「ゆっくりする暇がない」温泉【高峰温泉】

お茶を飲む

11時53分、高峰温泉に帰還。

12時から昼食なので、なんともジャストタイミングだった。あのガイド、ただものじゃない。時空を自在にコントロールできるのか。

というわけで、蕎麦を注文していた人は無事、蕎麦が伸びずに済んだ。おめでとうございます。

従業員さんがわれわれのところにやってきて、「食堂がいっぱいなので、お昼ご飯は12時15分からにしてもらえないか」とリクエストしてきた。われわれは全く構わないので、それでOKとした。多分、蕎麦ゆでに厨房の全勢力を傾けたいのだろう。

われわれとしては、20分程度の時間猶予ができたことになる。これ幸いと、風呂に入りにいく。カラスの行水だが、寒い外から帰ってきたんだしぜひここは温泉に。自ら、「ゆっくりする暇を作らない」方向になんだかシフトしてきている気がするが、まあいいか。

風呂上がり、そば茶を飲んで時間になるのを待つ。といっても、2分程度だが。

食堂

時間になったので、食堂へ向かう。

スノーシューで厳しく時間管理を躾けられたわれわれは、寸分の狂いもなく定刻どおり食堂入り。やっぱ人間、躾って重要だな。

既に食堂入りして食事をしている人は、ほぼ全員蕎麦を食べていたようだ。蕎麦、大人気だ。自家製粉の十割手打ち蕎麦となりゃ、頼んでおけばよかったとおかでん後悔。ただ、美味いかまずいかまでは不明。1,000円という値段を払って、おいしくない蕎麦を引き当てるリスクを取らなかった分は良かったかもしれない。ただ、実はメチャ美味くて食べられなくてざまぁ、かもしれないが。

昼食の席は、朝夕に使った席とは別の場所だった。何だか落ち着かない。たった二食しかしていないのに、人間って癖がつくんだな。特に宿の食事の場合は。

「なんだか、落ち着かないな」
「あ、そう思いました?いい、とか悪い、じゃなくて、単純に何かおちつかないですね」
「今朝と席が違うからなんだけど、どうしてだろう」

こんなもの、結論など出るわけもない。

大学時代、講義を受ける際はほぼ決まって同じ席に座っていたが、それと同じなのだろう。人間、「ここ」と決めると、そこがめっぽう居心地が良く感じるものだ。縄張り、みたいなものか。

鯉丼

おかでんが注文したのは「鯉丼」。900円。

鯉が信州名物であるから、という理由もあるが、軽食類を除くとこれが一番安かったから選択した。つまり、900円よりも安い昼食は、この宿では用意していない。

正直、お昼ご飯には全く期待していなかった。量が少なくて、大しておいしくもないものが高値で提供されるんでしょ?、と。だから、一番安いのを選んだ。昼食の予約をしたのは昨日の午後。

しかし、この宿はなかなかやりおるわい、と気付いたのは前日の夕方頃からであり、もし今朝の段階で訂正可能だったら「もうちょっと高いメニューを選んでも良かったかも」と思っただろう。2,000円もするが、蕎麦、鯉の旨煮、小鉢三皿、ご飯がつく「高峰御膳」なんてのも魅力だ。しかしそれは後の祭り。

鯉丼アップ

鯉丼は「うなぎの蒲焼き風味」とお品書きに注釈がつけられていたが、なるほど、手元に届いたブツを見ると納得する。大ぶりな鯉の切り身に甘辛いたれを絡ませて、ご飯の上に載せている。白髪ねぎがアクセント。

実際に食べてみるとこれがうまいうまい。ご飯ともよくあう。冬の鯉ということで脂も乗っていて、それがまったりして大層よろしい。しかも、海の魚ほど濃厚な脂ではないので、食べやすい。

もっとリッチなメニューを選択しても良かったと一時は後悔したが、いやいや、一番廉価だったこれでも十分すぎる美味さですよ。大満足だ。

鯉の切り身入りのお吸い物

お吸い物の中にも、鯉の切り身が入っていた。

昨晩と今日のお昼にかけて、鯉を一体何種類食べたんだろう?随分、鯉を見直した。

鯉、といえば「洗い」を思い出して、「あんまりおいしいとは思わないが・・・」という印象と、「一歩間違えれば寄生虫にやられる」というリスクが頭をよぎっていた。しかし、これからは鯉はいろいろ調理法があるし、美味い、と認識を改めよう。

ただ、自分でさばくのだけはいやだ。あの巨体、そしてギョロっとした目、巨大な鱗はみていてあまり気持ちの良いモノではない。

鮎定食

「それはいいとして。なぜ君は鮎定食なのかね」

相方は、鮎定食(1,200円)を注文していた。出てきたのは、季節外れな鮎の塩焼き。

「いや、特に理由なんてないですけど」
「まあ・・・理由が無くちゃ食べちゃいかん、という法はないがね。それにしても季節、外れすぎだろ」
「鮎って、案外食べる機会がないんですよ。だから、食べられる時に食べておこうと思って」

なるほど、それは確かに言えてる。町の定食屋や庶民的な居酒屋で鮎を出す店というのはあまり見かけないし、季節になればスーパーで鮎を売ってはいるが、一人暮らしの男性が家で鮎をあぶって食べる、というのは滅多にやらない事だろう。

そういえば、昨年一年間を振り返ると、おかでん自身鮎は一回しか口にしていない。案外「食べられる時に、食べる。季節なんて知ったこっちゃねえ」というのは間違っていないのかもしれん。

なるほど、と感心しているおかでんに

「どうです、うらやましくなったでしょう。でも交換はしないですからね」

と妙に勝ち誇る相方。いや、そんなに勝ち誇られるとこっちもリアクションに困るんですけど。

面白いのは、ご飯が麦飯で、とろろがついている事だった。

「これは何か?鮎は牛タンと同じ位置づけである、と宣言しているのか?」
「関係ないとは思いますが、面白いですね」

おやき

そして彼の手元には、おやき2個も運ばれてきた。注文していたのは当然昨日の段階で知っていたが・・・

「おい、どうするんだよ、これ」

さすがに鮎定食を食べてこれも食べるほど胃袋に余裕はあるまい。

「どうしましょうか。信州名物ってことでつい注文しちゃったんですが」

おやき自体が信州名物だが(松本以北の文化か?)、ここのおやきはくるみ味噌入りのものだった。くるみをよく食するのは東信地方特有の文化。蕎麦のつゆにもくるみが入るくらいだ。地元文化の二乗だ。そのため、ついつい手を出してしまったんだと。

「この後のスキーの際の非常食にします。万が一遭難したら、救援が来るまでこれを食べて飢えをしのぎます」
「おう、そうしてくれ。ただ、助けがくると思うなよ」

XCスキー

お昼ご飯を食べ終わると、もう13時近い。やあ、相変わらずゆっくりさせないねえ、この宿は。13時からは「初心者のためのクロスカントリースキー講習会」。

定刻に玄関に行くと、誰もいないのでフロントで確認したら、われわれだけだった。なぜ?クロカンなんてやる機会、滅多にないだろうに、もったいない。われわれだけが何か感性、違うんだろうかとやや心配になる。

クロカンの準備をする。専門のブーツをはき、体にあった板とストックを選ぶ。おっと、スパッツも忘れずに。

それにしてもこの宿、一体どれだけ冬用グッズを取りそろえているんだ。スノーシューなら足のサイズを問わないが、クロカンの場合は各グッズが全て各自の体にあわせてサイズが違う。一回500円くらいのレンタルにしても良いのに、無料で貸し出すとは太っ腹もいいところだ。この宿、実は財団法人で非営利活動なんじゃあるまいかと気になる。

普通のスキーとクロカンの違う点は、見た目以外全てといって過言ではない。クロカンは「颯爽と滑る」事など眼中になく、「雪の上を歩く」「ある程度の斜面でも登っていける」事を前提に作られている。

まず、スキーと根本的に違うところがビンディング。普通のスキーだとつま先とかかとの二箇所を板に固定するが、クロカンの場合はつま先だけだ。しかも、そのつま先部分は可動するので、かかとを板から浮かせることができる。このおかげで、シャカシャカと前へ進んでいくことができる。

また、板にはエッジが全くなく、しかも分厚い。そのため、ターンなんぞはほとんどできない。原則、直進にしか進めない代物だ。これは即ち、ブレーキもほとんどきかないことを意味し、下り坂になると初心者は相当怖い。停まらないからだ。一応止め方はボーゲン風にハの字型にするらしい。

板の裏側には、うろこ状のぎざぎざがついている。この凹凸のおかげで、板は前方に滑ることができるが、後方や横には滑らないようになっている。その結果、上り坂でもずいずいとまっすぐ登ることができる、というわけだ。カニ歩きをしなくてもいい。

XCスキーの先生

幸いわれわれしか受講者が居なかったので、先生を独占状態。昨日のカメラ講習会に続いて、独占二度目。ありがたいことです。他の人はスキーを滑りにきたついでにこの宿を利用しているのだろうか?

われわれは分刻みスケジュールでこの二日間を過ごしているが、そんな奴はわれわれだけのようだ。その証拠に、お昼ご飯食べながらビール飲んでるおっちゃんたちが結構いた。おー、くつろいでるなあ。このままチェックアウトするのだろう。

さて、おかでんはクロカンの経験があるのでレクチャーは不要なのだが、相方は初めて。スキーすらまともにやったことがない。だから、先生にみっちりと基礎を仕込んでもらった。みっちり、といってもターンやブレーキという概念があまりないものなので、「前へ進む方法」を習う程度だ。

慣れてくると、交互の足に重心を移動させながら板を前に繰り出すようになる。雪の上で、スキー板履いてスケートをやっているようなものだ。ただし、重心をかけすぎるとバランスが崩れるので注意。この際、通常のスキーのように、姿勢が崩れてもビンディングが外れることはない。そのため、「あららー」といいながら倒れるしかない。下手にすっころぶと足首を痛める、地味に危険なスキー板だ。

林道歩き

15分ほど、宿の前をいったり来たりして練習する。坂を登っていく感覚が楽しい。ただ、下り坂はたとえ緩やかであっても肝を冷やす。間違えても、このままスキーゲレンデに出ちゃダメだ。尻餅ついて止まるしかない。

慣れたところで、先生に導かれて林道歩きをしてみることになった。池の平へと続く林道へGO。

楽しい林道歩き

林道だけあって、道は平坦で動きやすい。

「夏になるとここはダートロードになるんですけどね、いいところですよ」

と先生は言う。湯の丸高原へと続くこの道はいつか通ってみたいと地図を見ながら思っていたものだが、ダートロードだったのか。

「いや、案外大丈夫ですよ?車高の低いスポーツカーなんかもここに突撃してますからね。NSXも見ました」

おい、アルミボディのNSXがダートロードに入ったらいかんだろ。飛び石で車体にキズがついたら大変に残念だ。

この先生、普段は軽井沢在住なのだが、冬場はここに来ているんだそうだ。

変な足跡

さすがクロカンだ、すいすいと前へ進む。先ほどのスノーシューとは大違いだ。

「スノーシュートは違うのだよ、スノーシューとは」

とつぶやきながら先へと進む。

山の斜面には、なにやら変な動物の足形。ウサギだというが、それにしては横長だ。先生に聞くと、斜面をずり落ちながら移動したので足形が変わったのだという。ややこしいな。

そのウサギ、何を思ったか途中でUターンしており、一体その場で何があったんだろうと気になって仕方がない。人に見られて、「やばい、逃げろ!」と急旋回したのだろうか。

青空

さすがに池の平までは行けるはずもなく、途中適当なところでUターンとなった。

それでも温泉に帰着すると14時40分になっており、当初予定よりも40分も多く先生にはお世話になってしまった。どうもお世話になりました。

さて、われわれの旅も終わりが近づいている。15時30分の雪上車で送ってもらう手はずになっているので、まだ少しは時間がある。最後のお風呂に入ろう。

当初は「14時までクロカン講習だから、15時の雪上車でいいかな?」なんて話をしていたが、念のため最終便の15時半にしておいて良かった。これでようやくゆっくりできる。

ランプの湯に入浴中

風呂に入りながら、この一泊二日で入浴した回数をカウントしてみた。6回。新記録樹立だな。多分これは「1泊2日」の温泉宿滞在においては今後破られる事がない記録として残ることだろう。

雪上車

15時半の雪上車に間に合うようにゆっくり風呂に入っていれば良いのだが、荷造りの関係やらなんやらがあるので早めに風呂からあがる。朝、スノーシューの集合時間で「躾」されたので、5分前集合くらいの感覚でいないと。

・・・と思ったら、うわあ、まだ15分ちかく前なのに、窓の外を黄色い雪上車が過ぎ去っていくではないか。待て、僕らを置いていく気か!

余裕ぶっこいて、暖炉のそばで蕎麦茶を飲んでいたのだが危なく噴き出すところだった。高峰温泉、最後の最後で「せっかくだから、ゆっくりしていってね」ともう一泊われわれにさせようとしているぞ。待て待て待て、明日は二人とも仕事だ。

それ以前に、もう一泊したとしても、昨日ど同じように「カメラ講座に出て、食事食べた後は温泉講座に出て、星空観察会・・・と無限ループだ。ここに滞在している限り、ゆっくりなんてできんのだよ。まだ、2階飲泉所脇の本棚にあった本を全然読んでないし、ニホンカモシカとも出会ってないし、やりたいことはいっぱいある。いい加減この辺りでいったん幕引きにしようや。

慌ててフロントの人に「すいません!僕らも雪上車乗る予定になってるんですけど・・・」と申告したら、フロントの人は慌てて外に飛び出して行った。・・・が、黄色い雪上車はそのまま出発していった。嗚呼。

しかし、フロントの人は戻ってくると「大丈夫です、あともう一台出ますから」と言う。良かった、最終便は「ギリギリまで遊ぶぞ」という人がいるので、二台構成で運行されるのか。

「どうぞ」

と言われるが、肝心の相方がまだ風呂から上がってこない。最後の最後までドタバタさせる奴だ。焦りながら、彼が風呂から戻ってくるのを待つ。この待っている間に雪上車が行ってしまうと、後は「ゲレンデを歩いて駐車場に戻る」か「諦めてもう一泊」という選択肢になる。

随分と遅れて相方は戻ってきた。「時間厳守!」としつけをしたかったが、なにせまだ当初予定よりも7~8分も早い。なんだかしらないけど、雪上車は早々に出発したがっているようだ。まあいいや、われわれが最後の客だ、それ雪上車に乗り込め。

帰りの雪上車は、これぞリアル雪上車、という真っ赤なボディな奴だった。やっぱり、ワンボックスカーを改造しました、というよりこっちの方ががぜん盛り上がる。最後の最後で憎い演出をしてくれたもんだ、高峰温泉。

後部ハッチから乗り込む。席はロングシートになっていて、通勤電車のようだ。屋根の上にも登れるようになっていて、そこに登っている人もいた。

「いいなあ」

と相方がうらやむが、振り落とされるんじゃないかという恐怖で結構身がすくむ場所だと思う。

無限軌道のわだち

雪上車は、高峰温泉スタッフが手を振っているのを後に、宿を後にした。いや、最後の最後までゆっくりさせない温泉だったぜ。

いや、安心するのはまだ早い。今この時点でもゆっくりできない。揺れる揺れる。無限軌道だから揺れるのは当然と理解していても、何か変なゴミでも引っかかったのか、と心配してしまうくらいガタガタ揺れる。

「気をつけろ、うかつにしゃべると舌を噛むぞ」
「でもおかでんさん今しゃべってますよね」
「うそつきだから、閻魔大王から舌を抜かれた後なので大丈夫」
「うそっ!?」

雪上車到着

どこかで立ち往生してしまうんじゃないか、というくらいガタガタ揺れ続けて、雪上車はアサマ2000スキー場の駐車場にたどり着いた。・・・と思ったら、そのまま所定の第三駐車場を素通りしていく。

「待て!どこへ連れていく気だ!」

最後の最後まで油断がならねぇ。

到着した先は、バス乗り場のそばだった。バス接続する便だったので、バス停まで足を伸ばしたらしい。

雪が無いところであらためて雪上車を見ると、なんて無骨なんだと思う。箱じゃん、これ、と。中は簡素なロングシートだし、外は空力もへったくれもないティッシュ箱みたいな形。実用性重視になるとこういう形になるのだな。雪の上で見たときは相当格好良く見えたのだが、アスファルトの上だと全然イケていなかった。この落差たるや相当なものだ。

雪中行軍中は、頭の中で「サンダーバード」のテーマ曲がリフレインしていたのだが、あれ取り消し。

雪上車から降りる人

なお、屋根の上に登っていた人たちだが、やはり降りるのに苦労していた。

一日二便のバス停

肝心のバス停はどこ?と思って探してみたら、半分雪に埋まった状態で発見された。なんていう扱いだ。しかも塗装が落ちてしまい、ほとんど真っ白になっているので見つけにくいことこの上ない。バスを利用する人は注意だ。

とはいえ、バスを使ってやってくる一見さんは果たしてどれだけいるのだろうか。

「うお、一日に2便しかない!」

佐久平駅行きのバスが、10時0分発と15時50分発、以上2便。終了。ちーん。

これは相当な通好みなダイヤだ。熟知していないと、怖くて利用できん。「急におなかが痛くなって、トイレに行っている間にバスが出発しちゃった。テヘっ」なんて言ってたら、雪の中で凍死だ。

スキーシーズンである冬ダイヤでさえこれなんだから、夏シーズンは一日1便以下・・・なんてことはさすがにないよな?

まあ、スキー場なんてそもそも若干辺鄙なところにあるものであって、公共交通機関があるだけでもありがたいというもんだ。車やツアーバスで訪問するのを前提としているスキー場なんてざらだ。これを見て「すげぇ、バスも走っている」と思うべきなんだろう。

それにしても哀しいのが、行き先が佐久平駅、ということだ。普通は小諸駅が行き先になりそうなものだが、小諸駅は通過点に過ぎない。長野新幹線は小諸を華麗にスルーしているので、こういうことになる。小諸市議会、新幹線敷設を断らなければ良かったのにね。

建物
スノーカーニバル開催中

この週末、アサマ2000パークでは「スノーカーニバル」なるイベントをやっている事は事前に把握していた。屋台村ができる、という話だったので、相方と「2日目のお昼ご飯はそこの屋台でもいいねぇ」なんて話をしていた。

せっかくだから、帰る前にそのカーニバルを見ていくか。

まさか、サンバの格好をしたセクシーおねぃさんが雪の中を踊りまくっているわけではあるまい。

目の前にあった建物に入ってみたら・・・あれれ、ここはホテルだ。違う違う、間違えた。すいません、従業員の方、「歓迎光臨」的な顔でこっちを見ないでください。

このスキー場はセンターハウスにホテルを併設しているのだった。確かに、ここは山の上なので、周囲には宿泊施設が高峰温泉しかない。泊まりがけで滑る気満々の「上得意様」をスキー場に呼ぶためにも、この手の施設は必須だろう。

一泊当たりのお値段は、さすがに高峰温泉よりは安め(年末年始を除く)。スキーが主目的で、「星空も、スノーシューも、あれこれ」という趣旨じゃない人はこっちの方が安くて楽ちんだ。これ以上高峰温泉が混むと困るので、スキー客はぜひこっちにお泊まりくださいませ。

気を取り直してセンターハウスに入ってみたが、その屋台村なるものはどこにあるのかさっぱりわからなかった。もう15時半ということもあって、既に撤収してしまったのか、それとも「村」と呼ぶ程ではない、「隠れ集落」程度の規模だったのか。お昼ご飯をここの屋台村で賄おうとしないで良かった。

※なお、高峰高原には、センターハウスそばのスキー場直営宿「高峰マウンテンロッジ」の他に、車坂峠に「高峰高原ホテル」がある。タクシー等で行き先を告げる際、「高峰のホテルへ」とお願いすると、運転手さんが困るので注意。

施設内レストラン

施設内にレストランがあった。巨大なスキー場ではないので、ゲレンデ途中に食堂や喫茶店はなく、食事をするならここ、ということになる。お金を浮かせようとして自宅からコンビニ弁当持参してもダメだ、お米がガチガチぽろぽろになってまずい。

「スキー場の飯っていうのはまずくて高くて選択の余地があまりないっていうのが定番だったがなあ」

むかーしの記憶を辿りながら、興味深くメニューを見る。最近スキー場には全くのご無沙汰なのだが、21世紀の現在一体どのようなメニューがウケているのか、気になる。

まず感心したのが、「スキー場といえば黙ってカレー食え。異論は認めぬ」というメニュー構成になっていないこと。「あれ?定番のカレーはどこ?」と思わずメニューを探してしまったくらい、ひっそりとカレーは位置していた。その代わり、一番目立つ場所にあったのは日替わりパスタ。やっぱり時代は変わってきているな。スキー愛好者が減少傾向にある昨今、ゲレンデ飯のレベルが低いと集客がピンチになるのだろう。昔は学食以下のものを出していても平気だったはずなのに、なんという変わりよう。

ちなみに本日のパスタは、「帆立と海老のクリームソース」だって。1,300円。

お値段はスキー場物価なのだが、帆立と海老が入っているので市井でこれくらいの値段がしてもおかしくはない。しかも、スープ、ミニサラダ、コーヒー付きだ。うーん、いろいろおまけがついているので、高いか安いか判断は難しい。

もちろん、プロのシェフが調理しているわけではないので味は「エクセレント」ではないだろうが、思ったよりダメダメな価格じゃなくてびっくり。おっかしいなあ、昔僕は某スキー場で、レトルトカレー以下なカレーライスを食べて1,000円超えた記憶が。時代は変わったもんだ。

ゲレンデ飯で一番感動したのは、石打丸山スキー場のゲレンデ途中にあるお店だった。そこでは、テーブルにコンロと網が据え付けられており、なんと焼肉が食べられるのだった。当然そうなるとビールも飲んじゃうわけで、そのお店に入ったが最後、それ以降はほとんど滑ることが不可能になったもんだ。ありゃ危険なワナだ。今でもあるのだろうか。

横川SA

スキー場を見学したのち、車で帰途につく。

行きに積雪でチェーン装着を余儀なくされていた道路は、既に全部融雪していた。春はもうどんどんこの標高2,000mまで迫ってきている。

「あー、面倒じゃのぅ」

とぼやきながら、チェーンを外す。

その後はお楽しみ、チェリーパークライン急降下。午前中、われわれは高峰山山頂から小諸市街を見下ろしていたが、それは即ち「見下ろせるような位置関係」ということだ。ジェットコースターよろしく、ぐいんぐいんと下っていく。シートベルトを着用していなければ振り回されること間違いなしだ。多分、後部座席に牛乳瓶を置いておくと、小諸に着いた時点で牛乳がバターになっているんじゃないか。

上信越自動車道に乗り、一路東京へ。

途中、横川SAで休憩のために立ち寄った。すると、なにやら木造作りっぽい建物が建っていて、賑わいを見せている。まだ新築のようだ。よく見るとお祝いの花が飾られていたり、いかにも関係者ですという風情の人が遠巻きに人混みを眺めて、なにやら耳打ちしたり頷いたりしている。

ここで「なんだ、昔の方が良かったのに。」と関係者の前でぼそりとつぶやくと、きっと相当動揺するだろうなと思ったが、さすがにそれは意地悪なのでやめておいた。

屋外店の各店舗には店名入りの提灯がぶら下がっており、いい雰囲気だった。取り扱っている品もバラエティに富んでいて、感心。こういうのができるようになったのは民営化のおかげだよな。SAのテナントが儲かれば、道路会社も潤い、経営に寄与する。良いことだ。どこぞの政権与党が高速無料化だとか言ってるけど、そうするとこういうSAなどの施設改善はズルズルになると思う。おかでんは反対だ。だって、道路の借金と維持費を国庫から払います、ってなったら、SAのテナントがどんなに閑古鳥でもてこ入れなんてしなくなるに決まってる。競争がない世界だし、質が落ちるのは間違いないだろう。高速道路料金は特急料金なんだから、カネとれ、カネを。

マクロスFを使ったポスター

お手洗いの前の掲示板に張り出されていた、ETCでは減速しようポスター。

マクロスFの絵が・・・。いや、アニメには疎いので見たことはないのだが、旬のものをよくぞ引っ張ってきたものだ。

これが公団時代なんぞだったら、きっと30年前、40年前の埃が積もったようなアニメ・漫画キャラを引っ張ってくるぞ。決定権限を持っているおっちゃんが子供の頃に好きだった、というだけで。

ただこのポスターも、単にマクロスF使いたかっただけちゃうんか、という気がしなくもない。別にこのキャラを使って、パテント払わなくても趣旨は十分伝わるポスターは作れたと思うんだが。でも、世の中全ての広告宣伝ってそんなもんだよな。

空釜専用漬物キット

どうもこの横川SA(上り)は、「峠の釜めし」でおなじみのおぎのやがプロデュースしているようだ。屋内施設ではおぎのやグッズコーナーがあった。そういえばおぎのやってドライブインも経営しているので、SAを経営するのはお手のものだろう。

そもそも「横川といえば?」と聞かれたら、もうはっきり言って「峠の釜めし」しかない。「アプト式」とか「シルエイティ。C-121、この一本に乗せてこれるかしら?」なんて言うのはごく一部のマニアだ。そりゃ、横川SAとしてはぜひ釜めしを前面に押し出したいところ。

「おお?」と思わず声を出してしまったのは、「空釜専用漬物キット」だ。名前だけ聞いても意味不明だが、ご丁寧に横に添えられてあるサンプルを見れば一目瞭然。

ほら、峠の釜めしを買ったことがある方、誰しもが一度は「自宅に持ち帰り」をしたことがあると思う。あの小振りなお釜は、何だか捨てるのがもったいないので、ついつい。

しかしいざ自宅の食器棚に並べてみて、使い道に困るのだった。米を一合炊くのにはちょうど良い、といっても、もともと火にかける用途で作られた釜ではない。イイカンジのところでぱっかり割れてしまいさあ大変、なんてバイオテロも起きる。かといって、鉢植えにすると、水抜き穴がないので根っこが腐る。・・・結局、飽きて、邪魔になって、捨てるという結末を見る。

それが、「いやいや奥さん、まだ使い道はありますってば」とおぎのやから提案がこちら。空いた釜で漬物を漬けちゃえ、というわけだ。なんと強引な。「キット」と格好良く横文字を使っているが、なんのことはない、釜の上に乗せる重しだ。・・・これ、わざわざ「キット」を買わなくても、その辺の重たそうなものなら何でも良いだろうに、と思うが、ノーン!それではダメだ。完璧な美を追究するためにも、釜とおそろいの風体の重しでないと。

お値段700円。うは、高い。釜めし自体が900円であることを考えると、相当に高いぞ。

アイディア賞は進呈したいが、これ、買う人いるのかなあ。

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峠の釜飯のお友達の中身

他にも、「峠の釜飯のお友達」という漬物詰め合わせが売られていた。これもアイディアものだな。峠の釜飯を買うと、プラ容器に入った漬物類が添えられてくるのだが、そこに入っている漬物たち勢そろい、というものだ。

あれをあんまり美味いと思ったことはないので、わざわざ買おうとは思わないのだが、ファンならばぜひとも欲しいだろう。

それにしてもやけに高いな、ということとしっかりした外箱だな、と気になったのだが、よく見るとそれぞれの漬物がミニお釜に入っているからだった。ミニお釜が欲しい方は、それ用途ででも、ぜひ。

なお、詰め合わせの他にも単品ばら売りもしているのでご安心を。

こういう商品も良いが、せっかくだから「峠の釜めしの素」ってのをレトルトで売ってくれればうれしいのだが。だし汁と、具の真空パックを詰めあわせて。あの忌まわしい杏が入っていないバージョンだと50円引きしてくれるとありがたい。

八幡屋礒五郎の一味風味・キットカット

キットカットが売られていたが、「善光寺七味」でおなじみ、八幡屋礒五郎の一味風味なんだそうだ。辛いチョコレートってどんな味がするんだろう。

横川は既に群馬県なのだが、県境ということもあって長野県みやげもいろいろ売られていた。県境にあるお店は柔軟に商品構成ができるから便利。

あれ・・・でもこのキットカット、「信州限定」って書いてあるぞ。

領空侵犯だ!群馬県に越境しているぞ、出会え出会え。

急行志賀 湯田中→上野

釜めしというのは、信越本線横川駅~軽井沢駅間が廃業してからも「駅弁」であり、「旅情」なんだろう。建物の中には、なんと本物の電車が一両すっぽり入っていて、そこのボックスシートで釜めしでもどうぞ、という工夫がされていた。力入れてるなあ、おぎのや。

なお、釜めしは既に売り切れだった。

この電車、行き先表示を見ると「急行志賀 湯田中→上野」となっていた。

すげぇ、上野から(長野電鉄の)湯田中まで行く急行列車なんて昔は存在したのか。今じゃ考えられない。

峠の釜めし定食

軽食コーナーでは、定番のうどん・そば、カレー、丼物などがそろっていた。

その中で目立っていたのが、「峠の釜めし定食」。釜めしにお味噌汁がついて1,050円。お味噌汁の替わりにそば又はうどんがついたら1,250円。「ここだけ」というPOPが貼ってある通り、これはその他のおぎのやドライブインでは見たことがない。力入れてるなあ。でも、それだったらおぎのやの本拠地である横川ドライブインでも扱って欲しいんですけど。汁物つけようとすると、なめこ汁200円しかなくて思案するのよね、ランチで合計1,100円かぁ・・・って。

釜飯単品で販売している売り場ではすでに完売御礼だったが、こちらのコーナーではまだ釜飯を扱っているようだった。売り場ごとで在庫管理していて、融通を利かせるということはしていないようだ。もし、釜飯が買えなかったとしても、軽食コーナーに行けば買えるかもしれない。

この後、当然のごとく渋滞に巻き込まれ、ヘロヘロになりながら相方を東京都の端っこまで送り届けてからこれまた東京都の端っこの家に戻った。疲れた・・・。密度、濃すぎ。まさかこんなにあれやこれやあるとは思わなかった。「暇になったら困るから」と本や雑誌を持参していたのだが、全くそんなものを開ける暇すらなかった。こんな「ゆっくりする暇がない」温泉は初めてだ。そして、今後も現れないと思う。こんな体験をさせてくれた高峰温泉には敬意を表したい。また今度訪れる機会があったら、もう少しゆっくりします。多分無理だと思うけど。

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