ビール無しの山、そしてバイキング【赤岳】

赤岳鉱泉に向かう道

09:12
しばらく赤岳山頂を眺めていたら、山頂付近もガスは晴れた。オールグリーン。今日は登山日和だ。風の強さまでは下界からではわかりかねるが、天気だけみると、楽しい山歩きができそうだ。

このあと、複数のパーティーに道中で出会ったが、そのどれもが

「風が強かったので縦走を断念し、エスケープしてきた」

ということを言っていた。昨晩のうちに山の上にいた人たちは、みな一様に方針転換を余儀なくされたようだ。

赤岳に背を向け、行者小屋を出発する。

地蔵尾根分岐を過ぎ、そのまま赤岳鉱泉に通じる道を歩く。

Uさんは当初、この「大回りルート」を通る予定はなかったのだが、おかでんの計画に賛同して同行してくれた。

「赤岳鉱泉っていう山小屋、どんなモンだか見てみたいじゃないですか」

という、ふわふわした理由しかなかったんだけど。

苔むした山肌

09:14
針葉樹林帯の中を歩く。

「岩に苔が生えているのを見るのも、なかなかいいですよね」

とUさんは言う。そういえばこのあたりの岩は、苔むしている。

確かに、森の中で苔が生えた岩や地面はきれいなものだ。以前からもちろんおかでんもそう思ってはいたが、他人の口から言われると、「あ、やっぱりそうなんだ」とあらためて自分の感性というものに気が付く。一人だけの山歩きじゃ、得られないことだ。

今回の山歩きはとても楽しい。

わずかに中央アルプスが見える

09:22
途中、「中山分岐」というところに出た。ここから徒歩10分ほど逸れたところに「中山展望台」(2,309m)という場所があるのだが、果たしてわざわざこの展望台に行く価値はあるのだろうか。体力を既に消耗している状態なので、面倒なことはあんまりやりたくない、というのが正直なところだ。

でも、今回は時間に余裕があることだし、最初っからこの「中山展望台」には行くつもりだった。Uさんにも了解をとって、二人で少し坂を上ってみた。

到着したところは、「展望台」と呼ぶにはあまりにも地味な場所だった。中央アルプスの展望がよい、ということが手元の地図には書いてあったが、実際は雲に覆われておりあまり楽しめなかった。ダメじゃん。

赤岳が正面

09:28
でも、振り返ればこの景色。

赤岳が正面!

いまや、雲がすっかりと晴れ渡り、そのごつごつとした勇姿が目の前に広がっていた。

素晴らしい。

その素敵な景色に、しばし二人とも口をぽかんと開けて、見とれていた。

「あの山に、さっきまで登ってたんだよね・・・?」
「たぶん。」

実感を伴わない登頂だったのは、二人とも一緒。

赤岳から北側の稜線

09:24
赤岳から北に延びる稜線を追うと、こんな感じ。

つくづく、縦走しがいがある山だ。せっかく、山の高いところまで登ったんだから、すぐに下山しちゃうのはもったいなかったな。しばらく雲上散歩をしゃれ込んで、縦走したかった。・・・天気がよければ、の話だけど。

いまや八ヶ岳周辺はみごとに晴れており、どこもかしこも登山日和となっていた。

赤岳鉱泉

09:49
針葉樹林帯の快適な道をぽくぽく歩いていたら、ほどなく赤岳鉱泉に到着した。

正面に、ログハウスの山小屋が見える。

ここも、行者小屋同様、開けた場所に建てられていた。あまり山小屋という雰囲気ではない。避暑地のリゾート・・・というと言い過ぎか。

お天気はいいし、こういうところで丸一日のんびりしてみたいものだ。

赤岳鉱泉のお手洗い

09:50
お手洗いがあったので、中をチェックしてみることにした。

カメラを手に、トイレの写真を撮っている同行者おかでんの様子を、当然のように受け止めてくれているUさん。「こいつ、変態だー!」とは思われなかったようだ。セーフ。

でも、山小屋において、「トイレがどんな感じか」ってのは結構重要なファクター。女性ならなおさらだろう。「山ン中でぜいたく言ってるんじゃないよ」と言われるだろうが、ぜいたくできるんならそれにこしたことはない。

赤岳鉱泉トイレ1
赤岳鉱泉トイレ2

09:50
盗撮・・・じゃなかった、トイレを取材、した写真。

鉱泉というくらいだから、水は豊富なのだろう。問題なく水洗だ。ただし、トイレットペーパーをそのまま流してヨシというわけではない。使ったら個室内にあるゴミ箱に捨てることになっていた。

トイレットペーパー、「水に溶ける」からといってホイホイ捨ててよいわけじゃないんだな。

よく冷えてます ポカリスウェット

09:53
軒先にぶら下がる「よく冷えてます ポカリスウェット」の旗。

てっきり遠目からだとかき氷の表示だと思ったが、近づいてよく見るとポカリだった。

こんな販促ツール、作ってたんだ大塚製薬。

赤岳鉱泉のカウンター

09:54
赤岳鉱泉は、玄関脇に外販用のカウンターがあり、食べ物や飲み物を取り扱っていた。

ぱっと見てすぐに沢野ひとしの絵だとわかる、赤岳鉱泉オリジナル手ぬぐいが売られていた。ちょっと欲しくなったが、「単なる通りすがりの人」が赤岳鉱泉オリジナルグッズを買っても微妙だ。一泊してこそ、買うべきだろう。やめとく。

なんとお弁当も売っているのが赤岳鉱泉

09:55
「あれっ、お弁当が売られているぞ?」

うれしくなって、つい大きな声を上げてUさんを振り返ってしまった。店頭で、500円でお弁当が売られていたのだ。こんな山小屋、見たことがない。

小屋内の食堂で軽食が食べられます、という山小屋は結構ある。でも、テイクアウトものを扱っているのって、実はめったに見たことがない(おでんとか、パンは除く)。弁当をこしらえたはいいけど、売れ残ったらやだな、ということからかもしれない。

白いビニール袋にくるまれており、中身はうかがい知れなかった。何が入っているのだろう。値段が安いし、単なるおにぎり弁当だろうか?

買いたい、という誘惑に駆られたけど、さっきおでん食べたし朝はバイキングでしっかり食べたし、特に必要性がなかった。残念だけど、諦めた。

いやちょっと待って欲しい、それだけではないぞこの赤岳鉱泉。「カレーライスメニュー」という表示が目に留まった。カレーというメニューがあるのではない、「カレーライス」という料理の中に、複数のメニューが存在するってことだ。まじで?山小屋で?

よく読むと、「ビーフカレー」「タヒチカレー」「マレーシアカレー」「パンジャブカレー」「インドカレー」「ジャワ風カレー」の6種類。辛さは1辛から5辛まで、メニューによって千差万別だ。すげーな。レトルトを暖めました、とか、ジャワカレーみたいなできあいのルーを溶かしいれました、というレベルのものじゃないんだ。お値段ALL800円。

ホワイトボードに描かれた宿泊客用食事メニュー

09:56
建物の中に入ってみた。さすがに靴を脱いでずかずかと上がりこむわけにはいかないけど、売店エリアに入るのは問題ない。

潤沢に売られているビールなんぞを観察していたら、こんだてが書かれているホワイトボードに気がついた。あ、この山小屋って、料理の予告先発をやってるんだ。

見ると、夕食はステーキ、朝食は焼き魚らしい。すげーな、ステーキ出しやがりますか。「ステーキ」といっても、どれだけ肉厚なのかはわからないけど、だとしてもステーキですよステーキ。そういえばビフテキってすっかり死語になったよね、なんて思いつつもなんだか唾液が口の中にたまった。

この山小屋、風呂にも入れるしステーキ食べられるしカレーは豊富だし、楽しそうだ。

お洒落な赤岳鉱泉の内部

09:56
食堂はまるで町中の喫茶店みたいな装いでした。しっかりしたインテリアで、「とにかくぎゅうぎゅうに押し込め」という山小屋文学を踏襲していないのが素敵。

山小屋の食堂って、「飯時しか使わない場所に余計なスペースは割けない」ということで、大抵狭い。隣の人と肩をぶつけながらの食事、というのが定番なのに・・・。なにこの快適さ。

