山中秘湯旅館を貸し切り大満喫【那須岳・三斗小屋温泉】

トイレの壁は薄い

13:23
お手洗いに行ってみる。えっと、これだけ?部屋数の割には、写真に写っているだけしか便器がないように見えるけど、どうなんだろ。きっと、別のところにもあるのだと思うが・・・。ちなみに、洗面所らしきものはなく、髭を剃ったりするにはちょっと難儀した。何しろ、トイレを済ませた後に手を洗う程度の小さな流ししかなかったので。

さすがに水は豊富らしく、水洗になっていた。浄化水槽で処分しているんだと思う。

野獣が荒らす水場

13:26
玄関脇にある水場。

ご主人が僕を部屋に案内する際、

「いちおうこの水は飲めないことはないんですが、猿とか鹿が荒らすんで、あまりお薦めはしないです。水が必要なら売ってるんで買ってください」

と言われた。そうなのか。そう言われると、さすがにここの水を汲もうとは思わなくなった。結局、水は追加補充せず、下山まで乗りきった。こういうとき、山に2リットルの水を持ち込んでいたら便利だ。重たいけど、不測の事態にも対応できる量だ。

食事を告げる太鼓

13:27
下駄箱脇につり下げられている、大太鼓。食事時になったら、これがドンドンと鳴るらしい。ただ、今回の場合、僕一人しか宿泊していなかったので、この太鼓が鳴らされることは一度もなかった。夕食は時間になったらご主人が料理を運んでくれたし、朝は朝でご主人が「6時半になったら大広間にお越しください」って声を掛けに部屋まできてくれたし。

露天風呂の通路

13:27
さて、露天風呂に入りに行こう。貸し切りなんだから、思いっきり堪能しなくちゃ。

「独り占めできる」というのは、くつろぐことができるということの他、「写真を心置きなく撮れる」ということでもある。お風呂の写真って、一緒に入っている人がいればさすがに撮影がためらわれる。だから、人がいないタイミングを見計らって、「それっ」とカメラを引っ張り出すことになる。これがとても難しいし、気分が全く落ち着かない。だから、今日なんてのはあらゆる意味でくつろげるってわけだ。

露天風呂は、下駄箱脇の通路を通って、外に出るようだ。別館に通じる通路も、ここからいったん外に出ることになる。

斜面の上に露天風呂があるっぽい

13:28
外に出たところでスリッパを脱ぎ、下駄箱にあるサンダルに履き替える。ここから少し歩く。

正面に別館が見えるのだが、その左奥の茂みの中になにやら木造建築物がチラっと見える。おう、どうやらあそこが露天風呂らしい。季節が季節なら、猿が入浴していそうなシチュエーションだ。

三斗小屋温泉煙草屋旅館の露天風呂

13:28
じゃじゃーん。これが、三斗小屋温泉煙草屋旅館の名物露天風呂。単純泉だが、少し茶色っぽい色をしているのがわかる。

宿泊棟から見えた木造建造物は、脱衣場だった。

もちろん、僕以外に誰もいない。今日はこの風呂は「俺様の自宅風呂と同じ」ように傍若無人に扱ってもいいってことだ。いいねぇ。とてもいいねぇ。

脱衣場

13:32
脱衣場に足を踏み入れてみる。

壁際に2列の棚がしつらえてあるだけで、とてもシンプルだ。ここで脱いで風呂に飛び込め、と。

そういえば、この宿は浴衣が用意されていなかったな。宿泊客は私服のままでここにやって来る事になる。軽装で訪れるのが吉。浴衣を用意するとなると、洗濯物、しかものり付けが必要なものが増えてしまう。山の宿としてはそれは荷物だし面倒なので、省略したのだろう。やっぱりここは、山小屋と旅館のハイブリッドな宿だ。

水着入浴不可の混浴露天

13:33
現在時刻13時半ちょっと過ぎ。夕食が16時半頃ということなので、今から3時間、ひたすら風呂に入り続けまーす。何しろ、風呂に入る以外にやることがないんだから。

僕以外人はいない。酒は飲まない。本はない、ネットはない、テレビもない、携帯もつながらない。あるのは、延々とある時間と、山のいで湯だけだ。

今日は風呂の中で、自分のこれまでの人生と、これからについて熟考してみようと思う。ちょうど今、そのことについて悩み続けているところ。

女性専用時間が「15時~17時」に設定されているけど、当然僕はそれを完全無視する。「女性専用時間」に堂々と風呂に入っている。なんてぇ背徳感だ。

露天風呂満喫中

13:37
タオルで前を隠すことなく、どぼんとお風呂に入る。・・・あ、もちろんかけ湯はしような。お湯は適温、こりゃいいや。長湯するとさすがにのぼせる湯温ではあるけど、それくらいがちょうど個人的好み。空は太陽が出ているわけではないので、さんさんと照りつける日光に悩まされるということはない。夏場の露天風呂って、暑くて困るんだよな。それが今日に関していうと、ほぼベストなコンディション。

風呂に入っている写真をぜひ撮らなければ、ということで、スマホを手にがっちりと握りしめ、そろりそろりと自画撮りをする。うっかり手を滑らしたり足を滑らしたら、スマホがおじゃんだ。それはデジカメを壊したなんて出来事の比じゃない悲劇となるので、絶対にそれは避けなければならない。慎重に、慎重に撮影する。

しかし、どうも慣れない。リアカメラ搭載のスマホじゃないので、今レンズにどういう画角の絵が写っているのかがさっぱりわからない。何度も撮影し、写真を確認し、首を捻り、また撮り直す・・・の繰り返しとなった。その動作一つ一つが、「カメラを湯船に落っことす」リスクと背中合わせ。危ないったらありゃしない。そこまでして写真を撮りたいか。

何枚も写真を撮り直して、ようやくまともに撮れたのが上の写真。他にも何枚かあるけど、どれも似たようなアングルなので掲載はやめとく。おかでん、デカいデカい。デカく写りすぎてる。こんな写真を撮影して悦に入ってるなんて、ナルシスではないか。

いつもなら、三脚にデジカメを据え付け、セルフタイマーで撮影している。だから、僕はカメラからある程度離れたところにいるので、写真の中では比較的小さく写っている。このコーナーに掲載されている写真は、僕が写っている事が多いが、「俺様の記念写真をお前らも見ろ!」という主旨ではない。このとき、こういう感じでこんなでき事があったんです、というのをより実感をもって紹介したいから、あえて登場人物として僕が出てくるだけだ。だから、こんなに「登場人物の一人」である僕がデカく写ると、なんだか困ってしまう。でも、スマホに三脚を取り付けるわけにはいかいので、己の手でスマホを握りしめ、シャッターを押すしかない。そうなると、俺様大写し、となるのだった。

源泉が流れ込んでくるパイプ

14:13
湯船は二つに仕切られており、狭い方の湯船にお湯が注がれていた。もちろん新鮮なお湯の方がいいので、そっちの湯船の方に移動してみると・・・あ、こっちの方が熱い。ちょっと長湯できそうにないので、これは却下だ。すごすごと、お湯が注がれていないぬるい方の湯船に戻る。

二つの黒いホースからお湯が注がれている。おそるおそる手を伸ばしてみたら、とてもぬるかった。あれっ?じゃあ、この湯船の熱いお湯はどこから?調べてみたら、パイプの方から熱いお湯が、そしてこの二本のホースからはぬるいお湯が出ていることがわかった。

試しに一口飲んでみた。えーと、よくわからない。もう一口飲もうとしたところで、宿のご主人がやってきて、

「そのお湯は飲めませんから」

と教えてくれた。わ。もう一口飲んじゃった後だよ。

ばんざいばんざい露天風呂でばんざい

14:16
おおお、スマホのカメラって、セルフタイマー機能がついていたのか。今まで全く知らなかった。これまで、デジカメを常に持ち歩いていたので、スマホのカメラなんて全く使ってこなかった。だから、どんな機能があるのかさえ知らなかったのだった。セルフタイマーがあるなら、いろいろ写真撮影が捗るぞ。

とはいっても、三脚には据え付けられないから・・・。ええと、桶に立てかけるようにスマホを据え付けて、セルフタイマーを10秒にセットして、と。これどうかな。

何度か失敗を繰り返し、その都度ザブザブと湯船を横切ってセットしなおして、を繰り返してようやくそれっぽい写真が撮れた。そうだよ、これくらいの「おかでんのデカさ」でいいんだよ。さっきの写真は顔がでかすぎた。誰もいない露天風呂なので、万歳しようが何しようが、誰も見とがめることがない。解放感たるや、相当なものだ。

ちょうど露天風呂からは山々の眺望に優れていた。視界を妨げる仕切りもなければ、電柱電線の類や建物もない。見渡す限り、大自然。これぞ、山深い秘湯の醍醐味(だいごみ)。

はちみつレモン片手に露天風呂

14:17
お酒は飲めないので、はちみつレモンを下界から持って上がっていた。これをちびちび飲みながら、あれこれ考え事をしようと思う。何しろ夕食時間まで3時間の長丁場だ、しっかり水分補給をしておかないと倒れる。ここに来るまで、汗をかいて水分を相当失っているわけだし。

それにしてもジュースを手に微笑むおかでんはちょっとシュールだな。まだこういう写真を見て違和感を覚える。今までは、100%確実にビールだったから。

のぼせては上がり、冷めては入る

14:50
長湯ができるほどぬるいお湯ではないので、出たり入ったりを繰り返す。そこそこ標高がある場所なので、7月とはいえお湯の外に出れば自然と体はクールダウンされていく。

足湯

15:14
風呂に入りながら、ひたすら物思いにふける。本当に、うんうん唸りながら考える、考える、そして考え続ける。周りに誰も居ないので、自分の考えを声に出しながら。時々前触れなくご主人が湯加減の調節で姿を現すので、その時はちょっと恥ずかしい思いをした。

