鳳凰さんざん【鳳凰三山】

食堂に集まる人

17:26
食事の案内はどのようにされるのだろう。

時間になったらなんとなく食堂に向かえば良いのか(向かう、というほどの距離はないのだが。寝床から徒歩20歩程度)、呼び出しがかかるのか。

どうしたもんかな、と待っていたら、館内放送が流れて一回目の食事の人達が食堂に呼び出された。あ、この山小屋、館内放送設備を備えていたのか。気づかなかった。

昼間は薄暗かった食堂が、今ではこうこうとあかりがともっている。さあ、食事ですよ。おっと、その前にビールを受付から調達しておこう。山小屋の食事、それだけでもぜいたくな話だが、それに加えてビールとなったら王侯貴族のパーティーに等しい。

山小屋の夕食

17:30
本日の夕食withビール。今度はアサヒビールにしてみましたー。

ワンプレートで料理を全て盛りつける工夫が、山小屋らしい。とはいえ、キャベツの千切りが添えられているのが憎い。新鮮野菜が手に入らないとこのようなことはできないわけであり、ヘリコプターによる輸送や食材の保存に工夫をしていることが伺える。

ビールについては、実は不安な情報があった。南御室小屋の公式ブログ、「南御室小屋たより」の9月16日付にはこのような記述があったからだ。

今年は暑い夏山日和が多かったので、ビールが売れに売れて、いよいよ底を付いてきはじめました、申し訳ありません。

次の荷揚げの空輸は9月末の予定。それまでは、おひとり1本に限定して販売することになりましたが、それもいつまでもつのか。。。

ワインも完売。残りは缶チューハイが少々に日本酒と焼酎だけに。

「ビール1本?」受付で皆さん、一様にがっかりされるのが大変申し訳ないです。

先週、米ボッカ40kgしてクタビレてしまい、ビールボッカする気力が出ません。

山小屋におけるヘリコプター空輸は一週間に一度くらいの頻度で行うものだと勝手に思い込んでいたのだが、この小屋では数週間に一度程度しか行っていないようだ。幸い、9月末には無事空輸が完了し、ビールが補充されたということだが、そのビールがまた底をついたらどうしよう・・・と心配だった。ビールなんて、かさばる割にはどんどん消費されるものだから、少々の空輸ではまかないきれないと思う。大丈夫だろうか。

でも、今回無事本数制限もなく、にこやかにビールを提供してもらえたのはありがたい限りだ。小屋の需要予測、大正解。ここでもし「ビールは一人一本まで」ともし告げられたら、おかでんは悲嘆に暮れて明日の登山をキャンセルしてしまったかもしれない。

山小屋メシ1
山小屋メシ2

17:31
夕食は、じゃがいもにトマトソースがかけられた「洋風煮込み」と、ちくわやたけのこなどで構成される「和風煮込み」の二種類。一つ一つが結構おいしい。そうそう、山小屋の食事はこういうのがいいんですよ、こういうのが。

それにくらべて今日のお昼に食べた駅弁といったら。種類豊富なのはいいけど、雑然としすぎて何食べているんだかさっぱりわからないありさまだったっけ。とはいっても、駅弁でこの小屋メシのようなものを出しても、なかなか売上には繋がらないと思うので、しっかりと棲み分けはできている。

食事準備中です。売店はしばらく休みです

17:46
食後、空き缶を返却しに受付に行ったら、段ボールが置いてあった。そこには

食事準備中です。売店はしばらく休みです

と書かれていた。小屋は少人数の従業員で切り盛りしているので、一人何役もしなくちゃいけない。おかげでてんてこ舞いだ。北アルプスの巨大有名山小屋とこのような南アルプスの中・小規模山小屋とでは、従業員の仕事といっても全く違ったものになるのだろう。

寝床

18:29
食後、寝床に戻る。基本、これからは寝床から動かないつもり。寝床の左右には人がいるので、その人達と穏便な形で領土を分配し、確定させる必要がある。そのためには、まずは「実効支配」というのが非常に重要。

お昼の時と異なり、この屋根裏部屋は結構雑然としてきた。

ヘッドライトで本を読む

18:40
20時の消灯時間まで、登山ガイド本を読んで時間を過ごす。明日の行程を確認したり、将来登ろうと思う山をチェックしたり。館内の照明がついているとはいえ、寝床は本が読めるほどは明るくないので、ヘッドライトを照らしながらの読書となった。

懸案だった両隣の方々との領土問題については、全く支障なかった。毎度毎度、山小屋とはこうであるとありがたいんだけどねえ。こればっかりはなかなかどうしようもない。

20時前、山小屋の電源が落ちる前に自分のヘッドライトを消灯し、就寝。おやすみなさい。

2012年10月07日(日) 2日目

早朝の南御室小屋

05:19
夜中、2度ほどトイレに行った。最近トイレが近くってねえ・・・歳だな。

いや、実際のところは夕方から夜にかけてビールぐいぐい飲んでてからだ。そりゃトイレに行きたくなるに決まってる。

漆黒の中、トイレに行くのはできれば避けたかったのだが、トイレを我慢し続けて熟睡できないのはもっとイヤだ。ヘッドライト片手に屋外のトイレまで大遠征となった。

さすがに二度目のトイレの時は、外に出るのが面倒だったので「夜間用」として屋内にあったトイレを使わせてもらった。おお、便利便利。

そんな真っ暗な中、ヘッドライト無しでトイレに行った猛者がいたらしい。それで、完全に自分の寝床を見失ってしまい、トイレから帰ってきて人を踏みつけたり、梁に激突したりなにやら騒がしい。「いてっ」という声があっちから、こっちから聞こえてくる。その後に「すいません、すいません」と謝罪の声。

騒ぎの張本人は「どこに自分の寝床があるのか分からなくって・・・おーい、○○(人の名前)、どこだー」と弱り果てながら同行した友人の名前を呼んでいた。おかげでここで寝ている人の大半が目を覚ましてしまったであろう迷惑な存在に。とはいっても、なんだかトホホ感が素敵で、怒る気にはならなかった。頑張れ、と心の中で声援を送りつつも、自分が踏まれる立場にならないように首をすくめておいた。

さて、翌朝だが、5時30分からの食事に備えて、5時10分に起床した。荷造りは昨晩のうちに済ませてあるので、食事が済んだらほぼそのまま出発できるようにしている。歯磨きは面倒なので、今回はズルしちゃうつもり。ひげそり?そんなものは山では不要ですよはっはっは。

外に出てみると、小雨が降っている。うーん、天気に恵まれないのは困ったものだ。今日は標高2,800mあたりを縦走するので、天気が良いと最高なんだけど、これだと多分無理。至仏山(尾瀬)に続いて雨の中の登山となりそうだ。

NHKのデータ放送

05:22
食堂にあるテレビでは、NHKのデータ放送が表示されていた。韮崎市のピンポイント表示なのだが、今日のお天気は晴れ、ということらしい。うーん、この天気予報を信じるべきかどうか。この後急激に晴れてくれれば、それに越したことはないのだけど・・・ないなぁ。ありえん。

山の上の方にいると、下界とは全く違う天気になることが多い。しかもそれは、決まって悪い天気だ。今回もそのパターンになる見通し。はぁ。

南御室小屋の超食

05:22
ちょっと早く朝ご飯の準備ができたので、一同食堂に集まってきた。

おお、みずみずしいトマトがあるぞ。そのほか、量は少ないけど品数豊富な野菜中心の料理が並ぶ。今回は小鉢もあり、それは高野豆腐と昆布、しいたけの煮物だった。質素だけど、手間暇かかっている料理たちだ。ちょっと愛しい。

ご飯とお味噌汁はセルフ

05:25
ご飯とお味噌汁はセルフサービスになる。

お茶碗と味噌汁椀を手に自分の分だけよそっていたら時間がかかるので、自然とみんなで作業分担していった。一人はご飯よそう人、一人はバケツリレーでご飯を隣に渡す人、一人はテーブルにそのお茶碗をセットする人、みたいな感じで。

朝ご飯は、一回転だけしかしなかった。つまり、一回で希望者全員が食べられたということだ。夜が二回転だった事を考えると、結構な人数が朝ご飯無しで山に突撃していった事になる。おお、血気盛んだな。おかでんはここでしこたまご飯食べてから、ゆっくりと出て行きますよ。朝ご飯食べないと、体が動かないもんで。

南御室小屋を出発

05:44
別に急いでいるわけではないのだけど、あっという間に朝食を終わらせて出発準備。なんと朝食開始から20分後には山小屋の前で出発前の記念撮影をしている素早さだった。ご飯をお代わりしたんだけどなあ。

さて、今日の行程だが、

薬師岳小屋→薬師岳→観音岳→地蔵岳(賽ノ河原)→鳳凰小屋→ドンドコ沢→青木鉱泉

というルートを予定している。コースタイムはだいたい7時間半となる見込み。当初は06:30南御室小屋出発で13:55青木鉱泉下山、という予定だったが、今回45分ほど前倒しの出発となったので、13時過ぎに下山できれば上等、といったところか。青木鉱泉で韮崎行きのバス(15:00発)を待つ間、風呂に入るのが今から楽しみだ。もちろん、ビールだって飲むことができるだろう。ああ、今すぐ下山したい!・・・いやちょっと待て。登山なくして下山なし。ちゃんと山のてっぺんに登ってから、下山しなさい。

朝のテン場

05:48
山小屋のように、朝食時間の制約をうけないテント組はさすがに行動が早い。この時間にして既に半分近くのテントが撤収していた。

中には、鳳凰三山をピストンしたのち、またここで一泊するパーティーもあるかもしれない。その場合は、テントを置き去りにしている可能性あり。だから、実際はもっと多くの人達が既に登頂開始しているのだろう。

いきなり結構な坂

05:49
南御室小屋の裏手に回り込み、いきなり結構な坂を登りはじめる。朝一発目だから元気が有り余っていて、これしきの坂ならなんということはない。しかし、夜叉神峠登山口から一気に薬師岳小屋を目指す人にとっては、これまでの疲労が相まってここは胸突き八丁かもしれない。

薄暗い坂

06:16
まず目指すところは、薬師岳小屋の手前にある砂払岳という山だ。その名の通り、花崗岩が風雨で砂地になっている山らしい。標高2,740m。南御室小屋から標高を300m稼いだ地点にある。

明るくなってきた

06:24
樹林帯の中を進んでいたが、ようやくなんだか明るいところに出てきた。北アルプスだと標高2,400~2,500mのところで森林限界を迎えるのだが、南アルプスの場合はその地理的条件のため、もっと森林限界は高いところにある。その分、「静かな木々の中を歩く事ができる。」と好む人は多い。でも、おかでんみたいに登山に哲学がない人は、「森林限界って山登りのご褒美だよね。やっぱり視界が開けている方が楽しいよね、素敵だよね」としか考えていない。ああ、早く森林限界こないかなあ。

すぱーんと開けた場所

06:30
おっと、登山道に岩がゴロゴロしてきだしたな、と思ったら、すぱーんと開けた場所に出てきたぞ。いよいよ稜線に出てきたらしい。さあここからが山のお楽しみタイム、稜線歩きでございますよ。

とはいっても、視界はほとんどない。山の上も、相変わらずのガスと時折降る小雨。まあ、雨具を出すほどではない、程度の雨なのが不幸中の幸いだ。でも、中にはレインウェアを着込んで、ザックにザックカバーをつけている人もいた。

山の天気は変わりやすい。「そろそろ雨天装備に切り替えようかな」と思った時には時既に遅し、ずぶ濡れ・・・ということはよくあることだ。おかでんのように強がっていると結果的にルーザーになること多し。

砂の道
単なる砂

06:32
登山道、と呼べるのかこれは?という状態になってきた。足下は見事なまでに砂地。公園の砂場にある砂とほとんど一緒の粒度だ。そこに、踏み跡があるので登山道であることはっきりと分かるが、台風一過したらこの登山道、消滅するんじゃあるまいかと心配になる。

荒天後のこのルート通過時には若干注意が必要かもしれない。こういうときにこそ、ケルンが道沿いにあれば分かりやすいのだが、この山においてケルンとは「見失いやすい場所にある標識」ではなく、「山頂や要所要所のポイントを示す標識」なのだった。

砂の道は思った以上に歩きづらかった。

ガスの道と紅葉

06:35
このあたりでも、本数は少ないものの色づいた木々を楽しむ事ができた。遠景が全く見られないので、せめて近場の景色を楽しまなくちゃ。紅葉があってつくづくラッキーだった。これがなくちゃ、ただひたすらガスで真っ白な中を歩く羽目になっていた。

大きな岩

06:36
今さっき通過した岩場が砂払岳山頂だったらしい。ここから道は下りになる。もう砂でざらざらはしていない。大小さまざまな岩がゴロゴロしているところを右へ左へと避けつつ下っていく。岩にはちゃんと赤ペンキで矢印が書いてあるので、このあたりは道に迷うことはない。

ガスの中

06:39
ここからいったん下りたところが薬師岳小屋。薬師岳小屋は砂払岳と薬師岳のコルに位置している。標高2,720mに小屋があるので、砂払岳から20mそこら下がればすぐに到着だ。それ、あともう少し。頑張れ。

前方に薬師岳と思われる山がうっすらと見える。多分天気が良ければ、ここから薬師岳、観音岳、地蔵岳・・・と鳳凰三山を全部見渡す事ができるんだろう。でもこの天気じゃガッカリしまくりですよモウ。

鳳凰三山は地蔵岳の「オベリスク」と呼ばれる岩峰が特に有名。一度見たら、槍ヶ岳の山頂同様にとても印象に残る。でも今回のこの旅、キリッと写ったオベリスクは全く出てこないぞー。あらかじめ言っておくぞー。

でも読者の方にはぜひオベリスクを見て欲しい。グーグル先生で「地蔵岳 オベリスク」の画像をぜひ検索して欲しい。本当はこんな山を目指して登っていたのだよ、ということを知って欲しい。

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