ここを「単なる山小屋」と考えるのは間違っているのだろう。「車じゃ行けない、山奥の鉱泉宿」と捉えた方が良いのかもしれない。

赤岳鉱泉から美濃戸口を目指す

10:08
赤岳鉱泉、せっかくだから風呂場も見てみたかったのだけどさすがに通りすがりの登山客にジロジロ見られるような場所には風呂はなかった。おとなしく引き下がり、下山を続行する。

下山、といってもここから先美濃戸口までは水平移動中心であり、垂直方面の移動はさほど多くない。

単独だと退屈になるであろう道だが、今回は連れがいるので大変に助かった。いろいろな話をずっと続け、あっという間に時間は過ぎていった。

林道歩きになった

10:53
北沢沿いの道は、何度も橋で川を横切りながら進んでいく。ピクニック気分の歩きで、快適。

途中から林道歩きになった。ここまでくれば車の進入は可能。

トマトを買う

11:31
11時29分、北沢と南沢の分岐まで戻ってきた。

そこからすぐのところにある美濃戸山荘で、昨日決めたとおりトマトを買って食べることにした。

水に浮かんでいたトマトを1個、購入。100円。

キュウリも買う

11:31
Uさんはキュウリを買い求め、トマトとキュウリを二人で半分ずつシェアすることにした。トマトは完熟とは言いがたく、ちょっと硬かった。キュウリは・・・味がないと物足りないな。塩があればよかった。

まあ、風情ですよ風情。山を下りてきて野菜をかじった!という事実が旅情であり、思い出になる。美味いかどうかなんてのは二の次。

行きに通った場所を五体満足で帰りも通過する、山登りにおいてこんなにありがたいことはない。いろんなことに感謝。

八ヶ岳山荘の風呂

12:40
トマトとキュウリで一息つき、最後の総仕上げだと美濃戸口まで一気に歩いた。単調な林道歩きだけど、勢いづいているのでしんどくはなかった。

12時32分、美濃戸口到着。怪我ひとつなく、想定していた時間通りの下山となった。

さて、ここからが重要。

風呂はいるぞー!

美濃戸口にある八ヶ岳山荘は風呂がある。これは昨日確認済み。やっぱり下山した暁には風呂でしょう。そして、飲める人なら、ビールでしょう。この儀式を済ませて、ようやく下山が完了したといえる。

その両方が、バス停目の前の八ヶ岳山荘でやってるというのだから便利すぎる。八ヶ岳すごいぞ。

500円払って、お風呂に入る。

さほど広くはないお風呂なので、カランの順番待ちが発生していたが、それでも快適なお風呂だった。ちなみに温泉ではないので、温泉がいい!という人は諏訪の方にまで行くか、下山口を変えて蓼科の渋温泉の方に行くとよろし。

八ヶ岳山荘のメニュー

13:01
風呂上り、Uさんと乾杯してお互いの無事と健脚を祝う。

生ビール、600円。

山の上だと800円だったことを考えれば、随分と値下がりした。ここが(ほぼ)下界である、ということを教えてくれる物価。

Uさんは行者小屋に続いてこの日二杯目の生ビールを幸せそうにあおっていた。いいねえ。酒が飲める女性は素敵だと思う。おかでんがお酒を飲まなくなった分、代わりに同行者にはどんどん飲んでもらいたいものだ。ちなみにおかでんは「GREEN DAKARA」を微妙な顔をして飲む。「ぷはー」がない飲み物なので、どんな表情をしていいのか今のところよくわかっていない。やっぱりこういうときって、炭酸飲料がいいのかな?

茅野に向かうバス

13:17
下山しました→風呂入りました→乾杯しました

とプロセスが進んだところで、バスの出発時間ですよと。

あんまりギリギリの時間まで小屋でくつろいでいたら、バスでは席がなくて立ってください、になってしまう。早めに飲み物は切り上げて、バスに乗り込んだ。

このまま、JR茅野駅へ。

遠ざかっていく美濃戸口、標高を下げていくにつれて気温がじりじりと上がっていく。そうだった、今は真夏なんだった。現実世界に引き戻されるな。

今回の八ヶ岳登山は、直前になってのひらめきだったにもかかわらず大変に楽しい時間を過ごすことができた。「見知らぬ人と現地で友達になって一緒に山を歩く」という、得がたい体験ができたというのも、今後のおかでんの「へべれけ紀行」において一定の意味があることだったと思う。

この調子で今年はいろいろ活動をしていきたいものだ。

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