おもてなし三昧な世界【台湾南部滞在】

自動精算機
自動精算機の説明

バイクを取りに行く。

てっきり路駐でもしているのかと思ったが、Jennyはちゃんと有料駐輪場にバイクを停めていた。ちょうど美食広場の裏手にあたるところが、一面の駐輪場となっていた。そうか、「有料でバイクを停める」という概念は台北にもちゃんとあるんだな、と感心。いや、あまりに歩道脇にバイクがたくさん駐車されているので、バイク駐車に関してはOKにされているのかと思っていたのだった。でも決してそういうわけではないということだな。

自動精算機で精算する。何の変哲もない精算機だが、ついつい写真を撮影してしまった。

コインパーキングや駅前の有料駐輪場のように、車を移動できないようなロックが地面に仕組まれているのかと思ったがそういうわけではなかった。単に駐輪場から出る際に、精算済みの打刻がされた駐車券を挿入するだけだった。

まあ当たり前といえば当たり前なのだが、何だか不思議な感じがした。その時は理由がよく分からなかったが、今になって思えば、日本の駐車場って出口ゲートのところに精算機があるよな、ということに気がついた。しかしここはゲートとは別のところに精算機があるので、若干の違和感を覚えたらしい。

でもこの措置は当然。台数の多いバイクが、ゲートのところで大行列作るのは合理的ではない。あらかじめ精算済み状態にしておいて、出口ゲートをくぐらせた方が効率的だ。

マスク姿の二人

ところで人生初のバイク、しかも二人乗りなんですけど大丈夫でしょうか。

ちょっと心配。おかでんは体重があるし、座高が高いので重心も高いし。

そんな心配をよそに、Jennyはシートの下からヘルメットを取り出した。しかも、二つ。おお、なんと用意周到なんだ。誰かを乗せる事を前提に、ヘルメットを二つも用意してあったのか。

ヘルメット装着後、マスクをして準備完了。マスクとヘルメット姿の二人は大層怪しい格好だ。でもこれが台灣スタイル。Jennyは、ヒョウ柄のマスクだ。一体どういう趣味をしているんだ。でもそれを言ったら、女の子イラストが描かれたマスクをしているおかでんも相当変だが。

バイク初体験は結構スリルな体験だった。自転車しかしらない人生だったので、バイク独特の加速感が驚きだっった。加速の際に後ろに吹っ飛ばされたらどうしよう、とか停車した際にバランスを崩して二人とも横倒しになってしまったらどうしよう、と心配になってしまったくらいだ。

バイクは縦横無尽に走って良しな土地柄だと思ったが、ちゃんと「二段階左折せよ」なんて表示がある交差点もあり、交通法規を正しく守って安全に運転。慣れてくると楽しいものだ。あと、便利だねこりゃ。

ただし、マスクをしていてなるほどと思うのが排気ガスの臭さだ。最初道に躍り出た時は、「空気はそれほど悪くないし、マスクなんて不要なのではないか?」と思った。しかし、マスクの必然性は赤信号に遭遇したときに気がつく。日本と同じで、赤信号の場合はバイクが車より前に出て青信号を待つことになるのだが、どこの交差点においてもバイクの数は5台、10台はいる。それが全部高密度な位置関係でアイドリングしているわけであり、当然相当な排気ガスとなる。なるほど、だからマスクがいるわけか。納得だ。

夜の台北の街を疾走する。もう0時45分だが、この時間になっても営業をしている飲食店がちらほらあるから驚く。もちろん、チェーン店でも居酒屋でもない、いわゆるごく普通な「台灣の飯屋」だ。東京も「眠らない街」と言うが、でも庶民派感覚で眠らない街なのはひょっとしたら台灣の方かもしれない。

結局、20分ほどかけてホテル前まで送り届けてもらった。ありがとう、Jenny。お世話になりました。そこでお別れ。Jennyは士林夜市より北の方に済んでいるはずなので、またもう一度士林方面にUターンだ。いやぁ、おもてなし三昧だったなあ。

部屋に戻ったらもう1時を回っている。日本と時差が1時間あるので、日本時間だと夜中の2時だ。早く寝ないと。しかも、明日は朝が早い。しかも遅刻するわけにはいかない。

とはいえ、やらなければならないことはまだ残っている。チェックインしてから整体にいくまで、アホ面して部屋中の写真を撮っていたので、やることをやっていなかったからだ。

風呂にはいるのは当然として、服を洗っておきたかった。実は、旅行直前でドタバタしていたために洗濯したまま洗濯機の中に半日放置されていた服が鞄の中に入っていた。それが生乾きで、生臭くなっていたからだ。その臭いが、隣接する全く無害な服にまで伝播してしまっている。これはみっともないので、湯船にバスソープを張り、服を洗濯した。

服はできるだけ早く乾かしたかったので、鴨居を探したのだが・・・無い。さすがに和風部屋と銘打っていても、障子や襖がない以上鴨居などあるわけもないか。他にハンガーを引っかける場所を探したが、どこにもなかった。仕方がないので、クローゼットを全開にして、そこに洗った服を干すことにした。翌朝まであと数時間。乾けばよいのだけど・・・無理かな・・・。

その後も、デジカメの充電、ネットブックの充電、そして今日撮影した写真の整理などで1時間をかけてしまった。どんどん夜が更けていく。

台灣の電気は110Vで、コンセントの形状は日本のものとほぼ同じ。最近のデジタル製品は世界対応していることが多いので、特に変換・変圧コネクタがなくても使うことができる。

日本のコネクタ、よーくみると差し込み口の穴の大きさが左右異なっている事に気がつくだろうか。左の方が、長い。これ、JIS規格でそう決められている。普段使う分には全く何も気を遣わないけど。

