「ゆっくりする暇がない」温泉【高峰温泉】

2009年03月29日(日) 2日目

朝の休憩室は混雑

二日目朝。眠くて若干ぐだぐだになりつつも、きちんと起きて朝風呂。頭をしゃきっとさせてから朝7時からの「野鳥観察会」に向かった。

比較的朝が早いというのに、会場の休憩所には人がいっぱいいた。みんな、窓に鈴なりになっている。外からみたらさぞや不思議な光景だろう。

宿の人が、「今来た鳥は・・・」などと説明してくれるのでありがたい。

動物観察1
動物観察2
動物観察3

朝はおなかがすくのだろう、鳥たちがひっきりなしにやってきて、えさ箱の回りはちょっとした混雑状態。みんな、えさ箱の前が空くのを周辺で待っている状態。人間じゃないので、「列を作って順番待ち」という事はできないが、案外礼儀正しい。しかし、空きが出た瞬間に早いモノ勝ちで突撃しないと、いつまで経っても餌にはありつけないのでみんな必死だ。

動物観察5

昆虫の世界同様、デカい鳥の方がエラいという権力図があるようだが、我が物顔で小さな鳥を押しのけるといった光景はなかった。写真左は、順番を待つホシガラス。ホシガラスは警戒心が強いようで、遠くから少しずつ、木を一本一本伝わりながらやってきた。無事餌にありついたときは観客から拍手が。拍手するような内容ではないのだが、やはりじらされると人間、弱い。

今日も黄色いカワラヒワが大挙しておしかけていた。ジュウシマツのように多いな。群れを作って生活する習性があるらしい。いい加減お前ら見飽きた、となりそうだが、餌をついばむのがうまいやつ、下手なやつといろいろいるので見飽きない。

他には、コガラ、ゴジュウカラなども時折やってきた。キジバトがやってきたときは、「何だ、鳩じゃん」という雰囲気が客席に充満。ハトって、都会でも見慣れている生き物なので、こういう別天地で見かけるとなんだかガッカリ感が強い。

リスも登場

リスも登場。

一同、「おー」という声。お子様大喜び。「尻尾ふさふさだー」なんて言ってる。

最初のうちは「レアアイテムゲット」といった感じで一同ホクホク顔だったのだが、ずっとこのリス野郎がえさ箱の前に陣取っているので「お前、もういい。帰れ」ムードがだんだんと強くなっていった。物事、適度ってものがある。

ただリスとしては、小鳥と違って体が大きい。そりゃたくさんのひまわりの種を食べないといかんわけで、早く食べろという方が無理ってもんだ。

リスがお食事を続けている間、鳥たちはえさ箱に近づこうとしなかった。捕まえられて食べられるということはない関係だが、デカい動物とは争わない方針なのだろう。

朝食会場

鳥を観察していたら、あっという間に1時間が経過、朝食の時間になってしまった。

荷造り、まだしていないんだけどなあと思いつつも、食堂に向かう。

朝食
朝食
朝食
朝食
朝食
朝食
朝食

朝食も、夕食同様シンプルというか地味。でも、それがまたいい。こういう内容で、こういう量が一番いいや。朝から固形燃料で湯豆腐ぐつぐつ、なんていらん。

話は脱線するが、一度熱海に泊まった時に、朝食に「固形燃料でアジの干物を焼こう」というのがあって感動したことがある。ステーキを焼く鉄板みたいなギザギザな鉄板の上にアジの干物。で、できたてを食べるんだが、おいしかった。朝食に固形燃料を使うのはぜいたくすぎると思うが、あれは許す。あれは素晴らしかった。

温泉玉子がお椀に入っていたが、さてこれは温泉玉子なのか、半熟玉子なのか。なにせ、源泉温度は25度だ。表現が難しいな。つゆには、蕎麦の実が入っていてこれがまた美味い。

自家製味噌で作られたと思うお味噌汁も大層結構なものでございました。

でもこの宿、子供にとってはワクワクしない食事だろうな。夕食も、朝食も。大人好みの和風メニューだらけだ。でも、こういうのを子供のうちから食べ親しんでいれば、大人になった時にイカす紳士淑女になれそうな気がする。

日本秘湯を守る会スタンプが埋まったよー

食後すぐに部屋に戻る。ゆっくりお茶を飲んでくつろいでいる時間は、ない。

なぜならこの宿は「ゆっくりする暇がない」宿だから。

8時50分にスノーシューツアー集合なので、すぐに荷造りしてチェックアウトしないといけない。

おかでんはこの辺手際が良いので、ちゃっちゃと荷造りを済ませて一足先にチェックアウト手続き。相方はもたもたしていて、大幅に遅れた。

男性でさえこのありさまなので、女性だったら相当慌ただしいだろう。お化粧などは朝食前に済ませておかないと、とてもじゃないが「朝食→歯磨き→荷造り→チェックアウト」という工程を50分以内に済ませるのは無理だ。

さて、この宿は「日本秘湯を守る会」の会員宿だ。会員宿の場合、スタンプ帳を差し出せば一つ、スタンプを押してくれる。このスタンプを3年以内に10個集めれば、既に宿泊した宿のうちどれか一つに一泊の無料宿泊ができる特典がある。

苦節3年、ようやくスタンプ10個達成。お疲れさまでした。1泊1万円と考えると、10個のスタンプっつーことは10万円か。お金を随分と秘湯を守る会につぎ込んだものだ。

ただ、せっかくのスタンプ10個だったのだが、「一泊無料宿泊」の特典は利用しないまま期限切れになってしまった。「平日限定」「お一人様では受け付けない宿もある」「このスタンプ台帳を、秘湯を守る会事務局に送付する際に、宿泊希望宿と日時を第一~第三希望日まで記入する」という制約がやたら面倒で。

荷物は、休憩所にて預かってもらう

荷物は、休憩所にて預かってくれるというので休憩所に運ぶ。

休憩所は既に皆様の荷物でいっぱい。万引きし放題なので、貴重品は携行する必要がある。使用済み下着などに興味があってたまらん、という変態が気になる方は、そういったものも携行するしかあるまい。使用済み歯ブラシを持っていく変態がもしいたらどうなの、とか神経質になる方なら、もう全部持って表に出ろ。

動物の足跡について

遅れている連れをロビーで待つ間、動物の足跡について解説されている張り紙を眺める。

玄関先では、ガイドの方が「スノーシューに行く人!もう時間だぞ!置いていくぞ!」と何度も叫んでいる。何やってるんだ、連れは。こういうのは時間厳守。

なにせ、スノーシューって、靴じゃないんだからすぐに履いて出発、とはいかない。サイズをあわせて、手間がかかる装着をして、身長に合ったストックを選んで、という時間がかかる。事前に相方にその旨伝えておけば良かった。

さて、スノーシューって何が楽しいかというと、スキーやスノボーでは普通立ち入らない・立ち入れないところにズカズカと入っていける事にある。そのため、動物の足跡を追いかける、「アニマルトラッキング」という楽しみができる。

雪が積もった山だと、動物が歩いた跡はくっきりと残る。これが面白い。動物が歩いたであろう後を、気が済むまで追いかけ続けてもよいし、「これはなんの動物だろう?」と推理するのも楽しい。

キツネが真っ直ぐに歩くのに対して、タヌキはフラフラと歩く習性があるのも、アニマルトラッキングで分かる。信楽焼のタヌキが酒の瓶をぶら下げているのは、歩き方が酔っ払いみたいだから、なのかもしれない。

雪の中を歩く

まだ部屋でゴソゴソやっていた相方に携帯電話で督促をかけ、説教を垂れ、あわてて既に出発したグループを追いかけていった。本当に置いていってるんだから、ガイドの人、本気だぜ。

その「遅い!何やってるの!時間厳守でしょうが!」と電話で相方に説教を垂れている様を見た、同じく遅れ気味の若い女性グループが「すごーい、厳しいですねー」なんて感心してるんだか呆れたんだかの声をあげていたが、いやいや。実際もうみんな先に行っちゃってますから。貴女たちも急いだ方が良いですよ。

多分ガイドの人からすれば、「無料参加のツアーなんだし、遅れたら来てくれなくても結構」くらいの考えなんだろう。どうせ遅れる奴は集団行動ができないだろうし、足手まといになるくらいの割り切りをしていてもおかしくない。実際そうだとおかでんも思うし。僕らお客様、上げ膳据え膳当たり前、の感覚でいると振り落とされる。それ、急いで合流せよ。

幸い、ある程度のところまでは集団はゆっくりと歩いてくれていて、かつ、途中で待っていてくれた。さすがに、単独行動されて遭難しました、じゃあ後味悪いからだろう。人数をカウントし、予約していた人数と数が合ったところで、再度出発。もちろん、その前にお説教があったが。

関さん

このガイドは関さん、という方で、普段は宿の親父なんだがスノーシューツアーもやっている。後でクロスカントリーの先生に聞くと、相当な山登り野郎らしい。凄いなこの宿。星に詳しい人やプロカメラマン、鳥に詳しい人などいろんな人材がわらわらと居る。そのくせ、シロウト臭のする宿運営ではなく、隅々までプロな仕事をしているんだから。

全員がそろったところで、関さんから演説があった。

「わたしが訓練教官の関先任軍曹である。話しかけられた時以外は口を開くな!口でクソをたれる前と後に”サー”と言え!分かったか!ウジ虫ども!」

もちろん、われわれは

「サー、イエス、サー!」

と答えるしかない。すると、

「ふざけるな!大声出せ!タマ落としたか!」
「サー、イエス、サー!」

こんなやりとりがしばらく続いた。いや、冗談ですけど。

実際のところは、

・技量も体力も分からない大人数を引率するので、予想外の時間がかかりそう
・限られた時間の中でなんとか高峰山の山頂までは連れて行ってあげたい
・しかもそのままナイスタイミングで宿に戻り、昼食で名物の十割手打ち蕎麦を頼んだ人にできたてを食べさせてあげたい

という配慮があったから、われわれを急かしていた、というのが真相だった。

特に最後の十割蕎麦の件は、道中何度も関さんが「蕎麦が伸びるぞぅ、立ち止まるなぁー!」と言っていたので、重要だったようだ。短時間にたくさんの蕎麦を提供しなくてはいけないため、食堂では食事予定時刻にあわせて見込みでゆで始めるようだ。そのため、下山が遅れると本当に麺が伸びてしまう恐れがあった、というわけだ。

スノーシュー

全員が集結したところで、全員スノーシューのかかとを固定する。普通、スノーシューというのは和かんじきと違ってかかとがフリーになっていて、かぽんかぽん歩く度に動く。しかし、ここから先は傾斜がきつい坂を登るので、かかとを固定するのだという。

実際にかかとを固定してみると、ハイヒールを履いたような状態になった。坂道を直登しても、これだと姿勢が維持しやすい。実際、大層楽だった。

動物の足跡
足跡、こっちにも

歩き始めて早速、あちこちに動物の足跡が観察できた。

手つかずのまっさらな雪面の上を、足跡がすいーっと伸びている。ええと、これは何の動物だろう。

・・・よくわからん。新種動物発見、ということにして、あとは藤岡弘隊長にでも調査してもらおう。その都度、関ガイドから説明があったはずだが、さすがに覚えていない。

写真上の大きな足跡は、カモシカ・・・かな。

これだけ雪がまっさらな状態だったら、足跡見れば一発で分かるでしょ、と言われそうだが、案外シロウトには難しい。昨日降った新雪の上を歩いたばかりの足跡、だったら比較的判別が容易なのだが、数日前の足跡にでもなると相当型が崩れているからだ。

しかも、奴らケダモノ共は生意気にも四本足で大地を闊歩する生き物なので、どれが前足でどれが後ろ足で、右左はどっちだかがよくわからなくなる。

さらに上級編ともなると、このあとのクロスカントリースキーの時に見かけたのだが、「山の斜面をずり落ちながら疾走する足跡」というのもあった。これだと、足跡がずるずると横に流れるため、なんだかもの凄く足幅が広い謎の生物と勘違いしてしまう。

でも、「これはなんの動物だろう?」と悩み、どっちからどっちに向かったのか?とか、なぜここで方向転換しちゃったんだろう?なんて考えるのが、アニマルトラッキングの楽しさだ。フリーでスノーシューができるなら、この足跡をどこまでも追いかけ続けるんだけど、今回は無理。追いかけていった先に巣穴があったりして、面白いもんだ。

狭い木々の間を抜けていく

スノーシューは雪面をてくてく歩くので、スキーと違ってダイナミックに移動はできない。しかし、楽しいのは、狭い木々の間を抜けていくこともできるし、山の斜面を登っていくことも容易ということだ。要するに、小回りがきく。

新雪の上であっても、よっぽどフカフカな雪でなければつぼ足になることはないので、ざくざくと歩ける。ニンジャが使っていた水とんの術と原理は一緒だ。体重を広い面積に分散させれば、本来沈むはずなのに沈まないで済みますよね、ということ。

ゲレンデ

われわれは樹林帯の中を歩き、ゲレンデまで出てきた。中・上級者コースなのだろう、結構な急斜面だ。斜度は30度強、程度か?下から見上げるとそそりたつ斜面だが、スノーシューだとぐいぐいとまっすぐ登れてしまうから痛快だ。夏山だったら、つづら折れでジグザグに登りつつ、息が上がって疲れまくるシチュエーションだが、平気。すばらしい。

隊列を組んで登る
関さんが時々隊列をチェック

通常ガイドさんは先頭にいるのだが、時折後ろまで下がってきて、遅れている人たちにハッパをかけたり、人数を数えていた。どうしても写真を撮ったり、景色を見ていて遅れる人がいるからだ。

こういう山岳系のガイドは、先頭にリーダー、最後尾にサブリーダーがついて行列を挟み込むのが常識。どんどん最後尾が遅れていき、そのままはぐれてしまい遭難するという事例があるからだ。その点このガイドさん、一人ではあったが常に全体に気を配っていた。さすがだ。

なんでも、昔は相当やんちゃに山に登っていたらしいのだが、槍ヶ岳だかどこだったかで足をいわせてしまい、今では自粛しているそうで。本職は塾講師らしいので、必要に応じて下界からガイドとして上がってくるのだろう。

しかし、クロカンの先生によると、「それでも相変わらず冬の八ヶ岳とか行っているようですけどね、凄いですよね」とのこと。よくやるぜ、この親父。確かに、体に何かトラブルがあるとは全く思えない健脚ぶりだった。

その関さんだが、おかでんが少しは登山をやっている事を知ると「同士発見!」とばかりに、

「北鎌はいいよぉ、あそこはぜひ行くべきだね」

なんてお奨めし始めた。北鎌、というのは北アルプス槍ヶ岳の北方稜線のことで、通常の登山地図にはルートすら載っていないし紹介もされない場所だ。ただ、谷底からうわっと稜線が駆け上がっており、その間ずっと岩稜なので山好きにはたまらん場所ではある。ただし、危険すぎるので本では紹介されない、そんなルート。

「いや、僕そんなに技術ないですから。北鎌登るのって、やっぱり湯俣温泉から?」
「そりゃそうだよ、大天井からショートカットするんじゃなくて、湯俣から行かないと」

山をやらない人からすると何のこっちゃわからない会話だと思うが、分かっている人がこのやりとりを見れば「なんて無謀な事を勧めてるんだ」と思うだろう。

湯俣温泉からのルートは、谷沿いに進んで北鎌に取り付くのだが、そこにいくまでで遭難しかねないデンジェラスなルートだ。さらにそこから、北鎌に取り付くとモストデンジェラスになるわけで、これをやり遂げたら一生自慢して余生を過ごせるといって過言ではない。

シャクナゲがションボリ

われわれがあまり経験のない雪上歩きで高揚しているというのに、なにやらしょぼくれた葉っぱをぶら下げた木が目の前にあった。全部、しなびたように下を向いてしょんぼりしている。おい、もっと楽しそうにやれ。

ガイドに聞いたら、これはシャクナゲなんだそうだ。夏になると独特の葉っぱの形状で人の目を引くシャクナゲだが、冬の間はこんなに残念そうな格好をしているのか。厳冬期を乗り切るための工夫なのだろう。

「だったら葉っぱを落として、春にもう一度新芽を出せばいいじゃないか」

と思うのだが、馬鹿をいえ、そんなことをやる体力など無いわ。だいたいエコじゃないし、とシャクナゲさんに説教されそう。

稜線

しばらく登っていくと稜線に出た。稜線といっても両側が切り立っているような場所ではないので、一歩足を踏み外すと奈落の底、ということはないので安心。そりゃそうだ、そんな場所に初心者を連れて行くわけがない。

「もうこれ以上きつい登りはないぞぅ」「蕎麦が伸びるぞぅ、頑張れぇ」

ガイドの声がひびく。蕎麦を注文していないわれわれ2名にとっては、正直「蕎麦が伸びる」と言われても全然ドキドキしないのだが、中には「やばい!」と肝を冷やした人がいたかもしれん。伸びきった蕎麦を食べるときのむなしさといったら。

山頂間近

しばらく、狭い稜線を歩いていくと岩がごつごつ飛び出ているところにでてきた。ここが山頂。

高峰山山頂

高峰山山頂。標高は知らん。

山頂は小諸市街地方面にせり出していて、南方の景色がとても良い。

ほこら
ガイドの関さん

岩場の影にはほこらもあった。ピクニックにはちょうど良い距離。高峰温泉から約2kmといったところ。

山座同定中

「ほら、あそこにちょこっと雲の隙間から顔を出しているのが○○岳・・・」

と解説を受けるが、それがどれを指しているのかよくわからず、全てにおいて生返事をしてしまった。

こっち方面から山々を眺める事はないので、とても分かりにくかった。特に、八ヶ岳を北方面から眺めることがないだけに、八ヶ岳・南アルプス方面の話は理解できなかった。すんません。

池の平湿原

雪がたっぷり残っている辺りは「池の平湿原」と呼ばれているところ。

「ああ、あの有名な!」

すまん、初めて聞いたのだが。

高峰温泉から湯ノ丸高原に抜けていく道の途中にある、高層湿原。夏になると高山植物が奇麗だそうだ。夏シーズンは高峰温泉からトレッキングツアーが出る。

また、今日スノーシューツアーを選ばず、クロスカントリースキーツアーを選んだ人はあの辺りに居るはずだ。

佐久平

小諸市を見下ろしたところ。佐久平と呼ばれる平野が広い。長野って、山だらけのイメージがあるが、こうやって平野もしっかりあるので変化に富んだ面白い県だ。

「ごらん、人が虫けらのようだよ」
「いや、人なんて見える距離じゃないですから」
「君のことだよ」
「なんと!?」

木の枝がぐにゃりと変な方向に

厳しい冬を乗り切っているため、木の枝がぐにゃりと変な方向に向いていたりする。そんなにしんどいなら生えなきゃいいのに、と思うが、植物の場合、人間様のように快適なところにトコトコと歩いて移動するわけにはいかない。種が落ちたところで、生きるか死ぬかで頑張っていくしかないのだった。だから、体がねじれようがなんのその。

うさぎの足跡

一方、畜生共はというと、相変わらず雪山を走り回っている。足跡だけ見ると、雪がうれしくってしょうがないように見えるが、そんなことを本人(本匹?)に伝えると「ふざけんな、こっちは必死で生きてるんだ」と怒られそうだ。

写真は、ウサギの足跡。ガイドさんに「どっちの方向に向かっていったと思う?」と質問されたので、四本足の跡のうち、小さな足が向いている方だ、と答えた。しかし実際はその逆で、その答えを言う時のガイドさんの「してやったり」顔といったら。ちくしょう、引っかけ問題だったな?

ウサギの場合、後ろ足でぴょーんと飛ぶため、跳び箱を跳ぶような状態になる。すなわち、前足の着地点よりも前に、後ろ足が着地する。変わった生き物だ。動いているときは常にコマネチをしているようなものか。

こういうのを一つ一つ見るだけでも楽しい。

尻セード

行きはあれだけ「蕎麦が伸びる」とか「スタート時間が遅れたので山頂には行けないかもしれない」と脅していたガイドさんだったが、山頂で十分な記念撮影や休憩をする時間をとった上で、下山開始となった。

ゲレンデまで下りてきたところで、ガイドさんは「ちょっと一気に下ってみるかな」と言いだし、「ここから尻セードするぞぉー」と大声を出した。

尻セード。山登りをする人ならば誰しもが憧れる下山方法だ(誇張含む)。

もともと、「グリセード」という登山用語が語源。グリセードは、雪山において、ピッケルを支えにしつつ、膝を曲げながら滑り降りていく、「登山靴をスキー板にみたてて斜面を滑り下りる下山方法」だ。それを尻もちを付いた状態で、ケツを使ってやろう、というのが「尻セード」。日本語が混じった。また、「尻制動」の意味もある、と後付けで解釈がある。

やり方は簡単、単にケツで坂を滑ればよろしい。もちろん、正面に木が生えていたら危ないので場所には注意。また、ケツで効率よく滑っていかないといけないので、体育座りをゆるめた体制くらいまで、体を丸めていかないと滑らない。度胸も少々いる。

スキーじゃないので、大して滑りは良くない。その分、ある程度安全には滑り降りる事ができる。

尻セード中

これ、やってみたかったんだよなあ。いい機会だ、とばかりに尻セードしまくりながらゲレンデを転がり下りていった。なお、痔
の人は絶対できないと思うので、あしからずご了承くださいませ。

天使を作る事ができる

旅館が近づいたところで、時間に余裕ができたのだろう。ガイドさんが、雪の斜面にストックで絵を描き始めた。

「天使を作る事ができるって知ってるかぁ?」

何を言い出すのだ。ここに俺様という天使が既に・・・あ、いや、すいません話を続けてください。

なんでも、雪に大の字になって倒れ込み、そこから腕だけを上下に振ると、天使が羽を広げたような型ができるのだという。なるほど、それはごもっともだ。

天使制作中

早速、女の子達が並んで天使を作ろうとしていた。ニコニコ顔で雪に倒れ込んだは良いのだが、「きゃー」「つめたーい」などの悲鳴。どうやら、天使になれずに堕天使化してしまったらしい。

おかでんの相方も試してみたが、酷いできだった。

「・・・これは天使とは言わん。ミシュランタイヤのマスコット、ビバンダム君だ」

もこもこしたダウンジャケットを着ていたので、胴体部分がまさにビバンダム君状態だったのだった。しかも、相当なデブだ。

おかでん天使

「大体だな、へっぴり腰で雪に倒れ込むから形が崩れるんだ。雪面に磁石で吸い付けられるように、ビターンと倒れ込まないと」

おかでんは傍観者に徹するつもりだったのだが、見かねて御大自らが雪へとダイブ。自分までビバンダム君になるのはいやだったので、上着を脱いでからの挑戦。

その結果、頭を痛打。そうか、雪は固く締まっている事を忘れていた。そのまま突撃すると、後頭部が陥没するわ。

危なく脳を破裂するところだったが、雪によって急速冷却されたのでなんとか死ななくて済んだ。

手を振ってから、立ち上がってでき映えを見てみる。

「うーん・・・天使?」
「言われなくちゃそうには見えないですね。いや、言われても、見えないです」
「ジュディ・オング、といった方が早そうだな」

1 2 3 4 5

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください