おもてなし三昧な世界【台湾南部滞在】

車内の自販機

客席の紹介に移る前に、まずはデッキのご紹介。

こちらは飲料自動販売機。

「奥利多水」というペットボトルが25元である以外は、全て20元(約64円)。

奥利多水のラベルには「オリゴウォーター」と書かれているので、乳酸菌飲料系の飲み物だと思われる。

缶は、中段と下段が同じ商品。もっと取扱い品数を増やせば良いのに。それにしても偉大なのはポカリスウエット。この数少ないラインナップの中でも、ちゃんと頑張って陣取り合戦を勝ち抜いていた。

なお、2月ということで「冬」ではあるが、「あったか~い」飲み物は存在しない。当たり前だ。この新幹線は、南下していく途中に北回帰線を越え、亜熱帯地方から熱帯地方に入る。そんな列車においてホットドリンクはさすがに売れないだろう。

健酪

絵柄が気になった、「健酪」という飲み物。「乳酸飲料」と書いてある。

それはともかく、バンダナを巻いたテニス青年の絵が印象的。絵柄的には日本の20年後ろをひた走っている感じ。誰だこんなださいデザインを許したメーカーは。しかも長袖のセーターを着ている。暑そう。

お手洗い

お手洗い。

何か違うなあと思ったら、洗面台が無いのだった。あれっ、そうなのか。男性は兎も角、女性にとってはちょっと不親切だなと思ったが、お手洗いを覗き込んでみるとそこに洗面台があった。ご用の方はこちらでどうぞ、というわけだ。

故に、男性専用の小用トイレにも洗面台は備え付けられており、ややゆったりとした作り。ちなみに男性用トイレは鍵がかかるようになっていたので感心。

ただし、おかでんは最近の新幹線には疎いので違いがわかってはいない。

自由座の客席

自由座の客席。

日本の新幹線と全く一緒。2列-3列の5列構成。シートの色まで東海道新幹線チックだが、全く一緒のものなのかどうかまでは不明。

ただし、2列側も3列側も、ぐりんと180度回転できるという点で構造は一緒。

これが商務車(=グリーン車)になると2列-2列となる。

自由座の乗車率はそれほど高くなかった。ただ、ほぼ全ての席の窓側を取られていたので、「完全に空いている席」を一つだけようやく見つけられた程度の混み方だった。さすがに台灣國語もしくは英語で「お隣、空いてますか?座って良いですか?」と聞く語彙力は持ち合わせていないので、空きがあってほっとした。

博愛座

そんな客席であったが、一列だけぽっかりと空いているところがある。何かと思ったら、「博愛座」とヘッドレストのところに書かれてあった。なるほど、新幹線にも「ゆずりあいの席」があるのか。徹底しているな。

車内に荷物置き場がある

特徴的なのが、客席の一部を潰して作られた荷物置き場だ。トランクなどを置くために用意されている。東北新幹線や長野新幹線のE2系新幹線にも、スキー板を置くための荷物置き場はあるが、これは客席の外、デッキ部分になる。盗まれやしないかヒヤヒヤさせられるが、その点これは安心だ。

とはいえ、スペースはそれほど大きくないので、途中駅から乗り込んだら空きスペースがなくてがっかり、ということもあるかもしれない。

こういう荷物置き場を置くあたり、飛行機客を奪ってやるぜ感が強く感じられる。

テーブルの裏に客車紹介地図

椅子に座ってみる。

シートピッチが広く感じる。随分と足の自由がきく。しかしそれはおかしい。シートピッチが日本のものと違うなら、窓の幅や間隔まで台灣オリジナルにしているはずだ。そこまでやるとは思えない。

帰国後調べてみたら、日本の新幹線と一緒でした。失礼しました。

帰省の際は飛行機が多いからなあ、新幹線の感覚をすっかり忘れてしまっている。

テーブルの裏面に、各車両の説明があるのは日本の新幹線と同じ。

商務車は6号車で、車掌室も6号車となっている。おっと、どうやら「車掌」とは言わないようだ。「列車長」が正しい様子。

そんなわけで、ドアの開閉は6号車にて行われるから面白い。確かに、前後を等しく見ることができるので都合が良いかも知れない。

列車は全席禁煙。これは当然といえば当然。

日本では、JR東日本管轄の新幹線が既に実施しているが、東海道・山陽新幹線はまだ喫煙可のデッキ・車両が残されている。この喫煙車の燻製度合いたるや相当なもので、普通の愛煙家でさえ逃げるくらいだと聞く。