ただ、台灣の電気製品を買うと、この「左右の長さの違い」を前提にコンセントが作られていることがあり、日本の差し込み口にはうまくはまらないことがあるので注意。

写真の整理は結構面倒だった。通番で写真に名前を付け、縦横の整理、失敗した写真の削除。の後、写真の順番を再配置する。スライドショーで見たとき、ストーリーが繋がるようにするために、時には時系列を無視した再配置もする。そして最後にリネームして正しく通番をふり直しておしまい。

今回の旅行では写真枚数が相当な数になることが分かっていたので、「今日撮った写真は今日整理する」という方針で行くことにした。その結果、寝る時間が2時半になってしまったのだが。ああ、寝る時間がないよ。

翌朝、高鐵の中で寝るというのも可能だが、せっかくの台灣新幹線、寝て過ごすわけにはいくまい。寝ている暇なんて昼間には全くないのだよキミイ。

2009年02月17日(火) 2日目

超食ビュッフェ1
超食ビュッフェ2

朝6時50分、目覚ましの音で目が覚めた。

完全に熟睡していた。ここまで深い眠りは久しぶりではないか、というくらいだ。慣れないベッドと枕は苦手だが、それを乗り越えるだけの疲労があったということだ。

昨日は情報量、多すぎ。そりゃ疲れるわ。

さて、朝7時から朝食を頂く事ができるので、それまでにパッキングなどの準備にかかる。慌てているのは、8時の台灣高速鐵路に乗らなければならないからだ。ご丁寧に、この鉄道は該当便出発5分前にチケット発売終了、2分前に改札受付終了になってしまうらしい。ギリギリ滑り込みセーフ、というわけにはいかんのだ。慣れない券売機を使うことになるわけだし、早めにチェックアウトしておきたいところだ。

まずは昨晩・・・というか、つい数時間前に洗った衣類の取り込み。

嗚呼。案の定、全然乾いていなかった。空調は最大風速に設定したのだが、部屋の片隅のクローゼットまでは風が行き届かなかったということだ。

仕方がないので、濡れたまま鞄の中に衣類を突っ込んだ。

とりあえずパッキングは済んだので、朝食に向かう。チェックイン時、「朝食は最上階になる」ということだったので、最上階に行ってみた。

従業員さんと会う事は想定済みだったので、せめて「おはよう」のあいさつくらいは中国語でしておきたい。電子辞書でチェックしていたら、「おはようございます」は「你早(にーざお)」ということだった。それ、早速エレベーターホール前に従業員さんがいるぞ。あいさつをしてみよう。「你早」。

すると、従業員さんは「早(ざお)」とだけ答えた。ん、そんなものなのか。「早」だけであいさつになるのね。しかも、お客様に対して使っているわけだから、簡略化されて失礼な言葉というわけではないようだ。簡単な言葉、好。覚えておこう。

食事はビュッフェ形式。「中華と洋風両方ありまっせ」とwebサイトでは謳っていたのでどんなものかと思ったが、結局は主食にお粥を選ぶか、パンを選ぶかの違いだけだったようだ。パンは日本でおなじみの食パン。トースターが2台設置されており、パンを焼くことができる。

おかず類はそれほど豊富ではないが、安ホテルのサービスと考えれば素晴らしい品そろえと言える。パンとコーヒーだけです、といった日本の安価なビジネスホテルとは違う。

こぎれいなテーブル

飲食スペースは白と黒を基調としたシックなデザイン。最上階とはいえ、願望が特に良いわけではないが、まあそれはどうでもよい。

もっと雑然とした朝食会場かと思ったが、若干小しゃれていて驚いた。

食堂はまだ朝7時過ぎということもあって、人の数は少ない。カップルの姿など見えるかと思ったが、皆無だった。なお、朝食は午前10時までやっている。特に食券であるとか、ルームキーを入口にいる従業員に提示する必要はないので、朝7時に朝食→10時前にもう一度朝食、というどアホウな事をすることも可能。まあ、そんなことをやる暇があったらどこか観光地にでも行った方が良いが。

本日の超食

台灣二日目朝、わたくしの朝食。

パンなんて選んでたまるか、とお粥をセレクト。やっぱり「台灣」っぽくしないと。いや、台灣の人もパン食べるけどね。

おかずは、少量ずつ全種類取ってみた。ここで重要なのは「少量」ということ。今日はお昼に萬巒の巨大豚足が待ちかまえている。夜だって、台灣南部の美食を満喫だろう。これ以上体重を増やしたくなければ、ここで満腹になるのは得策ではない。いや、体重の話はこの際どうでもよい。問題なのは、今日これ以降の美食が胃袋に入らない事が懸念されるのだった。それだけは避けたい。

謎の料理群

そんなわけで、お皿に盛ったは良いが、一体何の料理だかさっぱりわからなくなってしまった。ええと、一応皿右側にある白いでろーんとしたのは目玉焼きね。あと他に数種類。うれしいのは、ほうれん草の炒め物があったこと。やっぱり、青菜系の料理があると素直にうれしい。

お粥は・・・味がしない。ああそうだ、お粥の上に本来のせるべき、でんぶみたいな奴や落花生までおかず皿に乗っているではないか。

コーヒーを飲んで、ちょっとしゃきっとしてから朝食終了。ごちそうさまでした。

朝食には全く期待していなかったのだが、良い意味で予想を裏切られました。

台北車站地下道

食後、すぐにホテルをチェックアウトし台北車站に向かう。

チェックアウト時、精算やらなんやらあると思っていたのだが、フロントの人はちらっと端末を見ただけで「OK、謝謝」と言って無罪放免。おお、これぞデポジットの力か。それにしても、せめてレシートくらいくれや、と思うが、まあいい。こっちもチェックアウトで手間取りたくはない。

地下街を下りたり上ったりしながら進むと、ようやく站に取り付く事ができた。地下へと伸びる階段のところには、

「臺鐵乗車方向(To TRA Trains)」
「高鐵乗車方向(To HSR Trains)」
「高鐵B1售票處(HSR B1 Ticketing)」
「捷運/站前地下街(MRT/Underground Mall)」

という記述があり、その全てが下向きの矢印となっていた。要するに、何か用があるやつはここを潜れ、ということだ。

台北車站には台鐵、高鐵、捷運2路線が走っているが全て地下駅。その結果このような表示になっているのだった。

ちなみにMRTを捷運と記述するのは知っていたが、台鐵を「TRA」、高鐵を「HSR」と呼ぶのは知らなかった。これからお世話になる高鐵の「HSR」は、「Taiwan High Speed Rail」の略。だったら「THSR」ではないかと思うが、まあ「台灣」であることを敢えて名乗る必要はないので省略したのだろう。

台灣高速鐵路。日本では「台湾新幹線」という呼び名で知られている。日本の新幹線技術が初めて海外に渡った実例だ。新幹線は世界に誇れる超高速鉄道である、とわれわれ日本人は思っているが、海外での導入事例はこの台灣を除いて全くなく、まあ例のごとく「ガラパゴスな国・日本」をここでもフルスイングで披露しているのであった。

TGVをはじめとする海外の特急列車は、プッシュプル型を採用している。要するに、先頭車両と最後尾車両が機関車になっており、間に挟まっている客車には動力がない。単に車輪がついているだけだ。逆に日本の車両は、各車両にモーターが取り付けられており、それぞれの車両がそれぞれの車輪を回して走る。そりゃ一編成あたりのコストじゃ、どうやっても勝ち目はない。

じゃあ日本の技術、駄目じゃんというわけでもない。日本には日本なりの事情があって、過密ダイヤと密集する駅を効率的にさばこうとすると、加速減速がエクセレントである事が必須条件なのだった。そうなると、たくさんのモーターで一気に加速するぜ!とかズドンと減速するぜ!なんていう芸当が必要となり、今の新幹線の形になるのであった。これはまあ、しゃーない。でも、広大な大陸にぽつんぽつんと都市があるような雄大なお国柄の人にとっては、コストとメンテの手間を考えると選びづらい技術である。

そんなわけで、台灣新幹線建設当時も、当初日本勢はコンペで負けてしまったのだった。欧州連合を擁した台灣高速鐵路社がコンペに勝ち、日本勢を担いだ中華高速鐵路は負けた。さようなら新幹線、となったわけだが、その後になってドイツの高速鉄道ICEが死者100人を出すという大事故をやらかしてしまい、またさらに台灣自体も死者2,000人を越す大地震に見舞われてしまった。そのため、「やっぱ日本の新幹線もいいんじゃないか?」と見直しがかかり、欧州連合に紛れて日本の新幹線が採用される事になったのだった。しかもコンペのライバルだった、高鐵に。

何しろ、日本の新幹線には「地震を検知したらすぐに自動停車する」という「ユレダス」という機能がある。さすがにこのノウハウは地震大国でないと、無理だ。

この辺りは相当政治的駆け引きがあったようで、親日的な民進党が政権を取ったのとも無関係ではないそうだが、詳細はしらん。

車両は日本の700系新幹線を改良した700T。最高時速300km/hを誇る。日本の700系は最高速度が285km/hなので、動力部を相当改良したことが伺える。他にも相当台灣の事情にあわせたらしいので、「700系をベースとした別物」と考えて良さそうだ。

一番の特徴は、列車の顔が違うということだ。日本においても、700系のカモノハシ顔はダサいと批判されるが、台灣でも同様だったようだ。もうちょっとまともにして欲しいということで、顔つきが変更されている。紹介し出すときりがないので、その他の特徴などは、おいおい紹介していく。

高鐵は、台北から台灣の西海岸沿いに南下をしていき、最終的に台灣第二の都市である高雄の外れ、左營を終着駅としている。本当は高雄火車站まで延伸の予定があるのだが、まだ開通していない。2007年1月に開通した当時は、台北車站にも届いておらず(板橋~左營間で営業開始)、2カ月遅れで台北車站まで延伸している。

今まで、台北から高雄まで行こうと思ったら、台鐵の特急自強號で約4時間か、國光客運などの高速バスか、松山機場からの飛行機だった。しかし、この高鐵の登場の結果、空の便はほぼ壊滅状態になってしまった。価格面の差から、まだ自強號や高速バスは頑張っているようではある。しかし、100分程度で台灣の北から南までブッちぎってしまう高鐵の破壊力は相当だ。開業以来順調に客数を増やしている。

高鐵售票處

矢印に従って地下道を進んでいくと、高鐵售票處というところにたどり着いた。

要するに高鐵のチケット売り場のことだ。

案内係の人は、高鐵のシンボルカラーであるオレンジ色のチョッキを着ていた。

窓口で、つたない中国語で四苦八苦しながら発券してもらうのも楽しそうだ。しかし、せっかくだから自動券売機を利用してみることにした。予約・発券システムがどのようなロジックによって構成されているかを知るには、実際に機械をいじった方が分かりやすい。

高鐵自動售票機1
高鐵自動售票機2

こちらが高鐵自動售票機。自動券売機のことだ。

何台も並んでいるので、こちらの方が便利だと思う。しかし、日本の新幹線きっぷ売り場でもそうであるように、あまり自動券売機ってウケないのよね。なぜか窓口の方に人が並ぶ。

それにしてもごつい自動券売機だ。幅が広いし、ステンレス仕上げの表面が鈍く光って、日本人的センスからいえば「重苦しくてどんくさい」となる。日本製じゃないよな?と思って後で調べてみたら、フランス製だそうで。日本だったら、この半分のサイズでもっとカッチョいいデザインのものを作ることができると思う。その代わり値段は高くなると思うけど。ほらここにもガラパゴスな香りが。

ただ、さすがにタッチパネルを採用したりクレジットカード払い可能になっていたり、機能面やユーザーインターフェースにおいてはきちんとしたものにはなっている。フランスのメーカーだって馬鹿じゃあない。

高鐵自動售票機画面1

では早速チケットを購入しよう。

画面右上には日付と現在時刻が表示されているのがナイスだ。見ると、既に7時50分。やばい、あと10分で電車が出るぞ。のんびりしていられない。急げ。

最初の画面には、「自動售票機 請選擇您所需的服務。」と書いてある。何のことかわからんが、まあいいや。なんか選んでくれ、といってるっぽい。

画面中央にはタッチパネルボタンが3つある。

「自由座(限今日使用)」
「對號座(雙色優惠實施中)」
「到站取票」

と記されている。最初のは自由席、二番目は指定席であることがわかる。ただし、「雙色優惠實施中」というのがよく分からない。まあいいや、今回は始発駅だし、自由座で問題なかろう。自由座を選択。

三番目のボタンは何を言っているのかさっぱりわからなかったので放置。

後でFishに聞いてみたら、「雙色優惠實施中」というのは、お昼の閑散期における指定席の割引(15%と、35%引き)の事を指しているんだそうだ。あ、なるほど、「雙」って二つという意味があるからな。

それから、「到站取票」とは、ネット予約をした人がチケットを受け取る事を意味するらしい。なるほど、納得。

高鐵自動售票機画面2

次の画面は、「票種」と題されている。對號座を選択した場合、この画面の前に乗車予定便の指定があるのだが、今回は自由席なので表示されていない。

ええと、これも分かりそうで意味不明な中国語が出てきたぞ。

「今日單程票」と「今日去回票」の二つのボタン。何のことだろう。若干躊躇したが、しばらく考えて意味がわかった。要するに、「片道切符ですか?往復切符ですか?」と聞いているのだった。もちろん片道なので、「今日日單程票」を選ぶ。

この「雙色優惠實施中」だが、指定席割引の時間帯になると自由席よりも指定席の方が安くなるという妙な逆転現象が起きる。これは既に記載の通り。なぜこのような不合理な事が起きるのかというと、利用者があまりに自由席に偏り過ぎてしまい、指定席は空いているのに自由席パンパンというありさまになったからだという。やはり相当お高い新幹線、できるだけ安く乗りたい人が多かったのだろう。そういうこともあって、「指定席に乗ろうキャンペーン」というわけだ。

高鐵自動售票機画面3

なお、春節や清明節といったお休みの時は、自由席を廃止して「全車指定席」にすることもある。

次の画面は突然グラフィカルになった。台灣の島が表示され、路線と駅名。

駅名がタッチパネルになっている。

画面の表題は「到達站」。どこまで行きますか?ということらしい。ここは台北なので、既に「起程站:台北」と指定されていてボタンがグレーアウトされている。ただし、これは変更可能となっており、別の站から別の站に行くチケットも発券可能。

一番下のボタン、「左營」をクリック。

高鐵自動售票機画面4

その次の画面は、「乘客人數」という画面。うん、これは日本人でもすぐに理解できる。

上段が「成人票數量」、下段が「兒童票數量」となっており、それぞれ10名まで選択可能になっている。

修正が効くように、ボタンを押したら即次の画面に飛ぶのではなく、押した後に画面下部の「確認」「取消」ボタンにて確定させるところがなんだかネット予約的インターフェースだ。

その他にも、画面右にはWindowsにおける「サイドバー」的なものになっており、これまで選択してきた内容が一つ一つ表示されているのが親切だ。「自由座」「今日單程票」「起程站:台北」「至:左營」「成人1 兒童0」と上から順に表示されている。

こういうところが、何となくパソコンライクだと思わせる所以だろう。しかし、日本の自動券売機とは大差無いはず。どこで、「日本とは全然違うな」と思わせるのだろう?帰国後、この画面写真を眺めながらしばらく思案にふけってしまった。

そこで気がついた事、というか結論。そうだ、この画面に表示されているフォント、どれも文字が細いんだ。数字など単純なものは太字フォントを採用しているが、それ以外は基本的に細い。これは、複雑な漢字を表記しなければならない台灣独特の事情からきているのだろう。日本だったら、読みやすくするために自動券売機のフォントは全部太字だと思う。「字が太いか細いか」の違いで、案外違和感って感じるものなんだな。我ながら感心した。

高鐵自動售票機画面5


人数選択後は付款方式、という画面が出た。

タッチパネルを見ると、支払い方法を問うている事が分かる。

「現金」「信用卡」「金融卡」となっている。「信用卡」はクレジットカード、「金融卡」はデビットカードの事を指していると思われるので、真ん中の「信用卡」を押してみる。

高鐵自動售票機画面6

ええと?次の「付款」という画面で訳が分からなくなってしまった。

「應付金額:NT$ 1,385」と表示されている。1,385元払わないといかんのは了解した。で、どうすりゃいいの?

これまでは何とか勢いでこなすことができたが、ここで躓いた。先への進み方がわからん。ちゃんと書かれている中国語を読んで理解しなくちゃ。

ええと?

