国光號はこちらの思惑通り、ほぼ19時に台北車站に到着した。
荷物を引きずりながら、まずはホテルに移動だ。チェックイン手続きをして、ホテル内の胡散臭いところをニヤニヤしながら写真撮影していたらあっという間に20時近く。20時からは整体で1時間。21時に開放されたら30分で捷運(MRT)剣潭站まで移動してJennyと合流だ。その後、士林夜市で食事。ホテルに帰着するのは日付が変わってしまいそうな予感。
で、翌朝は7時前には起床して、8時ちょうどの新幹線で南下開始。どう考えても強行軍の分刻みのスケジュールです、ありがとうございました。なんて忙しいんだ。
最初、Jennyから指定のあった合流方法は「9:30pm@Taipei station 北大門exit」というものだった。しかし、「地球の歩き方」やGoogle Mapを見てもこの「北大門」なるものが全く見つからない。地下街の出口番号ならわかるのだが・・・。ネットで調べたら、なんだかソウルの情報が引っかかって困る羽目に。
Jennyは「台北車站には4つの門があって、東西南北だ。だからわかりやすいよー」と言うが、地図上やネット上ではわからん。台北火車站は比較的シンプルな建造物なので、多分北側に行けば間違いないのだろう。しかし、不鮮明な状態で当日迷うのは困る。あと、21時30分に台北車站だったら、士林夜市に到着するのは22時頃になってしまう。台灣では夜更かし好きの人の事を「夜貓子(イェマオズ)」と言うが、Jennyは週明け早々から夜貓子になる気か。
結局、こちらから「出口檢票劍潭站的1號」にしてくれ、とお願いして、士林夜市最寄りのMRT駅を指定した。
メールのやりとりを英語と北京語のチャンポンでやっているうちはまだいいけど、実際会ったら何をどうやって話せば良いんだ。外国で、外国の人とのコミュニケーションをろくにとったことがないので、頭を抱えてしまう。
台北車站のバス降車場からふと目をやると、今日この後整体を受ける予定のビル(天成大飯店=ホテルコスモスの隣)に「泰式指油壓」という色鮮やかな看板が出ていた。「泰」というからには、あのタイ王国の事を指しているのは間違いない。どうやらタイ式マッサージ店のようだ。しかし、どうもオイルマッサージ系のようだぞ。「指油」という言葉が、なんだかすごくねっとり感を醸し出している。禿頭で脂ぎった親父がお店で出迎えてくれそうで、なんかイヤだ。
俗に言う「タイ古式マッサージ」では、通常オイルは使わないはずだ。指圧と、ストレッチが中心となる。どうも、微妙にこのお店はタイという国を勘違いしているっぽい。
タイ王国→プーケットをはじめとする、ビーチリゾートを想像→そういや、白人どもはオイルマッサージをリゾートホテル内でやってるなぁ、ええのぅ→タイのマッサージはオイルマッサージだ!
という曲解をした可能性有りだ。
台北車站隣接という好立地で、(多分)1時間600元=1,920円は安いと思う。※1元=3.2円で計算。以降同様。
ええのぅ。
台北にしばらく滞在する機会があれば、毎日でも整体やマッサージ屋に通いたい。まあもっとも、タイ本国に行ったら笑っちゃうくらいの激安でマッサージが受けられるんだが。上には上がある、台北なんてまだまだ高い方だ。
漢字がよく読めないのだが、烏来がどうしたこうした、と書かれている看板。
「原民特色伴手禮選抜」と書いてあるが、何だろう。
「烏来」と書いて「うーらい」と読む。東京近郊をうろちょろしていると、時々ビルの看板で見かける言葉だ。ただし、それは台湾式マッサージチェーンのものとして、だが。
烏来というのは地名であり、台北の南30キロほどのところにある観光地。原住民族である「タイヤル族」の言葉で「ウーライ」は「温泉」という意味になる。だから、この地は温泉がある。無料で入れる露天風呂があるので、水着持参の上ぜひどうぞ。
さてこのタイヤル族だが、二頭身のマスコットキャラクターが描かれているものの、絵柄がなんだか変だ。口の周りに網目が入っているからだ。何かの汚れかと思ったら、意図して描かれたものだ。これ、タイヤル族の人たちは入れ墨を入れる習慣があったというものを忠実に再現している。
タイヤル族が成人として認められるためには、首狩りをしなけりゃならん。他部族に襲撃をかけて、首を狩ってこそ一人前。その一人前の証が、顔の入れ墨ということになる。首狩り族なんて、アフリカかボルネオのジャングルの中くらいにしかいないと思ったら、案外身近なところにおりました。恐れ入りました。
しかも、その首狩り文化は台灣が日本統治になるまで続いていたというのだから、そんなに昔の話ではない。台灣統治を開始した当初の総統府は、山に住む原住民にいつ首を狩られるかと恐怖に感じていたに違いない。
ちなみに台灣には多数の原住民族が存在する。全人口の2%程度しかいないとはいえ、政府が認定しているだけでも14民族。他にも、「微妙」として原住民族認定されていない部族数は二桁も残されているというのだから驚きだ。いかに台灣という狭い島に、各民族がモザイク状に分かれて住んでいたかというのがよく分かる。
日本なんてその点強引だよな、坂上田村麻呂を征夷大将軍にして、わーっと蝦夷を北に追いやっちゃった。別方面でも、熊襲(くまそ)を撃退だ。台灣の原住民は「引きこもり」な性格なのか、温厚なのか、それともあまりに険峻な地形故に集落間で交流ができなかったのか?さすがに民俗学者ではないので、おかでんにはわからない。素人考えでは、時間の経過とともに混血していき融合すると思うのだが。
ただ一つ言えるのは、台灣の国土は狭いとはいえ、山は相当険しいぞ、ということだ。なにせ、富士山よりも高い玉山(ゆいしゃん)があるくらいだ。標高3,952mもある。富士山のように火山爆発の積み重ねで高くなっていた山ではないので、周囲は険しい山だらけ。日本アルプスのようだ。山登り好きなら「格好いい!一度登ってみたい!」とそそられる山だ。
なおこの玉山、日本では「新高山(ニイタカヤマ)」の名で有名。これは台灣が日本に組み込まれた際、日本の富士山よりも高い山ができたということで明治天皇が命名したもの。「新高の 山のふもとの 民草の 茂りまさると 聞くぞうれしき」という歌が残されている。こういった台灣への愛情がありながらも、今じゃその余韻が日台両方にあまり残っていないのは非常に残念。
話がずれたが、どうやらこの看板はタイヤル族の文化を伝えるイベントのようだ。
主催者の名前に、「行政院厳重民族委員會」だとか「臺北縣政府原住民族行政局」と記されているので、政府や地方自治体が積極的に原住民族の文化継承に力を入れている事がわかる。
地下街に潜る。忠孝西路一段を渡る横断歩道がないので、地下に潜らざるをえない。アップダウンがあってやや面倒。前回、夏に訪れた時は「おお、地下街は冷房が効いていて素晴らしい」と思ったものだが。
地下街は台北新世界と呼ばれ、数十店舗が軒を連ねている。そのうち、飲食店だけピックアップされた看板があったので、ついつい見入ってしまった。
どんな店があるのかと思って見てみたら、なんか半分くらいが日系企業もしくは日本料理店なんですが。
ミスタードーナツからはじまって、どら焼「大勝」、ラーメン店「飛騨高山」、団子など和菓子の「柿安口福堂」、回転寿司の「争鮮」、そして日本の駄菓子類を売る「富士站」。このうちのどれだけが台灣資本企業なのかはわからないが、それでも8店舗中6店が日本系ってどういうことだ。そりゃ「新世界」だな。
なお、台北火車站の2階には「微風広場(ブリーズセンター)」というフードコートがあり、いろいろな国の様々な料理が手軽に食べられるらしい。もちろん台灣庶民料理もある。「台灣の街中のお店はなんか日本人的感覚からすると不潔に感じる」などと心配がる方は、そちらを利用するとよろしいかと。
中華系の人って、大げさな表現を好むよなあ。「白髪三千丈」なんてのはその最たる例だ。
その流れは台灣でも同じで、この「台北新世界」の看板には「美食之最」だとか「珍饌美絶」なんて書かれている。おいしすぎておしっこ漏らしてしまいそうなタイトルだ。大丈夫か?公正取引委員会みたいなところに「不当に大げさな表現を使った」ってお叱り受けないのか?でも、これくらいの表現は、この国では当たり前なのだろう。
なお、「美食之最」と絶賛されている料理の一つであるミスタードーナツだが、台灣一号店ができたときは数時間待ちの大パニック大行列になったらしい。数年前、日本にクリスピー・クリーム・ドーナツが上陸した時と同じだ。
クリスピー(以下略)騒動が無ければ、ミスドに延々並ぶ台灣人に対して「たかがドーナツごときで・・・」と言えるが、日本人も似たようなもんだ。
そこでひらめくのが、「だったら日本のミスドで大量にドーナツを買い付けて、台灣の人へのお土産にすれば喜ばれるじゃん」ということだ。
しかしだ、1日くらいあのドーナツを放置してみ?油がにじんできて味が落ちる。その結果アナタの評判も落ちる。悪いことは言わないから、ドーナツはできたてを買って食え。
2008年、日本の映画業界を席巻した宮崎駿監督「崖の上のポニョ」。
いよいよ台灣でも1月23日封切りしたようで。春節直前ということで、「お正月映画」の位置づけになっている。
「崖上の波妞」という名前になっている。
「突破150億日幣」なんて書いて、煽っている。よくハリウッド映画が日本で封切られる時、「全米No.1興業収益達成」「この映画に全米が泣いた」なんて煽りを入れるのと一緒だ。
「人魚波妞遇上五歳男孩 夢想變成人」だって。日本語で直訳すると、「人魚のポニョは5歳の男の子。人間になることを夢見ています」となる。
中国語は、日本語のように「外来の言葉は何でもカタカナにしちゃえ」という言語ではない。一体、新しい言葉の漢字はどのようにして決められていくのだろうか?ちなみに、「波姐」は、日本語風に読むと「ぼぅにぅ」になる。
こういうのは現地人であるFishに聞いた方が早い。後日、「どうやって決まるの?」と聞いてみたら、「さあ?知らない」だって。おい、そんなもんなのか。新しい言葉が定着するまでは、マスコミごとに表記がバラバラで、時間の経過と共に人気投票状態で言葉が絞り込まれていくんじゃないかと想像するんだが・・・?
ポニョの場合、配給元がちゃんと中国語名を付けるところまでやっているので問題はないけど。
うは。
ポニョの次はキティちゃんが出てきたぞ。キティ、お前本当にどこにでもいるな。全国どこでも、では気が済まず、ついに台北までやってきたか。
エバー航空がらみかと思ったら、違う。MRTの1DayPassの広告だった。どうも、キティちゃんのキーホルダー付きパスポートが貰えるらしい。
この無表情猫、どさくさに紛れて台北を満喫してるぞ、おい。
「吃」というインスタント写真風の絵では、牛肉麺?麺線?の丼とキティちゃん。Huahsi Streetと書かれているので、要するに「華西街観光夜市」のことだ。
他にも、士林夜市でタピオカ入りジュース?を飲んでいたり(「喝」編)、台北101をバックにチャイナドレスを着ていたり(「玩」編)、パンダと記念撮影していたり(「樂」編)、いろいろある。
1デイパスを買うのは、大抵観光客だ。地元の人は、そんなにウロチョロはしない。日本人観光客目当てだろうか?
地上にあがる。そんなに古い地下街ではないだろうに、登りエスカレーターがないのは若干不親切ではある。
外に出ると、ちょうど電光掲示板で気温表示が出ていた。17度。ただし、1秒おきくらいに18度との間を行ったり来たりしており、大変にせわしない。センサーの感度と、表示間隔の調整をした方がいいぞ。そんなに詳細に気温を知りたい人、誰もいないから。1分に1回くらいの頻度で表示見直し、でも良いと思う。
17度。そこそこ温かい。Tシャツの上に薄手の長袖を着ていてちょうど良い程度。
本日のお宿、懷寧旅店は路地に少し入ったところにある。
最初はざっくりした地図しか見ていなかったため、大通りに面していると思っているので僅かに戸惑った。まあ、格安ホテルが大通りに面しているわけがないか。
懷寧街を歩くと、目の前に黄色い看板が目に入る。とても目立つ。これはNOVAといって、台北における秋葉原ビル的位置づけらしい。PCパーツや携帯関連商品が数フロアに渡って並んでいるという。ここ以外にも、周囲に数店舗あるとのこと。
時間があればこういうお店をじっくり見て回りたいところだ。台灣滞在は何日あっても足りないなあ。なお、PCパーツは台灣のOEMや自社ブランド商品が多い。だからさぞや安いだろう・・・と思ったら、そうでもないという情報。秋葉原が安すぎるんだって。
NOVAと道路を挟んだ向かい側は、飲食店がいっぱい建ち並ぶ。
あー、思い出した。以前ここにある素食の店で、ジーニアスと朝飯食ったなあ。急に思い出したよ。
NOVAのすぐ横に懷寧旅店があった。間口が狭い上に、すぐ隣が黄色い派手な看板なので、地味に見える。ビルは・・・NOVAと共有かな?台灣は「間口は狭いが奥は案外広いぜ」という店や建物が結構あるので、油断がならない。うっかり見逃してしまいそうだ。逆に日本は、間口の広さと奥行きというのは比較的比例関係にある建物が多いと思う。細長い建物は「ウナギの寝床」なんて言うくらいだ。それを言うと、台灣はウナギだらけになってしまう。
ホテルに入ってすぐ右手にネットができるPCがあるのを確認。ただ、こっちはそれどころじゃない。チェックインという大仕事が待っているからだ。
もちろん、無言で予約票とパスポートを出すだけで話は通じる。少し気を利かせるなら、「Check in,please.」と言えば世界何処でも通用する。しかし、ここは勉強しなくては。中国語でしゃべってこそ男ぞ。
台北車站までのバスの中で、ひたすら電子辞書の音を聞いていた。
「チェックインをお願いします」→「請办理住宿登記(ちんぱんりーじゅーすぅどんじぃ)」
他にも、いくつかチェックイン時にやりとりされるであろう言葉を何度も聞き返した。
短い言葉ではあるが、どうやっても覚えられなかった。中国語そのものの発声基礎を知らないので、耳で聞いた音を丸暗記するしかないからだ。しかも、その発音は日本語ではあり得ない音であり、それが余計暗記の妨げになる。
どうする、オレ。
「Check in,please.」
あ、逃げやがった。
結局、せっかくの機会だったのに中国語から完全に逃げ出してしまった。情けない・・・。しかも、その後も「Here is my confirmation slip.」なんて言って、お前何人だよ状態。せめて、電子辞書をカウンターの上に載せて、辞書にしゃべらせれば良かったのだが。
で、そんな英語で通じてしまうのだから何て便利なんだ英語。悔しいので、早く英語が世界標準言語から陥落することを切に願った。呪っておいた。全く無駄な抵抗だが。
逆にフロントの小姐に哀れみを買ったか、カタコトの日本語で「チョウショク。アサ7時カラ」と教えてもらい、部屋のキーを貰った。台北は日本語がそこそこ使えて便利だけど、言葉の勉強にはならんな。けしからん。いや、実は凄く有り難かったんですけどね。
指定された部屋は6階なので、エレベーターで当該階に向かう。
エレベーターを降りたところには会社のお偉いさん直属の秘書でも座っているかのようなカウンターブースがあり、おばちゃんがデンと腰掛けていてびびった。な、なんだこれは。新手のローテクセキュリティか。当該フロアに用が無い人は立ち入り禁止、みたいなガードマン?