一人で悩んだって結論は出るわけがないのだが、下界にいながらにしてこんなに内省する機会なんて絶対にない。せいぜい、時々お寺で坐禅を組む30分程度だ。でも坐禅の時はできるだけ意識をクリアにするので、やっぱり今回のようなシンキングタイムはとても貴重だ。人生初の、まとまった時間だと思う。僕以外に宿泊客がいない、というのがとても良かった。全く邪念が入らない。・・・ただし、時々やってくるご主人の存在を除く。

夕食を待つひととき

16:20
おっと、そろそろ夕食時だ。いつまで経っても終わりの見えない考え事をいったん中断し、風呂から上がる。夕食ったってなぁ、まだ日は高いし、とてもじゃないが食事っていう気がしない。

確かに山小屋では夕食が早いが、それでも大抵は17時スタートだ。16時半から食事、という山小屋もあるにはあるが、それは多忙な日で何回転も食堂を稼働させなくちゃいけない時に限る。16時半に食事だなんて、一体その後僕はどうして過ごせばいいの?あ、そうか、風呂にまた戻って考え事か。なるほど、そりゃそうだ。それをしにここに来ているんだから。

少なくとも、「旅館」と名の付く施設で「夕食16時半」なんて初体験だし、多分今後もそういう体験はしないと思う。有意義だなあ、今回の旅は。と思う事にしよう。

つくづく、酒を飲まなくなってよかったと思う。まだ酒を飲んでいたとしたら、当然夕食時にしこたまビールを飲むだろう。で、眠たくなって、食後はそのまま就寝。「食後」ったって、時刻は17時過ぎだろう。そんな時間に寝てしまったら、そのあとどうすりゃいいのやら。

そんなことを考えながら、部屋で大人しく待つ。地図を見ながら、今日の行程のおさらい。

おひつにみっちりのご飯

16:25
ご主人が夕食を部屋に運んできた。お膳に並んでいたので、机をいったん部屋の隅に寄せる。で、お膳をうやうやしく畳の上に据え付けた。畳の上では、相変わらず虫さんたちがうろちょろしているけど。

おひつと急須、ポットも持ってこられた。さっそくお茶を淹れ、ご飯をよそう。・・・と、うわぁ。おひつを開けてみたら、中にはぎっしりのご飯が入っていた。なんだこれ。何かの冗談かと思って、しゃもじてつんつんしてみたが一向に沈み込む気配がない。みっちりとご飯が盛られているのは間違いない。

「今日のお客さん、結構食べそうだから多めにご飯炊いちゃえ」

ってうれしい配慮をして貰えたっぽい。それにしてもここまで詰め込むとは、豪快だ。こりゃあ、ご期待に応えてがっつり食べないとダメだろう。頑張って夕食食べよう。なにしろ、明日の朝ご飯まで相当時間が開いているんだし、ここでたくさん食べてもバチは当たるまい。

三斗小屋温泉煙草屋旅館の夕食

16:27
というわけで、本日の夕食@三斗小屋温泉煙草屋旅館。

メインはポークソテー。あと、Wメインという形でなんかの魚の甘露煮。何の魚だったか、覚えていない。写真を見ると、ちょうど醤油差しが邪魔してるし。ぜいたくな料理ではないが、これだけあれば必要十分、という内容でうれしくなる。

夕ご飯中

16:28
さあ、食べよう・・・としたが、うーん、手元が暗い。どうも落ち着かない。

今、ちょうど部屋の中央で食事をしようとしていたのだが、どうやらそれがいけないらしい。大胆に、光が差し込む廊下の近くまでぐぐぐっと寄ったら、十分に明るくなった。やっぱりこの部屋、暗いわ。窓があるこの部屋でさえそうなのだから、両側をふすまで仕切られている中間の部屋ってのはどれだけ暗いことか。

あ、でも、基本的に食事は大広間だから、食事の際に暗くて困るってことはないな。なら問題ないか。発電機が回って部屋の蛍光灯が使えるようになるまで、外で風呂に入っていればよろし。

内湯

17:21
おなかいっぱいになってくつろいだ後、また風呂に戻る事にした。まだまだ考えないといけないことはいっぱいあるし、そもそも部屋に居てもやることがない。この宿に一人で泊まった以上、もうひたすら風呂に入り続けるしか、ない。消灯時間が21時ということなので、それまでずっと風呂にいようと思う。

さて、また露天風呂でも良かったのだが、共同浴場と呼ばれている内風呂にも言ってみることにした。ご主人はチェックイン時に宿の説明をする際、

「内風呂もありますが・・・まあ、基本は外の露天をお使いになりますよね」

と軽くスルーしていた。露天風呂が本日貸し切り状態なんだから、わざわざ共同浴場なんて使うことはなかろう、ということらしい。そんなに値打ちが低い風呂なのか、そこは。僕は屋内の風呂も露天風呂と等しく好きだ。居心地がいい浴室だったら、そこで長居してもいいや。

共同風呂の場所の説明はされていなかったので、ちょっとだけ探して、見つけた。18時から19時は女性専用時間、と入口に書かれていた。それ以外の時間は、混浴。

つまり、この宿において、女性が男性を気にせずお風呂に入ろうと思ったら、

15時~17時:露天風呂
18時~19時:共同浴場
それ以外の時間:くそ狭い女性専用風呂

ということになる。ちょっと大変だ。