「請插入信用卡並依照上方藍色小螢幕指示操作」

と書かれていて、写真が掲載されている。んんん?カードを入れろといっているが、その入れる場所は・・・上方、ということか。ええと。

サブ画面とテンキー

ふとタッチパネル大画面から視線を上にずらすと、そこにはもう一つのサブ画面とテンキーがあった。おっと、こっちにも画面があったのか。そして、クレジットカードを挿入する場所と思しき挿入口もある。ははーん、ここでクレジットカード決済をしろということだな。

「上方藍色小螢幕」というのは、この液晶画面の事を指しているらしい。「藍色小螢幕」とはなんとも風情のある表現であるよ。

その「藍色小螢幕」には、

「台灣高鐵售票系統 歡迎使用 信用卡購票 交易金額:1385」と記されている。

そうかー、「交易金額」なんだ。なんだか自分が国際的に貿易をやっているような気分になった。

どうやらこれらしい、というカード挿入口にクレジットカードを差し込んでみる。すると、画面下部に「請稍候」という表示が出た。「しばらくお待ちください」という意味だということは後になって知った。この時点では何のことかさっぱりわからないので、「うわ、何か間違ったことやらかしたか?カード詰まりでも起きたか?」と不安にさせられた。

液晶画面1

「請稍候」表示が消えると同時に、新しい表示が出てきた。

また何か「請」してるぞ。えええ。

「請輸入信用卡預借現金密碼」

何を言っているんだ。「輸入」という時点でなにか国際貿易が始まっているっぽいし(そんなわけはないのだが)、「密」という字が出てきている時点でなにやら怪しく、秘密めいている。どうしろというのか。

そもそも、最後の「碼」というのは中国語では疑問型の文章の時によく使われる表現だ。「好吃嗎?(おいしいですか?)」のように。何か秘密を教えろ、と言っているのだろうか。

10秒以上、この画面の前で固まってしまった。えーと。テキストボックスの空欄があるところを見ると、何か入力しなければならないようだが・・・。

ああそうだ、クレジットカードの暗証番号かもしれない。ためしにそれを入れてみよう。駄目だったらその時また考え直そう。

とりあえず暗証番号を入れてみる。ちょうどこの液晶画面の下にはテンキーがあるので、それを使ってみよう。・・・あ!ENTERキーのところに「輸入」と書いてある。「請輸入」というのは「入力してください」の意味だったのか。ちなみに、キャンセルは「取消」、クリアは「更正」、ファンクションは「功能」だった。ファンクションキーなど一体何に使うのかは不明。

液晶画面2

ドキドキして画面を見ていたら、「交易將進行 等待主機回應」と表示が切り替わった。何だかわからんが「交易」は「進行」しているのでOKだったっぽい。さしずめ、「ホストと通信しているから待っててねー」という事を言っているのだろう。まだ油断はならぬ、「通信の結果、駄目って言われましたー」という回答が来る事だってあり得る。

おかでんは微妙に勘違いをしている。「碼」が疑問型として使われる、というところだ。疑問型で使われるのは「嗎」。石偏ではなく、口偏だ。実は「密碼」で一つの単語になっており、これは「パスワード」の意味だ。だから、あの画面の言葉を直訳すれば、「クレジットカードで現金を借りる際のパスワードを入れてください」と言っているのだった。まるでキャッシングするかのような言い回しだが、そういうことだ。

どうやらカード決済完了

主機から交易の回應があったらしく(意味不明な日本語)、タッチパネル側の画面が切り替わった。どうやらさっきの入力画面はカードの4桁パスワード入力で正解だったようだ。

ええと、決済が終わってまだ何か聞いてきているぞ。

「収據」だって。これまでもそうだったが、よくもまあこうも日本人の知らない漢字がばんばん出てくるものだ。感心するわ。チケット1枚買うだけなのに。いつどのように日本の漢字が簡略化されていったのか、その歴史にちと興味を持ってしまったじゃないかこの野郎。

でもこの最後の問いは事前知識で知っていたぞ、甘かったな高鐵。高鐵の場合、ご丁寧にも改札を出た後に使用済み乗車券を持って帰るかどうかの選択ができるのだった。「持って帰る?それとも自動改札機に吸い込ませておしまいにする?」と聞いてきている。それを中国語で書くと

「出站後是否保留車票作爲收據」

となる。きっぷ収集の趣味はないのでいらんのだが、「是」のボタンを押してみた。一応貰っておこう。

すると「交易進行中」という画面になり、しばらくお待ちください状態になった。

手続き修了

「車票列印中」と記されているので、ただいま印刷中ということだろう。往復買った人は2枚出るよー、なんて書いてある。

これが台湾新幹線の乗車券

日本の自動券売機的感覚からするとややもたついたが、しばらくするとちゃんとチケットが発券された。まあ、日本の新幹線自動券売機もやや遅いので、この手の発券というのはちと面倒なのかもしれない。日本における近郊区間専用の自動券売機がやたらと早いだけなのだろう。

出てきた乗車券は、高鐵のイメージカラーであるオレンジを採用。ちょっとおしゃれ。

「單程票 限搭乘自由座車廂」と記されている。台北→左營。

自由座車廂9~12節、という記述があるが、これは「自由席は9号車から12号車の間ですよ」という意味だ。高鐵は、1号車から8号車までが指定席とグリーン席になっていて、後ろ4両が自由席という計12両編成になっている。自由席比率が日本と比べて高い。

お値段は1,385元。約4,300円だ。日本人からするとまあまあ安い部類だが、台灣物価からするとそれなりにお高いお値段と言える。

さてここで話が変わり、台灣に於ける言語のお話。

台灣にあまり詳しくない人は、「台灣って、中国語を使っている国でしょ?」程度の認識だと思うが、実際は50%正解、くらいの答えになる。

そもそも「中国語」と言っている時点で話が広すぎて、中国語といっても北京語や広東語、上海語をはじめとして数多くの言語が存在する。日本における方言なんてレベルではない。言葉が全く通じないくらい、各言語には違いがある。一般的に中国語を勉強する場合、「普通話」と呼ばれる北京語ベースの言葉が対象となる。

台灣では北京語を公用語にしている。しかし、台灣にこの言葉がもたらされたのは、1947年に蒋介石率いる国民党が毛沢東(中国共産党)に追い詰められ、大陸から脱出して台灣に本拠地を移してからのことだ。だから、台灣からするとまだ半世紀ちょっとしか歴史がない言葉ということになる。

ではその前はというと、日本統治時代があったので日本語が公用語だった。しかし、今となってはご高齢の方か、日本好きなワカモノくらいしか使うことはない。

台灣の人が日常生活で使うのが、「台灣語」と呼ばれる言語だ。「閩南語(ミンナン語)」「ホーロー語」とも呼ばれ、対岸の福建省界隈の言葉をベースとしている。これは、明朝から清朝に切り変わるドタバタの際に福建省などの大陸系中華民族が台灣に多く移住してきたことに起因する。彼らの事を「本省人」と言う。転じて、蒋介石と一緒に台灣にやってきた人たちのことは「外省人」と言う。

外省人はその生い立ち上北京語オンリーで日常会話をするが、人口の75%を占める本省人は、公の場では北京語、友達や家族との間では台灣語というバイリンガルな生活を送っている。

さらにこのほかに、「流浪の民」「アジアにおけるユダヤ民族」と言われる「客家」が台灣には相当数いるので、客家語という独自言語も存在する。さらに、全人口の2%とはいえ、本省人以前から台灣に住む原住民族がいて、民族毎に独自の言葉を持っているというややこしさだ。

台灣語には字が存在しない。会話言葉だ。そのため、日本統治時代の影響で日本語が紛れ込んでいたりしてちょっと面白い。これは原住民族の言葉にも似た現象が起きている。

しかし、公の場では北京語だ。学校の授業も当然北京語。台灣語復興の動きが出てきていて、台灣語も授業で習うそうだが、いかんせん文字がないので学習は口伝となる。100年後くらいになると、台灣語は廃れてしまうかもしれない。ただ、現時点ではまだまだ現役の言葉であり、特に本省人が多い台灣南部では日常的に使われる。

よって、台灣を知り尽くそうと思って、いわゆる中国語(普通話)を覚えて現地に乗り込んでも、結構な違いがあって戸惑う事になる。もちろん意志疎通には弊害がないが。

まず、漢字が根本的に違う。中華人民共和国の漢字は、「簡体字」と呼び、ご存じの通りメチャ省略化された漢字を使う。これは、「漢字の勉強に時間をかけすぎると学力向上の妨げになる。もっと楽な漢字にしよう」ということで 1900年頃から始まった動きだ。しかし、台灣國語は、簡略化される前の漢字である、「繁体字(正字)」を使うため、とても字が難しい。簡体字と繁体字を並べると、これが同じ漢字かと呆れるくらいだ。で、日本語の漢字はその中間くらいの、なんだかのんびりと手抜きをした字に仕上がっているから面白い。

ということで、例えばおかでんが中国語の電子辞書を持って、台灣人にその漢字を見せても理解されにくい。台灣人が普通は読めない、簡体字で記述されているからだ。

なお、いくら台灣の公用語が「北京語」だとはいえ、ここは北京から遠く離れた島国、台灣。当然台灣語の影響を強く受けている。その結果、大陸とは異なる言い回しや単語が北京語@台灣にはあるし、北京語をしゃべっているつもりでも、文法や発音に台灣語が混じる事になる。その結果、「台灣國語」と俗称される、台灣カスタマイズ北京語になっているのだった。

たとえば、普通「おいしい」という言葉を指す言葉は「好吃」であり、これは普通話では「はおちー」と発音する。しかし、これが台灣に行くと「はおつー」になるのだった。もっとも、日本語のカタカナで表記できる程簡単な発音ではないが、敢えて表記するならこうなる。

他にも、普通話の方が巻き舌の傾向がある。「2」を意味する言葉は、普通話では「アル」と発音し、「ル」のところは相当舌を巻き上げる。しかし、台灣では、「アル」と発音はしているのだが、あまり巻き舌にはしないので「アー」と言っているように(日本人には)聞こえる。

そんな違いがあるので、台湾人からすると、「あ、この人大陸から来た人だ」と言葉のクセですぐに分かるという。

まあ、その程度は良いとしても、最終兵器として台灣語で会話をされるともうわからない。例えば、おかでんが頑張って中国普通話を覚えたとしよう。これでJennyやFishとの意志疎通はばっちりだ。しかし、いざ肝心のところで、JennyとFishが台灣語で内緒話をされたらもうお手上げ。

ちなみにFish母は、北京語、台灣語の他に客家語、英語もしゃべる事ができる。4カ国語(?)使いだ。台灣国語までカウントすれば、5カ国語使い。そんな環境下に置かれているので、台灣の人は外国語を覚えるのが上手だと思う。正しく丁寧に勉強さえすれば、日本語の発音はほぼ問題ない。中国語の方が発音パターンが多いので、バリエーションが少ない日本語は比較的発音が楽らしい。そういえば台灣の知り合いは、英語の発音も上手。

ちなみに話が脱線するが、台灣の人は「サッポロ」と発音するのがどうしても苦手だ。日本人からすると何で?と思うが、どうも自分たちの言語からするとありえへん発音らしい。

なぜいきなりこんな話をしだしたのかというと、チケットの表面に「Taipei」「Zuoying」と書かれているからだった。ローマ字でしょ、と思うだろうが、全く違う。「ウェールズ式」と呼ばれるほぼ台灣独自の表音記述法による表記だ。ピンインとも違う。ピンインの表記は比較的ローマ字チックであるので、ローマ字的に読めばなんとなくそれっぽくはなる。しかし、このウェールズ式記述をローマ字風に読むと、全然実物と違う発音になってしまうので注意が必要だ。

例えば「高雄」をウェールズ式で記述すると、「Kaoshiung」となる。これを日本人が読むと、ついつい「かおしぅん」と発音したくなるが、実際現地人の言葉を聞く限り、「ガオション」もしくは「ガウション」に近い発音が正しい。そもそも、「台北(Taipei)」だって、「タイベイ」と濁音にした方が現地人の発音に近くなる。

とはいえ、カッコつけて「ガオション」なんて言っても台灣人には通じないので注意。無理矢理日本語的発音にして通じるようななまっちょろい言語ではない。もっと発音が複雑であり、日本人が付け焼き刃で発音しようとしても無理。

また、中国語特有の「四声」と呼ばれるイントネーションがあるので、カタカナを棒読みしたって通じない。もう大人しく、「高雄(たかお)」「淡水(たんすい)」「恆春(こうしゅん)」などと日本語読みしておいた方が無難だ。

今回の旅で、人と会う度に「台灣には何度目の訪問だ?」と聞かれ、二度目だと答えたら「一回目は何処へ行った?」と聞かれたものだ。その都度、「九份(ジォウフェン)に行った」と答えていたのだが、1回たりとも通じなくて泣けた。九份といえば台灣を代表する観光名所であり、現地人が知らないはずはない。しかし、「ジォウフェン」では通じないのだった。もう途中から面倒になって、「前回は台北に居ました」と適当に答えることにした。

自動改札

乗車券を買った事だし、自動改札をくぐる事にする。

自動改札の上には、直近4本の発車時刻が表示されている。2009年2月時点では1時間に4本の定時ダイヤなので、この先1時間分の便が全て表示されている事になる。速達便2便と、各駅停車2便。全て左營行きだ。

台灣ではプラットフォームの事を「月台」と呼ぶ。ただ、少々ややこしいのが、「1番線」「2番線」と端から順番に番号が振られているわけではない、ということだ。

島式ホームひとつづつを「1」「2」と表現し、その左右で「1A」「1B」「2A」「2B」・・・と名前が付けられる。なぜこんな面倒な名付け方にしたのか、よくわからない。
※実際は、2島4ホームあるらしいが、2A/2Bホームはどうやら隠れキャラのようだ。乗車時には気がつかなかった。

高鐵台北車站は、始発駅であるにもかかわらずホームが2つしかない。今後利用客増となって便数が増えたら、パンクしそうだ。車内点検と清掃はどうするつもりだろう。地下が過密状態の台北、これ以上場所を確保できなかったか。

聞くところによると、台北より先の南港まで延伸する計画があるというので、そこで余裕をとろうと考えているのだと思う。

早速自動改札をくぐってみよう。ここで注意しなければならないのは、先ほど購入したオレンジの乗車券の差し込み方だ。ついつい表面を上にして挿入してしまいがちだが、それでははじかれてしまう。裏面にして、銀行のキャッシュカードよろしく磁気帯面が出ている方を上にして通して、初めて通過ができる。何でこんなわかりにくい仕様にしたんだ。何処の国製だ?これ。

その点日本の自動改札は無敵だ。表裏、左右関係なく認識してくれる。近距離切符のように小さな切符の場合、それに加えて「斜めから挿れてもOK」というハイテクっぷりだ。まあ、無駄なハイテクであるとは言えるが。「利用客の利便性向上」という名の下で、コストアップしているような気がする。「切符は裏面から入れろ。知らないなら教えます。以上。」と開き直っても良いと思うんだけどね。

まあ、人件費が非常に高い国:日本なので、「自動改札の通り方がよく分かりません」という人の対応要員を確保するくらいだったら、高機能高価格な自動改札を入れた方が安いという判断をしているのだろう。それはそれで合理的ではある。ただし、他国からすると「余計な機能」なんだろうな。

・・・などと思いつつ、「オレはこの自動改札の通り方を知ってるぜ」と余裕をぶっこきながら通過しようとしたら、思いっきりゲートを閉じられてしまった。何をする。

驚いていたら、係の人が駆け寄ってきて、返却されたチケットを確認してくれた。すると、「アナタはアッチだ」と別の方向を指さした。見ると、地下道を挟んで対面にもう一つ、改札があった。入れる改札と入れない改札があるのか。

月台に向かう

いぶかしがりながらもう一方の改札に行くと、ここではスムーズに通過ができた。どうやら、自由座のチケットを買った人は、對號座方面に向かう改札は通過できないようになっているようだ。ホーム上は仕切りがないんだから、どっちから通過してもいいじゃん、と思うがまず人の流れを改札でコントロールしてしまおうという計算だ。

聞くところによると、自由座のチケットしかもっていないのに對號座の座席に座る輩が後を絶たず、開業当初はちと問題になったらしい。そういう事もあって、自由座の人は對號座方面に向かいにくいよう、改札に工夫をしたのかもしれない。

そんなこともあって、改札を抜けてエスカレーターを下りたら、ちょうどそこが9号車以降の車両位置になっていた。なるほど。

あ、ちなみに補足。この自動改札がちょっと独特で、チケットを差し込んだら、その差し込み口のすぐ奥から券が出てくる。その券を引き抜いたところでゲートが開くという仕組み。「ウォークスルー」形式で、改札を通過しつつチケットをキャッチする日本のものとは構造が違う。うっかりしてチケット挿入後そのままゲートに突入しないように。思いっきりはじかれます。

なお、高鐵は「発車10分前」にならないと月台に降りることができない。それまで、待合室で待つことになる。早めに火車に乗り込んでワクワクしていよう、写真を撮ろうと早めに站に到着していても、とんだ待ちぼうけを食らうので注意。

1Aには、これから乗る予定である08:00発111號、1Bには、その後を追いかける08:06発411號が控えていた。

台灣高速鐵路の号数は非常にわかりやすい。100番台は速達で、途中板橋、台中(台灣第三の都市)を経て終点の左營に着く。200番、300番台は区間快速。ただしダイヤを見る限りレアキャラのようだ。400番台は、各駅停車となり、途中全ての站に停車していく。站数は全部で8。まだまだ途中駅を増やす計画はあるようだが(最終的には13站)、100番台でも4站停車することを考えれば、それほどトロいわけではない。

500番台は、台北もしくは左營からの台中折り返しの区間列車。これもレアキャラの様子。あと、繁忙期にはなると1,000番台の臨時便が搭乗する。

東海道新幹線のこだま号に乗っていると、途中駅で通過列車の待ち合わせがあり、2本ものぞみやひかりにブッちぎられることがあるが(しかも停車時間5分の間に!)、高鐵の場合はダイヤが薄いので途中追い越される心配は多分ないと思う。増発される春節などはどうなるかは知らないが。

111號が出た後に6分遅れで411號、115號が出た6分後に415號・・・と、大変にシンプルなダイヤ構成と號数だ。昔の新幹線もこんな感じだったのだろう。今はもう、超過密ダイヤで何が何だかわけがわからんありさまだ。

なお、桃園國際機場の最寄り駅である(高鐵)桃園站は、各駅停車である400番台もしくは500番台の火車に乗る必要がある。うっかり100番台に乗ると、見事に素通りして台中まで行ってしまうので要注意だ。

台灣高速鐵路700T型

台灣高速鐵路700T型。

おお、どう見ても確かに新幹線です。ちょっとうれしいですな。この路線は韓国やらドイツやらフランスやら、いろいろな国がからんでいるとはいえ、やっぱり線路の上に乗っかっている電車が日本製だと、見た目の満足度が違う。やっぱり良いもんです。

とはいえ、運転手は開業当時全員フランス人だったというのも事実。台灣人どころか、日本人でさえなかった。最初は、JR東海と西日本が技術支援していたのだが、建設にこぎ着けるまでの経緯上列車無線がフランス、線路は日本、線路の分岐部分はドイツとごった煮状態になってしまったため、「安全に責任が持てない」とJRさん降りちゃった。その結果、運転士はフランス人という謎な運行になったのだった。今は台灣人運転士も搭乗しているとは思うが、青い目をした人が日本製の新幹線を、台灣で運行していたと思うとなんとも不思議な光景だ。

「新幹線」とは単なる列車だけを指す言葉ではなく、運行システムや軌道、橋脚やトンネル、保守、その他全てをひっくるめた総称と位置づけられている。確かに、時速300km近いスピードで、山手線の列車間隔並で走るためには何一つ要素が欠けていても実現ができない。

そんなわけで、JRが「責任持てない」と言ったのは、チキン野郎とは呼べない。何しろ時速300kmの話だ、脱線でもしてみやがれ。大惨事だ。その脱線理由の解明だけでいろんな国の人が出てきて、責任をなすりつけ合って、なんて考えただけでうんざりだ。

車体は奇麗で、ちょっとびっくり。高鐵は車体が汚い、という噂を事前に聞いていたからだ。開業が1年遅延している間に、納期通り届けられた700Tが野ざらしにされて錆びたと聞いたことがある。それに、洗車機がボロかったかなんだかで、結局人力手洗いを併用せざるをえなくなって、手に負えなくなったというのも聞いた。

しかし、今ここにある700Tは奇麗なものだ。新しい洗車機、購入できましたか。それはおめでたいことです。

この列車、日本の700系新幹線をベースとしているので、行き先表示の電光掲示はシンプルだ。これがN700系をベースにしていれば、フルカラーでいろいろ表示を切り替える事ができるのだが、タイミングが悪かったな。まあ、台灣的発想からすれば、「フルカラーなんていらねーよ。高くつくだけじゃん」だとは思うが。でもそのマニアック性が日本人の日本人たる所以です。台灣のワカモノが愛するオタク文化と密接に繋がっているのですよ。

月台上の整列線

月台にはフェンスがあるが、ホームドア形式にはなっていない。またこのフェンスは結構あちこち空いていて、転落防止策としてはちょっと不十分だ。てっきり、「電車をぴったり所定の位置に停めるのが難しいので、フェンスの幅は余裕を持たせた」のかと思ったが、そうではない。所定の位置にばちっと停車している。そりゃそうだ、この辺りは全てD-ATCが対応してくれる。ちょっと謎。別形態の列車にも対応できるように、あらかじめ幅広に作ったのかもしれない。

このホーム、日本で言う「白線」は黄色い線になっている。「小心月台間隙」と書いてあるので、落っこちないように注意しろ、ということだ。白線もあるにはあるが、ホームの境界線を示すために使われている。「白線の後ろまで下がってお待ちください」を高鐵でやると、700Tにぶっ飛ばされる恐れがあるので注意。

なお、乗車待ちの人はここに列を作ってね、というラインには「候車線」と記されていた。なるほど。

客席は半自動ドア

自由座に乗り込もう。発車時間が迫っている。

客席入口の自動ドア前に立つ。・・・反応がない。よく見ると、ドアの脇に「開」という大きなボタンがあった。押しボタンで開閉する仕組みになっていた。この辺りからして、日本の新幹線とがらりと違う事が分かる。なるほどねー。

でもこれ、賢いと思う。面倒っちゃあ面倒だけど、センサーが勝手に反応して扉が開いたり閉まったりしなくて済むもの。よく盆暮れで大混雑中の新幹線で見かける風物詩が、「デッキに立っている人が体を動かす度に、無駄にドアが開く」というもの。あれは大層うっとおしい。だから、日本の新幹線も自由席だけでもこのボタン式自動ドアにしたら良いと思うが、どうか。

ただこの「ボタン式自動ドア」にはわけがあって、客室内の冷気をできるだけ外に逃がさないための工夫なんだそうだ。さすがに、日本の気候にあわせて作られた新幹線。台灣の気候に合わせようとしたら、空調の強化だけでなくこういう細かい細工も必要だったというわけだ。

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