何を言われるかと身構えたが、何も言われなかった。何だったんだ、あれ。
写真は、おばちゃんが本拠地を留守にしている間に撮影したもの。どこかに遠征しているな、と思ったら、空き部屋の掃除をしてリネン類をまとめていた。
・・・ああ、そういうことか。
何となく分かったぞ。ここ、「休息」の方も利用する宿なので、人の出入りが激しいわけだ。その結果、部屋が空いたらすぐに掃除に行けるよう、おばちゃんが機していたと思われる。それにしても露骨だなあ。日本だったら、掃除要員は分からないところにいるものだぞ。顔を合わせる事さえ禁則事項だというのに。
おばちゃん大本営の脇には、ウォータークーラーが置いてあった。なんだか変な光景。
ただ、これには一理あって、台灣の水道水は飲めない。だから、飲み水はここで汲んでねー、ということなのだろう。
そんなわけで、台灣名物のかき氷も要注意だ。水道水を使っている可能性が高いので、おなかが弱い人だとやられてしまう。ただ、タイやシンガポールで痛い目に遭ってきたおかでんだが、台灣の水ではやられなかったので、それほど水質が悪いわけではないようだ。歯磨き時に使ったり、薬を飲むのに使う程度だったら全然問題はなかった。
このホテル、真ん中は吹き抜けになっている。壁には電飾が施されているのが特徴的。ホテルのオフィシャルwebを見ると、大層幻想的に写っている。さすがプロが写真を撮ると違う。
ただ、「ご休憩所として活用されている」様子を察した後、この電飾を見ると随分と安っぽく見えてしまうのも事実。うーむ。
なんだか、香港のアクション映画を思い出してしまったよ。良くあるじゃん、ジャッキー・チェンが、敵に追われてこんな吹き抜けのところから飛び降りるシーン。その際、照明のコードづたいに滑り降りたりして、コードから激しく火花が散る・・・なんて。それをスローモーションで見せつけられる。香港映画、スローモーション大好きだもんな。しかも、エンディングのスタッフロールの時に「名場面集」としてもう一度そのシーンを見せられたりなんかして。
さて、恐らく突っ込みどころ満載であろう「和風套房」に突撃だ。突っ込みがいがありそうで、ワクワクする。南京虫が出てくるなどといった不潔には耐えられないが、この宿は不潔ではないので大丈夫。心おきなく突っ込ませて頂きたい所存。
廊下の突き当たりに部屋の扉が3つ、密集している。どういう部屋構造になっているんだかよくわからない。自分が目指す部屋は、右手の608号室。写真だと既に少し扉が開いているが、これは自分で開けたもの。最初から開いていたわけではない。
まず気になるのが、部屋の照明スイッチが「部屋の外」にある、ということ。普通、こういうのって部屋に入ってすぐのところにあるものだろ。何で外にあるんだ。部屋の中でくつろいでいて、外からイタズラで消されたらどうするんだ。
まあいい、これくらいで動揺していてはダメだ。さっさと中に入ろう。
「部屋の照明を室外からつける」という何とも奇妙なプロセスを経たのち、扉の鍵を開け入室。
中は暗い。えっと、どうなってるんだ。
一応、入口の頭上に弱い明かりが灯っているのだが、まさかこれだけが室内の明かりではあるまい。入室前に入れたスイッチは、この「入口照明」のためだったのか。
ええと、本当の室内スイッチはどこかな。
扉付近を見渡す。
普通、日本でビジネスホテルだとかシティホテルと呼ばれる類のものは、入室してすぐのところにスイッチがあるものだ。気が利いているところだと、ルームキーをがちゃんと差し込む口があって、差し込んだら全ての電源がONになる。
そういうものがある、と思って執拗に扉周辺を探す。
無い。
無いぞ。
でもこの薄暗い中で過ごせ、というのはいくら何でもうそだろう。どこかにスイッチがあるはずだ。
本当に、1分以上捜索してしまった。行動できる範囲は、狭い。さすが「和風套房」を名乗るだけあって、靴を脱いで部屋に入るようになっているからだ。玄関部分に部屋の明かりが無いはずはない。
しかし、結局見つからず。
そんな馬鹿な、と思いつつ、靴を脱いでベッド脇まで這っていき、ベッドサイドにあるスイッチを押してみたら・・・あら、電源が入った。照明スイッチ、ここなんかい。
それでもまだ暗いなあ、と思ったら、壁際の照明が点灯していない。こちらも、照明のところまで歩いていって、、電源ケーブルに付いている質素なスイッチをパチンとON。ようやく部屋が明るくなった。電源の集中管理、してほしいものだ。
ホテルで、照明スイッチは枕元ですよ、というのは決して珍しい事ではない。しかしそれはベッドサイドまでそのまますいっと歩いて行ける構造になっているから成立するわけであって、「いったん靴を脱いで上がる」構造の部屋では無理がある。ちょいとこの部屋、強引だぞ。ユーザーインターフェースを無視している。
なお、この枕元スイッチだが、相当古いな。日本の最近のホテルでは絶滅しつつあるタイプのものだ(都市圏・大手ホテルチェーンを見た限りの話。実際にはまだまだ現役だとは思うが)。ラジオのスイッチもあったが、壊れていて聴くことができなかった。
明るくなってようやく部屋の全貌が見えてきた。これが、「和風套房」。ネット予約・平日限定価格で1,720元。約5,500円だ。
うーむ、いろいろ指摘したいところだが、まずはやはりダブルベッドでしたか。というか、ベッドなんかい。布団ではないのだな。うかつに男同士の台灣旅行で、この部屋を予約していたら悲惨だな。ダブルベッドで一泊。なんとも暑苦しい夜になりそうだ。
で、どこが和風なんだね。
インチキ畳、せめてござくらいは敷いてあるのかと思ったら、フローリングだ。段差があって、靴を脱いでフローリングに上がるようになっている。この「段差」こそが「和風」のアイデンティティっぽい。うそだろ、おい。
まず日本人の場合、「フローリング」という時点で洋風、という発想になるというのに。
この辺りの、台灣人における「和風」の考え方については翌日Fish家に行って、なるほどと判明する。詳細はまた別途。
窓がある。
一応、こういう障子風というか、格子戸風なところも「和風」ということなのだろう。
窓のところに明かりが灯っているあたり、何とも連れ込み宿っぽい。
外はどうなっているのかな、と思って戸を引いてみたら、外は壁だった。「窓っぽくしました」というだけのものだったのだった。この辺りも、いかにも連れ込み宿っぽいが、これは意図してそうしたというよりも建物の構造上の問題っぽい。
二人用とはいえ、広い部屋だ。一人で台灣にやってきた立場としては、正直この半分の広さで良いから値段も半分にしてくれ、と思う。
まあそれは無理だとしても、二人(男女問わず)でここに滞在したとしても、この広さはいらん。観光目的の滞在となるので、昼間は外出だし、夜は夜市に行ってるし。ホテルなんて寝るだけの場所だ。広さはいらないなあ。
そんな部屋の片隅に、座椅子が二脚、小さな机を挟んで並んでいた。
なんとも座りにくそうな椅子だなあ。あぐらをかくと机にぶつかるし、足を伸ばして座ると足が痺れそうだ。くつろぐんだったら、まだベッドに座った方がマシだ。
ただ、この「脚無しの椅子で、床に足を投げ出して座る」のもまた「和風」ということなのだろう。いやいや、フローリングにそのまま座ると痛いですってば。日本人、そんなことはあまりやりません。畳か、せめてカーペットですってば。
和風旅館のようにお茶請けは無かったが、ティーバッグはあった。
立頓(リプトン)製のジャスミン茶と凍頂烏龍茶、そしてUCCのコーヒー。リプトン、英国企業なのにアジア圏でも頑張ってるなあ。しかも、アジア人の嗜好にあわせてお茶まで出していますか。日本ではお茶マーケットは無理と諦めたらしく、紅茶しか販売していないが、こっちの国では善戦中。逆に、台灣ローカルのお茶メーカーはもっと頑張れよ、と思う。
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