来日したら標高3,003メートル【立山・黒部アルペンルート】

トロッコ1
トロッコ2
トロッコ3
トロッコ4

いよいよ、トロッコ列車始動。

先方からのリクエストは「立山黒部アルペンルートに行きたい」だ。この黒部峡谷トロッコは彼女たちのリクエストとは微妙に異なる。ここはアルペンルートではないからだ。

このトロッコ列車に乗る事を選んだのはおかでん。これで「いまいち面白くなかった」と思われたら、それはすべておかでんの責任。ちょっと緊張する。

なにしろ外国からのお客様だ。われわれ日本人が「やー、楽しかったね」と感じるのとは時間感覚も満足の仕方も違う。

「せっかく日本に来たのに」というバイアスがかかる。せっかく日本に来たんだから、もっと楽しいものがあったんじゃないか、とか、もっと効率的な時間の過ごし方があったんじゃないか、とかいろいろ「不満材料」はある。

トロッコ同士のすれ違い

しかし、それは杞憂だったようだ。台湾からのお客様2名+Fishの3名がかりで、カメラのバッテリーなんぞそっちのけで写真を撮りまくっていた。どうやら満足して頂けたようだ。しかし、ペース早すぎだぞ、と思っていたら、案の定途中でバッテリ切れになってFish妹は随分残念そうにしていた。

冬季歩道
冬季歩道

トロッコ列車に並行して、コンクリートのトンネルがある。

これは冬期歩道。冬の間になると雪崩の危険があるので、このトロッコ列車用のレールはすべて取り外されてしまう。しかし、川の上流には24時間365日稼働のトンネルがあるわけで、そこで働いている人達は冬もおつとめがある。その人達の通路として、「冬期歩道」が用意されているのだった。雪の中歩くのは難儀、というか無理なので、その歩道全部がコンクリートのトンネルで構成されている。橋の上も例外ではない。

冬期歩道が見えてきたところで、そういう説明をおかでんからFishにする。Fishは自分なりにそれを咀嚼し、今度はFish一家に翻訳して伝える。このタイムラグがどうしてもでてしまうので、肝心の冬期歩道が見えるポイントを過ぎてから「オー」とFish一家から感嘆の声が上がる状態だった。難しい。

ただ、「オー」とは言っているが、きっとお二方は「このあたり一帯が冬になると雪で埋まる」というシチュエーションを想像できていないはずだ。なにせ、南国の人だから。

おかでんが解説した言葉がどういうニュアンスで翻訳され、理解されたのか、逆翻訳してみたいものだ。

出平駅
出平駅の様子

女優・室井滋さんの車内アナウンスがなんだか楽しい気持ちにさせてくれる。

富山県出身、ということでアナウンス役に選ばれたらしい。

トロッコは出平(だしだいら)駅に到着。

完全に雪が溶けていないゴールデンウィーク中などは、ここが終点、折り返し地点となる。

駅といっても、降りたところで何もない。水力発電所があるだけなので、電力関係者専用の駅ということになる。

おっ、出平駅の脇には冬期歩道がずっと延びているぞ。「ほら、あそこにも冬期歩道が」と教えておく。

それにしても、閉所恐怖症の人は絶対無理だな、ひたすらトンネルが続くんだもの。

鱒のすし

富山の名物といえばこれでしょう、と先ほど宇奈月駅で買っておいた「鱒のすし」。めまぐるしく変わっていた景色が一段落したところで、開封してみることにした。

変わった包装がされているので、台湾勢3名興味津々。

しかし、いざ食べる段になって、おかでん参謀長作戦失敗を確信。おなか、空いていないんだった。ついつい「名物だから」って買っちゃったけど、男のおかでんでさえおなかが空いていないのに、小柄な女性の3名が空腹な訳がない。

ええい、ここまできて引っ込めるわけにもいくまい。

ケーキカットよろしく鱒のすしを分割し、食べる。・・・あれれ、そうか、箸は一つしかないんだな。ますます食べにくいではないか、これ。

味見程度でも、とみんなに食べてもらった鱒のすしだけど、「おいしい」というコメントは貰ったがどこまでが社交辞令でどこまでがリアルかはわからん。そういえば、回転寿司屋でFishから「あんまり台湾の人は生ものを食べ慣れていないから量は食べられない」と言われていたことを忘れていたよ。

食べ慣れているかどうかはともかく、トロッコ列車の中で食べるにはあまり向かない食べ物ではあったな。やっぱり片手でさくさく食べられるものじゃないと。

川を渡っていく

当初、川に沿って進んでいたトロッコ列車だったが、だんだん蛇行を始めた。

「往路でトロッコに乗るときは進行方向右側がよろしい」という豆知識を事前に手に入れていたので、われわれは右側に陣取っていた。確かにその通りで右側にスペクタクルが展開されたわけだが、そろそろ右だけ言い思いをさせるわけにはいかんぞ、というわけか。

鐘釣駅

鐘釣駅。

ここでトロッコ列車はちょっとした休憩に入る。団体客がたくさん降りるからだ。

ツアーに参加している団体客は、たいてい終点の欅平まではいかず、ここでUターンする。時間の都合もあるが、ここから先はトンネルが多く見どころが減るからだという。

おかでんも当初はここでUターンすることを検討したが、やはり終点に行ってこそ「制覇した!」って気になるじゃないですか。きっと台湾の人たちもそう思うに違いない。「制覇」、しようじゃないか。全員で。
というわけでわれわれはトロッコの中でおとなしく待機。

鐘釣駅の人ごみ

団体客がぞろぞろと降りていく。急に客車が軽くなるので、ここ以前とここ以降では、運転手さんはアクセルとブレーキの利き具合が大幅に変わって戸惑うだろう。それくらい、客が一気に減る。

鐘釣で降りたからといって何かここに見どころがあるわけではない。川沿いに露天風呂があるのと、夏でも溶けない「万年雪」があるくらいだ。観光客はそれらを見て自然と触れ合い、そしてまたトロッコに乗って宇奈月温泉へと戻っていく。

そんなわけで、昼間に川沿いの露天風呂に入る人がいればそれは相当なるチャレンジャーだ。団体さんにジロジロ見られてしまう。露出狂にはおすすめ。

万年雪

「万年雪」の存在があると知った台湾勢、目に見えてソワソワし始めた。

「今、ホームに降りても大丈夫かなあ?万年雪、見たい」

Fishが台湾勢の意見を代弁。

周囲を見渡すと、結構人がホームに出ていたので大丈夫そうだ。GOサインを出すと、Fish一家うれしそうに、本当にうれしそうにホームに飛び出した。目の前には「万年雪」が。

「・・・ずいぶん汚れているね」

非常にがっかりした声でコメントを述べるFish。「雪=白くてキラキラしてきれいなもの」という意識が強かったようだ。しかし実際の万年雪は、崖の上から落ちてきた土砂や木のせいで茶色くコーティングされていた。

とはいえ、やっぱり雪(というか氷)は雪だ。この暑い8月でも雪が残っている事実に大いなる神秘を感じたようで、Fish親子はうれしそうに写真を撮りまくっていた。この無邪気っぷりは見ていてこっちも楽しくなる。

台湾の人はみんな無邪気な印象を受けるが、どうなんだろう?

記念写真を撮るのはいいが、解説をつけないと理解できないだろうな。「夏でも溶けない雪をバックに記念撮影」と写真にタイトルつけたって、「雪?どれが?」って見ている人は誰もわからない。

鐘釣美山荘

鐘釣美山荘。この鐘釣には美山荘と鐘釣山荘の2つの宿がある。

観光客にジロジロ見られずに露天風呂を楽しもうと思えば、このどちらかに一泊することになる。この鐘釣、一般人はトロッコ以外のアプローチ方法がないので、ここで一泊となれば温泉に入るか駅の売店を冷やかすか宿で昼寝するくらいしかやることがない。

本格的にまったりする人にはおすすめ。

台湾からの賓客をこういう宿にご案内するとどういう反応をするか、若干興味はあるが興味本位で旅行計画を立てるわけにはいかん。今回はパスだ。

万年雪

トロッコはしばらく停車ののち、再び出発した。終点の欅平を目指して。

動き出した直後、また万年雪を眺めることができる場所を通過したが、ここでも台湾御一行様は興奮し、カメラを取り出していた。いや、さっき十分に足場の良いところで撮影したでしょう、と思うが、雪と聞けば興奮せずにはおれないらしい。愛すべき国民性だ。

どんどん険しくなる谷

鐘釣から先は渓谷が険しくなる。なるほどダムを作りたくなるわけだ、この谷に水を埋めたらいいダムができると誰しもが思うだろう。そのかわり容赦ない崖なので、土木建築するのは大変。このトロッコも、苦しそうに右へ左へと大自然を避けつつ前へと進む。そのせいでトンネルが増え、移動時間の多くがトンネル内というありさまになってしまった。

なるほど、観光客が鐘釣でUターンするわけだ。

まるで水墨画の世界

トンネルの中に入ると、景色は全く見えなくなるしゴーという騒音でおちおち会話できないし、で全員が無口無表情になる。ツアーガイドのおかでんとしては、「楽しんでもらえているだろうか?」と不安になるひと時。そもそも、Fishが家族に対してこのトロッコ列車をどこまで事前に解説しているのかさえ不明だ。

欅平駅
欅平駅改札

欅平駅到着。

終着駅というだけあって立派。また、ここから先は黒四ダムまで関西電力専用のトロッコ列車が走っているので、その車両も停車していた。

欅平駅売店
欅平駅コーヒーショップ

お土産もの店や軽食コーナー、立ち食い蕎麦屋などが並ぶ。食材や物資はすべてトロッコで宇奈月温泉から運んできているわけであり、ここでお店を運営するのは大変。豊富にあるのは水だけ。あっ、発電所が近いから電気も豊富か?

欅平駅周辺の地図

帰りの電車まで1時間弱。

その間に欅平を満喫しようというわけで、結構慌ただしい。

なにせ、駅から片道20分かかる「猿飛」というところまで行こうとしているから。

往復40分、あとは人食岩見に行ったり奥鐘橋渡ったり。ええと、足湯に浸かるのはもう時間的に無理!

ただ、ツアーコーディネーターとしてはここで焦って、「ほら、時間がないから!急いで!」と急かすことをしてはいけない。ニコヤカに、さりげなくお三方の背中をそっと押さないといけない。

駅舎を出たところに大きく「欅平駅」という石碑が立っていたので、そこで記念撮影。

Fish姉妹は、「えいえい、おー」における「おー」のポーズを左右対称に決め、写真に納まっていた。

台湾の人は、写真に写る際にはおふざけをするのが好きなのだろうか?いや、単に姉妹1組を見ただけで判断するのは早とちりか・・・?

奥鐘橋

奥鐘橋。34mの高さからの景色は絶景、ということだ。しかし実際にとおってみると、橋の上から景色を楽しむよりも橋の下から橋を見上げるポジションの方がよかったと思う。

ちょうど橋のたもとには無料の足湯があるので、そこに浸かりながらこの赤い橋を見上げるとさぞや気持ちよかったことだろう。今回は時間がないのでパス。

奥鐘橋から見た川

奥鐘橋から見た川。

砂防ダムがこしらえてあって、せっかく山奥までやってきたのに「秘境感」が乏しかった。

川をバックに記念撮影しようとしたら、どうにも収まりが悪かった。

「わざわざこんな山奥まで台湾からの賓客をお招きした」おかでんの立場として、焦る。もっと秘境っぽくしてくれよ、困るんだよこっちとしては。

黒部川の下流

こちらは奥鐘橋から見た黒部川の下流方向。とりあえず自然は保たれている。

しかし、よくもまあこんなに崖が厳しいところに河原ができるものだと感心する。

人食岩

人食岩。

岩が人を食べているかのように覆いかぶさっているので、その名前がついている。

Fish御一行はこれを人食岩とは思わなかったようで、そのまま素通りしそうになっていた。待て待て、ここから先歩いていくと祖母谷温泉まで延々徒歩50分だ。やめとけ。

祖母谷温泉は黒部峡谷の中でも秘湯中の秘湯だが、さすがに今回は宿泊場所にしなかった。

翌日から控えている立山・黒部アルペンルート走破に支障が出る山奥だ。

人食岩前で記念撮影をしたが、あんまりフォトジェニックではない岩であった。

猿飛への歩道

「猿飛」とは、サルでも飛んで川の対岸に移動できるほど狭い峡谷、という意味。

奥鐘橋から徒歩20分の徒歩で到着する。その間は崖を縫うように遊歩道が整備されている。この遊歩道がなかなかワイルドで、U字溝をひっくり返したようなトンネルがあちこちにある。

てくてく歩いていくが、台湾からきた2名に「これから猿飛という名所に行きます」ということが正しく伝わっているかどうか不安になる。おそらくFishからちゃんと説明はされていると思うが、もし伝わっていなかったら「なんかしらんがひたすら歩かされている」ことになるからだ。

猿飛への道
渓谷美

とはいえ、遊歩道からの景色はとても良いのでこれでご勘弁を。

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