台灣では、公共の場では全面禁煙と法律で決められている。だから、電車はおろかホテル、道ばた、どこでも吸うことはできない。吸いたければ自宅かどこか許可されていることろでひっそり吸いなさい、ということだ。旅行者が一番困るのが、桃園國際機場でのトランジット。数時間もの乗り継ぎ待ちをしている間、空港内にはどこにも喫煙所がないので悶絶するらしい。

高鐵便當・新品開動

座席前のポケットに、「高鐵便當・新品開動」という広告が挟まっていた。

駅弁の車内販売のご案内だ。

「便當」とは、まさに日本語の「弁当」から来ている。発音も、語源も、日本語だ。

写真を見ると4種類あることがわかる。しかし、そのうち2品が「南下供應」であり、残り2品が「北上」となっていた。要するに、一列車に2種類しか積んでいないということになる。しかも、列車に積み込む数は少ないと聞いているので、売り切れという可能性もある。狙って買いたいと思っている人は要注意だ。

確かによく考えれば、空腹なら站の売店で便當を買えば良いし、どうせ各駅停車でも2時間程度で台北-左營を結んでしまう。何も車内ワゴンサービスで売る必然性は無いのだった。高鐵としても、売れ残りリスクを考えて少量ロットで対応しているのだろう。

ちなみに、「南下供應」は「日式猪排丼」と「蒽燒烤雞」。「北上供應」は「蒜香茄汁里肌」と「蠔油香菇雞」。

なんのことかよくわからんが、写真を見る限りどれも肉肉しい茶色で彩られている。基本的に、「ご飯の上に揚げた肉が載ってます」シリーズだ。台灣人だって美的センスが無いわけじゃないので、せめて付け合わせで彩りを出そうとしているのだが、やっぱり圧倒的な揚げた肉の色には勝てぬ。結果、何とも胸焼けしそうなラインナップになっているのであった。台灣人、メチャ肉好きか。

ちなみに「日式猪排丼」だが、これはどうも豚カツをご飯の上に乗せました、というものらしい。

宗教上の理由で肉類を食べない「素食」の人にとっては選択の余地がない。唯一、「蒜香茄汁里肌」が肉っぽくない名前だが、これは豚肉のフライにトマトソースがかかったもの。アウトー。そもそも、「蒜」(にんにくの事)が入っている時点で素食の人は駄目だ。

お値段、各120元(約384円)。安いので、見た目ほど量は多くないのだと思う。そんなに胸焼けをおこすまでもなさそうだ。

弁当が売られている便は限定

気をつけないといけないのが、この便當を売っている便は限定されているということだ。個数限定だけがハードルなのではない。うまいこと、便當販売列車に乗り合わせていないといけないのだった。

時間帯を見ると、お昼頃の便と、夜便に限って売っているようだ。高鐵が非常に慎重に、便當を売っている事が分かる。売れ残すくらいなら売らない覚悟だ。

非常時の対応

便當の紹介とともに、この列車における非常時の対応について説明されている紙があった。

消化器の取扱い方とか、煙探知機の事とか、緊急時の脱出方法などが写真入りで説明されている。飛行機のような扱いだ。「300km/h?マジっすか」的な感覚で、何かあっちゃいかんと説明に余念がないのだろう。日本では、じわじわと性能アップして300km/hに至ったので、このような説明書きは一切存在していない。

板橋を過ぎると地上
台湾の風景を楽しむ

台北站を出発後、次の板橋站までは間があまりないので大した加速はしない。さすがに後から作った路線だけあって、カーブがきつい。東京の、比較的新しい地下鉄を思い出した。

板橋を出てしばらくすると、地上の高架になる。しばらく、台灣の風景を楽しむ。高層マンションがあったり、無かったり、なんだかバラバラな都市建設だ。

車内販売のワゴン

台中まで途中駅をすっ飛ばしていく。新竹を過ぎたあたりで300km/hに到達したと記憶している。

全駅に待避線があるのが立派だ。しかも、通過線とホームがある待避線との間には、必ずどの站においても壁があって仕切られていた。日本の新幹線駅みたいに、列車が通過すると強風が吹いてスカートめくれてイヤ~ン、ということはない。

