というのも有りだなあ、と感心してしまう。何よりも、コストがかからないからだ。ミシン目が入った紙を発行する機械を作り、ミシン目の入った紙を作り、というコストは馬鹿にならない。でも、我慢できずにそういうところにお金をかけちゃうのが、日本人の日本人たる所以だ。

車内のテレビ

旅慣れていない人故、空港到着後に携帯電話の電源を入れてしばらくしたらdocomoから「アンタ海外にいるでしょ。日本に電話するときは+81かけてねー」というメールが送られてきて「おお」と唸る。毎度の定番行事だ。

そして、携帯の画面に表示されている現在時刻が、現地時刻と日本時間の両方表示に切り替わる。画面の左上には「CHT」の文字。

この「CHT」の文字、前回台灣訪問時の記事では「チャイニーズ・タイペイの略だろう」と勝手に推測していたが、ごめんなさいうそでした。これ、docomoとローミングで提携している現地キャリアの名前だった。Chunghwa Telecom、漢字で書くと「中華電信」。

考えてみりゃそりゃそうだわ、国際競技大会でもない限り、「チャイニーズ・タイペイ」なんて表記は使うわけないよな。

この勘違いに気がついたのは翌日になってからのことだった。恆春滞在中はTWM、高雄ではVIBOとくるくるとキャリアが変わっていった。途中、FETというのも隠れキャラとして登場したな。通話エリアの関係で適時接続先を切り替えているらしい。

ただ、携帯の電源を入れてから2時間くらいまではしばらく状態が安定しなかった。キャリアがころころ変わるし、それに伴って現地時刻も変わる。台灣と日本の時差は1時間なのだが、日本と同じ時間を表示している時もあった。さすがにこれをバスの中で見たときは肝を冷やした。やばい、気がついたらスゲー予定時刻をオーバーしているではないか、と。このままだと予約を入れている整体にも間に合わないし、夜市で待ち合わせをしているJennyにも間に合わない。

背中に冷や汗をかいた後、ようやくデジカメその他の電子機器類で現時刻を確認できたので誤表示とわかり、落ち着いた。そういえばこのバス、時計がついていないな。ついているのかもしれないが、目の前には誰がみるんだこのテレビ、というのがでっかくぶら下がっていたので前方視界ゼロ。

ドレス屋が立ち並ぶエリア

日本よりも西の国だし、緯度が南だし、日没は遅いだろうと思っていたのだが18時を過ぎると暗くなってしまった。車窓からの風景がいまいち面白くない。

途中、高速道路の料金所を通過する際にETCレーンが増えているのを見て「おー」と思ったくらいだ。2年間には、1レーンしか無かったのだが。

すぐ後ろの席では、女の子が電話で誰かと会話している。中国語で「もしもし」は「喂(うぇい)」と言うのだが、発音が強めなので、日本人からすると「何だ?」と言われているような威圧感を覚える。しかしこの女の子は、舌っ足らずな上に萌え声優系の声で、「うぇーい?」と言うので、ちょっと心がときめいたですよ、わたくし。

その後は何を語っているのかよく分からなかったのだが、ホテルがなんたら、とかしゃおちー(小吃)がなんとか、といっているのは分かった。恐らく現地の人と、ホテルに着いたら待ち合わせして何か美味いものを食べに行きましょう、と打ち合わせしているらしい。

そんなことはどうでもよくって、この人、時々会話の中で「はわはわ~」という言葉を織り込んでくる。これがまた、その声質のせいもあって大層和むのでありました。一体どういう意味だろう、「はわはわ~」ってのは。

翌日Fishにこの話をして、意味を聞いてみたら「北京語で『OK、OK』という意味だよ」と教えてくれた。また、その声に萌えた、と正直に告白したらFishにペットボトルで頭をポコンと叩かれた。

萌え声の女性がその電話を切った後、隣に坐っている男性と会話をはじめたとき、耳を疑った。

「スイカのチャージがなくなっちゃったから、お金を入れておかなくちゃね・・・」

あれっ、日本語しゃべってる。台灣人じゃないのか。

で、相手をしている男性はどうやら日本語しかしゃべることができないっぽい雰囲気。

そこで何となく分かった。ははーん、日本人の旦那と、台灣ハーフの娘さんのペアなんだな、と。で、先行して帰国していた台湾人奥さん(娘さんからしたらお母さん)と合流する時間などの相談をしていたんだなと。多分、声質から考えると小学3年生くらいだろうか。

勝手にプロファイリングしていたら、バスはMRT圓山站で停車し、後ろの二人は降りていった。その時見た娘さんの姿を見てびっくり。おい、20代後半じゃないか。

どうやったら20歳過ぎてもあの「はわはわ~」という萌える声が出せるのか。台灣人、マジパねぇっす。

そんな動揺がありつつも、バスは台北市街を進む。右側通行、左ハンドルの世界なのでよく見ておかないと。明後日は自分がハンドルを握る番だ。シミュレーションしておかなくては。

それにしても、なんとバイクが多い事よ。バイクだらけで、あぶねーことこの上ない。しかもそのバイク、二人乗りは当然であり、あとは己の度胸と技術で限界へと挑戦だ。5名乗せているのを見た、という例もあるそうだが、おかでんが現地で見た限りだと3名が最大だった。そんな危なっかしいのが、右へ左へ蛇行しながら、世界最速を競い合っている。車でもバイクでも、ちょっとでも隙を見せたら割り込まれる。食うか食われるか、の世界が路上では展開されているのだった。

これはいくらなんでもむちゃくちゃだ、と思ったのは、交差点にて。前方対向車線から左折しようとするバスが交差点中央に一台停まっていた(日本とは左右逆走行なので、交差点左折時に前方からの車を待機することになる)。そのバスを、右からも左からも挟み撃ちにして通りすぎていくわれわれの車ども。さすがにそれはやりすぎだ。

こんなのでよく事故が起きないな、と思う。日本人よりもはるかに運転テクニックが上なのかもしれない。しかし、観光客が知らないだけで、実際はアホみたいにたくさん事故が起きているはずだ。

圓山から國寶大飯店の間の道は、やたらとウェディングドレスを売っている店が多かった。台灣名物の「変身写真館」の類かと思ったがそうではなく、れっきとしたドレスの販売店のようだ。そんなにニーズがあるんだろうか?やっぱり、「一生に一度のものだから」という定番の殺し文句で、ついつい買ってしまうのだろうか。

このウェディングドレス屋の多くは、「法國」という表示があった。要するに、フランスということだ。どうやら、この手のドレスはフランスがおしゃれという位置づけらしい。

しばらく行くと、バイク屋だらけ。ここに限らず、台灣のいたるところにバイク販売、整備をする店がある。バイクの絶対数が多いから、当然といえば当然だ。

沖縄旅行の横断幕

そんな中に、「沖縄」という表示が見えたので思わずカメラを向けた。

ビルには東南旅行社、と記されているので、旅行代理店のようだ。「讓你在沖繩樂天!」というキャッチコピーが掲げられているが、意味が分かりそうでわからん。というか、さりげなく日本語には存在しない漢字をたくさんちりばめてるな。ええと、多分要約すれば「沖縄には楽しいことがいっぱい!」っていう雰囲気の言葉だと思う。

そりゃ沖縄は楽しい。良いところだ。とはいえ、日本人が持つ「日本最南端の県・沖縄」に対する憧憬とはちょっと違うと思う。何しろ、台灣より北だから。石垣島や西表島に至っては、台北と同緯度だぞ。「北国に行く楽しさ」があるわけでもないし、かといって南国の楽園なら自分の国の方が南だし、はてさて。

ただ、一番台北から行きやすい海外が沖縄、というのは間違いない。海外旅行初心者はぜひどうぞ、といった感じか。

ちなみに3泊4日の行程で13,900元。約4万円だ。諸経費込みでこの価格だったら、十分安いと思う。ただし、台灣における物価を考えたら、結構な高額ではあるが。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください