08:06
山の鼻に到着。ここが尾瀬ヶ原の端になる。弥四郎小屋があった見晴も尾瀬ヶ原の端に位置するので、小屋出発から2時間かけて尾瀬ヶ原を横断したわけだ。
山の鼻も見晴同様、山小屋が複数存在する。尾瀬でもっともよく利用されている入山口、「鳩待峠」から近いという地の利があるからだろう。
写真上は「国民宿舎尾瀬ロッジ」、写真中は「山の鼻小屋」、写真下は「至仏山荘」。77名~120名のキャパを持つ山小屋だ。外観からは、中の様子を想像することはできないが、いずれにせよ立派な建物だ。尾瀬以外の山において、「山小屋」というのはこの半分のサイズ、いや、1/3のサイズで100名程度のキャパを標榜するのが普通だ。それに比べて、この山小屋たちのゆったりとした造りといったら!
一方、こちらは「避難小屋」。中では雨を恨めしげに眺めている人多数、朝ごはんを作っている人も多数。この天気じゃ、早起き・早立ちしてもあまり意味がない。ゆっくりと食事を作って食べているらしい。
08:08
山の鼻にはキャンプ場があり、そこにはテントが何張かあった。この雨の中、大変だ。テント泊は、お金があまりかからないし、相部屋でぎゅうぎゅう詰めになることもないし、気楽な山生活を送ることができる。キャンプ用品一式を持参するとなると荷物が重たくなるのが玉にきずだが、それさえ我慢できれば快適だ。ただし、雨が降らなかった時に限る。ひとたび雨が降っちゃうと、非常にみじめになる。
08:09
山の鼻にも、尾瀬沼同様にビジターセンターがある。どれ、どんな情報が出ているか確認してみるか。いきなり至仏山に登ってもつまらん。ここも朝早くから開館していて、ありがたい。
ビジターセンターの入口に気温計があったので確認してみたら、11度だった。結構気温は低いな。こちらはこれまでずっと歩いてきたので、寒さは特に感じていない。しかし、いったん休憩を入れると体がどんどん冷えて行くので、体温管理は要注意だ。
08:11
ビジターセンターの内部。尾瀬に関するいろいろな情報があるので、尾瀬にお越しの際にはぜひお立ち寄りを。中にはツキノワグマの剥製なんてのがあって、太っ腹にも「ご自由におさわりください」となっていた。ごわごわした熊の毛を撫でて、こんなやつと山中ばったり出会うなんてことがなければ良いが、と思う。
08:22
背負子(しょいこ)が置いてあった。何だろう、と思ったら、歩荷(ボッカ)さんが背負うものらしい。歩荷についての解説にはこう書いてある。
尾瀬ヶ原では、山小屋などの必需品を運搬する歩荷さんが活躍しています。
最盛期には100kgを超える荷物を背丈の倍もあるような背負子(しょいこ)につけて運ぶ姿を見ることができます。
日本で本職の歩荷さんがいるのは、ここ尾瀬ヶ原と白馬岳のみです。
なお、他の山域では強力(ごうりき)と呼ぶこともあります。
へー、本職の歩荷さんがいるのは2箇所だけなのか。じゃあ、その他の山小屋は全部ヘリコプター頼りなのだろうか?いや、さすがにそんなことはないと思うので、「本職」ではなく「アルバイト的」な関わり方で歩荷をやっている人が多いのだろう。それにしても、尾瀬はともかく、なんで白馬には本職歩荷さんがまだいるのだろうか?不思議だ。
解説をさらに読み進んでいくと、歩荷さんは荷物運搬中に声をかけられたらペースが乱れてつらくなるので、声をかけないように・・・と書いてあった。いけねぇ、さっき歩荷さんとすれ違って、その際に「おはようございますー」と声かけちゃったよ。今後気を付けます。
飾ってある背負子はご自由に背負ってみてください、となっているのでかついでみようと思った。しかし、重さが8kgしかなかったので、やめた。多分、おかでんが今背負っているザックの方が重たいから。軽量化を図る、という概念を全く持ち合わせていないおかでんが荷造りすると、無駄に重たく、かさばるはめになる。
08:27
山の鼻にも当然公衆便所がある。ここも100円のチップ制トイレ。お金をとるかわりに、清潔感はしっかりとあるお手洗いだ。これから登山が始まるので、下山口である鳩待峠まではお手洗いに行く機会がない。今ここで行っておかないと。えーと、小銭小銭。小銭を用意しておかないと。幸い、昨晩自販機でビールを買った(550円)際に小銭がたくさんできたので(450円)、トイレ用チップには不自由しなかった。
08:43
至仏山登山口への分岐。これから通る山の鼻~至仏山山頂のルートは、「上り専用」ということになっている。蛇紋岩が非常に滑り、下りルートに使うのは危険だからだ。
山岳事故は上りの時よりも下りの時の方が発生しやすい。あと、登山道周辺の貴重な植物が荒廃してしまった、というのも片側限定通行の理由のひとつ。その結果、8年にもわたる期間、このルートそのものが利用禁止に指定されたことがあるくらいだ。
08:49
尾瀬研究見本園の木道を歩く。至仏山登山口の分岐はこの見本園の途中にある。
尾瀬研究見本園は、ぐるり一周で約1時間、その間の湿原に高山植物などが移植されているので、コンパクトに尾瀬を楽しむことができるようになっている。
おかでんは既にダイナミックに尾瀬を楽しんできたので、敢えてこの見本園を見て回る必要はない。素通り。
08:53
山の鼻ルートの登山口到着。ビジターセンターには「遅くとも9時までに入山するように」と指示があったので、ぎりぎり間に合った感じ。
さて、相変わらずしとしと雨が降り続いている状態ではあるが、ここから3時間ほどの上りを楽しんで来よう。滑って岩に顔面強打、とかしなければ良いのだが。不幸中の幸いなのは、至仏山を覆い隠すような雲が発達していないことと、風がほとんど吹いていないことだ。強風+雨だったら、危険なので登山中止にするところだった。
08:53
最初からがっつりした上りが始まる。山頂までずっとこの調子らしいからたまらん。登山地図を見ると、このルートはほとんどまっすぐ、山の鼻から山頂まで繋がっている。しんどそうだなー。
09:01
木道が続く。まだこの辺りは森林限界に達していないので、登山道周辺には植物がいっぱい生えている。この先が荒廃していた箇所なのだろうか。
09:27
「ここが森林限界です」という看板があった。
至仏山は蛇紋岩という、植物が育ちにくい岩でできているため周辺の山に比べ森林限界が低い位置にあります。
この森林限界を超えると尾瀬ヶ原の大展望が開けます。
だって。蛇紋岩、滑るだけじゃなくて植物の生育を阻むという鬼畜なこともやっているのか!困ったやつだ。
また、こんな看板もあった。
ここから山頂までは上り専用です。山頂から山の鼻へは下りられません。
そうか、上り一方通行のこのルートだが、森林限界のここまでは下りに使っても良いのだった。とはいっても、森林限界のこの場所まで30分かけてやってきて、また下っていくという酔狂な人はいないと思うが。
森林限界以降、上り限定となっているということは、ここからがいよいよ滑りまくりゾーンというわけだな。足元には気を付けて進もう。
・・・と気合を入れ直したところで不具合発生。デジカメ、故障!雨の中ずっと持ち歩き、撮影していたので筐体の中にまで水が入り込んでしまったらしい。電源は入るのだが、それっきりうんともすんとも言わなくなってしまった。
過去、おかでんのデジカメは「1年に1回必ず壊れ、その都度買い直し」という事を繰り返していた。だから、今使っているデジカメは多分十代目くらいになると思う。そんな中、今使っているカメラは2年以上使っており、「奇跡の一台」と呼んでいる。それくらい、珍しい。そんなデジカメだが、いよいよおしゃかになってしまった。がっかりだ、尾瀬は最後まで写真を撮りたかった!
執念で何度も何度も電源を入れたり切ったり、筐体を叩いてみたり、バッテリを交換してみたり、しまいには懐に入れて雛の孵化を待つ鳥のようにデジカメを温めてみたり。
頑張ること10分強、復活した!よくやった、感動した!頑張ってみるものだねえ。
これで元気を取り戻したおかでん、喜び勇んで森林限界を飛び出して行った。
09:49
確かに、植物は一気に後退し、岩場が広がる道になってきた。
どれが蛇紋岩なのだろう?そいつは滑りやすいということなので、可能な限り踏まないようにしないと。
10:00
全ての道が木道になっているわけではなく、ところどころ木道、ところどころ岩場という組み合わせ。
10:06
蛇紋岩なる岩はどうやらこの目の前の茶色い岩のことらしい。なんだよこれ、滑る場所だらけじゃないか。トラップだらけ。
「蛇紋岩」という名前なので、てっきり「蛇の皮膚みたいな模様が一面びっしり」なのかと思ったが、違った。
黒っぽい蛇紋岩の方がよく滑るということなので、黒いのはできるだけ避けつつ登る。
10:07
振り返ると、尾瀬ヶ原が見えた。わーい、ここまで登ってきたよー。
さすがにぼんやりして見えるが、眼下に見下ろすことができただけでもラッキーと思わなくちゃ。なにしろこの天気だもの。雨、まだ止んでいない。
燧ケ岳は残念ながら見えなかった。
10:08
何か看板が出ているので見に行ったら、「ここが中間地点です」と書かれたものだった。
1,400mの山の鼻から2,228mの山頂までの高低差の、ちょうど中間なんだって。
これを見てげっそり。てっきり、もう8合目くらいまで来ていると思っていたからだ。まだ5合目だよバーカバーカと言われると気合いが維持できなくなってしまった。
でも「もうやーめた、帰る」といってここから踵を返して下山することはできない。なぜなら、この道は上りの一方通行だから!力尽き果てるまで登り続けなさい、愚かなおかでんよ。
10:15
変化に富んだ登山ライフをお送りしたい貴方へ吉報です。鎖場を今回特別にご用意いたしました。十分にご堪能いただけると確信しております。なお、鎖を設置した岩はもちろん蛇紋岩です。思う存分滑りまくってください。
「蛇紋岩は滑る」という話だが、こちらが想定していたほどツルンツルンに滑るわけではなかった。雨のせいで警戒心が強く働いていたからだろう。晴れの日でご機嫌な陽気のときの登山だと、むしろ気が緩んでつるんとやってしまう可能性がありそう。
10:25
登山道わきにベンチ発見。見晴らしのよいところで一息ついてください、という計らいだろう。どうしようかな、休もうかなそのまま登ろうかな・・・と思い、先に続く登山道を見てみたら、ああ、がっかりするくらいの急階段ですよ。ここは大休止とした方がよさそうだ。
10:30
ベンチで一休み。水を飲み、チョコレート食べてパワーアップして、体力を復活させる。
登山地図を見ると、「山の鼻から至仏山山頂まで3時間」としか表示されていない。そっけなさすぎて、つまらん。「山の鼻~森林限界まで●分、森林限界~××まで▲分、××~山頂まで■分」と細かく刻んであれば、楽しいのだが。
ちなみに登山口からここまで、約1時間半。標準コースタイムを参考にすると、あと1時間半登らないといけないようだが、どうかな?雨だから、案外時間がかかるかもしれない。
そういえば、登山口からここまで、誰とも合わなかった。雨は大変にうっとおしいが、静かで、マイペースで登れるのでこれはこれで良いかもしれない。
コメント