感心しながら見ていたら、前方からさらに感心する光景が。

車内販売のワゴンサービスだ。日本と同じようにやるんだな。

便が違うので、例の高鐵便當は売っていない。では何を売っているのだろう。今考えれば、呼び止めてワゴンの中を物色し、何か適当に購入すれば良かった。でもこのときはうっかり見過ごしてしまった。後で写真を見ると、ペットボトル/缶の飲み物の他に、ホットコーヒー、おかきなどのスナック類といったところか。

写真まで撮っておきながら、なぜワゴンの中身に目が行かなかったのかというと、ワゴンを押している小姐がとても奇麗だったからだ。こういうのを、「目を奪われた」と言うんだろうな。きれい、と可愛い、のいいとこどりみたいな感じでびっくりだ。

台灣の女性って、ひょいっといきなり飛び抜けた美人が現れるからびっくりするんだよなあ。いまいちな人は当然それなりの数いるわけだが、「飛び抜け方」という点では日本より台灣の方が上のような気がする。

多分、台灣で「高鐵のアテンダント」というのは相当な憧れの職種のはず。レベルが高い人が採用されているのだと思う。

単調な景色

今朝撮影した写真をさっさとネットブックに取り込み、採番したり順番を入れ替えるなどの整理を済ませる。後は、せっかくなので台灣の景色を楽しむことにしようじゃないか。

・・・といっても、大して面白いものではない。というか、はっきりいって、つまらん。

台灣高速鐵路は、土地買収の手間と費用の圧縮からか、台灣西部の主要都市沿いには走らない。もう少し内陸部の、田舎を突っ走る。

この台湾西部だが、島国とは思えないくらい広い平野を誇っている。これは意外だった。もっと海沿いまで山が迫っているような国土なのかと思っていたからだ(台灣東部はその傾向が強い)。

そういう意外な発見があったのは大層結構な事だが、その結果風景が単調で面白くないのでありました。まあ、日本の新幹線も田舎を走るので、風光明媚とは言えないので似たようなものだが。

ただ、日本と台灣の新幹線の決定的な違いは、日本の場合は「できるだけ在来線駅に併設して駅を作る」のに対して、台灣は「在来線(台鐵)お構いなしで站を作っちゃう」事にある。その結果、市街地から相当離れた所に、しれっと高鐵站ができてしまう。街へのアクセスは、バスかタクシーか、自家用車しかない。だから、仮に高鐵で「台南」站で下車したからといって、駅前に古都・台南の街が広がっているわけではない。他の站もそんなのばっかり。日本で喩えるなら、「新尾道」で下車したけど、肝心の「海と坂道とお寺の町・尾道」とは全然違う田舎の山の中だった、みたいなものだ。

日本の場合は新幹線駅が後からできたら、在来線の駅名とは異なる名前にして利用者の混同を防いでいる。しかし、台灣だと、鉄道運行会社が別ということがあってか、後発の高鐵が堂々と離れたところにある市街地在来線站の名前を名乗ってしまっているのであった。はっきり言うが、あんまり賢いやり方だとは思わない。

その結果いびつな事もおきている。高鐵開業時、南端の終着駅として「左營」站が登場した。その際、站の立地がちょうど台鐵とも並行していたため、利便性向上のために台鐵側にも新駅を造ることになった。ただ、台鐵には既に「左營站」が存在する。その結果、高鐵左營站に接続する台鐵の駅名は「新左營」となっている。同じ駅舎なのに、站名が違っている不思議。

高鐵があえて市街地を離れて走るのは、上記コストや期間面だけでなく、都市計画上の思惑もあるそうだ。敢えて町はずれ(というか、外れすぎて全然違う場所)に新站を作ることによって、そこに新しい街を作ろう、という考えがある。

とはいえ、実際おかでんが見た風景と、他webサイトで見かける駅前の写真などを見た限りではこの計画は失敗しているっぽい。駅前には巨大駐車場とバス停とタクシー乗り場、以上。という站ばっかりのような気がする。まわりはがらんどう。

もともと人口が2,300万人しかいない台灣という国で、そこまで地方都市部の土地が逼迫しているとは思えないし、これからは人口減少に向かっていく。そんな中で、高鐵站ができたとはいえ日常生活に支障がでるような田舎に新しい街ができていくとはとても思えない。できたとしても、せいぜい日本のJUSCOみたいな郊外型ショッピングモールがドカンとできる程度で、街全体の賑わいに繋がるとは思えない。

まあ、このやり方が失策だったのかどうなのかは数十年後になってみないと分からないが、今のところ言えるのは「高鐵は速い。ただし市街地へのアクセスが悪いのでそこでのタイムロスが惜しい。」ということだ。その結果、台北から台灣西部~南部への航空便はほぼ絶滅に追いやったが、台鐵の特急自強號や高速バスはまだまだ生き延びている。台鐵やバスだと、市街地中心部へ直接乗り入れてくれるので便利だからだ。

そんなことを考えながら、風景を眺めていたのだが、思ったより田んぼが少ない気がする。台灣人の主食は米だと思っていたし、日本人が台灣の風土に合わせて改良された「蓬莱米」が広く栽培されているものだと思っていたが、それにしては田んぼがない。畑は結構見かけるし、なにやら養魚しているらしい池もあちこちにある。台灣人は米、食べないのか?そういえば、士林夜市では、魯肉飯などの米料理はどこにでも存在していたが、どれも小ぶりのお椀。がっつり米を食べるという雰囲気ではなかった。

駅通過中

高鐵の乗り心地はとても良い。新しい路線だけあって、揺れが少ない。さすがに数十年が経過した東海道新幹線とは大違いだ。

・・・と思っていたら、場所によってはえらく揺れるところがあって、品質にばらつきがある気がする。

そんな違いを気にしながら、電車は途中停車站である台中に入っていった。全列車停車站である台中でも、追い越し線とホームに繋がる待避線があるのが面白い。高鐵は全ての途中駅で追い越し線が設けられていて、拡張性に富んでいる。

ただ、追い越し線から分岐してホーム側に進路を変える際、非常に慎重に、ゆっくりと曲がっていったのが印象的だった。あまり分岐(ドイツ製)に信頼が置かれていないのか、それともそんなにスピード出してホームに突っ込む必然性がないから余裕なのか、どっちだろうか。

日本だと、過密ダイヤのせいもあってか、一気にホームに飛び込んでいく。それに慣れているので、この高鐵の動きの緩慢さは気になった。

站での停車時間は比較的ゆっくり。日本の新幹線のように、1分程度ですぐに出発というのがいかに離れ業というか、素晴らしいというのがよくわかる。

高雄の町並み

ここから先、30枚写真が紛失しているので、左營站の模様はばっさり割愛。

写真を頻繁にPCに移し整理していたので、何かの誤操作で左營界隈の写真だけが消えてしまったらしい。

左營站到着後、まずは人の流れに逆らい、ホーム先端に行き700Tと記念撮影をした。三脚をたて、セルフタイマーで撮影・・・していたら、駅員さんに激しく笛を吹かれて静止された。写真撮影したらいけないのか。スパイと思われたか。

駅員さんのジェスチャーを見ると、どうやら黄色い線を越えてホーム外側に体を出すな、ということらしい。電車が停まっていようがなんだろうが、黄色線は不可侵領域ということだ。なるほど。

站のコンコースに出ると、そこは高い天井と開放的なガラスで作られた立派な建物だった。さすがに新しい路線であるだけあって、站の作りがとても新しくてユニークだ。関空の出発ロビーを思い出した。

站の構内には、「誰やねんお前」という人の写真がデカデカと写っているポスターが貼ってあり、新春のお祝いらしきものを述べている。どうやら、地元の政治家らしい。この站に限らず、街角などあちこちで同類のものを見かけたので、台灣の政治家というのはこうやって自己PRをするのが定番らしい。

台鐵への乗り継ぎにはまだ時間があったので、コンコース内にあるコンビニを覗いてみた。本が売られているのだが、中には日本人の著書もあって興味深い。というか、売れ筋が紹介されている本棚に大前研一氏の著書が置いてあったのが激しく謎。台灣でもこの人、人気があったとは。

高鐵左營站からそのまま台鐵新左營站へと歩いていく。コンコースで繋がっているのですぐだ。しかし、台鐵の構内の方が薄暗い。この辺りに、運営会社の方針の違いがあるのだろう。

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