館内図を見ながら、レストランを探す。
「えーと、多分このあたり・・・あ、これか」
階段上ってきて、二階にやってきて、ぱっと見渡せばそこにレストラン、という形になっていない。アート的というか、実用性を無視した作り。自己満足の世界、という批判は当然たくさんあったと思うが、建築家およびこの館を建てた事業主は一体どういう説明をしたのだろう。
「ありゃ、でも扉が閉まってる。営業はやっていないっぽいぞ」
暗い館内で、水色の防火扉のようなドアが閉まっているのが見える。どうやらここがレストランらしい。さすがにこの雪だ、オフシーズンだろうし、営業はやっていなかったかーッ。
「あ、いや、やってた」
水色の扉には、「営業中」の張り紙がしてあった。「営業中止」という紙が貼ってあるのかと思ったよ。
「いくら暖房中だからといえ、こんなに来店者を拒絶するような扉を入り口に据えるものかね」
本当にやっているのか、まだ疑わしいのでジロジロ扉を遠巻きに眺めてしまう。入り口脇には、「越後まつだい里山食堂 里山ビュッフェ」という表示もあるので、間違いなさそうだ。ええと、大人1,500円とな。
「うわあ・・・」
中に入ってみると、確かにお店は営業していた。一体どこから湧いてきたんだ、と思ってしまうくらい、普通にお客さんが入っていた。
その安堵による「うわあ」もあるけど、もう一つ「うわあ」だったのが店内の内装だった。一面の水色。うわあ。
床、天井、椅子、ビュッフェカウンター。そのいずれもが水色に彩られており、冬景色と相まってなんとも寒々しい。そして、安いプールを思い出させてチープ感が強い。どうしてこうなった、このお店?
料理は20種類くらいあっただろうか?場所柄野菜中心で素朴な料理が多いが、さまざまな調理法で提供されており、目移りさせられる。肉っけがあるものが欲しい人には、鶏肉の唐揚げもあるので、健康志向の女性を中心に老若男女楽しめると思う。
ご飯は、「棚田米コシヒカリ」が白米と玄米、両方あるのが楽しい。
で、これが盛りつけ例。
おかでん恒例の、というかなんというか、今回も「極力全種類盛ってみました。」でも、これでも全部盛り切れていないのだからさすがとしかいいようがない。
食べてみたが、どれもとても美味しい。田舎料理だから塩味キツめなんだよね、ということもなく、あっさりとしつつ、そのあっさりが飽きにつながらない食材のうまさを楽しむことができた。いやこれはすばらしい。僕だけでなく、よこさんもおかわりに走ったくらい、うまかった。「来年ものっとれ!松代城に行くなら、ここは外せないな」と早くも1年後に食べる事を想像してしまったくらいだ。
しかし、決定的に写真がまずそうだ。貧乏人根性むき出しで盛りつけたというのも理由として大きいが、とにかく周囲が青いので、画像が薄ら寒くなる。しかも食器は全部白だ。うちの料理をブログとかSNSに上げるんじゃないわよ、という呪いがかけられているかのようだ。おまけにテーブルは意味不明の鏡。お皿をのぞき込むと、ぶっさいくな自分の顔がテーブルに映り込むというのだから、大いに気持ちが萎える。ここのデザインやった人出てこい。ええ加減にせえよ。
濃い緑に覆われ、セミの鳴き声がこだまするような盛夏だったらこのインテリアも映えるのかもしれない。でも少なくとも冬はダメだ、ここまでひどいというのはちょっと珍しい。
すごいのはレストランだけでなく、建物全体だということを忘れてた。
トイレに行くとごらんの有様。真っ赤な壁。
しかも、何気なく中に入ると、出口の場所がわからなくなってしまった。忍者の隠れ小部屋みたいに、出入り口にドアノブも何もないからだ。扉とおぼしきものが二つ並んでいるが、そのどちらが出口かわからない。「これか?」と片方を押して開けてみたら、掃除道具入れだったのでびっくり。気を取り直してもう片方を押してみたら、こっちが出口だった。
なんだか建築家に遊ばれているような感じで、悔しい。「こういうのもジョークとして楽しめてこそのアートだよフフン」とか高みの見物をされているっぽくて、イヤーな気持ちになる。それはよこさんも一緒だったようで、
「いやー、お手洗いの出口、わかんなくなっちゃいましたー」
「えっ、女子トイレも?」
男女分け隔てなく、惑わせる出入り口だったらしい。
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